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ブラックホール・レジェンダリー

仮面ライダーBLACK』感想・第24話

◆第24話「女子大生の悪夢」◆ (監督:小笠原猛 脚本:山口竜)
 池の畔でデート中、車の中でいい雰囲気になったカップルを襲う河童!
 ……じゃなかった、半魚人!
 ホラー映画丸出しの導入で、男の首を絞め、車の屋根を引き裂き、窓ガラスを砕いた半魚人は女性を誘拐していき、巷で続発する、女子大生誘拐事件。
 番組史上初、克美のキャンパスライフが描かれ、ダンディな大学教授・タカヤマ役は、後の『クウガ』で「五代雄介にサムズアップを教えた人」である神崎先生を演じる事になる、井上高志さん。
 ダーウィンの進化論に疑問を呈する教授は、「シーラカンスは人類以前の素晴らしい知的生物」だとキまった笑顔で言い出し、その正体は、ゴルゴムの改造手術を受けて人間と怪物の間を行き来する、半魚人もといシーラカンス怪人。
 ……なのですが、ゴルゴムの信奉者にとって“怪人”となる事はこの上ない栄誉の筈なのに、自信満々なダロムの中途半端な改造も、薬を飲んで人間の姿を維持しようとする教授も、その薬を取引材料に教授を手駒に使う3神官も、何から何まで様子がおかしく、頭の中でレッドシグナルが回転を始めます。
 半魚人と化したタカヤマ教授は、ゴルゴムの女戦士軍団の素材とするべく女子大生を次々とさらっており、その標的とされる克美。
 特に悪いと思っている様子は見えませんが、教授の授業には毎回遅刻しているらしい克美!
 際作サイドの意図としては恐らく「光太郎と杏子を気遣ってマリン喫茶に顔を出すので遅刻している克美」なのですが、それは別に苦学生みたいなアピールにはならないよ克美!
 完全に舐められているタカヤマ教授ですが、この辺り当時の「大学生」イメージが反映されている部分もあるかもしれません。
 …………まあ今回のエピソードはこの後、克美の大学生活描写や教授のシーラカンス陰謀論など吹けば飛ぶようなレベルで奈落の底めがけて地殻を突き破っていくので、何もかも軽いジャブです。
 夢かうつつか、克美の寝室を見つめる怪人という極めて古典的な「美女と怪物」のシチュエーションが展開し、喫茶店に顔を出すも体調不良で倒れた克美は病院に運び込まれるがゴルゴムの魔手に落ちてしまい、意識を失った克美が垂直の壁をくるくると回る映像はなかなか面白いのですが、意味はさっぱりわかりません!
 どったんばったん壁の上を転がる克美は光線まで放ち……恐らくこれも、エクソシスト物みたいなシチュエーションをやりたかったのではと思われるますが、さすがに克美が光線を放つのはオカシイので、身に纏っていたシーツの正体がシーラカンス怪人だった事になり、それも当然オカシイのですが、“やりたい画/状況”に合わせて敵の作戦や能力をこしらえるのではなく、“やりたい画/状況”だけがあって前後の脈絡も辻褄も合わせる気が見えないので、誘拐の標的だった筈の克美は壁を転がるし、シーラカンス怪人がシーツに化けて重力と光線を操るしで、光速のビジョンがハイパーゼクターをアルティメットメイクで召喚できそうな勢い。
 暗い病室内でカラー照明をグルグル回す映像はシンプルに目と脳に痛く、BLACKが変身すると怪人は克美をさらって逃走。
 克美の言葉を手がかりにその行方を追う光太郎は、やたら巨大なタカヤマ教授の研究所に忍び込むと檻に閉じ込められた女性たちを発見し、ブラックサンのフリーランス宣言以降、著しい戦力不足に悩むゴルゴムの女性戦士改造計画を知る事に。
 戦闘員ポジションの存在しないゴルゴム、光太郎に襲いかかる白衣の助手たちは、ひとまず精巧なロボットということで処理され、銃撃をかわしながら地下通路に逃げ込んだ光太郎に、投げ技を仕掛けられた拍子に腕がもげてしまうロボット、不良品なのでは……と思ったら、白衣が脱げるといつの間にか腕が生えていて、大変困惑(笑)
 怪力で光太郎を羽交い締めにするロボットだが、首を掴んでの投げ技を受けると、胴体のところからポキッともげてしまい……やはり、不良品なのでは。
 「君は、シーラカンスの細胞と合体し、宇宙で最も美しい、ゴルゴムの女戦士として、生まれ変わるのです」
 ジャッカー電撃隊みたいな事を言いながらタカヤマ教授が克美に迫る一方、相手がロボットだとわかってからも何故か変身せずに逃げてばかりの光太郎は、偶然から隠し扉を通って地下の一室へと入り込むが、そこではゴルゴム印の制服を身につけた5人の少年たちが待ち構えていた!
