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驚きの未来で待っているのは誰か

仮面ライダードライブ』感想・第39-40話

◆第39話「旋風の誘拐犯はいつ襲って来るのか」◆ (監督:柴崎貴行 脚本:三条陸
 次々と女性をさらっていく神出鬼没のロイミュード008――トルネードを倒す為、進ノ介と霧子、追田とりんな、の組み合わせでカップル偽装作戦を行う事になり、さらっと特状課に剛が戻ってきているですが、先日までの葛藤はどこに?
 ロイミュード撲滅の為に、タブレット(ミスター・バンノ)から有用な情報を引き出すまでは“仲間”として顔を出せない、とか言っていた覚えがあるのですが、心情も心境の変化も時空の彼方にすっ飛んでしまって、呆然とします。
 ベルトさんとバンノが再会を果たし、怒り心頭のベルトさんと、なんとか共闘できないかと間を取り持とうとする剛だが、戦いを挟んで姿を消したバンノタブレットが、しれっとピットに出現。
 「初めまして、泊進ノ介くん、本願寺課長」
 「父さん! どうしてここに?!」
 「え?」
 「仕方ないだろう、剛。もう、全てを明かそう。私は――蛮野天十郎ロイミュードの生みの親にして、霧子、君と剛の父親だ」
 剛がひた隠しにしていた真実が霧子に伝えられてしまう衝撃シーンの筈なのですが、蛮野が父親である事に困惑しているのか、目の前の薄い板が父親を名乗っている事に困惑しているのか、どちらかわかりません(笑)
 両方、かもしれませんが、なにぶん、この世界における一般的な「蛮野天十郎」の名前が持つ意味、を描いていないので、霧子が感じるであろうショックが、剛の主張以外のものとして想像しようがないのが、積み重ね不足として大きく響きます。
 「蛮野に関わってはいけない! 彼の言う事を聞くな! こいつは、悪魔なんだ!」
 すっかりミスター・バンノに丸めこまれている剛に対し、徹底して強い拒絶を示すベルトさんだが、進ノ介はひとまず、バンノから情報提供を受けた008のアジトへとトライドロンを走らせる。
 「霧子、おまえは大丈夫か?」
 「……はい。急に、父親だと言われて、少し混乱しただけです」
 「すまん、感情的になりすぎた。霧子や剛の気持ちを考える余裕が無かった」
 「泊さん……」
 あ、霧子さんが、ナチュラルに、ベルトさんを無視した。
 今や板状とはいえ、他人の親を目の前で悪魔呼ばわりするベルトさんも安定して人の心が無いわけですが、008のアジトに乗り込んだ進ノ介たちはさらわれた女性たちを発見するも、その前にハートとトルネードが揃って出現。
 黄金の体に紫色の角が毒々しいゼンカイハート様は、ドライブTR&マッハのコンビ攻撃をものともせず、むしろ、殴られれば殴られるほど悦ぶ感じになっており……つまりメディックに求められていたのは、ヒールの踵でぐりぐり踏む事だったのです。
 そうこうしている内に霧子がトルネードにさらわれ、更にそこへ飛んできたライドブースターが、ドライブとマッハを爆撃。それを操っていたのはミスター・バンノであり、直撃弾を受けて炎上しながら崖を転落したドライブは、ナンバー004の手でベルトを奪われてしまい、つづく。
 ……前回、ちょっと触れましたが、『ドライブ』、「致命的な大穴が気になる」とか「方向性が肌に合わない」とかとは全く別の次元で、「面白みを感じられない」でいるのですが、それが何故かと考えてみると……
 ・主人公たちが主体的(積極的)に解き明かそうとする謎
 ・主人公たちの行く末を心配させる仕掛け
 ・主人公の葛藤
 の全てが欠落に近いレベルで不足しているので、後になればなるほど、話を引っ張るサスペンスもミステリも足りない状況が悪化しているのかな、と。
 勿論、「必ずこれらが必要」なわけでも「これらがあれば面白い」わけでもありませんが、少なくとも一定の有効性を持った手法であり、例えば『クウガ』の場合、
 ・グロンギやゲゲルの謎/クウガの能力解明(ミステリ)
 ・戦闘生命体に近付いていく五代(サスペンス)
 ・みんなの笑顔を守る為に、望まぬ拳を振るう「俺の変身」(葛藤と選択)
 と一通り揃える事により、受け手の感情を物語に引き込む手がかりにしているわけですが(無論、「アクションの面白さ」とか「キャラクターの魅力」とかその他の要素も絡み合います)、これに比べると『ドライブ』はつるつるの絶壁。
 まだしも前半は、チェイスと霧子の関係に、ロイミュード撲滅を訴える剛が絡んで、「人間とロイミュードの関係」がサスペンスになり得たのですが、「ではロイミュードとは何か?」というミステリになり得る要素を放置したまま、さしたる葛藤もなく吹き飛ばしたチェイスたまたま生きていた上で、「人間を守れ」とプログラムされた元プロトドライブだから普通のロイミュードと違うよ、で片付けられてしまった事で「人間とロイミュードの関係」も断線され、トータルで物語を引っ張っていく要素が何も無いまま真影編に入ってしまったのは、大失敗であったように思います。
 後はもう、個々のキャラクターへの思い入れ頼りになっておりますが、それが悪いわけではないものの、物語全体としての仕掛け、構造の工夫は欲しかったところ。

