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『魔進戦隊キラメイジャー』感想・第3話

◆エピソード3「マンリキ野郎!御意見無用」◆ (監督:坂本浩一 脚本:荒川稔久
 「美学……かな俺の。クールにさらりとすーごい事やりたい。男のやせ我慢、ですね」
 俳優・押切時雨( 永遠の 24歳)の劇中ドキュメンタリー番組から始まり、カメラの前の役者、という設定ではあるのですが、思った以上に作り込んでいました!
 時雨の語る美学について、我慢するっていい事なの? と首をひねる充瑠だが、街に万力邪面が出現。前回のラグビーに続き、わかりやすいモチーフ+シンプルなタイツ&マント、という造形が良い味出していて、今作の怪人ラインは今後も楽しみ。
 「遅れてすまん!」
 「また戦国時代から来てくれた」
 小夜は、チーム内のポジションに対して、キレイ系というよりはカワイイ系の声なのが少々気になっていたのですが、一切の厭味のないここの言い回しは凄く良くて、今回のお気に入りポイント。
 「上手く食事休憩に入ってな」
 そしてこちらは、だいぶ入り込みっぱなしであった(笑)
 「じゃあ前回あたし代役だったんで、今日は正真正銘!」
 「五人の初名乗り!」
 あっさり(笑)
 名のり時にそれぞれ「ははっ」「BANG!」「イエイ」「フッ」「うふっ」が追加され、揃い踏みポーズは赤のダンスがさすがにやや簡略化……その分、背後でおもむろにパートナーを持ち上げる青黄のネジの外れた感じが増していますが。
 どうしてこうなったんですか姫様?! クリスタニアでは、これが気高き戦士のポーズなのですか?!
 戦闘員を交えたバトルに突入し、基本武装を改めてアピール。メンバーが近接担当と射撃担当に分かれているのは割と好きで(過去戦隊だと『ゴセイジャー』の良かったところで、発展系にして現時点で一つの究極をやってしまったのが『ゴーカイジャー』でしょうか)、新人ながらリーダーの赤はダブル使用、というのも上手い編成になりました。
 闇の万力を緩めて市民は助けるも、意外や接近戦の強者だった万力邪面に、緑赤桃が次々とやられてしまう。動きを見切った青が一騎打ちを挑んで優位に戦いを進めるが、せこい誘導に引っかかって闇の万力をはめられてしまい、変身解除。
 万力邪面は撤収するが、時雨は頭蓋骨が歪むレベルで強烈な万力の締め付けを受ける事となり、医者スキルを発揮した小夜が外そうとするも失敗。激痛に耐えながら無表情を保つ時雨は、頭に万力をはめたままドラマの撮影に入る事に。
 「……ねえ、そんなに格好悪いのが嫌?」
 「なにぃ?!」
 「いやいやいや! ……仲間の前ぐらい、やせ我慢しなくたっていいと思うんだ」
 無理を諫める充瑠だが、時雨は男の美学を貫く事にこだわり、ドラマでは監督と相談して設定と脚本を一部変更すると、家臣役の立ち回りを増やしてもらって出番を調整する事に。
 「え? 主役の出番減っちゃっていいの?」
 「……この………………タメがいいんだっ!」
 「タメ……」
 「ヒーローは、黙って耐える。このタメが、その後の見せ場を引き立てる。俺は、このパターンが、一番格好いいと思っている!!」
 病院に戻った小夜を除き、撮影現場に付き添ってきた赤黄緑がのけぞるレベルで時雨は力説し、いよいよ本番。
 「殿、ここは我々にお任せを」
 「だが、それではお主らが……!」
 「我らがあのお宝を取り戻すまで、殿はお待ち下され。必ずやりとげます」
 「……わかった。……ならば命じる。――死ぬなよ」
 時雨は家臣に場を任せる主人公を熱演し、ここぞの場面でヒーロー登場からの大ジャンプ。
 劇中劇の撮影風景、演劇論を熱く語る時雨、とメタ風味のお遊び要素を持ち込みつつ、役者としての時雨の美学と日常を鮮やかに描き、坂本監督の生アクション趣味も程よく満たされる、バランスの取れたシーンとなりました。
 監督役の大林勝さんは、確かシタリの中の人だったっけ……などのんびり考えていたのですが、まさか一連のシーンが、クライマックスで下がった顎にアッパーカットを叩き込む為のボディブローだったとは、この時点では夢にも思わず。
 脂汗をにじませながらも撮影を終えた時雨は、楽屋で一人になると激痛に身も世も無く泣き叫び、前回の本物瀬奈と代役瀬奈に続き、序盤から色々とさせてきます。
 「やっぱ痛いんじゃん!」
 そこに隠れていた充瑠らが姿を見せ、優しさなのか、鬼畜生なのか、ちょっと判断に悩みます(笑)
 「わぁぁぁ?! んーーーーー………………痛い? なんのことだ?」
 時雨は頬をひくひくさせながらも無表情を取り繕い、もはや呆れる以上に感心する3人だが、そこへ博多南からの緊急連絡が。
 「都心のM87地区に、邪面師が出現。急行せよ!」
 荒川さぁぁぁん!!
