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つよしだいかいほう

『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』感想・第6話

◆ドン6話「キジみっかてんか」◆ (監督:渡辺勝也 脚本:井上敏樹
 なんかちょっと嫌だな……本野格西(ほんのうかくせい)病院。
 前回の今回で、雉野夫婦のいちゃいちゃシーンから始まるのが大変悪辣ですが、妻が優秀美容師として表彰されるパーティーを直前で欠席した雉野は、内心で妻へのコンプレックスを吐露。
 (……きっと僕は捨てられる。僕とみほちゃんとじゃ、差がありすぎるもん)
 重い……開始2分でなにこの重さ……!
 劣等感に基づく格差婚意識を抱え、盛装のままフラフラと喫茶どんぶらに辿り着いた雉野が思わず「出来る男になりたぁい……」と呟くと、
 「ポイントを使えば、出来る男になれるよ」
 全力全開で怪しげな事を言い出すマスタードンブラ。
 「やだなぁマスター。そんな便利なポイントがあるなら、今すぐ使いますよ」
 「……いいよ」
 「え?」

 ドンドン ドンブラザーズ! ドンドン ドンブラ ゴーイング
 ドンドン ドンブラザーズ! ドンドンドンドンドンドンドン Yeah!

 不穏なアバンタイトルから、軽快なOPに繋ぐの、割と好きです(笑)
 はちゃめちゃに暴れ野郎なOP明け、企画の通った雉野が部長(プロレスラーみたいな体型してる……?)に褒められていた一方、猿と鬼は喫茶店に呼び出したタロウに様々な疑問を直接ぶつけていたが、タロウは不自然に会話をそらす。
 「俺は全てを知ってるわけではない。……俺にはやるべき事がわかっている。それだけだ」
 「なにそれ? 全然答になってないし!」
 「何故いちいち理由を求める? やるべき事は、今置かれている状況が教えてくれる。それでいい」
 悪を倒すカウンターマシーン的ヒーローの戯画的側面を思わせ、はるかと教授に背中を向けて視線も合わせず、どうもらしからぬ様子のタロウを問い詰める二人だが、突如として転送されると、謎の囚人との面会時間です。
 「タロウに答を求めても無駄だ。それはタロウ自身が答だからだ。後は君たち自身が学べば良い、のだが……まだ早いようだ」
 今回も親馬鹿トーク絶好調でちょっとイラッと来る態度の囚人だが、さすがにこのままだと牢屋に墨汁とか投げ込まれそうと判断したのか、タロウに代わってはるかと教授の疑問に答える事に。
 「敵の名は――脳人」
 これまで謎だった敵の種族(組織)名が明らかになり、その正体は、『ドンブラ』世界の人間よりも、高次の世界の住人たち。
 「強い欲望を持ったある種の人間はヒトツ鬼となる。そしてそんな人間を消去するのが、脳人の仕事だ」
 「なぜ、そんな事を?」
 「……脳人の世界は、人間が放つ波動によって支えられている。波動が乱れれば、脳人の世界も不安定になる。そして、人の波動を乱すものが――欲望だ。脳人は人の欲望を否定する」
 続けて一気に脳人サイドの背景(語り手の信用度は任意で設定して下さい)が説明され、もともとメタ要素が見え隠れする今作において、ドンブラザーズの敵はまさに『ドンブラ』世界よりも高次(メタ)な世界の存在とされ、第1話においてバロム仮面様が卓球鬼に向けた「この世の静寂を乱す」とは、“人間の世界”が鬼によって乱れると、“脳人の世界”もまた乱れる事を示していた、と繋がる事に。
 今のところ人間を捕食している様子は窺えませんが、構図として人間世界そのものの家畜化のニュアンスは見え、脳人視点ではまさに、脳人のエージェント・バロム仮面、脳人のシンボル・コンドール仮面、脳人の魔人だスター仮面、といった具合でしょうか。
 同時に、桃井タロウが“脳人の世界”から来訪した、様々な意味での「人外」である可能性が高まりましたが、ここまで出てきた情報からすると、桃井タロウ=天界から地上に「棄てられた神(近似としての神話英雄)」であり、貴種流離譚の構造がベースにありそう。
 個人的にあまり、「今居る世界が虚構」的な要素は好きではないので、出来ればそちら以外の方向へ転がってほしかったりはしますが、「虚構の世界の真実の生」とかそれはそれで井上敏樹の作家的テーマと隣接しているようには思えるので、二つの世界の関係性などがどう転がっていくのか、楽しみにしたいと思います。
 ひとまず囚人の説明を飲み込んだ教授は、現状を「運命」として受け入れる事はやぶさかではないが、サングラスの呪いを解く事は可能なのかを問う。
 「ポイントを貯めればそれは可能だ。ドンブラザーズを脱退する事も出来るし、また、どんな願いでもかなう。ただし……ポイントを下手に使えば、不幸が訪れる、可能性がある」
 「ポイント? 何それ?」
 「それについては管理人に聞け」
 そこでまた都合良く面会時間は終了し、強制参加の上で希望をちらつかせてニンジンをぶら下げる……鬼だ、鬼畜というも生ぬるい無道な鬼だ!



