『仮面ライダーBLACK』感想・第23話
◆第23話「マルモの魔法の力」◆ (監督:蔦林淳望 脚本:鷺山京子)
夜道で酔っ払いが乗り捨てた自転車に襲われる、コミカルとホラーの間ぐらいの導入に番組全体の雰囲気作りへの迷いが窺えますが、
「アンモナイト怪人の念動力、見事だ」
「滅び去ったアンモナイトの、生き残った人間への憎しみが乗り移り、あらゆる物体は凶器となって、人間に襲いかかるのだ」
…………逆恨みのバーゲンセールでした。
アンモナイトが絶滅したとされるのは中生代白亜紀と新生代古第三紀の境目、約6550年前のK-Pg境界の大量絶滅の際だそうなので、アウストラロピテクスでもそこから6000万年以上経たねば地上に現れず、報復対象について、もう一度ゆっくり、皆で話し合っていただきたい。
念力で操ってるんでしょ? いやいやあれは、同族の怨念を乗り移らせているのだ!
――果たしてそれは、超能力なのか怨念なのか。
ゴルゴム上層部でも見解がわかれるアンモナイト怪人により、街中で、無機物が宙を浮いたり走り出して市民を襲うパニックが巻き起こり、空を飛ぶ郵便ポストの図は、あまり見ない気がしてちょっと面白い(笑)
無駄に格好良い前転でセールのワゴンを受け止めた光太郎は暗躍するアンモナイト怪人の姿を目撃して後を追うとBLACK変身。
次々とドラム缶に襲われるが、怪人の念動ビームが頭部から出ている事に気付くとパンチを叩き込み、被っていた貝が派手に飛んでいく、一大事。
本体から切り離された頭部は小型化すると動物好きの少年に拾われて「マルモ」と名付けらる一方、アジトに戻った首から下は粛清されそうになるが、凄いフラッシュと共にビルゲニアが現れて謎パワーで怪人の頭部にフルフェイスの鉄仮面を与え、そうやってすぐ暴力に訴えるの軽率で良くないと思いまーす、と隙あらば煽っていくスタイルで存在感を出していきたい。
アンモナイト怪人は頭部の超能力回路、ボディの戦闘回路、二つの脳を持っている事を口にすると、「そうだったそうだった」とビルゲニアと神官ズそれぞれに台詞を振り分けて説明した結果、ゴルゴム上層部の仲良しゲージがちょっぴり上がりました。
この調子で頑張っていけば、社食で一つのテーブルを囲む日も来るかもしれません。
「おやおや今日の日替わりは、A定食に決まっているでしょう。ここのメンチカツのボリュームを知らないんですか」
「馬鹿め。A定食のおかずがメンチカツの日は、ラーメンセットに餃子が二つ、おまけに付いてくるのを知らないとは片腹痛い」
……頑張れゴルゴム!
一致団結して世紀王ブラックサンを倒すんだ!!
ダロム「片方を失った以上、残った脳の力は2倍になる筈」
ビルゲニア「かくなる上は復讐の鬼となり、失った頭を取り戻し、仮面ライダーを倒すのだ!」
…………頭を取り戻したら、ただのアンモナイト怪人に戻ってしまうのでは?? と疑問は尽きませんが、とにかく、2倍になった筈の戦闘力で裏切り者のブラックサンを倒すんだ!!
その頃、見た目グロテスクなマルモを捨てるよう母親に言われた少年の「お母さんなんか嫌いだ!」に反応して念動力が発動し、ゴルゴム怪人の一部ではあるが、マルモには自ら他者を害する闘争心や善悪を識別する能力は備わっておらず、ただ少年の言葉に反応して超能力を発揮する存在になっている、いう現在位置の見せ方がスマート。
少年が空腹を口にするとタコ焼きが生じ、超能力も2倍になった結果、アポート能力に覚醒した模様のマルモと、子供らしい無邪気さで「マルモ、お前は魔法が使えるんだね」と解釈する少年が交友を深めていく一方、両者の身辺には失った頭部を探すアンモナイト鉄仮面が近づいていた。
「どこだ……頭はどこだぁ!」
頭を探して彷徨い歩く怪人の姿はホラー映画文脈といえますが、ゲストが少年な事もあってか時刻は真っ昼間!
声がお馴染み西尾徳さん似(御本人?)の為、迸る70年代コミカル怪人感!
タコ焼きを頬張る少年の背後から、トタン板を蹴り飛ばして姿を見せるも……真っ昼間! ついでに快晴!!
