『牙狼<GARO>』感想・第23-25話
◆第23話「心滅」◆ (監督:横山誠 脚本:小林雄次/雨宮慶太)
「やっと思い出してくれたみたいだね。君にもしもの事がないかどうか、ずっと見守っていたんだよ」
前回の登場時、ライティングが凄い事になっていた龍崎先生=バラゴと判明し、京本政樹をキャスティングして人の好い心理学者という事はなさそうだが特別・友情出演枠でラスボスを演じられるほど出番があるのか……とメタ推測とメタ推測がぶつかっていたのですが、魔戒コートを身に纏い、堂々ラスボス化。
画廊の時も、遊園地の時も、造形家の時も、実はずっと物陰から見守っていました!
バラゴは道寺家に伝わっていた顔変えの秘薬によって龍崎を演じていた事がわかり、ホラー喰いの魔戒騎士がなぜ零の実家を襲ったかについても理由付け(この事件がそこまで昔のものではない事を考えると、バラゴは本物の龍崎を殺害してすり替わった可能性もありそうでしょうか)。
前回ラスト、あれだけ格好良く決めて東のギルドに乗り込むも空振りに終わった鋼牙と零は、西のギルドから謀反人討伐を正式に命じられるが、その間にバラ崎先生によってカオルがさらわれてしまい、もののついでにゴンザが殺されなくて本当に良かった……。
「あん時の小僧が、今や黄金騎士か」
「かつては貴様も、ガロの称号を追い求めていた筈だ」
「はっ、そんなもの、闇の力の前には、儚いもんだ」
「貴様!」
「そこの無名の魔戒騎士。君も思い知るといい。最強の魔戒騎士が、誰なのか」
ゴンザが貼り付けた探知の札により、カオルを取り戻すべく先回りした鋼牙と零はバラ崎先生と対峙し、零に対するバラ崎先生の呼び方が妙に面白い(笑)
バラ崎は首飾りを使って暗黒騎士の鎧を召喚し、漆黒の鎧にマントを翻し、大ぶりな剣を振るう姿は圧倒的に格好良く、その剣技はゼロ、続けてガロを一蹴。
「わかっただろう。闇の偉大さが」
言動が若干以上に、同期の某ウルさんを彷彿とさせるのが不安ですが、生身となっても鋼牙と零を一蹴して力の差を見せつけたバラ崎は、剣を放り捨てて二人を見逃す余裕さえ見せ、トドメは後のお楽しみと、新たな肉体を得て一人の黒衣の女となったた神官ガルムと共に、その場を走り去る。
完敗を喫した鋼牙と零だが、怒りと焦りに我を失う鋼牙は抜き身の段平片手に正面からカチコミを仕掛け、その前に立ちはだかるのは用心棒のコダマ。
「おまえの息子、強い子に育ったな」
「いいえ。もっともっと強くなりますわ」
戦いをモニターするバラ崎と神官は言葉をかわし……えええっ?! 鋼牙の母親、三神官なの?! これまでの厭味の数々は強く育ってほしいという母の愛だったの?! 最終回間近で衝撃すぎる真実?! と狼狽のあまり一時停止を押したのですが……その間に冷静になって考えると……コダマの方ですね(笑)
体術と呪術を駆使するコダマのアクロバットな動き(壁走りが大変格好いい)に圧倒される鋼牙は、とうとう鎧を召喚。その力で形勢を逆転するが、コダマもまた、呪術によってホラーじみた真紅の外装をその身にまとって戦闘力を強化し、最終的に着ぐるみ怪人化するのは納得の落としどころ。
両者互角のまま戦いは続き、零の制止を振り切って死闘の中で装着限界を超えた鋼牙は鎧に蝕まれ始め、上半身が大きくパンブアップ。ここに来てかなり見映えのするデザインで、より獣じみた容貌の金狼ビーストと化すと、超人ハルク状態で大暴れ。
「もしやあの男、闇に魂を捧げる気か」
力には力――禁忌の手段を選んだ鋼牙を取り込み、荒ぶる黄金魔獣は闘争本能の趣くままにコダマの体を引きちぎり、コダマは壮絶なリタイア。
「鋼牙ぁ!」
「ゼロ……ガロの鎧を解除してくれ……頼む」
暗黒騎士を倒すべく、闇に身を委ねようとする鋼牙だが、指輪の頼みに応えた零が、ベルトに抱きつく渾身のヒロインムーヴ! ……じゃなかった、
「思い出せ、自分が何者なのか! おまえはガロだ! 暗黒騎士なんかじゃない!」
ベルトのバックルにソウルメタルの剣を叩きつける事で強制変身解除に持ち込み、以前の「俺たちは! 俺たちは魔戒騎士じゃないのかぁ!!」との対比が、綺麗に収まりました(高層ビルの壁登りシチュエーションも、初の直接対決を意識したのかも)。
「……悔しかったから言いたかなかったけど……俺ずっと憧れてたんだよね。ガロの称号に。……無様にくたばったりしたら、承知しねぇからな」
ソウルメタルの刃身が写すのは、再び、魔戒騎士・冴島鋼牙。
道を取り戻した両者は、暗黒騎士の待ち受ける建物の中へ……で、つづく。
…………また、空振りしないと、いいな。
◆第24話「少女」◆ (監督:雨宮慶太 脚本:小林雄次/梶研吾/雨宮慶太)
OPの歌詞が2番のものになり……
いつの日かおまえには わかってほしい
戦いだけに生きた 俺の胸の裡を
愛にはぐれ 愛を憎み 愛を求める
鋼牙ーーーーーーーとなりました(笑)
まあ、直後の「わずかな 安らぎさえ打ち捨てた 誓いだけど」で事情が語られ、「立て 修羅のごとく」と来るのが映像ともぴたっとはまって滅茶苦茶格好いいのですけれども!
