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 遅ればせながら、先週の『ルパパト』。これで心置きなく、第48話が見られます。

快盗戦隊ルパンレンジャーvs警察戦隊パトレンジャー』感想・第47話

◆#47「今の僕にできること」◆ (監督:渡辺勝也 脚本:香村純子)
 前回ラストの依頼により、ゴーシュの手で何やら改造手術を受けるザミーゴ。
 「これで貴方のお望み通り、ルパンレッドとたーっぷり遊べるわよ」
 「あいつどんな反応するかなぁ。楽しみぃ」
 の言い方が絶妙にいやらしく、デストラにしろゴーシュにしろザミーゴにしろ、トータルでのスポットライトの不足はやや残念であったものの、ギアを上げてからの加速度合いはいずれも実に素晴らしい。
 人間界では咲也が初美花を食事に誘い、満更でも無い様子でOKした初美花は、魁利から「デートだ」と茶化されると言い訳しながらその場を離れ、厨房からその背を見送る透真の、表情と視線(笑)
 「……娘の心配する父ちゃんみたいな顔んなってんぞ」
 真っ正面から思い切りツッコんだ!(笑)
 遂に最終章突入という事で、脚本も演出も役者陣も、これまで積み重ねてきたキャラクターの全てを引き出しそれを超えていこうという勢いなのですが、ここの透真の表情が、今回最高に素晴らしかったです。
 序盤から、快盗唯一の成人としての意識みたいなものは見え隠れしていましたが、まさか透真が、保護者代理としてこんないい表情をするようになるとは、思いも寄らず。
 「これ以上深入りしてもろくな事はない。おまえもわかってるだろ」
 そう言う透真自身が、“そう言う事”で初美花に深入りしている(魁利に対しても深入りしていいのかどうかを悩む程度に深入りしている)、というのが今作を象徴する、主要登場人物の抱えるアンビバレントの繰り返しとして突き刺さります。
 「……じゃ、尾行でもして見張ってれば?」
 軽口を叩いてあまり踏み込みたくない話題を打ち切ろうとする魁利だが……透真は、真剣な表情で考え込んでいた。
 「……え? 嘘」
 かくして運命のうねりが巨大な波濤とならんとするその日――
 「ボンジュール! ギャングラーに、何か動きはあったかい?」
 国際警察日本支部戦力部隊捜査本部の空気は、標高8000m級に薄くて寒かった。
 OP明け、ノエル視点で始まるのが超きつく、そして凍った空気にノエルが全く気付いてないのが更にきつく、見ているこちらが酸欠になりそうです。
 一方、待ち合わせしてレストランに向かう咲也と初美花の後をつける、サングラスにハンチング帽の怪しい男が2人……
 「初美花が咲也と食事をしている…………もしかして?! あのオードブルが美味すぎて、箸が止まらなくなり、店長を褒めちぎった挙げ句、店の全メニューに挑戦した結果、パンパンになった腹に、何故か飛んできたキツツキが激突! 腹が爆発して、初美花が死んでしまうのでは。……心配すぎる……!」
 は再発しませんでしたが、周囲は男女のカップルばかりの程々ちゃんとしたレストランで、サングラスの男2人がテーブルについている絵面のおかしみで、かなり深刻な内容のエピソードなのにきっちり笑いを入れてきます。
 「ん、おいしーい!」
 「透真くんのご飯と、どっちがおいしい?」
 「…………透真」
 思わず口元が緩む保護者代理だが、ほのぼのタイムはここまで。若干わざとらしくも咲也は外堀からじわじわと探りを入れていき、魁利と透真はその内容に不審を覚える。
 「もしかして、巻き込まれた友達も居るのかな……?」
 意を決して切り込んだ咲也の問いに危険なものを感じた魁利がメールを送って初美花を中座させ、合流する3人。
 「まずいな……警察は、俺達を快盗だって疑っている」
 快盗にとって致命的な危機を土壇場で回避したきっかけが一見ギャグめいた尾行なのですが、透真が第28話「誕生日も戦いで」以降、初美花父と初美花の関係に、彩父と彩の関係を重ねてしまい、“親に想われている娘”に対して若干の保護者意識が強まっている布石があるので、透真の心理としては必然性があって決してその場限りのギャグでは無い、という接続が実に巧妙。