ポイントをつかいますか?

>はい   いいえ


 果たしてマスターに促されるままに 呪い 謎のポイントを使ってしまったのか、絶好調の雉野は仕事で同僚を助け、アバターチェンジで交通事故を止め、なんと部長に昇進!
 出来る男になったと、すっかり増長した雉野は黒塗りの車でシロクマ宅配便に乗り付け、もっと大きい仕事をしないかと桃井タロウを会社にスカウト。
 「仕事に大きい小さいがあるとは思えない」
 「はっ、桃井さんて所詮そこまでの男なんですねぇ……がっかりです。……あ、もういいですよ降りて下さい」
 雉野は身勝手にもタロウを追い払い、役どころの年齢設定分、芝居のキャリアもあるのか、人格チェンジまでは行かないも気が大きくなって他者に高慢に振る舞う雉野のギャップを好演。
 「…………雉野つよし。……大丈夫か? 以前より弱くなっているみたいだが」
 「馬鹿なこと言わないで下さい逆ですよ! 今の僕は絶好調です」
 タロウの指摘を雉野が笑い飛ばしていた頃、壁に名画が並び、ステンドグラスのような模様が背後に浮かぶ謎の空間に集ったソノーズは、ドンブラザーズについて“元老院”に問い合わせ、その返信を待っていた。
 「……なぜ笑うのか、人間は。なんだ? 笑いとは」
 「……なぜ男と女は愛し合うのかしら。愛は尊いというけれど、愛の意味がわからない」
 「それが人間が未熟だからだ。私は芸術というものに人間の不完全さを見る。未熟な人間の、あがきを見る」
 「興味深いわね、人間て」
 街に繰り出したソノニとソノザはそれぞれの気にかかる欠落である「愛」と「笑い」を求め、シルバーのジャケットに紫のシャツを合わせたナンパ師は、どこから飛び出したのか(笑)
 多分、こっちが「笑い」だったぞ、ソノザ!
 ソノーズが人間に息を吹きかけると額(まさに脳の手前か)に扉が浮かび上がり、その奥には、鬼が……?
 一方、高級フランス料理店を貸し切ってますます傲岸な態度に磨きがかかっていく雉野だが、愛妻みほが体調を崩し、原因不明のまま病院に担ぎ込まれる事に。
 どんなに仕事で評価されても給料が上がっても、妻の為に何もできない自分の無力さに思いあまった雉野は、タロウを超える事でもっともっと出来る男になれると証明しようと、手段と目的の転倒を繰り返しながら勝負を挑む。
 「それで? なんの勝負がしたい?」
 「なんだっていい。僕は子供の事から何をやっても駄目だった。だから……得意なことがないんだ」
 「……俺はなんでも出来た」
 ちょっと間を取った後、敢えて言うのが一周まわって格好いいな!
 「だから得意なものがない。――似ているな。俺とあんたは」
 勝負を挑みながらも己の弱さをさらけ出す(だが勝負からは逃げない)雉野に対して、口を開けば嘘はつけない性質なのもありますが、タロウもまた幾ばくかの痛みを宿しながら正面から向き合う事を選ぶのが、今回の好きなシーン。
 前半ではるかと猿原に背を向けた姿との対比になると共に、愛する妻の為に無謀な勝負を挑む凡人たる雉野と、完璧超人タロウの中に同じ“ヒーローの魂”が存在し、タロウがそんな雉野の本質を掬い取っている事が示されているのが、上手い。
 タロウと雉野が対峙していた頃、みほの入院する病院では、あまりにも肥大化した「患者を救う」欲望……というかストレス……というかゲーム病……を抱えていた看護師が爆発。
 「生きとし生けるものは……みんな、入院しろぉぉぉぉぉ!!」
 『ジュウオウジャー』原典の重要ワードを想像させた上で、勿論そのまま使ってはこないだろう……からの、この派手な飛躍には大笑いしました(笑)
 どちらかというこれ、大和先生(真人間ツッコミマシーン)ではなく、永夢先生(患者治すマシーン)な気がしますが、ジュウオウジャーのシンボルマークを土台にして、モチーフ動物をあしらった動物鬼のデザインは非常に秀逸。
