東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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人を越えろ メロン被れ この星の為

仮面ライダー鎧武』感想・第27話

◆第27話「真実を知る時」◆ (監督:諸田敏 脚本:虚淵玄
 アーマー召喚中の鎧武を背中から撃った龍玄は、変身の解けた紘汰に躊躇いながらもトドメを刺そうとするが、紘汰を守って背後から切り掛かるバロン。
 「この男は邪魔者であっても、敵ではない」
 は戒斗さん史上最高に格好良かったのですが……直後、
 「……俺の敵とは、強い者を背中から撃つような奴だ!」
 で台無し(笑)
 根が真面目なミッチは、弱い者を背中から切るのはいいのかよ?! と言い返せずに逃走し、戒斗ロジックとは大変相性が悪そうですね……。
 「……どこで誰の恨みを買ってるのか、貴様ほどの馬鹿なら、気付く事もないんだろうな」
 紘汰は段々、仁と徳の人という“馬鹿を通り越して器の大きい男”へ周囲の反応によりシフトしていき、日本の戦国というよりは中国古代の英雄像。……そう捉えると、DJの紘汰への肩入れが文脈としては腑に落ちてくるのですが、今頃気付いたのですがもしかして、紘汰が劉邦、戒斗が項羽、といったモチーフがあったりしたのでしょうか。
 気絶した紘汰は木の上に偽装された状態で目を覚まし、表現はギャグになっていますが、負傷したミッチをそのまま放置したり、火縄銃を直撃させた耀子をそのまま放置したどこかの誰かよりは、戒斗のほうがよほど気遣いの人に見えてきてちょっと困ります(笑)
 ユグドラシルでは兄さんのシャワーシーンが挿入され、試作型ドライバーのテストの際に負った傷を見せる為なのですが、これは『仮面ライダーBLACK』がお好きという脚本の虚淵さんへの、諸田監督からのサービスだったりしたのでしょうか(『BLACK』第1話といえば、光太郎と信彦のシャワーシーンなので!)。
 (この程度の痛みなど、この先背負う罪に比べれば……)
 半裸の貴虎にメガネプロフェッサーが投入される初めてのメロン邪面召喚は失敗に終わり、錠前に飛びついて手動で外すヒロインムーヴを決めたプロフェッサーは、倒れた貴虎を抱き起こす……。
 「随分遠くまで来たもんだ……だがよーやく、ゴールが見えてきた」
 資料を眺めるプロフェッサーは珍しくどこか感傷的に呟き、回想で描かれる、かつての二人。
 「おまえの才能が最後の希望だ。俺はそれに懸けている。危険は承知の上だ」
 「……そこまで身を捧げて世界を救うなら、世界の方が君に捧げられていい筈だ」
 「ん?」
 どこまでが嘘で、どこからが真実か……かつてのプロフェッサーが、貴虎に親愛に似た感情を向けているのは、面白い芝居。
 「ヘルヘイムがもたらす新たな世界には、新たな秩序と、統率が必要だ。その為の強大な力が、いずれは君のものに――」
 「それよりまずは、量産だ」
 「だが……!」
 「性能よりもコストを優先し、より大量生産の可能な設計にするんだ。一台でも多くのドライバーを作り、一人でも多くの人を救う。それが……それが俺たちの使命だろう」
 「僕は君の為のドライバーを作ってるんだぞ!」
 「ああ。俺が人類を救う為の、俺の夢を託したドライバーだ」
 しかし、あくまで個人の欲求に基づき行動するプロフェッサーと、使命感と私欲が限りなく溶け合った貴虎は根幹の部分で擦れ違い……オーバーロードについての情報を伏せたプロフェッサーは、貴虎とは道を違える事に。
 貴虎を見舞った病室を出てからの豹変が早いので、プロフェッサーの本心はなんとも言いがたいところはありますが、貴虎に対して「自分を理解し、自分をうまく使う、理想の王」を求めていたところはありそうでしょうか。