 とにかくこの場はやり過ごして後で対策を練ろう、と頷き合う快盗トリオだが、ギャングラー出現の連絡が入り、咲也は急遽、現場へ向かう事に。
 「ギャングラー、ですか?」
 「…………ごめんね、初美花ちゃん。僕は現場に行くから、初美花ちゃんは、気をつけて、まっすぐ……まっっっすぐ、帰ってね」
 たぶん咲也が何より辛いのは、初美花が自分を騙している可能性よりも、初美花が真っ直ぐに道を歩けない事そのものなのかもしれず、ならばそれは、咲也自身ではなく、初美花の為の祈りなのかもしれません。
 「……はい。咲也さんも、お気をつけて」
 (なんでこんな時に……やっと、ちゃんと初美花ちゃんの話、聞けそうだったのに)
 現場へ走る咲也の独白からは、快盗かどうかを確かめようとする事以上に、初美花の抱えているものがあるならば、それに正面から向かい合って聞きたいという想いが感じられ、きっかけは「可愛いから粉をかけた」だとしても、その辿り着いた所はまさに朝加圭一郎の後輩、という綺麗な繋がり。
 そしてだからこそ、咲也の気持ちは初美花に伝わる――伝わってしまう。
 「ごめん! 今日……2人に任せていい?」
 「初美花」
 「どうした」
 「だって咲也さん、疑ってないから。国際警察は疑ってるかもしれないけど、咲也さんは、あたしを信じてるから。…………騙してるのは……ずっとあたしの方だよ」
 ここの初美花の、泣くのをこらえるような表情からの呟きも素晴らしかったですが、誰かの信頼を裏切りたくないと思ってしまった時、精神的にはもはや“快盗ではいられない”わけで、危うい崖っぷちに立つ初美花。
 「……それが快盗だからな」
 だからこそ透真は、何よりも大切な人を取り戻す(取り戻させる)為、即座に心を鬼にして言わざるを得ない。ここで魁利に言わせるとドライになり(聞こえ)すぎるので、精神的に綱渡り状況にある初美花が壊れないように引き戻そうとする役割を透真に持っていくのが、また絶妙なバランスでした。
 「……わかってるよ。わかってるけど」
 快盗戦隊が寸刻みになりかねない、鋭い刃のような言葉の応酬が続くその時、店内に聞こえてくる、口笛の音――魁利を先頭に窓辺に駆け寄った3人が目にしたものは、ロックアイスーーー! を手にした、派手なソンブレロの男。
 ザミーゴ人間体のシンボルではあるのですが、この緊迫した状況下、最大限に劇的な邂逅の場面で、普通にロックアイスかじってきたのは衝撃的でした(笑)
 木の陰から出てきて最初に視界に入るのが、平々凡々としてどこか気の抜ける「氷」の文字なのは故意としか思えないのですが、日常の中に紛れ込んだ異常であるザミーゴのキャラクター性がよく出ていて、良い場面盛り沢山だった今回の中でも、凄く好きなシーンの一つ。今期演出陣では何より杉原監督のパイロット版抜擢からの成長ぶりが光りましたが、『ニンニンジャー』以来のローテ参戦となった渡辺監督がラブコメからキツツキから決戦クインティプルまで、多彩なエピソードでキレのある演出を見せてくれたのは、好きな監督なので大変良かったです。あと今更ながらザミーゴは、未確認生命体(『仮面ライダークウガ』)的なキャラクター性を有しているのか、と成る程納得。
 「……ザミーゴ」
 「え?!」
 「……アレが?」
 透真少々、俺達の因縁の敵はアレなのか?! が入っていそう(笑)
 「ターゲットはあいつに変更だ。……どうする?」
 「――行く。……早く、早く全部終わらせたい」
 皮肉な運命の悪戯も手伝って快盗である事に踏みとどまる初美花ですが、「早く全部終わらせたい」は初美花にとって都合が良すぎて、果たしてしっぺ返しは来るのか、全てを掴む事が出来るのか。この「快盗は全てを掴む事が出来るのか」というのが今作最終盤における最大の物語的焦点といえるのですが、マクロなテーゼをミクロからしっかりと補強しています。
 一方、咲也も合流した国際警察が通報現場で構成員を片付けるとその背後に姿を見せたのは、ゴーシュ・ル・メドゥ。
 「おまえ、いったい何をたくらんでいる?!」
 「別に。企んでなんかないわ。刻みたいから刻みに来たのよ。でも良かった~。エックスに会えるなんて」
 引き続き熱視線でロックオンされ、あれ? 今、僕と一番友好度高いの、切り裂きマッドドクターなの??
