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かねじゃねぇ!

『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』感想・第46話

◆ドン46話「なつみのよのゆめ」◆ (監督:加藤弘之 脚本:井上敏樹
 「ソノシ」「ソノゴ」「ソノロク」
 元老院から派遣された、赤・紫・黒の新たな脳人の戦士たちネオソノーズは、わざわざ高い所に立って名乗りを上げると、ドンブラザーズと旧ソノーズに対して処刑宣言。
 一方、消えたタロウの行方を捜す犬塚は、何も気づいていない暢気なジロウとバッタリ遭遇。
 「おまえ……どうかしてるぞ」
 「ん?」
 「……しっかりしろ! ……ルミなんて居ない! 居ないんだ!!」
 犬塚翼は、そういう役回りなのか(笑)
 こういった台詞の被せは今作の狙った手法でありましょうが、「存在の肯定」が“救い”になる事を明確に描いている『ドンブラ』世界において、雉野とジロウが共に、「自分を肯定してくれる存在」を失いつつあるのは嫌な重なりで、ここに来て「都合良く全てを肯定してくれる存在」が居ない事を描いてくる今作、雉野はまだともかくとして、人界の鬼子(人外の英雄)が人に「肯定される(祀られる)」為には、「御利益を与える」すなわち「戦い続ける」しかない宿命が、背景のヒーローテーゼとしては見えてきます。
 個人的には、そこをどうやって乗り越えるのか?(英雄は如何にして社会性を得るのか?) を今作なりに描いてほしいところでありますが、さて、残り話数でそこまで 持ち込んでいけるのか。
 「ペンギンは王家の象徴。つまりドン家。そして、ドン家の者は、この森の、護り人となる」
 獣人の森でぶら下げられていたタロウは意識を取り戻すが、寺崎の横に現れたペンギン獣人によりコピーを受け、ペンギンタロウが誕生。
 ……こじつけるなら、白と黒であり、海と陸であり、人界と異界の狭間にあって両義性を持つ存在の象徴としてのペンギン、とはいえるのでしょうが、第11話で存在が明らかになり、第30話で「ネコは気ままに遊ぶ。ツルは物語を紡ぐ。そしてペンギンは……」と説明を濁され、どう転んでもいいように断定してこなかったにしても、割と長々と“なにやら悪事を企んでいそうな雰囲気”を醸し出そうとしていた割には、番人担当のドン家専用機でした、というのは正直、パッとしない着地点。
 井上脚本において、終盤につじつま合わせ担当の存在が出てきてあれこれやを押しつけられるのは過去には『ファイズ』などの例もありますが、今作この成り行きに関しては、一定の筋は通ったかもしれないけれど、視聴者の期待をコントロールした上で、それに見合う劇的な切れ味を出せたのか? といえば、不満が残ります。
 極端にいえば、もつれにもつれた糸を指で解きほぐす事に執心しすぎて、確かに糸はほぐれたけれどボロボロで、もうこれ、ハサミでちょん切った方が面白かったのでは? という印象。
 また今回も結局、「現実問題として森の外に獣人が出ている」点については誰一人言及せず、独房と華果村と、両番人の「私の門番に不備は無い」主張が正しいとすれば、どこか別のポイントから獣人を野に放った何者かが存在するとしか思えないわけですが……次のペンギンの折り紙が見つかるのは、どんぶらのカウンターの奥なのか?! 囚人の独房の中なのか?!
