『人造人間キカイダー』感想・第31話
◆第31話「ジローの死を呼ぶタコヤマブキ」◆ (監督:畠山豊彦 脚本:長坂秀佳)
見所は、驚きのベストマッチを見せる、光明寺×漁師。
さまえる光明寺の扮装に関しては、如何にも紳士然としてロボット工学の第一人者というインテリでもある光明寺が、いわゆるブルカラーとして姿を見せるギャップの面白さを出す趣向も感じられますが、あまりのはまりっぷりに、光明寺の旅がここで終わりそうな勢い。
物語の舞台は東京から約束の地かもしれない・鳥取へと飛び、浜で猟師が地引き網を引く映像から始まると、網に引っかかって海から現れたのは、ダーク破壊部隊のタコヤマブキ!
凄くタコそのものなデザインのタコヤマブキは、頭をぱかっと開くとタコ墨を放って数人の漁師を抹殺し、その目的は、山陰地方における秘密実験場の建設にあった。
だが、その作業は遅々として進んでおらず、観光客が多すぎてこっそりやっているので進まないんスよ……と弁解するタコに対し、やり方が手ぬるい! 見られたらデストロイ! と世界征服を企む悪の秘密結社としての矜持を取り戻すべく、プロフェッサー・ギルは、エールを送る。
「殺せ殺せ殺せぃ! 殺すのだ!」
一方、ミツ子とマサルは光明寺の行方を追って米子に到着すると、皆生(かいけ)温泉の皆生グランドホテルをアピールし、何故か半平は、三度笠被った渡世人コスプレで海に向けて釣り糸を垂らしていた(1973年なのでドラマ化した『木枯らし紋次郎』が大ヒットしていた時期でしょうか)。
ミツ子たちが旅の道中で知り合った父娘の危機にジローが現れるが、アンドロイドマンから逃げようとした父は海に転落。慌てるジローはタコに飛びつくもそのまま抱えて振り回されるちょっと謎アクションからきりもみチェンジ。
オクトパス金縛りで触手にからみつかれるキカイダーが触手を切断するとタコは飛行して逃走するも、旅先で父親がいきなり海に転落! の悲劇にゲスト少女が見舞われる一方、光明寺は、カニ漁船に馴染んでいた。
「そげん上達ば早かとこ見ると、あんたやっぱり浜育ちだ。ちげぇねぇ」
忍者の里(伊香保)育ちです!
前半に比べると専門家に相談しようとするわけでもなければ記憶を辿ろうとするわけでもなく、半年以上も漂泊している内に行く先々で環境に馴染みすぎて、本当に記憶を取り戻す気があるのか不安だった光明寺ですが(取り戻す事への恐怖感、というのも理解できますが)、内心では放浪の身の上に忸怩たる思いを抱えている事がナレーションで補強され、そんな光明寺の乗り込んだ漁船からカメラを上へ引いていくと、それと知らずに通り過ぎていく漁船を橋から見つめるミツ子とマサルの姿があるのは、寂寥感が出ていい演出。
ミツ子とマサルはそこで、妄想新婚旅行の予行演習(三度笠で)にやってきた半平と出会い……え、昨日の新聞に載った「米子空港から降りた観光客」の写真に写っていたのに、もう今日は漁船に馴染んでいるの光明寺?!
ニンジャの遺伝子のもたらす潜入能力に戦慄していると、
「名探偵・服部半平様が、この一枚の写真から、なんか手がかりを掴んでみようぞ」
と写真に虫眼鏡を向ける半平、久々に探偵らしいスキルを発揮するのかと思いきや、直後に接待を要求(酷い)。
半平を連れて皆生グランドホテルに戻ると、少女を連れ帰ったジローと出会い、ジローが写真を精密分析した結果、光明寺は作業着姿であり、観光客ではなく空港で働いていたのではないか? といきなり漁船に馴染んでいる引っかかりが鮮やかに解消される名推理。
ゲスト少女を鳥取空港へ向かうミツ子たちに預けたジローは、少女の父親を探す為に海中へと飛び込んでいくが、ゲスト父はその間に光明寺の乗っていたカニ漁船に助けられて一命を取り留める。
空港へ向かったミツ子達は、光明寺は2日前に辞めたと無駄足を踏む事になり……結局、光明寺のカニ漁船への異常な馴染みっぷり(今までのどんな職業よりもはまりきっているのですが、それこそ、役者さんは浜育ちだったのでしょうか、というぐらい)は、一日二日の誤差レベルだった事になり、恐るべし、光明寺流ニンジャの遺伝子……!