 ところが彼らの正体は、来たるべきゴルゴムの世界の為、11歳の時から成長停止剤を飲まされ、地下施設でモルモットとして飼育されてきた精神年齢21歳の若者たちであり、突然、ここまでの流れと全く別の非道な人体実験が放り込まれて、怪奇「美女と半魚人」も陰謀「ゴルゴム女戦士計画」も全て霞んでしまい、本筋の味付けをアクセントの香辛料で軒並み吹き飛ばす、素人の思いつきみたいな組み立てに頭がクラクラしてきます。
 10年洗脳教育していた筈が、全くゴルゴムに忠誠を誓っていないのはまだ「大丈夫じゃないゴルゴム」で通らない事も無いですが、少年らが最初から光太郎に協力的な理屈もさっぱり語られないまま(だいぶ重要なところなのですが……)、女性たちの救出の為にロッカーから揃いの武装を取り出して構えるくだりにも飛躍が激しく、泥の海に浮かぶ断片が作り出していく混沌という名の闇鍋。
 ……それこそ、ここまでの違和感と継ぎ接ぎだらけの場面の数々、全て往年のC級怪奇映画などに元ネタがあるオマージュです! みたいな方がまだ筋が通りそうですが、元ネタがあれば良いとか悪いとかいうレベルに達していない、“物語”を成立させる為の最低限の選択も剪定も何も感じられない低水準になっており、偉い人の身内が書いた箇条書きを渡されて、泣きながら出来る限り映像化した、みたいな出来。
 5人の案内で光太郎が囚われの女性たちの解放に向かうと、寸前まで(光太郎らが移動を開始してからも)改造手術用の寝台に乗せられ、サスペンスを煽られていた克美が今度は処刑場の牢屋の中で発見され、まがりなりにもメインディッシュとして煮込まれていた食材が床に叩き捨てられて、もはや誰が何をどう調理していて、どんな料理がテーブルに出てくるのか予想もつきません。
 「やはり貴様ゴルゴムか!」
 「ふふふふふ……ここまで来た君の勇気を讃えて、あの娘たちは君に贈呈しよう。その代わり、南光太郎、ここが貴様の墓場だ!」
 高笑いしながら現れたタカヤマ教授は、作戦の全面放棄を宣言すると光太郎に牙を剥き、今、ここに欲しいのは、天の道を往き総てを司る男。
 ――お婆ちゃんが言っていた。誰の手にも負えそうにない闇鍋が出来上がってしまったら、最悪カレー粉を放り込めばなんとかなるかも、って。
 「タカヤマ先生……」
 「克美くん、よく見ておくがいい。これが私の本当の姿だ」
 両腕を振り上げた教授は、電光と爆発の中でシーラカンスへ怪人と変貌し……脚本がここまで23話のBLACKを見ずに書いたのではないか、というぐらい独自の味付けを繰り広げて多重衝突事故を引き起こしているのみならず、タウリンとマンモス以来、作品に合わない感はずっと出しているものの、今回で5本目となる筈の小笠原監督の演出もタガがすっかり行方不明で、ドリンクバーで悪ふざけして作った混合液みたいな味がしてきます。
 ゴルゴム少年兵がビームピストルで怪人を撃つと、光太郎の指示で女性たちを逃がそうとするもスムーズに行かない内に、怪人と取っ組み合っていた光太郎が投げ飛ばされ、少年メンバーの一人がシーラカンス光線を浴びて絶命。
 またも作風や話の流れ・容量と無関係に、「非業の死」「託される思い」の戦死者イベントが投げ込まれ、カレー粉が見つからないまま、出来合いの具材が生煮えで追加されていく鍋からはまぶたを閉じても目が灼けそうな黒煙と異臭が噴き上がります。
 「ゴルゴム……許さん!」
 ようやくギャラリーが居なくなったので光太郎は変身し、主人公が正体バレを気にしている間に被害者が出てしまうのがまず最低最悪ですが、
 この期に及んで、皆が逃げていないので変身しない光太郎も、
