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こわれたしげるくん

『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』感想・第4話

◆ドン4話「おにぎりのおに」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:井上敏樹
 「わはははははははは! 勝負勝負!」
 いきなり狂戦士と化したドンモモのフレンドリーファイアを受けた家来どもは次々と死に戻りし、はるか、初めての水落ち。
 屈辱にまみれ、桃井タロウの真意を確かめてやるとシロクマ宅配便に向かうも、あかりどろぼうの余波により休業しており、やむなくはるかは、呪いのサングラスをかけて謎の囚人の元を訪れる。
 「どうやら君はまだ、タロウを理解してないようだな」
 疑念と不満を浮かべるはるかに対し、謎の囚人は優秀すぎるタロウの幼少期について語りだし…………これは、ただの親馬鹿(爺馬鹿?)トークなのでは。
 この人の言う「跪いて忠誠を誓え」って、何かの発動条件だとばかり思っていたのですが、実態は、「下賤の民どもはうちのタロウに跪いて忠誠を誓うのが当然、わはははははは!」意識な気がして参りました。
 囚人がタロウ情報を好きなタイミングで小出しに出来るのは少々ズルい作劇ですが、子供の頃から万事に優れた万能超人だったタロウは、人々の幸せを願い全力で尽くそうとする(非人間性を裏打ち)反面、アドバイスされる側の感情を全く斟酌しない余計なお世話マシーンとして成長してしまい、結果として付近の住民から拒絶される事に。
 だが、シュプレヒコールを楽しい祭と受け止めるタロウ本人のメンタルが強すぎた結果、桃井家が団地を出て行くのではなく、桃井家を残して団地がゴースト化してしまい……事ここに至って――人と人の繋がり(縁)が切れた時――タロウは自分がやり過ぎていた事に気付いたのだった。
 あまりにあまりの成り行きに目を白黒させるはるかだが、囚人は不意に口をつぐむ。
 「面会時間が終わった。今日はここまでだ」
 「にゃぁっ?!」
 絶妙なリアクションで部屋を叩き出されたはるかは地面に転がり、扱いが、とても、雑です。
 一方、職を失ったタロウは派遣社員(?)としてフェズントコンサルタントで働く事になり、雉野の同僚となると、コンビを組んでおにぎり専門店の経営立て直しを任される事に。
 店主のおにぎりを80点と評したタロウは、おにぎり道を極める食べ歩きの修行へと店主を送り出すと、全力でスタッフを鍛え直していき、Aパートの間、怪人の姿が影も形もありません!
 「言葉とは心の声。……俺には嘘の意味がわからない。駄目なものは駄目」
 囚人の回想からも、ヒトとしては何が歪み欠けている事が示されたタロウですが、心に思ったことをそのまま口にする事しか出来ない――許せないタロウが、この先ヒトに近づいていくのか、それとも隔絶した存在であり続けるのかは、興味を引かれるところ。
 そんなタロウの真摯な姿勢に雉野が感化され始めていた頃、はるかと高等遊民・猿原は、道路に飛び出した子供とその母を咄嗟にアバターチェンジで救った事からお互いがオニシスターとサルブラザーである事を知り、揃って変な連中だけど目の前の人を救うのに持っている力を使う事を躊躇わない姿を見せてくれたのは、良かったポイント。
 二人は、ドンモモ=桃井タロウである事も共有すると、いっけん頭のおかしいドンモモの攻撃は、PvPによるドンモモ流パワーレベリングだったのではないか、と好意的に解釈。
 それならば今度ドンモモが出てきたら二人で力を合わせて戦いを挑もう、と方針をまとめて生身で格闘の訓練を始め……つまり、兜割りに成功したら合格なのでしょうか!!
 一方、雉野は何をやっても駄目だった自分を「変えたいんだ」とスタッフよりもよほど真面目にぞうきんがけに励み、その雉野を見て、やる気の無かったスタッフたちも前向きに動き始め、桃井タロウを基点に「変化」が広がっていく、手堅い作り。
 ところが、おにぎり食べ歩き修行を続ける店主の執念が黄金ピラミッド型の神霊を呼び込んでしまい……「変化」が必ずしも良い方向に進むとは限らない事が盛り込まれたのが今後の物語にも影響を与えていくかはなんともですが、鬼気迫る表情で、店主は帰還。
 「……掴んだぞ。おにぎりの……真髄を……!」
 そして、試食に挑んだ桃井タロウの採点は――
 「……見事。日本で二番目においしいおにぎりだ。99点」
 だが日本じゃあ二番目だ!!