 それともやはり、猿原家の地下室なのか。
 一方、本社にコンプライアンス違反を突きつけられた旧ソノーズ一同は、いよいよのっぴきならない状況に陥っていた。
 「なぜ、元老院は急に、私たちの処刑を?」
 簀巻きにした監査官を大川に沈めようとしたからでは。
 「ソノシのせいだ」
 さらっと、責任転嫁したぞ(笑)
 我々が守るべきは法律じゃない、としらを切り通そうとする旧ソノーズだが、金色の粒子が降り注ぐとまとめて支社から放り出され、456がわかりやすい悪役ムーヴで嘲笑を浴びせると、晴れて無職となった前ソノーズの3人は、当然のように、どんぶらに来ていた(笑)
 ドンブラと旧ソノーズの情報交換が行われ、現状、雉野は亜空間から救出不能であり、話を通したいタロウは犬と共に不在。
 戦闘に強制召喚されなかった事からなにかトラブルがあった筈だとマスターが指摘し、ひとまず同盟の打診をタロウに伝言してほしいと持ちかけるソノイであったが、これまでの事を水に流して手打ちの杯を交わそうっていうなら相応の誠意を見せてもらおうじゃありませんか、とサングラスを光らせる若頭代行の教授。
 「……猿原! 私に俳句を教えてくれ」
 ソノニの申し出にあっさり籠絡されかけた若頭代行の教授だが、すんでのところで踏みとどまり、人間界で侘び寂びより大事なものといえば、それは一つ。
 「一般的に、人間界で誠意とは――金の事だ」
 オブラートを破り捨てるマスターを猿原が慌てて止めていた頃、村ではジロウからルミちゃんを紹介された犬塚が、狂人の勢いに負けて棒読みで挨拶を交わしていたが、そこにペンギンタロウが出現すると、二人を軽々となぎ倒す。
 「配達の……時間だ」
 コピー元の影響を受けるペンギンタロウは村に背を向け、地面に転がされた犬塚は、空が目に入った際に不自然な満月に気づき……
 (満月? 昨日は、三日月だった、筈……だが)
 旧ソノーズは、寒空の下、身の振り方について考えていた。
 「マスターが言っていたな。誠意は、お金だと。おまえ達、元老院からの支給金、まだ残っているか?」
 「全然だ。貴重なマンガの古本を買ってしまった。勉強の為に」
 「私も……エステに」
 「私は……お、おでんだ」
 やっぱり、使い込んでいました(笑)
 ビルの屋上で体育座りする無職ーズの前に456が現れると、赤影仮面・ナショナル仮面・超光仮面に変身し、足止めを行ったバロム仮面は、目くらましを放って逃走。
 (本当の誠意……やはり、やるしかない。 銀行強盗 “赦しの輪”……だが、どうやって獣人の森に)
 ……マスターに誠意を包めば、雉野ぐらいはキビポイントを消費して取り戻してくれそうな気はしないでもありません!
 獣人の森に向けて物語が収斂を見せていく中、犬塚はマンガの背景に「満月」が常に描かれている事を確認し……まあそれ、椎名ナオキ先生が背景を手抜きした可能性もありますが、月がキーワードに浮上するのは、「うそつきなつき」と繋がって綺麗な流れ。
 宅配便の仕事をこなそうとしていたペンギンタロウの前には鶴野みほが現れ、背景が、訪ねみほちゃんの貼り紙なのが、えげつない。
 「人間は哀しい。そしていじらしく愚かだ。私は…………もういい」
 鶴野みほの平手打ちを受けたペンギンタロウは、タロウ人格が表に現れ、言葉を切って飛び去った鶴野みほは、ネコの獣人軍団に囲まれる……。
 一方、現状を把握できないジロウは、育ての親・寺崎から、残酷な真実を突きつけられていた。
 「まず……話は、ドン家の絶望から始まる。ドン家は、脳人に絶望した。人間の命を軽んじ、資源として扱うその態度に。だから、人間の代わりになるものとして、獣人を作った。だが結果は失敗。ドン家は、獣人を森に閉じ込めた。だからドン家には責任がある。……森を守る責任が」