◆第40話「2人の天災科学者はなぜ衝突したのか」◆ (監督:柴崎貴行 脚本:三条陸
 「俺はあれほど最低な人間を知らん」
 崖下に転がる進ノ介と、それを助け起こした剛の前に人間体で現れたハートは、15年前、ロイミュードの研究を行っていた蛮野が、人間の姿をコピーさせたナンバー002(後のハート)に対し、実験という名の虐待を繰り返していた事を語る。
 「……私にはもう耐えられない。君との友情も、今日ここまでだ!」
 そして、それを目の当たりにした在りし日のクリム(アイアン髭)は蛮野と袂を分かち、焦った蛮野がロイミュードに人間の悪の心をラーニングさせた結果、爆発的な進化を遂げたロイミュードは創造主に反抗するに至ったのだった。
 ハートは蛮野に受けた仕打ちを人類全体への憎悪へと変え、ロイミュードを開発したばかりではない、ロイミュードに憎しみを植え付けた父親の所業に打ちひしがれる剛。
 「なんだよそれ…………俺も道具の一つとして利用されてたって事かよ。…………もしその話が本当なら、この世で一番醜いのは俺たちの父親じゃねぇかよぉ!!」
 「……剛」
 「迂闊な奴とは敢えて言わない。生みの親に失望するその気持ち……わからんでもない」
 衝撃の真実! みたいな流れになっているのですが、いやみんなもっと早く、ベルトさんを尋問するべきでしたよね……?
 明らかに、なぜロイミュードと戦う事になっているのか? をろくに追求してこなかった進ノ介と、その辺りの経緯も開発者である蛮野についても知っていながらほとんど説明してこなかったベルトさんによって状況が最悪の方向に転がっているわけですが、少なくともこの二人の間で情報共有をしていなかった心理的理由がさっぱり思い当たらないのが困ります。
 あと、正義と悪を相対化した末に、善玉サイドと悪玉サイドの関係がややこしくなってしまったところに、積極的かつ倫理的に明白な悪を第三勢力として投入する、って物凄く安直な手段で、第40話まで来てやる事としては、大変残念。
 一方、トルネードは霧子にドレスを着せてチェイスの追撃を逃れ、やたら濃いめのキャラ付けのトルネードですが、面白いというか、急にドーパント出てきた感が強くて、うーん。
 「この世の全ては私のもの。それが理解できない馬鹿が多すぎる」
 ミスター・バンノは、手駒であるナンバー004に回収させたベルトを解析し、アジトに進ノ介が乗り込んでくると、完成したバンノドライバーと共に、逃走。
 「厄介な敵が増えちまったな……ベルトさん」
 「我々のする事は変わらない。止めなければいけない相手に、蛮野までが加わった。それだけの事だ」
 「……それだよ。俺が信じているあんたの気持ち。それは自分が死んだ後も、罪を償おうとする使命感だ。今でも野望を果たす事しか頭にない蛮野とは、正反対だ」
 二人の信頼関係はバッチリだ! みたいにやり取りしていますが、今この状況に陥っている主な原因、そこのベルトが情報をせき止めていたからなんですけどね!!
 加えて、劇中で具体的な情報が一切与えられていないのに何をもって「蛮野の野望」なのか意味不明で、「視聴者に見せる情報の取捨選択の難」が、しばしば大森P作品に共通して見える短所として今作でも浮かび上がりますが、これは、本編以外のBlu-ray特典などで重要な情報が語られたり、スピンオフ作品を見越したキャラクターの描写など、今に続くビジネスモデルの産んだ問題、でもあるのかもしれません。
 トルネードの超進化の条件は、素体となったデザイナーの男のロマンをかなえる事だったが、進ノ介がそれを阻止。タイプTRへの変身を妨害されて苦戦を強いられるが、その窮地を救ったのは、ロイミュード誕生の秘密を知ったショックから、立ち直った剛。
 「追跡! ……撲滅。そう、そうだったよな……人間を脅かす悪は全て叩く。たとえそれが、父親だとしても。……それが俺の、仮面ライダーマッハの使命だ!」
 免許を取得したチェイサーの援護を受けた2人が、ダブルライダーキックでトルネードを撃破して、つづく。
 何をもって「仮面ライダー」とするのか? という定義付けが繰り返されて作品のテーゼを示しつつ終盤戦への起爆剤にしたい意図はわかるのですが、「市民を守る警察官としての使命」をバックボーンにしていた進ノ介に対し、特にそういう背景の構築されていない剛が、何故か進ノ介と同じ使命感を背負ってしまうので物語の積み重ねにならず、これをやりたいなら、剛がそこに至るまでの物語、を描いておかないといけないわけですが……「撲滅」のところでグッと拳を握り込むマッハは格好良かっただけに、道程も到達点も、どちらも劇的な説得力に欠けていたのは、残念です。
 ところで、前回-前々回に登場した謎の男が今回影も形も見えず、本編の布石ではなく劇場版の宣伝要素??