『仮面ライダーカブト』感想・第47-48話
(※サブタイトルは本編中に存在しない為、筆者が趣味で勝手につけています。あしからずご了承下さい)
◆47「闇に光を」◆ (監督:石田秀範 脚本:米村正二)
「最近じゃ、すっかりワームの数も減ったな……」
前回の神代剣の戦いは、「指導者クラスも含めてなるべく多くのワームを倒しました」に落ち着き、残党狩りに精を出すカブトとガタック。
「この調子だと、俺達の勝利も間違いなさそうだ」
「いや。……勝負はこれからだ」
「え?」
ワーム殲滅まっしぐらの加賀美、ひより問題とかネイティブ問題とかマスクドライダーシステムの謎とか、まとめて忘れていそうで不安になりますが、思わせぶりな呟きを残す天道は、ビストロに復帰したひよりの背中を押し、
「お婆ちゃんが言っていた。本当に美味しい料理は、食べた者の人生まで変える。おまえはきっとこれから何人もの人生を変えていく事になる」
「おまえの言うことは、いつもデカすぎるんだよ」
「……人間がデカいんだから仕方ない」
は、良いやり取りでした。
渋谷隕石落下後に誕生したワームとZECTの存在について公表されたのに続き、ネイティブが作り出したワーム識別ネックレスによりワーム狩りが進んでいくが、その輸送トラックを何者かが襲撃。
田所班は囮となって襲撃を待ち受けるが、クロックアップ空間でガタックが目にした“敵”は――カブト?!
ZECTはカブトの排除を決定し、天道の真意を確かめるべく敢えて命令を受ける加賀美だが、ZECTはそれだけではなく天道を全国指名手配し……これで風間に助けられたら面白かったですが、事ここに至っても風間の名前はクレジットには無いのでした!
最終回には出番はあるのか風間! それとも第40話が最後の出演になってしまうのか風間!!
なお、なんだかんだと出番の維持されていた影山は、どういうわけか髪の色がくすみ、高熱を出して苦しんでおり(純粋に路上生活が原因の体調不良?)……それを励ます矢車は、「白夜」の描かれたポストカードを見せる。
「見ろ。俺達にも掴める光があるんだ。一緒に行こう。真夜中の太陽を求めて。白夜の世界へ」
ひたすら位置づけ不明で困ったやさぐれ兄弟ですが、その行き着く先、今作がこだわってきた“太陽”のモチーフの使い方として、ここは面白かったです。
「人気者は辛いな……」
その頃、指名手配犯・天道総司はワーム識別ネックレス配布先に姿を現し、“一人だけやたら訳知り顔で天の道を往く天道”や“カブト(天道)vsZECT”など、序盤を思わせる要素を複数持ち込んでいるのは意図的と思われますが、素手の天道が悠々とZECT戦闘員を薙ぎ倒していくのも、序盤の雰囲気。
天道がネックレスを手に取ると、背後の戦闘員を蹴散らしたカブトゼクターが天道の手に収まるのは格好良く……あー、もしかしてこのネックレス、ワームを“感知する”のではなく、ワームを“作り出す”のか……?
あからさまに胡散臭い根岸の動きなど、ネイティブの提供品も真っ当には見えませんが、天道がアクションを起こそうとした時、そこに現れたのは、愛なき荒野を独り彷徨う、ブロークンハート天道。
「ほぅ……まだこの世界をうろついていたのか」
「……僕は……ふ、ふたりも……いらない」
「お婆ちゃんが言っていた。太陽が素晴らしいのは、塵さえも輝かせることだ」
「……塵になるのは……君だぁぁぁぁ!!」
「――変身」「……変身っ」
再びカブトとカブトがぶつかり合い、互いに構える、懐かしのマサカリ。
落下中の瓦礫の上でクロックアップしながら戦うのも初期要素の繰り返しを思わせますが、戦闘中の高速思考で互いの狙いを示すスポーツアニメ演出から、
(だからあえて術中にはまったと見せかけて――)
やる事はハイパークロックアップなので、それは総ての術策を真っ正面から粉砕する純粋にして無慈悲なパワーだよ天道(笑)
「甘いな」
未来へ向けて進化を続ける天道1号が、過去に留まり続ける天道2号を軽々と撃破してみせるのは、常に己を更新し続ける“天道総司の在り方”を示すと共に、「過去」を越えていく「未来」という物語全体の方向性も示してはいるのでしょうが、その出力手段であるハイパークロックアップ――「未来」そのものの象徴でもある――が、劇中の扱いとしてはどんな策を弄そうとも総てを叩き潰す筋肉なので、どうしても身も蓋もない展開になってしまいます(笑)
まあ、それはそれで70年代的ヒーロー性の一面もありますが、無防備な空中でぶった切った闇カブトを「やはりおまえは俺ではない」と捨て置いたカブトは、広場に戻るとネックレスの詰まった段ボール箱を次々に破壊していき、そこにようやく駆けつけるガタックと田所班。
「てんどぉ! 何故こんなことをする?!」
「気に入らないからだ」
「なにぃ? それだけの理由か?!」
「俺に天の道を見るなら、口出しするな」
カブトとガタックが至近距離で睨み合うと、田所のカシラがカブトに向けて発砲。それに対して互いにクロックアップした空間の中でカブトの真意を問い質すガタックだがカブトは何も説明しようとせず、クロックオーバーと共にマサカリで弾いた跳弾が高鳥に命中すると、何故か声をあげて怒る、撃った当人(カシラ)。
