東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
旧ダイアリー保管用→ 〔ものかきの倉庫〕
特撮作品の感想は、順次こちらにHTML形式でまとめています→ 〔特撮感想まとめ部屋〕 (※移転しました)
HP→〔ものかきの荒野〕   Twitter→〔Twitter/gms02〕

投擲は地球人の基本戦闘スキル

高速戦隊ターボレンジャー』感想・第35-36話

◆第35話「愛を呼ぶ魔神剣」◆ (監督:東條昭平 脚本:井上敏樹
 そこはかとなく見覚えのある小屋の中で刑事にはめられた手錠を外そうとしている女スリ・ゆかりが物音に気付いて外を窺うと……森の中に、三つのモアイ像が(笑)
 第20話の時も書きましたが、東映の美術倉庫に余っていたのでしょうか、モアイ。
 ……なおこれで、『マスクマン』第13話→今作第20話→そして今回、といずれも(監督:東條昭平 脚本:井上敏樹)回でモアイが出てくるのですが、誰が好きなんですかモアイ!
 流れ暴魔キリカはそのモアイの中から、伝説の魔神剣の在処を示すと伝わる宝石を見つけ出すが、事情をよくわからないまま宝石に目がくらんだゆかりに奪い取られ、追われるゆかりは大地と遭遇。
 キリカの呼び出したシニガミボーマの攻撃を受けた拍子に手錠で繋がれてしまった二人は、キリカの攻撃をかわしながらの逃走を余儀なくされ、戦闘経験を積んできた大地はともかく、女スリのゆかりがいきなりキレキレの動きを見せるのが面白い事に(笑)
 仲間達が駆け付けると死神ボーマが死神再生暴魔獣軍団を召喚し、選抜メンバーにダルマ落としボーマが居て嬉しい。
 5人+1はなんとか大妖精17まで撤収するが、ゆかりは自分は刑事だと嘘をつくと宝石を手に逃げ出し、それを追いかけた大地と、再び手錠で繋がれてしまう。宝石を巡って揉めている内に、突如として宝石がまばゆい光を放つと山腹の一点を示し、宝石の謎を明かす為に、二人はひとまずその場所を目指す事に。
 「スリなんか、どうして?」
 「信じられるものが何もないからよ。あたしが信じているのは、お金だけ!」
 「……そんなのばかげているよ! 俺は信じている。人間を、愛を、友情を信じてる!」
 「ぷっ、きゃはははははは! あなたよく、そんなくっさい台詞言えるわねー」
 大地がゆかりを背負って移動中のやり取りは実に井上敏樹ですが、大地の発言がいきなり気味ではあるものの、ヤミマル&キリカに対する、ターボレンジャーの基本スタンスを示しているとも取れます。
 所有者に天下取りの力を与えるという魔神剣を求めるキリカは、これまで巨大化に用いてきた扇風機をチャクラムのような飛び道具として使う新アクションを見せると、身を挺してゆかりをかばった大地を見下ろして踏みつけ、いい感じに暖まって参りました。
 そこに仲間達が追いついて再び再生暴魔獣軍団と激突し、再生怪人を操る死神アンテナに気付く赤だが、その表皮はターボレーザーを跳ね返す!
 キリカの魔神剣入手を阻む為、4人が暴魔の足止めをしている間に大地(とゆかり)が先行し、山腹の洞穴に飛び込んでいった宝石が鍾乳石を破壊すると、出現した魔神剣が天井に突き刺さっているのは、格好いい絵。
 だがそこに、何故か学ラン姿の流星が口笛を吹きながら現れ、大地めがけてスピンキック!
 「あらゆるものを断ち切るという、魔神剣。俺か貴様か、生き残った方が魔神剣を手にするのだ!」
 もう少し特定のライバル関係に執着する方かと思っていましたが、どちらかというと、誰が相手でも瞬間的に燃え上がれるタイプなのか(笑)
 「祈れ、大地」
 昔の芸風に戻った流星は大地に向けて十字を切り……流れ流れて2万年、なりきりコスプレによる自己暗示の影響が深刻です。正直、今回どうして急に学生服に出てきたのかは謎なのですが、何か撮影の都合もであったのか(この後、猛牛ヤミマルに変身すると仮面つけっぱなしになりますし)。
 ヤミマルの斬撃を利用して手錠の鎖を切断した大地は、ゆかりを逃がしてヤミマルと激突。
 「――俺は人間を信じてる。俺は信じるものの為に戦ってるんだ!」
 一度は脇目も振らずに逃げ出すゆかりだったが、身を挺して自分をかばい続けてくれた大地の言葉を思い出すと足を止め、洞穴の中へと駆け込むと、魔神剣を回収。
 「あたしは、あたしは人間を信じたいのよ! あたしだって、信じるもののために戦いたい!」」
 魔神剣を手にしたゆかりは追い詰められた大地の元に駆け戻ると剣を振り上げ、ヤミマルの銃撃をものともせずに突撃すると、縦一閃!
