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洗脳と100点

超力戦隊オーレンジャー』感想・第29-30話

◆第29話「踊る! 侵略塾!!」◆ (監督:小笠原猛 脚本:上原正三
 「悪には強いオーイエローも、料理だけは、苦手ってか?」
 甥っ子の面倒を見る樹里の元を訪れ、隊服姿で餃子を焼く昌平…………つ、付き合ってるの?!(まあ、その印象を和らげる為の「隊服」姿なのではありましょうが)
 まかり間違うと、地球を守る戦士に恋愛など許されないあちゃぁぁぁぁぁ! された樹里と昌平が南極で磔になって発見されかねませんが、疑惑の発端となった甥っ子は最近、歌って踊る学習教室に通ってから急に100点ばかり取るようになっており……『オーレン』は今回もやたらタイムリー(笑)
 シリーズ歴代メインライター大集合かつ懐古的作風の今作ですが、上原正三×洗脳塾はもう、狙ってオーダーされたとしか思えません(笑)
 甥っ子を送りがてら、問題の学習教室――アチャチャの学校を見学した樹里は、スパンコールな衣装を身につけた辺名おじさんがマラカス振りながら踊り狂う姿を目撃し、既に、歌詞に思い切り「バラノイア」の5文字が入っていた。
 授業の終了後、塾に潜入した樹里だが、バラタランチュラの毒針を受けた事により体が勝手に踊り出す体質になって窓外投擲され、仲間が駆けつけるも、バラタランチュラは小型化して逃走。
 「もう、くやしぃぃ! マシン獣の動きに合わせて、タランテラを踊らされてしまったわ!」
 「タランテラは、南イタリアの民族舞踊だ」
 フィーバー!
 「成績良ければ全てよしの地球人につけこんで、コントロールできる人間をどんどん増やすんだ」
 バラノイアは学習塾を利用して、歌って踊れる侵略の手駒を増やそうとしており、予告からどんな頓珍漢な展開になるのかと身構えていたら、風刺要素も交えた存外正攻法の侵略作戦でした。
 樹里姉が、息子の成績が落ちたらどうしてくれるのか、と権力の横暴に食ってかかる、「洗脳してもらえば、勉強好きの子になるわ」(『バトルフィーバーJ』第2話)のマイルドアレンジともいえる一幕を挟み、洗脳電波の大元を絶とうとするオーレンジャーは、顧客のアフターフォローに励んでいたアチャたちの根城を発見。
 「これなら誰でも100点取れるわ」
 「子供を操るとは、許さん! うぉぁあちゃぁぁぁ!
 隊長の飛び蹴りがアチャにクリティカルヒットし、裕司が校庭の鉄棒を利用しての結構アクロバットな蹴り技をバラタランチュラに炸裂させると、超力戦隊・オーレンジャー
 一気に押し切りを図ろうとするオーレンジャーだが、小クモ攻撃により青と桃が踊り出してしまうと、唐突に校庭を走ってきたリキに今回も助けられ、キング先輩、超いい人。
 作劇としては如何にもな、追加戦士の出番を確保する為に既存チームが雑に苦戦をするパターンでこれといった工夫も無いのですが、現在私の中で割となんでも、キング先輩はいい人だな……に還元されるターンになっています。
 早くも忘れそうになっていたオーレバズーカでバラタランチュラが吹き飛び巨大化すると、オーロボ&Rパンチャーがバラタランチュラの蜘蛛糸攻撃でさくっと行動不能に陥り、キング先輩がピラミッダーを召喚。今回もまずは頼りない後輩たちを助けてくれるキング先輩のいい人ムーヴから、バトルフォーメーションを発動し、ハイ、デカさはーーー、強さ!!
 バラタランチュラは消し飛び、予告からてっきり《不思議コメディ》時空の浸食かと思ったら、案外《スーパー戦隊》の王道だったバラノイアの洗脳ダンス作戦は、超力戦士たちの鋼鉄のスクラムの前に失敗に終わるのだった! ゆけ、オーレンジャー! 戦え、僕らのオーレンジャー