 研究資金を潤沢に用意してくれた上で、その成果をフルに活用してくれる人みたいな(笑)
 一方、紘汰は森を彷徨っていたピエールがヘルヘイムの果実を口にしかけるのを発見。
 「地獄のサバイバル訓練を思い出すのよ! 正体不明の動植物は、食糧にしちゃ駄目!」
 直前でぺしっと捨てるピエール、プロだ……(笑)
 カバンから食糧を取り出す紘汰だがピエールの餌付けに失敗し……ピエールが出てくると過剰にコミカルな演出になるのは毎度の事ですが、「もうめんどくさいから俺行くわ」は、ギャグでも駄目なのでは。
 なんだかんだで二人は同道し、ユグドラシルの管理するクラックへとピエールを案内する紘汰だが、赤ロードが調査キャンプを襲撃しているのを目撃。
 「おまえさては戒斗と似た者同士だろ!」
 ハイ、正解です。
 研究員を守る為、鎧武&メロン&ドリアンが赤ロード&インベス軍団と戦いになり、
勿論、メロンはなぜオーバーロードの事を知らないのか? など一切疑問に思う事なく、知っている限りの情報を明かす鎧武、敵にしても味方にしても爆発力が高い。
 「貴様らは、滅びるだけの猿! 我らフェムシンムとは、格が違う!」
 赤ロードには断固として肉体言語以外での交渉を拒否され、メロンから殴ってわからせるしかないと言われると「よーし!」と手を打つ鎧武は、それでいいのか。
 兄さんの言う「戦意喪失まで追い込んで身柄を拘束」「話し合うのはそれからでも遅くない」って、「半死半生になるまで殴りまくる」のち「監禁して自白するまで拷問」の意味ですよ!!
 両者共闘の画そのものは盛り上がるのですが、相変わらず紘汰の思考回路が話の都合に流されがちなのが勿体なく、赤ロードのファイヤー魔球からメロンをかばってジュテームしたピエールは、クラックめがけて放り投げられて退場。
 バナナ番長を探して暴れ回る他校の不良もとい赤ロードだが、森の奥で廃墟の玉座に座る白ロードから念を送られるとすごすご撤退し、こればっかりだな、この人……。
 「人類とは異なる知性体か……だが、我々はファーストコンタクトに失敗したようだな」
 紘汰と貴虎は森の奥へと向かい、「ファーストコンタクト」という言葉はやはり入れておきたかったのだろうな感。
 「諦めるのは早い。まだ俺たちは出会ったばかりだ」
 紘汰が“素顔の”貴虎に向けて力強く口にするのは、「オーバーロードとの出会い」と同時に「色々あった斬月との関係」にかかっていて、良い台詞でした。
 「この森を支配できる者と交渉が可能なら、人類の生存戦略は、根幹から変わってくる」
 「あんたが俺の言葉を信じてくれて助かった」
 「――貴虎だ」
 「え?」
 「名乗るのが遅れたが、礼を言う前に間に合った。絶望以外の選択肢をもたらしてくれた事、感謝する」
 心の底ではプロジェクト・アークそのものを、人類にとっての「希望」ではなく「絶望」と捉えていた貴虎は、紘汰の伸ばした手を握り、大きな断絶を乗り越えて人類の為に新たな絆が生まれる良いシーンなのですが……なのですが……元を辿ると、この光景を娯楽として消費し、超次元Youtubeで実況生配信して登録数を稼いでいるDJの差し金なので、どうにも盛り上がりにくいのが如何ともしがたく。
 ちらっと目にした赤ロードを追おうと変身する二人だが、背後から鎧武にシグルドの矢が突き刺さり、厭味たっぷりに鎧武を攻撃するシグルドを止めた斬月は、鎧武を先行させる。
 「行け葛葉! おまえは奴を追え!」
 ファースト・コンタクトの挽回に、その人選で良いのでしょうか……。
 「まあいいさ。遅かれ早かれ、こうなる事はわかりきっていた。傷つき、疲れ切った戦士の為に、休息の時が必要だ。……は、はははははははは」
 まんまと足止めに成功したシド、そしてプロフェッサーが共に悪い笑顔を浮かべて、兄さんの身辺に暗雲が立ちこめながら、つづく。