とホラーには向かない要素が多すぎて、どうも怖くなりません(笑)
「頭を返せぇ!」
「頭?」
アンモナイト鉄仮面に追われる少年を助けた光太郎は怪人の狙いを知り、小動物に優しい少年・その優しさに応える(?)アンモナイトヘッド、の描写でゲストの行動や心情を飲み込みやすくした上で、ゴルゴム怪人の魔手、ゴルゴム絶対許さないマンである光太郎の介入、と複数の思惑がぶつかり合って「この後どうなる?」にしっかり興味を持たせるのは、子供ゲストの扱いが達者な鷺山さんらしい筆さばき。
80年代初頭の《ライダー》《戦隊》ではもう一つの仕事ぶりでしたが、この後、90年代前半までの《メタルヒーロー》シリーズにおいて高い安定感を見せる鷺山脚本の文法の綺麗さが、今作時点では既に発揮されているのは、有り難いところ。
少年と追っ手の事情を把握し、坊主、悪いようにはせんからそいをこっちに渡すんや、と持ちかけた光太郎だが、
「お兄ちゃんマルモを守ってくれるの?」
という問いかけに言葉に詰まるのが、ぐさっと来ます。
こいつは信用ならないワルい大人だ、と警戒を露わにする少年に真っ向勝負で説得を試みるも光太郎は逃げられ……と思ったら普通に追いつき場所を変えて事情を聞き直すのは変な繋ぎになりましたが、マルモを拾った経緯を説明した少年が、死んだ飼い犬を生き返らせてくれるようにマルモに頼み、マルモが友達であると光太郎に理解してもらおうとする、だいぶ怪しくなる雲行き。
あくまでも無垢な優しさから、少年が気軽に禁忌へ踏み込んでいくのもドキドキさせますが、少年の求めるままにポチの蘇生に挑み、世界の摂理をねじ曲げようとするアンモナイトヘッドは全身から煙を噴き上げて地面に落ち、その姿に光太郎と少年の心が動くのは、上手い流れ。
(こいつは自分の命を捨てようとしている。シゲルくんの為に)
「もういいんだ。マルモ、やめろ、やめろ!」
ポチのお墓が土の下でビクビク蠢くのが地味ながら今回一番のホラーでしたが、少年の言葉に蘇生は中断され、マルモを抱きしめる少年の想いをなんとかしてやりたいとは思う光太郎だが、そこを再び鉄仮面が襲撃。
光太郎は少年を逃がすと女声スキャットに乗せて変身し、はじめに光あり、仮面ライダー・BLACK!
(戦闘能力が遥かに向上している!)
鉄仮面は頭突きで巨大な岩石を真っ二つにしてみせ……私、ヒーローの背景に用意された、如何にも壊れそうなオブジェクトが思った通りに壊れる瞬間がとても好きです。
一方、マルモを抱えて逃走した少年の前には白塗りビルゲニアが現れ、二話連続で子供をさらう役回りとしては、やはりこのぐらいの化粧はしていて丁度良い感じ。
ライダーチョップで鉄仮面を叩き割るBLACKだったが、ビルゲニアが現れると奪い返した頭を怪人にパスし……二倍の戦闘力と二倍の超能力を失い、アンモナイト怪人、ただの怪人に。
ビルゲニアは満足して姿を消し、BLACKには空飛ぶ岩石が迫り、当初の作戦はもはやすっかり忘れ去られ、BLACKを踏みにじる怪人だが、バトルホッパーを呼び出したBLACKは主題歌ブーストで反撃に転じ、バイクの車輪で岩石リターン!
「許してくれ! シゲルくん!」
前回の面と向かった超正統派人質事件に続き、今回も仮面ライダー力を問われる事になったブラックは、躊躇タイムゼロのライダーパンチそしてキックを放ち、悪いのはゴルゴムの心だ!!
アンモナイト怪人が爆散すると、キックの拍子に再び吹き飛んでいた頭部は、EDアレンジの切ないBGMの流れる中、少年の前で消滅。
(シゲルくん、許してくれ……君のマルモを、守ってやれなかった)
ヒーローに葛藤の要素を与えてはみたものの容赦なく処理されましたが、少年の想いを出来る限り汲みたいという意識は道中で垣間見えたので、「躊躇ゼロの切り替えの早さ」よりも「やむを得ない場合の決断の早さ」の印象を強めた上で、哀しみと自責の念を背負っていくその姿は、若く、青い、仮面ライダーBLACKというヒーローらしい着地になりました。
上ではつい「悪いのはゴルゴムの心だ!!」と書いてしまいましたが、どちらかといえ自責の意識を強く感じるのは、70~80年代よりも、00年代以降のヒーロー像に寄っており、守ろうとする人間の中にも積極的にゴルゴムに魂を売る者たちの姿が描かれる中、南光太郎が背負っていくものが、そのまま光太郎を押し潰す重荷と化すのか、或いは独りで乗り越えていくものになるのか、それとも共に背負う者が現れるのか……といったあたりは今後気になってくる要素。
東映名物:勝手にお墓が建立されて、少年をなぐさめる光太郎。克美と杏子が拾ってきた犬を少年に預け……2026年の今見ると、公園に勝手にペットのお墓を作ったり、どこで拾ってきたのか不明な犬を少年に押しつける女たち、といった時代の大らかさは少々ノイズになりますが、“生き物の生と死――その不可逆性”に触れる事で、間接的に少年の「成長」を描くのは綺麗に収まりました。
ゴルゴム側を軸に考えると、アンモナイト怪人の怨念設定や最初の念動騒動が前振りだけで消滅している部分は疵といえますが、個人的に怨念設定は大変理解しづらかったので、むしろそこから切り離してくれたのが良かったと思います(笑)
ナレーション「本当に強いのは、命あるものをいとおしむ愛の心なのだ」
まとめに入るナレーションさんから、ラスト、物思う表情の光太郎の画! に持ち込むと、上昇の止まらない二枚目力で大体締まる、という気付き。
次回――克美、いよいよヒロイン戦線に殴り込み。