 「貴様の好きになどさせるか!」
 「「「「警察チェンジ!!」」」」
 そのルートへ入りたくないノエルを筆頭にパトレンジャーが4人並んでゴーシュに突撃を仕掛けていた頃、ルパンレンジャーもまた、ザミーゴと接敵。
 「探したぜ! ザミーゴ・デルマ!」
 「探したぜぇ~ルパンレンジャー。まとめて遊んでやるから、かかってきな?」
 「余裕こいてんのも今の内だ。今度こそ、決着つけてやる!」
 テーマソングをバックに銃撃戦に突入し、青がシールドで凍結弾を防御し、黄がアローで牽制している間に赤がビクトリー、とこれまでの戦闘経験を活かした流れるような連携が鮮やかで格好いい。
 「おまえを倒せば全部終わりだ!」
 「あんたが奪ったもんを、今日こそ返してもらうんだから!」
 「おまえの動きは読めるんだよ!」
 そしてザミーゴの土手っ腹に、Vレッドのルパンマグナムが風穴を開ける。だが……何故か、見る見るうちに塞がってしまうその傷口。
 「なに今の?!」
 「さあ、なんだろうね~」
 拳銃を持った両手を広げながらルパンレンジャーを嘲弄するザミーゴが、全面的に厭らしくて実に素晴らしいです。
 ルパンレンジャーの猛攻をものともしないザミーゴの背中には新たな銀の金庫がついており、なんとザミーゴはゴーシュの改造手術によって金庫を増やす事で、体を液状化するコレクションを用いて攻撃を無効化していたのだった!
 「あれは、ゴーシュにやったコレクションだな。ザミーゴに、分けてやったのか」
 その戦いをモニターで見つめるドグラニオ様、お酌係が構成員なのが、黄昏れゆく組織の象徴として、なんだか切ない情景です。
 「はっ、俺が築いた地位にも財産にも、興味はねぇ、か」
 そのくせ戦いを愉しむ為なら改造手術も辞さないザミーゴの姿に何を思うのか、ドグラニオ様の思惑ありげな呟きも積み重ねられ、他の幹部キャラ同様に、派手な花火を期待したい。
 「早く刻ませてちょうだ~い」
 「誰が!」
 ゴーシュと死闘の真っ最中の警察サイドでは、Xが快盗チェンジから足を取って転ばせてゴーシュの金庫に迫っていたが、ゴーシュは新たなコレクションを右腕に装備し、その一撃は、ルパンXの装甲すら貫く!
 「どう? 私の三つ目のお宝の力は」
 ゴールド金庫の数という明確な点も含め、単純な戦闘力ではデストラに劣ると思われるゴーシュですが、右腕にメス状のブレードを生やすというベストマッチなコレクションで強化する事で、最終盤の強敵として格を落とさない形に。その上で、基本4対1のバトルにする事で、デストラさんはやはりデストラさんだった! という配慮が見えるのも、死んだらそれで終わりではないキャラの使い方として、嬉しい所です(前回の隠し芸回想でもデストラさん上げが入りましたし)。
 「うふ、私の為にあるようなコレクションね」
 「そんなもの、へし折ってやる!」
 連続攻撃を浴びて倒れた銀に変わって赤桃緑が立ち上がり、個人的に好きなメガホン剣を持ち出してくれたのも嬉しかったところ。
 ゴーシュは嗤いながら右手のメスを振り回して警察戦隊を切り刻み、他方、3方向を快盗に囲まれるザミーゴも二丁拳銃と液状化能力で圧倒する、というW戦隊が強力幹部に揃って苦戦する二局展開を、画面を上手く重ねながらスムーズに見せてきます。
 「全然金庫に近付けない!」
 荒ぶる赤は青の手からシールドをひったくると、タービン回して滑空突撃で食らい付くが、急旋回や上昇しながらの連続射撃も有効打には至らず、最後は崩れた倉庫の下敷きとなって、完敗。
 「なーんだ、今日はここまでか。また次のチャレンジを待ってるぜ。アディオス」
 ザミーゴはトドメを刺す素振りすら見せずにあっさりと引き上げ、完全に弄ばれ打ちひしがれるルパンレンジャー。
 その頃、警察戦隊は警察戦隊でゴーシュのメス捌きと光弾の合わせ技に活路を見いだせず、苦境に追い込まれていた。
 「ほらほら、どうしたの~? 早く私を止めなきゃ、どんどんやっちゃうわよ」
 余裕を見せるゴーシュは、手から放射したビームでビルを切断。
 「やーめろーー!!」