 特に、遠目には突き出した舌に見えるパーツがイーグル、なのが見事ですが、ゾウとサメはわかりやすいとして、顔がライオン、胸パーツがタイガー、肩パーツがワニか……?
 「私が、看病してやるぅ!」
 暴走を始めた動物鬼は入院患者を作り出そうと市民に襲いかかり、勝負の種目で悩みながら何故か脳内で脱いでいく雉野とタロウがそれを目撃すると、タロウはアバターチェンジ。
 「桃井さんが、ドンモモタロウだったなんて!」
 「言ったろう! 俺とあんたは似ているって!」
 「勝負だ! どっちがモンスターを倒すか!」
 こにサルイヌオニが参戦し、更に、ドンモモを笑いのプロフェッショナルと見込んだソノザも現れると、脳髄チェンジ。
 ドンモモがスター仮面と高笑い勝負しながら切り結んでいる間に、パトレン先輩チェンジする桃だが動物鬼に踏まれて助けを求め、赤のフライングクロスわっはっはから必殺奥義アバター乱舞で、ドン! ドン! ドンブラザーズ!
 解放されたジュウオウギアを拾ったドンモモだが、奇態な笑いと共にスター仮面が躍りかかり、アルターチェンジとドンゼンカイオーが等価に位置づけられている事で、巨大戦に移行せずに幹部クラスと戦闘を継続できるのは、構成上のいい所。
 ……まあ、切り替え撤収が無い事でバトルが続けられる一方、本能覚醒したジュウオウこももロボの飛行攻撃に散々振り回され、キューブ爆弾でダメージを受けていいところなく撤退に追い込まれる株価下落が株主総会開催不能レベルの大惨事になっていますが、阪神タイガ……じゃなかった、ソノザの明日はどっちだ!!
 J2においでよはともかく、みほは回復。一方で雉野は部長から降格になるが「変に偉いつよしくんより、ちょっと駄目なつよしくんの方が、ずっといいと思う」とみほはそれを受け入れ、
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 「…………雉野つよし。……大丈夫か? 以前より弱くなっているみたいだが」
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 「僕のスカウトを断ったのもきっと君の強さなんだ!」
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 に象徴される、“自分が自分であるとは何か”を貫いた時、誰でも誰かのヒーローになれる(のかもしれない)と美しく着地。
 (おまえの勝ちだ。俺には、女性をそんな笑顔にする事はできない)
 そっと病室を覗いたタロウは、捉えようによっては物凄く悲しい独白を残して病院を去っていき(これもまた、ロマンス拒絶型ヒーローのカリカチュアと取れますが)、繋がっていく縁と縁は少しトリッキー。
 (雉野つよしの獲得ポイントはまだまだ低い。彼の幸福も不幸も、もう終わっている頃だろう)
 マスタードンブラはノートパソコンでお伴4人のKIBI-POINTを確認しており、『桃太郎』要素として出てきていなかった「きびだんご」が、当人達には確認不能で詳細不明な謎のポイントとして登場。
 どうやら、ポイントを利用する事で世界の因果に干渉できるようですが、説明を省き口頭で雑にポイントを使わせたマスターは、使用できるポイントが少ないので効果も揺り戻しも大きくはないだろうぐらいの配慮はあった事を感じさせ、厚意によるお試し期間…………で、他人の人生を狂わせて涼しい顔をしている腐れ外道と人はそれを呼ぶのです。
 ……まあ、マスタードンブラ、それこそ「人外」の範疇の可能性がありありですが、脳人やヒトツ鬼の素性が判明する(あくまで囚人の語りですが)一方で新たな謎が浮上し、次回――側転回避キャンセルレバー入れ水平チョップ!