 ……というか、
 坂本監督ぅぅぅ?!
 なにぶん、シリーズのファンと、近作にも堂々参加している監督の組み合わせなので、どちらの犯行なのか見当が付きません(笑)
 「俺は生身でも戦える。ベストを尽くす!」
 充瑠のリーダー命令を眼力ではね除け、戦闘員に立ち向かう時雨だが激痛と作り物の刀では勝負にならずに桃に助けられ……なまくら(の筈)の刀に思い込みのフォースを込めて戦闘員を切り裂かなくてホッとしました(笑)
 「おい充瑠! 今の時雨は完全に俺達の弱点になってる。リーダーとして押さえ込んどけ!」
 「やいタメ! アニキが弱点だって?! 失礼なこと言うな!」
 ここまで基本、パートナー同士のやり取りでキャラを立てていた魔石ですが、時雨を尊敬する青石が、為朝は雑に「タメ」扱いというのが面白く、細かい広げ方が実に鮮やか。
 「弱音を吐けないのはアニキの弱さなのかもしれない……けど、そんなアニキが僕は好きなんだ! だから、アニキに格好つけさせてくれよ!」
 「情けだけで勝てりゃ苦労はしない!」
 今回も冷静に戦力を計算して使えるコマで勝利を狙う黄ですが、遠からずキャラ回でつつかれそうな感じもあり、為朝の「私」の部分がどう描かれるのかは、今から楽しみ。
 「いや……それだ!」
 だが、魔進ジェットの訴えを聞いた赤は、ひらめキング。
 「時雨にはとことん格好つけて貰う!」
 「はぁ?!」
 「殿! ここは我々にお任せを!」
 集中力が高まると戦闘力が増すのか、ノールックで戦闘員を殴り飛ばした赤は、万力仮面を引きはがして時雨の危機を救うと、先程見学したドラマの台詞をそっくりそのまま真似る事で、時雨が格好いいまま待機できるシチュエーションを作り出す!!
 前回、陸上に打ち込む瀬奈のキラキラを守った充瑠が、今回は、「格好つける」事そのものが時雨のキラキラ――生き様――なのだという気付きに至り(魔石の言い分はそのまま、キラメンタルの共感要素でもあるので設定的にも後押し)、今作の重視する要素は「自分らしくある」とは何か、なのかなと思える部分ですが(いずれ充瑠がそれに向き合う事になりそうかなと)、前回とは微妙にキラキラの見せ方を変えてきた上で、充瑠の閃きを「物を作る」だけではなく「状況を作る」事でも表現してきたのが非常に鮮やか。
 「我らがあの宝を取り戻すまで、殿はお待ち下され! 我慢して、ギリギリまで配下に託して、溜めに溜めて、一瞬で決める! ……それが、時雨の格好良さ、だろ?」
 赤の言葉に、考え込んだ時雨の決断は……
 「…………わかった。……ならば命じる。――死ぬなよ」
 うわぁぁぁぁぁ、巧い!!