 それを防ごうとする1号、ビルを切り裂くビームを、スーツの厚みで受け止めているぞ(笑)
 ゴーシュの無差別破壊を体を張って食い止めるパトレンジャーだが次々と変身解除に追い込まれ、立ち上がったルパンXもゴーシュに翻弄されたまま、連続の斬撃で変身が解除されてしまう。
 (コレクションを取る事もできない……街の被害も止められない)
 かつて第32話において、


 「そんなことない! コレクションを手に入れる事と、平和を守る事は両立できる!」
 「出来る出来ないじゃない。やらなければいけないんだ! それが君とも、レッドくんとも違う、僕の選んだ道だぁ!!」
 「ルパンコレクションを取り返し、大事な人を取り戻す! そして、ギャングラーを排除して、平和な未来を実現する!」
 総取りを目指す道を行く事を宣言したノエルが、力不足からどちらも及ばない自分を認める、というのはヒーローの敗北として象徴的。またノエルは、“自分一人では総取りできない”事を最初から認めて快盗と警察の双方を連携させようと模索を繰り返していたのですが、現時点ではその理想的な関係構築に失敗した、といえます(この辺りノエルが、万能なようで万能ではない、というのは明確なキャラ付け)。
 「可哀想にねぇ。頑張ったのに」
 故にこの、ノエルの思惑を知るわけではないゴーシュの軽い厭味が、ノエルの心奥に突き刺さる内容になっているのが、痛烈。
 (ごめん、魁利くん。僕一人じゃ、あの金庫は開けられないみたいだ。……みんなを守る為、今の僕に出来る事は……)
 全てをその手に掴めない時、選ぶべきものはなんなのか……ノエルが下した結論は、圭一郎達をかばってゴーシュの前に立つ事。
 「刻むなら、僕だけで十分だろ」
 両立の難しい二つの“どちらか”を切り捨てるのではなく、どちらの道も残す為に“自分自身”を切り捨てる、というのが、色々わかりにくい上に紆余曲折ありましたが、高尾ノエルという人間の真骨頂、という事になりそうです。
 出来ればこの“自己犠牲”は、否定されて欲しいたぐいのものではありますが。
 「ゴーシュ、おまえは見たいんじゃないのか? 人間じゃない、この体の中を」
 「……ノエル。おまえ、何を言ってるんだ」
 「…………ごめんね、今まで黙っていて。僕は、遙か昔にギャングラーに故郷を追われた、異世界の住人の子孫なんだ」
 そしてノエルは自らの正体を警察戦隊に明かし、状況的にはともかく、形としてはノエルの口から直接語る事になったのは、警察戦隊との関係性におけるノエルの誠意の表現となり、良かったところ。
 「人間を守る為に、自分を差し出そうっていうのね。うふっ、いいわよ~、貴方を切り刻めるなら、そんな雑魚」
 ザミーゴにとってルパンレンジャーとの戦いが楽しい遊びでしかないように、ゴーシュにとってパトレンジャーは取るに足らず捨て置いていい存在である、と強力な敵幹部がヒーローを捨て置く理由付けとして、二局の展開を繋げる事で上手く補強しているのも、細かく巧い。
 「話が早くて助かるよ」
 ノエルは手持ちのビークルを3人に預け、つかさ先輩、山盛り。
 「……死ぬつもりか? よせ!」
 「前に言ってくれただろ。僕のこと、一人の人間として、助けない選択肢はないって。……嬉しかったよ」
 第38話時点では、警察戦隊の姿勢としては当たり前すぎて、どうも劇的さに欠けていた「おまえがどんな胡散臭かろうが、任務で対立しようが、助けない選択肢はない! ……おまえだって一人の人間だ」という圭一郎の言葉が、ノエル視点では非常に重い意味を持っていた、というのがノエルの正体と改めて接続。
 「……馬鹿なことを言うな! 今も見殺しにする気は無い!」
 その上で、さすがに状況を整理しきれてはいないとは思いますが、断言してみせる圭一郎が、超格好いい。
 「ありがとう。でも……借りを返すだけさっ」
 「ノエル!」
 ゴーシュはノエルを捕縛すると、デストラの形見であるサボテンゴーレムを召喚して、異世界へ。無力さに歯がみしながらグッティを捕まえた警察戦隊はサイレンパトカイザーでゴーレムを撃破するが、ノエルはドグラニオ邸へと拉致されていた……。