 代用肉を作ったら人類に叛乱を起こされた、みたいな経緯が改めて語られるのですが、脳人の「人間の命を軽んじ、資源として扱うその態度」の描写が物語全体を通して薄い為に、「ドン家の絶望」-「獣人の製造と失敗」-「ドン家の責任」-(そして「ドン家の崩壊」)の繋がりの重みが足りない大失点。
 これは、ソノイ達の「変化」の積み重ねが弱い、と表裏一体なのですが、それはそれで面白い部分があった点が悩ましいものの、ソノイが早々にタロウと馴れ合うと脳人の使命に対する緊張感が減じ、そもそもソノーズの鬼退治へのこだわりが弱くなってしまったのは、脳人の人間観を示す要素が劇中に薄い問題を生み、今回の集約においてはかなりの致命傷になってしまいました。
 典型的な脳人像をどこかで出した上で、ソノイの「鬼になった人間は決して許さないが、鬼になる前の人間の命はなるべく尊びたい」スタンスが、脳人の中ではやや変わっているからこそタロウと接点が生じる(生じてしまう)……ぐらいで引っ張っていければ良かったのですが、あっという間にソノイ側の防衛ラインがズルズル後退していき、打倒ドンブラには注力するが、元来の仕事である鬼退治は割と適当、になってしまったのはつくづく痛かったなと(その為、恐らくは正統派脳人である456が、わざとらしく悪役をやっているような違和感も生じる事に)。
 寺崎のオジキがドン家の意識を改めて語る事で、境界を守る神として、森の門番の役割については前回より納得が行ったのですが、それに物語として説得力を持たせる為の、脳人側の描写不足が目立つ事になってしまいました。
 ドンブラシステムに関しては、脳人による苛烈な裁きの前に、祭によって人間を“救う”為のシステムのようですが、タロウにせよジロウにせよ、王家の因果が子に報う、血の呪いに縛られたヒーローである事も、改めて明白に。
 寺崎は、ジロウを後継者とする為に育て、ジロウが楽しく暮らせるようにと友人たちの幻を作った事を告白して謝罪。受け入れがたい現実にジロウがガックリと膝を折ると、犬塚は満月について問いただし、そこに、ペンギン体を精神支配したタロウが再来。
 鶴野みほに平手打ちされるまで作戦失敗していた……のはさておき、大人しくコピーされる気は全くなく最初から獣人の情報を得る狙いだったのはタロウらしい思考で納得で、犬塚とともに、水面に映った嘘月の中にダイブしたタロウは、獣人の森への突入に成功する。
 本物タロウは折り紙を吐き出すと自ら脱出し、犬塚は夏美を救出。そこに“赦しの輪”を探すバロム仮面もやってきて……え……あれ……どうやって入った……の……?
 「貴様……消去した人を救う為に来たのか」
 「そうだ。それが私の誠意だ!」
 「……そうか。脳人も変わったという事か……」
 ここもやはり、一連の脳人関連の積み重ねの弱さが惜しまれますが、ある意味では、自己犠牲によりエターナルなヒーローに昇華されていた寺崎には、その最期の寸前に、一つの“救い”が与えられる事に(その点で、嫌いではない場面)。
 獣人を蹴散らしたドンモモは、ムラサメを召喚しようとしたイヌを止めるとゴールデンし、天下無双の威光で囚われの人々を解放すると、神輿に乗りながら獣人たちへと高らかに宣言。
 「聞けぃ! 獣人ども! おまえ達の存在に罪は無い。だが、人間を襲うという罪を犯した。二度と同じ罪を犯すな。おまえ達は、永遠にこの森で暮らせ。外に出る事は許さない。文句がある奴は――俺が相手をしてやる」
 傍若無人系ヒーローであるドン・モモタロウが一喝で場を収めてしまうこの勢いは、嫌いではない、嫌いではないのですが……不可殺の存在である獣人に「永遠にこの森で暮らせ」は無限ツボ漂流の刑とさして変わらず、“そういう風に造り出した”「ドン家の責任」はさりげなく放棄しつつ、「人間を襲うという罪」により“永劫の中で無為に朽ち果てろ”と一方的に力で抑えつけるならば、もはやムラサメを召喚してまとめて成敗した方が、「ドン家の御慈悲」なのでは……?