 更に、返す刀でもう一撃!!(笑)
 猛牛ヤミマル初のクリーンダメージが一般人、という凄い事になりましたが(これは予告では隠してほしかった……)三撃目はさすがにヤミマルにかわされるも、地面に刃が叩きつけられると巨大な地割れが発生(笑)
 その引き起こした爆発に巻き込まれて、華麗に宙を舞うヤミマル(笑)
 ヤミマルの空中スピンは、今見ても迫力十分の物凄い回転をしているのですが、そういえば『ジェットマン』のブラックコンドルもよくスピン回転していたな……と思って確認したら、スーツアクターが同じ大藤直樹さん(前作『ライブマン』ではガッシュ担当)だそうで、大藤さんの得意技だったりしたのでしょうか。
 「最高だぜ! ゆかりさん!」
 物量に押されて苦戦する仲間たちのところに戻った大地は、ゆかりから受け取った魔神剣を振るって死神ボーマのアンテナを見事に切断。再生暴魔獣軍団は消滅し、魔神剣を投げつけられた死神ボーマが大爆発して、5人はその場の勢いで決めポーズ(笑)
 …………あれ? 魔神剣、溶けた…………?(笑)
 まあ、素人が振り回しても地球を割ってしまうレベルのヤバい魔剣なので、これで良かったとは思うのですが、造形物がかなり凝っていたので(何かの流用だったのかもですが)、この潔い使い捨てぶりには少し驚きました。
 扇風機で巨大化された死神ボーマはスーパーターボロボに立ち向かい、今回も瞬殺……されずに鎌で切りつけてみるも全く通用しない余計に酷い描写となり、口から怪光線を放つも微動だにしないスーパーターボロボの三角ビームを受けて、大霊界
 ゆかりは人生のやり直しを決意して警察に出頭し、大地が軽くモテて、つづく。
 ……「コケティッシュで殊更に人間不信を強調する女スリとか出てきたら、過去に色々あったけど本心では人間を信じたがっている」という刑事ドラマの文脈が持ち込まれた上で、当然の前提として完全に省略されるという力技が発動した一方、『ターボレンジャー』名物《突然明かされるメインキャラクターの悲しい過去》が生じなかった点はスッキリしていて、軽快なテンポで進行するアクション回としては見所があって面白かったです。大地回としては“走る”繋がりといえるでしょうか。
 そして、ズルテン、普通に、暴魔城に居た(笑)

◆第36話「運命の想い出…」◆ (監督:長石多可男 脚本:藤井邦夫)
 部活をサボった俊介が向かったのは、10年前の想い出がある海岸……?
 「俊介10年前の秋、その想い出の海辺で、さよちゃん、って女の子に会ったんだって」
 「初恋は秋の浜辺かぁ……」
 「まあまあ、俊介の奴ったらお洒落じゃない。よし! みんなでその海に行こうよ!」
 「異議なし!」
 酷いぞ(笑)
 「そんな! 人の思い出をからかうなんて趣味悪いわよ! ……でもちょっと興味あるわよねー、待って! 私も行く!」
 ……酷いぞ(笑)
 頬を膨らませた直後に笑顔を見せるはるな軍曹が、番組史上に最高に可愛く撮れている(※個人の感想です)のは、実に長石監督という感じ。
 80年代の諸作を見ていると、女性メンバーを可愛く綺麗に映そう、という意識は長石回が一番強く感じるのですが、これは戦隊史において90年代以降~現在まで繋がっていく見逃せない要素ではないかな、と思うところです。
 一方、大帝様は暴魔百族の幹部になりたいならターボレンジャーを倒してみせろ、とヤミマル&キリカに新たなノルマを要求しており、想い出のハンカチを手に秋の浜辺で感傷に浸っていた俊介に迫る暴魔コウモリの爆撃、そしてキノコならぬキオクボーマ。
 物陰から様子を窺っていた悪趣味な4人が合流するもヤミマルショットガンで変身を妨害され、子供たちをかばって記憶ボーマの攻撃を受けた俊介は、記憶を奪われてしまう。
 「おまえは日野俊介。イエローターボだ。思い出せ!」
 ちょっとハードル高い記憶だな……。
 さすがのシーロンも奪われた記憶の回復手段は知らず、とりあえず記憶ボーマを殴り殺そう、と逸る洋平を先頭に飛び出す仲間達。博士が床に落ちていたハンカチに気付いて俊介に渡すと、俊介はその刺繍から、微かに海の記憶を思い出す……のは、綺麗な流れ。
 「返してもらうぜ! 俊介の記憶!」