 「ご覧下さいボス。私の新しい獲物です」
 「ほぅ……エックスじゃねぇか」
 「ステイタス・ゴールド・フィジカルプロテクト……」
 この局面で生真面目なノエルですが、ノエルにとってはこれが、アルセーヌを殺した元締めである仇敵との対面となるわけで、そういう点では非常に必然性のある人質展開。
 ノエルの瞳の中に映るドグラニオの顔、という渡辺監督好みのカットで、つづく。
 張り巡らされてきた人間関係や物語上の布石のみならず、各種ギミック的な集大成に、エピソードとしての完成度を上げる細かい工夫も二重三重に仕掛けられているという大変濃密なエピソードでしたが、様々な思惑が入り乱れる中で改めて、今作の背景に横たわる「何を手に入るのか? その為に何を失うのか?」という問いが浮上。
 「何かを手に入れる為には相応の代償が必要」というテーゼもあれば、「全てを掴み取って理想を実現してこそヒーロー」というテーゼもあり、今作がどちらに行き着くのか正直未ださっぱり読めないのですが、全体的には快盗の罪は快盗の罪として存在するというスタンスですし(法的であると同時に道義的に)、仮に一緒にギャングラーを倒したから全て水に流そう、では咲也の苦悩は何だったのかという話になってしまう事もあり、快盗と警察という存在の対比は、最後まで意味を持った形で収まってほしい所です。
 例えば今回の初美花は、快盗である事を隠し通したままザミーゴを倒して親友を取り戻せれば、快盗を辞め、ジュレという場は残り、咲也とも今まで通りの関係を続けられる(かもしれない)という思考に“逃げている”のですが、結局それは、表面上は隠し通せても咲也を騙していたという事実は消えないままの“虫のいい”願望であり、ヒーローの総取りの中に収めてしまっていいものとは思えないので、そこはしっかりと締めてくれる事を期待したい(キャラクターをきちっと殴ってくる事に関しては、香村さんを凄く信用していますが)。
 その上で今作通して一つハッキリ描かれているのが“人と人が真っ直ぐに向き合う”事の大切さであり、それが成し遂げられた時には、割と色々な理屈を飛び越えられそうな気配はあるのですが、果たして空前のW戦隊・VS戦隊はどんな「ヒーロー」に辿り着くのか、楽しみにしたいと思います。

1/22付けレス

 私事が一段落して、体調不良の底も抜けた感じで、本日は『ウルトラマンガイア』感想を書きました。

疾風翔の守備範囲は広い

◆タイキさん
 >前作のレッドワンが完璧超人タイプだったこととの差別化で、いわゆる元祖・突撃隊長なんですよね(00年代レッドのプロトタイプとも言える)。
ああ成る程。言われてみると飛竜、キャプテンシーは強いけど全体を見通す判断力に優れているというタイプではなく、まさに「突撃隊長」なのですね。
 >「キュウレンジャー」の宇宙幕府ジャークマターが全宇宙の99%を支配済みという設定ってゴズマが下敷きになっているんでしょうかね。
私も書きながらよぎったのですが、意識したかしないかは別に、正直、『チェンジマン』の方が宇宙的なスケール感を上手く表現できてますよねー。『キュウレン』と比べると顕著なのはやはり、設定を表現する為の敵サイドのドラマの描き方ですかね……。
 >そういう意味でも非常に上手く機能していますよね熊沢博士。
熊沢博士、前編では個人としてのキャラの面白くなさが不満だったのですが、後編まで見ると、地球人ながら「悪」とは何かを体現するという、物語の中のポジションとしては実に上手い位置づけになっていますね。
 >疾風翔がこれをやったら確実にロリコン扱いでブーイングの嵐間違いなしで、そう考えると初期のキャラ構築って凄く大事だなあと。
疾風さん、黙っていると物凄く二枚目なので、戦隊的には“どう崩すか”を考えたらああなったのでしょうが、大変微妙な方向へ行ってしまいましたね(笑)
 >戦隊ロボがフルパワーで赤熱というのはバイオロボが元祖だったかと。
おお、ありがとうございます。

また又・メザードが斬る!