ガタックもカブトを非難し、もはや、弾いた弾丸を狙って高鳥に当てるぐらい、当たり前のように出来ると認識されているカブトですが、今更、緊張感に耐えかねて暴発してしまうようなチンピラなわけもなく、カブトに対する無駄な発砲から、自分から撃っておいて跳ね返されたら怒り出すまで、田所さんがあまりに意味不明なのですが、何か明確な思惑があるのかどうか……最近の田所さんは存在が意味不明なので、心配です。
無言を通すカブトはガタックを振り払うと姿を消し、果たしてその真意はなにか……そして、存在感を取り戻そうと躍起になるみっしーが、半死半生で転がっていた天道2号を拾って、つづく。
◆48「光に闇を」◆ (監督:石田秀範 脚本:米村正二)
ワームに襲いかかられる母子を助ける為にしても安易にネイティブになってしまう田所さんも、ワームを撃破後、夫だと思っていたらワームを爆殺された直後の女性に向けて「この人はワームじゃありません」と弁明してみせる加賀美も(今、かけるべき言葉はそうではないのでは……)、冒頭からみんな情緒がおかしい。
……しかしまあこれだと、ネックレスの効果がワームを“作り出す”だった場合、田所や加賀美にも酷いキルマークが付いてしまうから、さすがにそれは無いでしょうか。
「いやぁ、真の英雄ですね、加賀美くんは」
加賀美と田所が気まずい沈黙で佇む中(この二人は切実に、もっときちっと腹を割って話し合った方がいいと思います!)、そこに現れたのは、へらへら根岸。
「僕はね……青臭いと思われるかもしれないけど、真の、平和な世界が作りたいと思ってるんです。人間と、ネイティブの、争いの無い世界。人間と人間の、争いの無い世界。そんな世界が作りたい」
すっかり情緒不安定な加賀美は、理想を語る根岸にあっさりほだされるが、カブトは岬の前でまたもトラック襲撃からネックレスを破壊して回るとクロック逃走し、現場に残ったネイティブの惨殺跡に、加賀美は怒り心頭。
一方、ダークカブトゼクターを手にしたみっしーは根岸と接触し、こちらも怒りのサプリメント投げ。
「もう狸の化かし合いはよしましょうよ。今こいつは、俺の手の中にある。あなたの計画は美しい。……だがそれを完璧にするには足りないものがある。私とならいい取引が出来る」
上司の繰り返す、思わせぶりな聖書の引用や動物たとえ話の解釈に疲れ果て、積もり積もったストレスの限界に達したみっしーは、根岸と密約を結んで内部クーデターを起こすと、加賀美陸を更迭。
そして再び座敷牢送りとなった元鉄仮面――天道2号の正体は、人間から変化させられた人工ネイティブ第1号にして、マスクドライダーシステム開発の為の実験体であり、“悪の組織における改造実験の被害者”要素を物語全体の種明かしと繋げて一個人に集約した結果、ただひたすら可哀想な子すぎて、さ、最終回1話前に持ち出されても、消化しきれないのですが。
「――そして、この俺に擬態させたというわけか」
エリアXの深奥に潜り込み、ネイティブの計画と、天道2号の真実を知った天道は、変身即クロックアップで、天道2号を救出。
「なんの真似だ?!」
「おまえを自由にしてやる」
……完全にネイティブの犠牲者ですし、元を辿れば人間でもあり、ヒーローとして“救う対象”に変質しているのは確かなのですが、つい前回まで「見た目だけ俺に似せた愚物が」みたいな扱いだったところから、他人を傷つけないならこの世界で頑張っていけ、とひよりを引き合いに出して促すのは今作にしても超特急が過ぎますし、だいたい天道が前回ラストで2号にトドメを刺さずに放置したの、どうもそれに対するZECTの反応を見る餌だったぽいのですが……。
とにかく、ネイティブを“邪悪な存在”とする為に、全ての罪業をその身に受けて“超絶可哀想な存在”になってしまった為に蹴り殺すわけにもいかなくなった天道2号は、復讐だーーーと走り去っていくが、それに追いすがるよりも早く、天道の前に現れたのは、目の据わった加賀美率いるZECT部隊。
天道は、ワーム識別ネックレスとして配られているものは人間をネイティブに変えてしまう道具だと今更ながらに説明し、ワーム(敵)を“作り出す”のではなくネイティブ(同種)を“作り出す”事による、35年越しの人類支配計画の理解で良いようですが……そうするとワームの皆さんについては素直に、事ここに至っても割とのほほんとそこら中に擬態して潜んでいた事になってどうにも緊張感には欠け……結局のところワームというのは、“模倣”する事でしか生きられない存在、という事であったのかもしれません。
「正義は俺達にある。俺は……おまえを倒す」
「お婆ちゃんが言っていた。正義とは俺自身。――俺が正義だ」
我が道を進み続ける天道と、聞く耳を落としてきた加賀美は、互いの正義を懸けてぶつかり合い、カブトvsガタックの本気バトルは宿命の決戦として一度やりたかったのでしょうが……最終回1話前にして、雑にネイティブを全力で信じる加賀美・雑に理想の生えてくる加賀美・雑に天道に殺意を向ける加賀美、と《平成ライダー》負の煮こごりみたいな情緒も記憶も人間関係の積み重ねも不安定な雑・雑・雑のオンパレードで、加賀美が完全に、話を進める為の道具と化してしまったのは、とても残念。
「おまえは天のもと、地の道を行くがいい!」
「黙れ! おまえに言われなくても! 俺は俺の道を行く!!」
敢えてハイパーせずにライダーキックの打ち合いに応じるカブトだが、やたら優秀なZECT戦闘員の援護射撃で体勢を崩したところにガタックキックの直撃を受けると、ZECT部隊の追撃に曝されながら施設の爆発に飲み込まれ……天の道を往く男、大爆死?