一方、実の父親が海中へと転落して生死不明の状況で何故か他人の父親探しに付き合わされるゲスト娘、はるばる米子までやって来て父親探しに行き詰まりやさぐれるマサル、この時期に海に落ちて生きているわけがないでしょ面倒くさいを隠しもしない半平、が寄り集まるミツ子サイドの空気は、地獄絵図と化していた。
恐らくタイアップ特権と思われる、ホテルの娘がたどたどしく登場する一幕を挟み、少年少女に舟盛りを勧める半平渾身の河童踊り(一応、暗い空気を吹き飛ばそうとする意志はあるようですが、全く空気が読めていないので地獄濃度が高まるばかり)も不発に終わった一夜が明け、意識を取り戻したゲスト父を狙い、漁港を襲うタコヤマブキ。
逃げる光明寺とゲスト父めがけてタコの攻撃が放たれる寸前、光明寺博士のヒロインスキル《天の助け》が発動し、横から炸裂するジローの跳び蹴り。だが、直後に響いた悪魔の笛に苦しむジローを、兄弟たちの恨み、とタコヤマブキは執拗に痛めつけ、ジローはくったり人形と化してしまう。
「カイメングリーンの仇だ!」
伊豆編に続いて今回も1エピソードに複数のダークロボットが登場するのも手伝ってか、今作としては珍しい同僚意識が描かれると、力強く投げ飛ばされたジローは漁船に衝突! の際に爆発音で笛の音がカットされたから事からスイッチオンに成功し……あ、久々に、逃げた。
一方、通りすがりの観光バスに逃げ込んでいた光明寺とゲスト父だが、セスナ機による追跡に気がつくと、他の客に迷惑はかけられないと途中下車を要求し、強引に乗り込んだと思ったら今度は降りようとする、完全なる無法者(笑)
露骨な観光タイアップの都合により、ゲスト少女が父と行く筈だった鳥取砂丘に向かっていたミツ子一行の背後には謎めいた青い靴の男が迫り、砂丘を逃げ惑う中年男性2人がセスナから銃撃される派手なスペクタクルが展開すると、続けてキカイダーのサイドマシーンが標的にされて、爆発! 爆発! 爆発! と、今作にしては派手なカットを連発。
セスナからの攻撃はキカイダーが引きつけたものの、追撃してきたタコの触手に鉄棒ぬらぬらされそうになる中年男性2人だが、キカイダーの救援が間に合って逃走すると、キカイダーとタコが砂丘で戦闘開始。
50年前なのでなんともですが、鳥取砂丘は景観保全の為に色々ルールがあると聞くので、戦闘シーンは砂丘に見立てた別の場所で撮影した可能性もありそうですが(怒られ案件になっていない事を祈る)。
タコヤマブキはデンジエンドで爆死するが、ミツ子らを追っていた男がタコヤマブキのSOS信号を感知して、ダークロボット・アオデンキウナギの正体を現し、ウナギ百万ボルトががキカイダーに炸裂!
そしてゲスト少女が砂丘で拾ったのは、キカイダーの腕?! と衝撃のつづく。
何が衝撃って、サブタイトルが回収された……!
次回――
「ジローは、光明寺が知らずに付けた、アオデンキウナギの手に苦しむ!」
光明寺ーーー?!
「だが、うまくダーク地下室に潜入する! 同時に地下室は大爆発を起こした!」
本編の内容が内容な事もあり、物凄い勢いでまくし立てては、右から左に抜けていく事には安定感のある『キカイダー』次回予告ですが、今回はいつも以上にハイテンションで、面白かったです(笑)