 思わず叫びたくなる巧さ(笑)
 荒川稔久、アニメ分野での長年にわたる幅広い活躍は勿論として、戦隊シリーズに限っても初参加の『鳥人戦隊ジェットマン』から30年(!)、その間に脚本参加した作品が今作でなんと21作(!!)になりますが、私まだまだ荒川さんの底力を甘く見ていたのではないか、と深々と平伏。
 正直、今作開始前は、荒川さんには期待したいけど約10年ぶりの戦隊メインへの若干の不安があったのですが(ここで荒川さんメインで外すと痛すぎるというのも含めて)……いやまさか、スーパー戦隊に30年関わってきた人が、30年目の作品で30年目のトップフォームを見せつけてくるとは、脱帽です。
 今回、時雨の七転八倒やそれを見守る充瑠らの反応など全体的にコミカル成分高めで、万力を頭にはめて動き回る時雨の画もギャグ寄りなのですが、戦いはあくまでシリアスで命がけのものである、という事をこの一言が効果的に示す、そしてそれは、激痛に苦しみながらもその本音を周囲に見せない事を美学とする時雨が、他者に対して今回初めて見せる本音であり、感情の発露とそれによって引き起こされる関係性の変化が、実に劇的。
 また、充瑠側の言葉だけだと、「おまえの席ねーから」という戦力外通告を劇中劇を用いて巧く言い換える事により、美学にこだわる時雨をコントロールした、という要素が強くなってしまうのですが、同じ劇中劇を用いた時雨の返答に上述した極めて重要な意味が与えられる事により、その印象を上書きしているのが絶妙。
 劇中劇が伏線となる事でやり取りの効果も倍増した上、第1話時点から示されている時雨の時代劇出演設定が、仮面劇に組み込まれる事で『シンケンジャー』オマージュに化ける、というのも鮮やかで、一つのやり取りに込められた多重の意味づけが本当にお見事でした。
 「……御意」
 充瑠と時雨は互いの気持ちを酌み取り合い、反撃に転じた赤黄緑桃は戦闘員を全滅させて万力邪面のハンドルを奪い合うが、それが最後の引き金となって闇エナジーが満ち(この扱いは割と適当な感じ)万力怪獣が地球に出現。
 怪獣が敵に加わった事で一気に不利になるキラメイジャーだが、赤の召喚に応えて魔進が参戦。魔進と怪獣が小さなハンドルを掴んだ赤と怪人を引っ張り合うという絵面は大変バカっぽいのですが、魔進の存在を押し出しつつ、メンバーと魔進が一致団結して事に当たる姿が見事に視覚化されて、相棒関係を強化。
 「みんなー、アニキの為にすまないっスー」
 力を合わせたキラメイジャーはハンドルの奪い合いに勝利し、遂に時雨は万力から解放。
 「後は……――俺に任せろ」
 赤と頷き合った時雨が進み出るシーンもバシッと決まり、ヒーローは、黙って耐える。このタメが、その後の見せ場を引き立てる。俺は、このパターンが、一番格好いいと思っている!!
 「切っ先アンストッパブル! キラメイブルー!」
 敢えてハンドル(万力怪人の手持ち武器)を投げ返して対等の条件で一騎打ち、というのも、いよ待ってましたの展開で、真っ向真剣勝負の末にキラメイブルーは万力邪面を必殺剣で成敗。
 「皆の者、浮かれるのはまだ早い!」
 「殿、参りましょう!」
 赤と青も魔進に乗り込んで、それぞれランドメイジンとスカイメイジンに魔進合体し、キラメイジャーは万力怪獣と激突。
 ……ところで、前回のラグビー怪獣がギラドラス(『ウルトラセブン』登場怪獣)似で、今回の怪獣はアントラー(『ウルトラマン』登場怪獣)似に見えるのは、私がうがち過ぎなだけかもしれませんが、狙ってやっているのか、この先も続けるつもりなのか、少々気になります(笑)
 「みんな……俺の為にありがとな。この5人でなら、なんだって出来る気がするぜ!」
 万力騒ぎ→「死ぬなよっ」→ハンドル争奪戦→「アニキの為にすまないっスー」を経てこの言葉に繋がるのも実に上手く、混成チームの中での立ち位置がもう一つ掴めなかった時雨の、他メンバーとの距離感がグッと縮まると共に、チームとしてのキラメイジャーも一気にジャンプアップ。
 「おぉい!」
 「私たちをお忘れですよ」
 「五人と五体でしょ、あはっ」
 そしてそこから、魔進との絆に雪崩れ込むのも、実にスムーズ。
 「五人と、五体……むむむ…………ひらめキーング!」
 魔進達の言葉に、コックピットの充瑠は10の力を一つにする事を思いつき、みんなで合体だ!