 その間を稼ぐ為に急に動きの鈍くなる怪人も、
 何もかもが酷すぎて……これ全部、克美の見た悪夢とかでしょうか(サブタイトル回収)。
 そもそも、うっすら光太郎=BLACKと気付いている素振りのある克美が先頭に立って皆を逃がすべきなのですが、どういうわけかその場に立ち止まって光太郎の名を叫び続けるヒロインムーヴを行うも克美は光太郎のヒロインではないので全くの無意味であり、何が悪夢って、話の出来が悪夢。
 パニック状態のリアリティといえばリアリティですが、ここで必要なのはレギュラーキャラとしての存在感を出す事であり、ゲストの少年たちを優先してレギュラーキャラの株価を無駄に下げるのは、今後のストーリー展開への配慮が感じられない点でも大変いただけません、
 エピソード個々の出来不出来は当然あるも、画の見所は毎回それなりにあり、話のテンポは全体的にそこまで悪くなく、なんだかんだとこれまで最低限のクオリティは保ってきていた今作ですが、隙間バイトに任せた厨房が大炎上して、抜けた底が見えない大大災厄。
 謎の光線技を次々と繰り出すシーラカンス怪人(の雑さも本当に酷い)に苦戦するBLACKは、大爆発でトンネルから弾き出されると、それまでの苦戦など無かったかのように急に元気に太陽パワーをチャージし始め、トンネルの中から無防備にのそのそ歩いてきた半魚人は、ここまでの一方的優位など無かったかのようにライダーキックの直撃を受けて一撃で倒れる、最後のクイズに正解すると100万点! 方式で消し飛び、だいぶ改善されてきていた殺陣も、ぐっちゃぐちゃ。
 シーラカンス怪人が吹っ飛ぶと研究施設も派手に吹っ飛び、後日――光太郎は4人の少年たちと固く握手を交わして笑顔を向け、最終的には、恐らくこの子供たちを出すなんらかの都合があったとでも思わないとやっていられない気配を感じる作りですが……
 ナレーション「ゴルゴムの戦士として飼育されていた、少年たちの悪夢は消え、元の、明るい普通の少年に戻った」
 え・え・え。
 幾らなんでも無理がありすぎますが、お品書きまで「女子大生」から「少年たち」に書き換えられ、解放された女性たちの姿は一切出てこず、目が点を通り越して白色矮星になりそうです。
 ナレーション「しかし、仮面ライダーと共に、命を懸けて戦った記憶は、少年たちの心に、いつまでも残るだろう」
 劇中でハッキリ「体は子供に見えますが、僕たちの年齢は成人に達しています」と言わせているのに、何故かナレーションさんが見た目通りに「心も少年」扱いしてゴルゴムの支配から解放されて良かったね! で全てを済ませようとしており、いや、むしろ、そういう事にしておいた方が世界は平和なのか……? と、見ているこちらの度量が問われ、このまま黙ってお勘定を済ませて店を出て行くのが礼儀のような気さえしてきますが多分違う。
 なんというかまあ、この手の脚本家の出入りが激しいタイプの作品において、まるで聞き覚えの無い名前が出てきた時は危険サインとして相応の心構えはしていたのですが……想像を絶して遙か後方に置き去りにされる内容でありました。
 個人的に、あらゆる点でクオリティが壊滅的なエピソードとして私の中で一つの金字塔となっていた『ブルースワット』第44話「虫歯の電脳戦士」(監督:小西通雄 脚本:宮下隼一/荒川龍)に匹敵、或いは越えてくる出来で、めでたく、闇の殿堂に入れて飾っておきたいと思います。
 次回――今回は本当にお休みで良かったビルゲニアが専用バイクを開発! ひとまず予告のバイクアクションの絵は凄かったので、切実に盛り返してほしい。