ウルトラマンガイア』感想・第19話

◆第19話「迷宮のリリア」◆ (監督:原田昌樹 脚本:長谷川圭一 特技監督:原田昌樹)
 「やっぱり、生きる世界が違うのね……」
 故人曰く、下りた梯子は登らなくてはならない。
 藤宮博也によるエリアルベースへのテロ攻撃において、梯子の往復で散々な目に遭った敦子は、この筋肉上位世界で自分はやっていけるのか……2年任期のエリアルベース配属を更新するかどうかを改めて悩んでいた。
 折しもエリアルベース上空には金色の粒子が漂っており、敦子の迷いに付け込むかのようにブリッジへ伸ばされる魔手。電子機器を通してサイコメザードの干渉を受けた敦子は、不意に少女時代の記憶に支配されると、夢のような不思議な世界の遊園地で、非現実めいた黒衣の少女に話しかけられる……。
 悩める敦子の回想において、「お疲れ様です!」と挨拶しても無視される、本当にあった深い溝は梶尾さんが単純に感じ悪いだけなのですが、梶尾さんは、基本的に女嫌い(苦手)設定なんでしょーか(笑)
 序盤は我夢の対人関係の問題点が描かれていた今作、我夢が落ち着いてみると梶尾さんの、「俺は俺のフィールドで認めた奴以外は道ばたの石として扱う」スタイルが大変悪目立ちする事になってきているのですが、相対的に、間に入って調整役のできる堤チーフが段々と人格者に見えてくる筋肉マジック!
 閉鎖空間の人間関係は重く、それを円滑にする為に求められた共通の理想――それが、それこそがマッスル。
 上層部では、敦子の筋力不足、もとい、更新手続き保留を憂慮中。
 「彼女は有能なオペレーターです。エリアルベースには必要な人材だと自分は考えますが」
 「私もそう思う、だが……我々が今直面している状況は、XIG結成当時の予想を遙かに上回ってしまった」
 「はい。確かに楽観的観測は許されません」
 「……こういう時期だからこそ、個人の意志は尊重すべきだ」
 敦子の客観的評価とXIGの置かれた現況を自然な会話の中に収め、前回エリアルベースが直接危機に陥る、という流れとも綺麗に繋がり、良いやり取り。
 『ガイア』は平均して要所要所の大人の会話の配置が上手く、わざとらしい説明シーンになっている事が少ないのは長所の一つ(「説明され」シーンになってしまっている事は、ありますが)。
 「私……いつ自分の部屋に?」
 ぼんやりとしながら目を覚ました敦子の枕元ではメリーゴーラウンドを模したオルゴールが鳴り響き、PCモニターに並ぶLiliaの文字。部屋に飾られた写真には、少女時代の敦子と、ゴシックロリータ風ファッショに身を包んだ夢の中に出てきた少女が並んで座っており……再び夢うつつの世界に迷い込んだ敦子のオペレーションミスにより、ライトニングの2機が接触・墜落してしまう。
 敦子を襲うなんらかの異常としてメリーゴーラウンドを中心とした幻想的な遊園地の情景が繰り返し挿入され、vs藤宮編が一つのピークを迎えた直後の閑話休題編とはいえ、非常に大胆なメリハリの付け方。原田監督は丁度、本格的な藤宮編の直前となる狼男回もメルヘン風味の演出で異彩を放ちましたが、一風変わったトーンの交え方が、『ガイア』全体の中で良いアクセントになってきました。この辺り、脚本サイドから原田監督への信頼感、というのも見えるところ。
 5-6話の時点では、作品の現在地と演出が噛み合っていない気がして引っかかりが強かったのですが、11-12話そして今回と、物語の流れの中で存在感が良い方向に転がってきて、原田監督の演出がかなり気に入って参りました。
 敦子は地上で謹慎処分となり、金色の粒子をばらまいて消えたワームホールを追跡するXIGでは、本編開始から9分経ってようやく喋った我夢が、ファイターに付着していた粒子の特性を分析。……今回このまま、我夢が喋らずに通すのではないか、とドキドキしていました!(笑)
 メザード粒子には、電子機器の攪乱のみならず、大気中の電磁波と反応して特殊な電気エネルギーを放出、人間の記憶に関わる神経組織を刺激して、ある種の幻覚作用を誘発する作用があり、敦子の様子がおかしかった原因に気付いたジョジーと我夢は、敦子の部屋に残された、Liliaの文字を確認。ワームホールの追跡を続行すると共に、連絡のつかない敦子を心配する。
 「あっこの保護は……あの人に頼んでみよう」
 「あの人って?!」
 画面切り替わると、地上をXIGカーで走る梶尾@部下2人が負傷療養中で余剰人員。むすっとした顔でハンドルを握る梶尾は、空での出来事を思い返す。
 「問題は、彼女の精神状態です。今は一番信頼できるにんげ」