 主題歌をバックに5体の魔進が魔進合体し、ベースのランドメイジンは組み変え無しで、スカイから分離した桃機と青機が外に取り付く、というシンプルな5体合体でしたが……ええと殿……殿はまんま剣なの?! 殿ぉ?!
 合体時にコックピットが一箇所にまとまる描写が無いので、殿を中に乗せたまま魔進ジェットをそのまま叩きつけるという、史上希に見る鬼畜合体が誕生。
 私の中で歴代酷い変形合体上位に入るメガボイジャー(『メガレンジャー』)の3号機(くしくも搭乗者は青)だって、武器になるのは前半分程度――なお、必殺技の度に弾頭として消し飛ぶ仕様――だったのに!
 「「「「「完成! キラメイジン!!」」」」」
 「よーし、五人と五体の底力、見せてやろうぜ!」
 今回も闇に包まれたビル街を背負ってキラキラの光を放ちながら巨大戦が展開し、考えてみると前回も魔進マッハで怪獣の頭をガンガン殴打していたので、痛覚的なものは特にないのでしょうか、石(あったらそれはそれで怖いか……)。或いはやはり、クリスタニアの英霊達の魂で構成されているので、むしろ骨と肉を砕く感触に打ち震えているのか、石。
 キラメイジンは5体の魔進のパワーを次々と発動して万力怪獣を追い詰めると、トドメはキラメイダイナミック。そういえば特に、青の勝利の決め台詞はありませんでした。
 スマートな二枚目顔のキラメイジン、すっきりとしたフォルムは好印象ですが、合体システムの都合(桃機が胸部に付くと緑機が開閉できない)により、5体合体前から顔がキラメイジンモードになってしまうのは、合体のカタルシスを削いでちょっと惜しい。
 万力騒動が終結し、その後に撮影されたと思われるドキュメンタリー後編?で、必要以上にポーズをキめまくる時雨の「変だよね」を皆でからかって、時雨は絶叫。
 「充瑠さんが閃きを現実にした時、それはキラメキに変わる。良いリーダーです」
 その様子を見て博多南と姫様は、5人揃ったチームの結束の高まりを感じるのであった、でつづく。
 予告の「やせ我慢」というフレーズと塚田Pの組み合わせから、ハードボイルド方面に行くのかと思っていた予想はいい意味で裏切られ、時雨はめでたく、虹野明などと同じロールプレイ系のフォルダに収まりました。…………いや待て、ライダーだけど翔太郎もロールプレイ系の仲間といえるので、やはりこれはハードならぬハーフボイルドなのか。
 時雨の見せたい「格好いい自分」と、その裏側をどのぐらいのバランスで見せていくかで、総合的な印象がだいぶ変わってきそうなキャラですが、キャラの土台をしっかりと提示したところから、普段は本音を口にしない時雨の言葉だからこそ(充瑠の働きかけあってなのがポイント)、10の心が一つになる引き金として機能する事に説得力を持たせてのキラメイジン誕生、は鮮やかなクライマックスでした。
 前回に続いてオマージュやパロディを随所に散りばめ、割とお遊び多めの作風ですが、それらを貫く『キラメイジャー』の物語がきっちりと構成されているので気持ち良く見る事ができます。また今回は、坂本監督が太股への執着を封印した上でしっかりと撮ってくれたのがかなり有り難かったのですが、なにか、心の洗われるような出来事でもあったのでしょうか(だいぶ失礼)。
 長年の経験則から油断は全く出来ないものの、まずは非常に順調な滑り出しになりましたが、近年の戦隊だとここからしばらく忙しくなるので、そこをどう乗り越えてきてくれるのか、快走が続く事を期待したいです。
 次回――早くも三日月アーマーの中の人が姿を見せるようですが、OPで既に登場していますし、姫様の立ち位置をハッキリされてくれそうなのは、嬉しい。