 『快傑ズバット』パロディが正面から盛り込まれ、今回の怪人が超力鬼なので、『オーレンジャー』に登場した三浦参謀長を演じた宮内洋繋がりなのでしょうが、今後敵サイドのテコ入れに、頭に風車みたいなもののついたズバット仮面とか出てこないとも言い切れず戦々恐々。
 タロウの握るおにぎりを口にした店主は、その究極の美味に衝撃を受けて店外に飛び出すと、道行く人々の口に無差別におにぎりを放り込む超力鬼へと変貌し、2月2日、うちのおにぎりを不味いと言ったのは貴様か?! 貴様かーーー?!
 それを追いかけた雉野はキジブラザーへと変身し、一同召喚されての戦いを頭上から見下ろす青白茶色。
 「奴らの武器で倒すと、ヒトツ鬼は元の人間に戻るようだ」
 「それじゃあ無意味ね。欲に満ちた者は、消去しないと」
 期間限定の「一月」だったらどうしよう、と字幕で文字を確認しましたが、怪人ポジションの固有名詞で、「人憑き」とかかっている模様。
 ドンブラが「元に戻す(救う)」のに対して、ソノーズが「消去する」なのはメタ的な含みもありそうですが、ここまでの台詞のあれこれからすると、欲望が一定の値を超えた人間がヒトツ鬼と化し、ソノーズがそれを消去する事で何らかの意味で世界を調整しているような構図が浮上(サイケ人間がどちらにも従っているのは、現状の謎ですが)。
 ソノザがスター仮面に変身すると眼下の超力鬼に躍りかかり、デリート寸前にこももロボが割り込むと烈車のパワーで翻弄するのは、今作の特色が出て新鮮で面白い画となりました。
 そしてやってくる、神輿に乗ったモモタロウ。
 「こっちも出たぁ……」
 高笑いするドンモモはスター仮面へと力強く切りかかり、回し蹴り→剣を槍で受け止められる→即座に後方にローリング、のスピーディなアクションが格好良く、剛にして敏なドンモモの殺陣が見栄えするのは良いところ。
 ソノーズそれぞれ、比較的動きやすそうなデザインで個別の得物を持っているので、今後も立ち回りの格好良さは期待したいところです。
 ドンモモ必殺剣を受けたスター仮面は、ダメージ描写はさほどでもないものの切り替え早く撤収し……ガンバレ。
 「おまえのおにぎりは、きっと人々を幸せにする。元に戻れ!」
 残った超力鬼は必殺奥義・兜割りでさくっと成敗され、ドン! ドン! ドンブラザーズ!
 認識の共有に関しては曖昧ですが、ひとまず、鬼を消去しようとする仮面のソノーズに対して、ドンブラザーズは元の人間に戻そうとする事が視聴者に対して目的化し、そう考えると、前回はドンモモ(ブラザーズ)の完敗であった事になるのがだいぶ大胆な作り。
 また今回も巨大戦がなく、この先どうなるかはわかりませんが、少なくとも立ち上がり、巨大ロボ玩具を必ずしも主力商品としない事によりロボ中心の作劇から解放されており、商業作品としての《スーパー戦隊》――何を売る為に何を見せるのか――の大きな転機になるのかもしれません。
 素人考えとしては、作品どうこう以上に、DXロボ玩具そのものが時代のニーズとして厳しいのではないか……とは以前から思っていたので、この方向性には納得。
 超力鬼が消し飛び、おにぎり店主が元に戻るとドンブラマスターの手元にはオーレンギアが転がり、示し合わせた黄と青は背後から赤を強襲。
 だが攻撃を察知した赤に軽々と受け止められてしまい、逆に銃の乱射を受けて、わはははははは!
 ここからEDテーマが流れ出し、後日――おにぎり屋は大盛況となるが、鍛えていたスタッフの陰口を気にしたのか、桃井タロウは雉野の会社から姿を消して独り川面を見つめ、偶然通りすがった犬塚とすれ違ってつづく……は、軽快なEDに乗せて今作のスタイルを示して、格好いいラストシーンでした。
 EDテーマを流す事で時空のスキップの潤滑油とし、後日談的なくだりからシームレスに次回予告へ突入する事で、視聴者の意識を気持ちよくポンポンと次へ向けさせる手法はかなり気に入ってきているのですが、さっそく、中澤監督が鮮やかに使ってきて、今後もやってほしい演出。
 ぞうきんがけだったり特訓だったり、内容的には獣拳鬼もありだったのでは、というエピソードでしたが、図形モチーフ-三角-ピラミッド、が優先されたのでしょうか、オーレ!
 次回――今回サイケ人間に襲われていた指名手配犯・犬塚とは何者なのか。立てこもり事件発生で、MAY DAY! MAY DAY!