『恐竜戦隊ジュウレンジャー』感想・第8話
◆第8話「恐怖!瞬間喰い」◆ (監督:東條昭平 脚本:杉村升)
5キロ太って節食中のバンドーラ様、地上で目にした家族団らんの食事風景が憎らしい! と鉄兜を被った巨大な豚の頭から手足が伸びている、実に珍妙かつインパクト大なデザインのドーラキルケを送り込み、このデザイン(一種ゆるキャラ感)の堂々実写怪人化が今回最大の見所でしょうか(笑)
ブタブラザーによる目にも止まらぬ瞬間食いの被害に遭って餓死寸前の親子の描写がやたらめったらえげつなく、家族揃って食事するのが幸せと言い切っていた一家が、その食卓が原因で崩壊していく「子供を標的とした幸福から悪夢への転落」路線の一貫は今作ここまでの良いところ。
主要視聴者層の共感度の上昇を意識しているかとは思いますが、ここまで子供ゲストとの絡みが続くのは、《スーパー戦隊》シリーズとして、空前絶後なのでは。
標的とされた一家の子供・守と知り合っていたボーイは、不審を感じて「ビデオで隠し撮りしたんだ」と某導師のような事を言い出し、その映像に映っていたのは、目にも止まらぬスピードで動き回る豚頭。
原典は、“豚に変える側”の魔女であるキルケですが、今作においては、約2000年前にギリシャに現れた怪獣キルケとしてダイノ伝記に記されており、2000年前が神話と接続されたぞ『ジュウレンジャー』世界(笑)
ダイノ伝記により魔獣キルケの弱点となる薬草を知るジュウレンジャーだが、守一家の食卓で満足しきれなくなったキルケが街に繰り出すと飲食店を食い荒らして不和をまき散らし、普通にキルケを野に放つだけで、一ヶ月ぐらいで日本を壊滅状態に追い込めそうな勢いです。
やむなく対抗策の無いまま飛び出すジュウレンジャーだが、コミカルな見た目とは裏腹に高い戦闘能力を見せる豚頭に手も足も出ず、登場5話目にして食べられてしまう伝説の武器(笑)
あんなに熱心に口説いたのにーーーーー!!
ア○ラスのRPGばりにまたも序盤で全滅しかけるジュウレンジャーだが、なにやら礫のようなものが飛来してキルケの動きを止め、これはもしや、空腹に耐えかねた地球人による《投石》?! と思ったら、5人を助けたのは、華麗にクラブを操る奇妙な老人の、森の妖精流ゴルフ殺法。
「なんの策もなくキルケに立ち向かうとは、まだまだ若いのう」
人を食ったような態度を取る老人の正体は、バーザの旧い友人だという妖精ノーム。窮地を救われた5人はキノコの世界に放り込まれ、ノームの持つ薬草を手に入れる為に課された大食いゲームに挑んで食事をむさぼり食うが、続々ギブアップ。
守少年の為、一人踏ん張るボーイを目立たせたい意図だったのでしょうが、どちらかというと「幾ら正義の為でも、限界はある……」とリタイアしていく仲間たちが情けなく見えてしまって困ります(笑)
だが完食目前、最後に苦手なニンジンが残ってしまい……
「駄目! 俺、ニンジン見ると、目が回るぅ……」
「そんなこと言ってる場合じゃないでしょう! 守くんを助ける為よ。食べて」
テーブルに背を向けるボーイの眼前にニンジンを突き出すメイ、残ったニンジンの1本ぐらい他のメンバーが頑張れと思うのですが、チームワーク、とは。
覚悟を決めたボーイは思い切ってニンジン(見た目も効果音もまるっきり生ですが、恐竜人類なので問題ありません)に齧りつくとなんとか完食を遂げ、何故か勝ち誇るゲキ。
One for all,all for one.
仲間の功績は、リーダーの功績です。
This is チームワーク!
ところが再び皿の上にニンジンが現れ、ぎょっとする一同だが、それはボーイの心意気を認めたノームが贈った対キルケ特効の薬草。切り札を手に入れたジュウレンジャーが現世に戻ると、飲食店の店主たちがキルケを袋だたきにしようと徘徊しており、MAY DAY! MAY DAY! ……どうやら現生人類には、恐竜人類の血が入っている模様です。
ジュウレンジャーが薬草入りのサンドイッチをキルケの口に放り込むと、内部で爆発して伝説の武器が吐き出され、空腹となったキルケの体がしぼむのは、面白いアイデア。
弱体化したキルケを巨大化しようとするバンドーラ様だが空腹で力が出ず、ハウリングキャノンでキルケが木っ端微塵に吹き飛ぶと、街には平和と家族の団らんが戻り万事解決して、つづく。
改めて、試練を前にジュウレンジャーがチームワークを見せ直すわけでもなく、ボーイのニンジン嫌いが克服されるわけでもなく、入れた要素がぴたっと収まりきらず、いまいち消化不良なエピソードでした。怪人のデザインはインパクト絶大だったのですが。