 だいたい、獣人を森に封印しておくのが「ドン家の責任」なら、それを失敗して人間を襲わせたのも「ドン家の責任」の部分がある筈なのに、そこは無視して獣人に罰を与える為に都合の良い所だけ切り出しているように見えるのは、どうにも収まりがよくありません。
 獣人はドンモモの前にひれ伏して姿を消し、ゴールドンフラッシュが余命を削り取ったのか、瀕死の寺崎が指さした先にあった“赦しの輪”をソノイが回すと、亜空間に保管されていた元ヒトツ鬼の人々に恩赦が下され、セーブデータから復活。
 脳人タカ派に対する対抗策としてドン家が密かに獣人の森に設置していた復元システムのようですが……ロン毛も復活している感じ。
 「みなさん! 逃げて下さい!」
 旧ソノーズ&青黄vsネオソノーズが戦う場に放り出された人々が困惑していると、雉野がすかさず変身してヒーローポイントを稼ぐ一方、ジロウは幻想フレンズたちとの別れの時を迎えようとしていた。
 「ルミちゃん……そんな……」
 「頑張れ!」」」」
 「みんなも……嘘だ…………嘘……」
 ただひたすらにジロウを激励する友人たちは、寿命を迎えた寺崎の死とともに消滅し……くずおれるジロウ。
 今回この後まったく出てこないのですが、これ、ジロウ怨霊化一直線コースなのでは。
 獣人にコピーされた人々を救い出したタロウ・犬塚・ソノイも戦場に召喚され……ソノイがだいぶ謎移動しているのは、体内のタロウエキスの作用でしょうか(笑)
 「なにをやっていたんだ、桃井!」
 「一緒に戦え、ソノイ!」
 サルとスターにけしかけられたタロウとソノイが視線を交わすと同時に変身する場面は、流れによってはもっと跳ねていてもおかしくなかったと思うのですが、とにかく全体的に、ちょっとずつ飛距離不足で、辿り着きたかった場所まで指が届かなかった感。
 ドンブラソノーズの一斉攻撃そして追い打ちの居合い一閃を浴びたネオソノーズは、さしたるダメージを感じさせずに余裕を見せて撤収し、ここでざっくり全滅して出オチ路線でも困りましたが、やや不自然なレベルの耐久力(笑)
 「夢は終わった。俺を見ろ。ずっと……俺を……」
 犬塚がとうとう取り戻した夏美を熱烈に抱きしめる一方、可殺となったネコ獣人の群れを撃破(?)するも、同じく可殺となった自らも傷だらけで川を流れる鶴野みほは、雉野の貼り紙と共に月の扉に吸い込まれて姿を消し…………うーん……鶴野みほ(および雉・犬・夏美)の物語に関しては、まだ描かれ切っていない感がありますが、完全退場ではないのを期待したいところです。
 ……前編にあたる第45話でちょっとハードルが下がっていたので、その下を更にくぐる事はなかった、といった第46話でしたが、感想を一言でまとめると上記した「ちょっとずつ飛距離不足」となります。
 で、その大きな原因は何か、というと「標準的脳人の描写の欠落」と「ソノーズvsドンブラザーズの緊張感の低下」になるかな、と。
 後者に関しては感想中で何度か触れましたが、序盤こそドライにヒトツ鬼を退治していく描写はあったものの、特に中盤、そもそもソノーズが鬼退治への真剣味に欠けて見えるようになってしまったのは、やはり響いたところ。
 前者に関してはやり方が難しい面もあったでしょうが(ソノザあたりが生け贄に捧げられるルートの想定はあったのかなとは思いますが……)、ライバルキャラとして愛嬌を付けたいが故に「標準的ではない脳人」であったソノイが、視聴者にとっては「代表的な脳人」になってしまったのは、一つの集約点にあたって大きな穴になってしまったなと。
 残り話数でドンなエンドに辿り着くか引き続き楽しみでありますが、次回――手打ち?