◆第30話「地球がグースカ」◆ (監督:東條昭平 脚本:上原正三
 見所は、皇帝陛下の顔面に向けて炸裂する、皇妃ヒステリアの飛び後ろ蹴り。
 「マシンが狸寝入りしてどうする!」
 ……あの着ぐるみで飛び蹴り決めるの、かなり衝撃のシーンでした(笑)
 何故こんな事になったのかというと……発端は、バラノイアの皇帝一家さえ強制的に眠りに落とす、恐るべき催眠マシン獣・バラグースカ!
 プライドを傷つけられたバッカスフンドは即刻処刑を命じるが、ヒステリアの発案により地球に送り込まれると、無秩序に放たれるその催眠音波は訓練された超力戦隊にさえ効果をおよぼ……隊長だけは、カッと目を見開いて耐えていた(笑)
 人間としてのスペックが違う隊長が、バラグースカを運んできたバラノイア戦闘機の撃墜に成功すると地上での戦いに移行するが、催眠音波は超力スーツでさえ遮蔽しきれず、次々と膝をつくオーレンジャー。隊長さえも戦闘力を失いそうになったところにキング先輩が現れると、《睡眠耐性:LV9》を見せつけ、ビクトリーフラッシュでざっくり木っ葉微塵。
 思わぬ脅威を秘めたマシン獣を退けるオーレンジャーであったが、放置されていたバラグースカのスクラップを辺名おじさんが入手してしまい……仕事して! 超力戦隊!!
 ここにアポロガイスト室長が居たら、戦闘処理班のメンバーは全員、内部監査バスターで退職処分になっているところです。
 かくして、民間人にマシン獣の残骸を回収される決して表沙汰にできない大失態が発生し、この後、辺名おじさんが登場しなくなったら、彼の身に何が起こったのかは察してあげて下さい。
 辺名ロボット研究所において、あり合わせの部品を継ぎ足されて修理を試みられたバラグースカは奇跡の復活を遂げ、頭には動力としてゼンマイが取り付けられ、左手には常に風車を持っているなど、文字通りの死体の継ぎ接ぎに子供が手近な玩具を加えたような造形が凄まじくグロテスクで、背中に赤ん坊の人形を背負っているのが滅茶苦茶怖いのですが!!
 初期の愛嬌のある容姿はどこへやら、すっかり歩く悪夢と化して甦ったバラグースカは、マシン獣の本能に従い、ゼンマイ動力で街へ繰り出すと催眠音波で次々と事故を引き起こしていき、人間ならではの性質(この場合は睡眠)を突いてマシンが攻撃してくるのは、割と『オーレン』正道といえる作り。
 上層部の指示を受けたアチャコチャにより強化改造されたバラグースカは、催眠音波をより広範かつ強力に放つパラボラアンテナ型になると、特徴的だった巨大な頭部はアンテナの先に小型化され、すっかり目つきも悪くなった姿に変わり果て、マシン獣とはいえ改造に次ぐ改造で尊厳を失っていく流れが、だいぶ強烈。
 バラグースカ第三形態の放つ催眠音波は黒にさえ影響を及ぼし、止める者のいなまま、眠りに落ちていく地球……だがその時、三浦謹製ヘッドホンを身につけたドリンが駆けつけると、パクが動力パイプを破壊する力業で強引に解決し、バラグースカ三段変化は面白かっただけに、逆転劇にこれといった工夫も連動も無いのは、残念なところでした(ドリンの視聴者向け好感度を稼ぐ必要はあったとはいえますが)。
 そこから、たっぷり尺を採っての挿入歌バトルとなり、やはりオーレッドの立ち回りは大変格好よい。
 バラグースカはオーレバズーカで再びスクラップとなると、アチャコチャによって巨大化されるが特に何もしないまま超伝説ビームで消し飛び、バラノイアの地球静止作戦は失敗に終わるのであった。
 なお予告では、恐らく催眠音波にかかったのであろう昌平が樹里の膝枕で寝ているという、え、君たちやっぱり付き合ってるの?! な映像があったのですが、残念ながら本編には登場しない幻となりました。