 「だからそれがなぜ俺なのかを聞いてるんだ!」
 我夢の素で朴訥な感じや、藤宮の突き放した一人語りなど、今作割と、役者さんの演技(力)にキャラを寄せていく傾向が見えますが、梶尾さんは時々、突っ慳貪な物言いが絶妙にはまる時があって面白い(笑)
 「……僕は梶尾さんを尊敬してます。でも、嫌いなとこもある。それは、人との間に距離を取り過ぎる事です」
 我夢の上げて下げて下げる直球3連投に押し負けた梶尾@部下2人が負傷療養中で余剰人員はかくして地上に降りる事となり、
 「――おまえに言われたくないな」
 と、ハンドルを握りながら呟くのが素晴らしかったです(笑)
 ここまで、〔ガイア誕生 → 環境テロリスト登場 → 『ガイア』とはこういう作品です → vs藤宮〕という流れだった今作、キャラクターとしての怪獣の魅力が溢れる一方、個々のXIGメンバーに関しては浅く広くという扱いだったのですが、閑話休題エピソードをキャラ回として敦子をフィーチャーするばかりでなく、そこに梶尾さんの掘り下げも加えてくれたのは、大変嬉しい展開。
 まずは敦子の自宅を訪れた梶尾だが、チャイムを鳴らしても不在で舌打ちしていた所に帰宅する敦子姉。
 「あのー……」
 「あー……すいません、いや、別にあの、え、はい、どうぞ」
 慌ててドアの前から退き、何故かそのまま住人の斜め後ろに立っているという、絵に描いたような不審者(笑)
 この人やはり、某海堂さんばりに女子への免疫が無いだけの気がしてきたのですが、制服着てきて良かったな!
 「え、自分は、あ、うん、僕は、えー……敦子さんと、XIGで、同僚の……」
 「もしかして……梶尾さん?」
 「え?」
 職場にクールで素敵な先輩が居る、と敦子が姉に話していた事が判明し、梶尾、若干動揺。
 いや待て梶尾、落ち着くんだ梶尾。
 米田さんの事かもしれないぞ!
 一方、エリアルベースでは我夢がクラゲの潜伏場所を絞る事に成功し、推定地域の電波管制を行う事でワームホールをあぶり出す作戦がスタート。梶尾は敦子姉から、少女時代の敦子が病気がちで友達が居なかった過去を聞かされ、「遊園地に行けば、リリアに会えるかもしれない」という言葉をヒントに向かった遊園地で、何も無い空間を見つめながら楽しそうに笑う敦子を発見する、と二つの状況が同時進行。
 「私ね、これからリリアのおうちへ遊びに行くの」
 「リリアなんて居ないわ!」
 「何言ってるよお姉ちゃん。リリアなら、ここに居るじゃない」
 幻想の中で少女時代に精神退行した敦子は黄金の巨大リリアを召喚し、ワームホールから出現して今日も炎上墜落したクラゲは、骨怪獣へとフォームチェンジ。基本デザインは前回登場時(携帯電話回)と同じながら、胴体に彫刻風の気持ち悪い顔が付き、この分だと、痛快・サイコメザードぐらいまで盛られていくのでしょうか。
 チームファルコンの苦戦に我夢はガイアに変身し、遊園地のイルミネーションを手前に戦う夜戦が、映像も美しくて格好いい。
 「リリアだけが、私の事を理解してくれるわ」
 「違う! おまえと俺は同じ世界に住んでる! その世界を守る為、一緒に戦ってきたんじゃないのか! そうじゃないのか?!」
 梶尾はサイコバリアに弾かれながらも懸命に敦子へと手を伸ばし、姉の指摘により、リリアとは少女時代になくしてしまった人形である事を思い出す敦子。梶尾さんが《説得》ロールで大変いい目を出したにも関わらす、やたらと台詞の多いお姉さんが最後の一押しを横からかっさらってしまうのですが、梶尾と敦子にこれといった関係性の積み重ねが無いので、ここで梶尾の言行だけで解放されてしまうのは、説得力に欠けるという判断だったでしょうか。実際の出来上がりでだいぶ印象が変わりそうで、IFとしてはどちらが良かったか悩ましいところ。
 敦子が正気に戻って気絶すると黄金のリリアはかき消え、その影響か動きが止まったメザードの隙を突いて懐に飛び込んだガイアが、会心の左上段蹴り、から遠心力を利用して右回し蹴りを胴体に叩き込む(潰れる顔の映像がえぐい)というのが、非常にスピード感があって格好いい連続攻撃でした。
 ガイアは弱ったメザードをがに股ショットで焼却し、この発射時のエフェクトがまた格好良く、映像の美しさも含めてアクション的にも大満足の見応え。
 かくしてガイアは空へ、敦子も無事に救出され、EDパートのエリアルベース。
 「梶尾さん、ありがとうございました」
 「空っていいよな」
 「え?」
 敦子に背を向けて窓の外を見つめたまま呟き、そういうの格好いいと思っているの梶尾ーーー?!