 4人は記憶ボーマ&ヤミマルと激突し、のっぺら攻撃に続き、記憶吸収光線も無効化する強化スーツ、凄い。
 一方、僅かな記憶を辿り想い出の海に辿り着いた俊介は。海岸で波音に耳を澄ませていた。
 (この音……この波音だけが……俺に残された微かな記憶)
 砂浜に耳をつけ、自分が何者かを求めて海を見つめる俊介の見せ方が、いつもと違うタッチで良い雰囲気を出し、その背後に迫るキリカは、幼い日にその海岸で受けた理不尽な暴力の記憶を思い出す……。
 「俊介、あの時のいじめっ子に代わり、おまえがその償いをするがいい!」
 海岸で美しい貝殻を拾ったのをきっかけに地元の少年たちに追い回された小夜子と、勇気を出してそれを助けた俊介……幼き日の記憶の朧気なピースとして俊介が貝殻を手にしていた事で、貝殻を握る俊介とそれを襲うキリカの姿が10年前の光景といびつに交錯。
 幼い頃の出会いにお互いが気付かない悲劇的な運命のすれ違いはオーソドックスな要素ですが、過去と現在、人間と流れ暴魔、キリカの立場の逆転と、一つの出来事の前半と後半、それぞれの視点による想い出の違い、が幾重にも絡まり合う見せ方が、非常に巧妙かつドラマチック。
 特に、流れ暴魔として人間への憎悪を募らせる余り、虐げる側に回る歓びで誰かに救われた事を忘れ去っているキリカの姿は実に皮肉です。
 (貝殻……さよちゃんの、貝殻……)
 「そこまでだ、俊介!」
 「やられてたまるか……俺は、記憶を取り戻す!」
 投げた!!(笑)
 形見のギターとかレトロウィルスとかプレシャスとか、大事な物を放り投げがちのは東映ヒーローのお約束とはいえますが、投げつけられた貝殻が無惨に砕け散った光景は、キリカの忌まわしい記憶をフラッシュバックさせる一方で、失われた俊介の記憶を甦らせる。
 「俺は日野俊介! イエローターボだ!!」
 俊介が黄に変身したところで敵味方が全員合流してのバトルとなり、新技のイエロー床運動アタックが炸裂。さすまた振り回して割と強い記憶ボーマは、コンビネーションBボウガンからVターボバズーカでビクトリー!
 記憶ボーマはヤミマルビームで巨大化し、ラガーファイターのキックオフが今回は正面から炸裂し、裏拳に始まるパンチの連打、そして一方的な銃撃からスクリューキックで完封勝ちを納めるのであった(今回から必殺技後の勝利のポーズが追加)。
 (会いたいな、君と……きっと、素敵な女の子になってるだろうな)
 仲間達が遠巻きに見守る中、俊介は海を見つめてさよちゃんとの想い出を振り返り……また、矢沢?
 「捨て去った筈の月影小夜子で居た頃の、忌まわしい想い出め……なぜ俊介を葬る邪魔をした! 何故だ!」
 そしてキリカは、貝殻に秘められた優しさの記憶を取り戻さないまま、絶壁で独り歯噛みするのであった。
 ナレーション「俊介とキリカは、お互いが、10年前に、一瞬の出会いをした相手だと気がつかなかった。そして、その想い出は、俊介には懐かしく、キリカには、忌まわしい――。永遠に、交わり合う事のない、二人の思い出だった」
 身内の酷い発言に始まって、ナレーションさんの酷い発言で締められて、つづく。
 同じ出来事でも立場が違うと見方も記憶も変わる、という部分をドライに描いているのが非常に渋く、少年時代の善行が俊介を救うと共に、キリカにとっては小夜子であった過去が人間を助ける事となるも、結局、二人が10年前の出会いに気付かないままなのは美しい着地。
 第23話以来1クールぶりの登板も全くぶれない藤井先生と、喜び勇んで(?)海を撮りに行った長石監督が固くスクラムを組み、長石×藤井×海×悲恋と来ればどちらかが爆死しかねない勢いでしたが、二人ともレギュラーだったので回避されました!
 難を言えば、キリカ(小夜子)と絡む男性キャラがこれで3人目となってしまい、キリカのヒロイン力が増大する一方で、ますます「俺たちの青春は終わった!」感が強くなってしまった事ですが、炎さんはもう少し粘ってくれてもいいんですよ……?
 ただ、ここまでいまいちパッとしたエピソードの無かった俊介に、いいキャラ回が来てくれたのは、良かったです。
 次回――ナレーションは、はるな軍曹vsカンフー少女を煽っているのに、映像は完全にメカ山口無双で、主題はどっちだ?!