一方、根岸に迫る天道2号の前では、ネイティブの力を得た三島が変身。
「全人類をネイティブに変える道具として、お陰で私も、最強のネイティブになれた!」
ストレス解消の為に続けてきた筋トレの成果を、今こそ示す時!
バッタ顔のネイティブに変貌した三島はカブト2号を漲るストレングスで蹂躙し、みっしーについては、“これまでの言行に整合性をつける”のではなく“暗躍キャラとしてとにかく悪役の側に回り続ける”扱いとなり、何を目的に動いていたのかはよくわからないけど、とにかく敵! を貫く形に。
白夜の国に旅立とうとしていた地獄兄弟だが、影山がネックレスの作用でネイティブと化してしまうと、キックホッパーによる介錯を望み……え、なにこれ……?
「……相棒、俺達は永遠に一緒だ。……行こう。俺達だけの光を掴みに」
急に影山が始末されると、闇夜に輝く星の光を見つめながら、合わせて矢車さんもさよならみたいな扱いとなり……矢車さんに関しては、荒んでいるところをネイティブに拾われてぐっちゃぐっちゃに人体実験や改造処置を繰り返されて地獄を見た末にキックホッパーになったのだろうか……ぐらいに捉えてはいましたが、結局、キックホッパー誕生の経緯は劇中では全く明かされないまま、“格好いいの素材”として燃やし尽くされ、キャラクターの扱いとしては褒められませんが、強烈なインパクトは残す存在でありました。
今作、多人数ライダーバトルをどう描くのか?? についてはかなり模索のあった作品だとは思われますが、ザビーにしろドレイクにしろサソードにしろホッパー兄弟にしろ、後続も含めてシリーズ他の作品でなかなか類例を見ない見せ方になっているのは、凄いとは思います。
ついでに、前回ラストで負傷した高鳥は、病床に天道印のオムライスが届けられているシーンが描かれ、完全に出てこないのも不自然だが、神代剣亡き今の状況で画面に入れても存在が浮くので困った末に負傷入院させた、みたいな気配は感じられ……というか、前回の跳弾は、純粋にアクシデントだったの天道?!
カブトを葬り去ったガタックだが、加賀美陸がワームの内通者扱いを受けて拘束されたと連絡を受けると、輸送車を襲撃して陸の身柄を強奪し、つい先ほどまで「俺達(ZECT)が正義だ」と主張していたのに、その正義に全開の暴力でドロップキックを叩き込みに行き、情緒と正気の蛇行が止まりません。
加賀美は救出した父から、根岸の推し進める全人類ネイティブ化計画と、35年もの間ネイティブに面従腹背していたのはマスクドライダーシステムに仕込んだ切り札である暴走スイッチを隠す為だったと明かされ、人類を支配しようとする存在から未来を取り戻す為、辛苦に耐えて子供達に運命を託した男達の執念、みたいな背景が浮かび上がるのですが…………この1年間の戦いの大半、7年前に文字通りに降って湧いたトラブルだったみたいな扱いになって、目が点。
実は真の敵が……にしてもあまりに極端ですが、ネイティブがマスクドライダーシステム開発を進めていたという事は「いずれ(敵対関係にある)ワームが地球にやってくる」事は予測済みだったと捉えるにしても、そのネイティブとワームの関係が劇中では全く語られないので、表に出ている情報だけだと、35年前から始まった「人類vsネイティブの暗闘」と、7年前から始まった「人類&ネイティブvsワームの抗争」の繋がりがどうにも弱く、「ネイティブvsワーム」の構図について、劇中でもう少しハッキリと諸要素に関連づけする工夫は必要であったように思います。
暴走スイッチが入ったが最後、人類の希望としておまえはネイティブどもを最後の一匹まで屠り尽くす殺戮の化身になる予定だったんや、と父の本当の想いを加賀美が知る一方、天道は瓦礫の下で目を覚ますが、その手は光へと届かず、果たして太陽はこのまま闇に沈んでしまうのか……次回――最終回。