 掘り下げが進んだ途端に、藤宮に近づいたぞ梶尾リーダー(笑)
 我夢よりもむしろ、梶尾リーダーが藤宮と友達になれそうな気がしてきましたが、或いは我夢は、こういうタイプの人になつきがちな傾向があるのかもしれない(光量子コンピューターの先行研究をしていた人、という事なのでしょうが、初対面の時は藤宮に対して憧れの人めいたオーラを出していましたし)。
 「俺は飛行機乗りだから、いつも早く飛ぶ事ばかりを考えてきたんだ。……でもな、早く飛んでばかりだと、近くにある大切なものが見えない事もある」
 「梶尾さん」
 「……これからもよろしくな」
 「……こちらこそ!」
 照れくさげに咳払いをしつつも二人は何だかいい雰囲気を醸しだし………………それを廊下から恨みがましい視線で見つめる、負傷したライトニングメンバーの二人(笑)
 「はぁ~……梶尾さん」
 梶尾×敦子は完全に、サッカー部の唯我独尊エースストライカー×女子マネージャー、の関係に落ち着くのですが、前回ドキドキしていた科学部の天才転校生(高山我夢)の存在が、ちょっと可哀想(笑)
 「米田さんも結構、いい人だぞ」
 そして、怪我から帰ってきたら部室の雰囲気がピンクがかっていて、野球部(チームファルコン)への転部を検討する、冴えないディフェンダーの二人であった。
 「……がんばろうな」
 本編から墜落シーンと米田さんのシーンが挿入され、とぼとぼ去って行くライトニング02と03、というこれまた狼男回に続く遊び心たっぷりなED映像でオチ。
 ガイアvsアグルが物語の中心になっていく中で、一旦、我夢×藤宮の関係から離れ、一息入れるエピソードをXIG内部の人間関係を掘り下げるキャラ回に利用。演出も含めた大胆なトーンの変化で全体の流れにもメリハリがつき、大変いいタイミングでした。
 事務的な役割に終始しがちなオペレーターコンビへのスポットライトも、うまいこと前回からの綺麗な流れになりましたし、我夢×敦子や我夢×梶尾だけでなく、敦子×梶尾という線を引く事で、立体的になったのも非常に良し。予告から敦子フィーチャー回だとばかり思っていたので、梶尾の方まで掘り下げてくれたのは望外で、充実の内容でした。
 難を言えば、ただでさえ容姿やポジションが被り気味の敦子と玲子が、過去設定まで被り気味になってしまった事ですが、ホントこの二人はどうしてこういうキャラ付けなのか……もしかして敦子は、玲子の反物質なのか?!
 そして、どんどん無敵キャラと化していくジョジー(頭の回転が速く・行動力があり・工学系に明るく・最新の研究もチェックしていて・発想の転換力を持ち・周囲に目配りと気配りが出来て・少なくともバイリンガル……という、現時点で最前線部隊のエリート隊員を最も体現しているのがジョジーなのですが、裏を返せば敦子もこのぐらいのスペックの持ち主なのか)。
 敦子の心のひだをめくる幻想的な映像に尺を割きつつ怪獣バトルの方もおろそかにならず、脚本と演出のバランス、濃密な内容、という二点においては、ここまでの『ガイア』でも上位に入る印象。またまたメザードなので基本情報の説明は省ける、というテクニックは用いていますが、人間の心理的陥穽を突くといういやらしさを存分に振るった上でクライマックスの二局展開も盛り上げ、特に戦闘シーンの映像美は大変秀逸でした。
 藤宮のエリアルベースへの直接攻撃、それぞれの技能を活かすXIG各員の奮戦、ガイアvsアグルの直接対決による力の入った等身大バトル、という盛り上がる要素満載できっちり盛り上げてきた前回とはガラリと雰囲気を変えながらも非常に見応えのある面白さで、『ガイア』の懐の深さを感じた一本。
 次回――遂に藤宮とハーキュリーズが直接対決?!