ところでなんかフレーズに馴染みがあるな……と考えていて気付いたのですが、
いつの日か君は 語ってほしい
戦いだけに 生きた勇者のことを
「紫狼伝説」(『特捜ロボジャンパーソン』挿入歌)だ!
ちなみにこちらは作詞は巨匠・山川啓介、歌は影山さんで、「牙狼 savior in the dark」の作詞にあたって影山さんがちらっとでも思い浮かべたりしたのか、単なる偶然の一致なのかは、少し気になります(笑) 『ジャンパーソン』大好き人間なので、影山さんがこの歌に思い入れがあったら嬉しいというだけの話なのですが、思えば「狼」繋がりでもあり……方向性は違いますが、ロンリーヒーローの魂を歌った曲でもあり(「紫狼伝説」の方はバラードですが、こちらもまた名曲)。
そんなわけで最終回間近に思わぬところから『ジャンパーソン』の繋がりが一方的に発見され、佳境に入る劇中では鋼牙と零が神官ガルムの空中コンボを受けて宙を舞っていた。
2話連続、3回目となる地面ダイブを堪能した零は鋼牙を先に行かせて神官の相手を買って出るが、この世界の異能者は大概日々の筋トレを欠かしていないので、好き放題に足蹴にされる事に。
一方、儀式の間に辿り着いた鋼牙は純白のミニスカドレスに着替えさせられたカオルを助けようとするが、その前には黒衣のフードを身につけたバラ崎先生が立ちはだかる。
「カオルを返してもらおう!」
「返す? 馬鹿な。彼女はもともと僕のもんだ。冴島大河を貫いたこの手で……この顔に触れた時から、彼女は僕のものになった」
二つの戦いが同時進行で描かれ、神官を追う零は静香の幻影に惑わされそうになるが……
「違うだろ静香。俺の本当の名は……」
が、幻影を打ち破るキーとなるのは、険しい零の表情も決まって格好良かったです。
「でも、私を斬れるかしら? 銀牙」
「その名は捨てたぁ!」
姿形を借りて幻惑するばかりではなく「その名」を呼ぶ事で零の想いを大変いやらしく踏みにじる神官は、ソフトバンクホークスばりに零を圧倒すると、魔性を宿した姿に変貌。必死に抗う零だが、遂にその胸を、神官ビームが貫通する!
「じゃあね、銀牙」
すっかりやられ役の零が2話で4度目の地面ダイブを決めていた頃、鋼牙の刃もバラ崎に届くに至らず、目覚めたカオルは魔界の言葉を口にする。
「数千年の刹那に、人間界にも諸悪が蔓延したな」
子供扱いで鋼牙を叩き伏せたバラ崎は、メシアと意識を繋いだカオルをゲートとする降臨の儀式に取りかかろうとするが、メシアカオルの矛先は突如としてバラ崎へ。
「汝は、我が人間界に降臨するための、捨て駒に過ぎぬ。矮小な人間ごときと、同化するほど、愚かではない。我はホラーの始祖、メシア」
「おまえを信じ、そして、おまえに全てを懸けてきた、この僕に……何故だ!?」
「汝が喰らいし我が同胞は、覚醒の力となり、我が繁栄の、礎となりましょう」
大口開けたメシアカオルは、宿したホラーごとバラゴを喰らいつくし、同胞を裏切り長年にわたって暗躍してきたバラゴ、思わぬ形であっさり退場。
仕込みに時間がかかるとはいえ、基本的に裏でこそこそ暗躍している系でしたし、闇に溺れ、道を誤った魔戒騎士の末路としては、哀れな小者として消え去っていくのは割と納得度の高い結末でしたが、前回で暗黒騎士の出番が終わりになるのとしたら、ちょっと残念。
メシアの支配からカオルを取り戻そうとする鋼牙の前には黒衣の神官が立ちはだかり、バラ崎どころか完全にホラー側の人間であったと判明。
転落しすぎた零はなんとか身を起こすが、身を以てレーザーを防いだ首飾りが半壊しており、「今度はもっと、美人に修復してもらうわ」と、おいしい要素を使い尽くしに来ます。
鋼牙は愛のパワーで苦手属性:女性を乗り越えると、神官に頭突きを叩き込み、飛び蹴りから袈裟懸けの一撃!
「汝ら、何ゆえに我が覚醒を阻む。そんなに、この女が、大切なのか!」
零も合流するが、メシアカオルは凄まじい身体能力を発揮し、セクハラ王子にはピンヒールによる踏みつけが、鉄面王子には顔面への回し蹴りがクリーンヒットし……ちょっと、本人の意識残ってませんかこれ。
「やめるんだ、カオル!」
懸命に呼びかける鋼牙の胴体をメシアカオルの振るう剣が横薙ぎに切り払い、痴話喧嘩がとうとう刃傷沙汰に発展。鮮血の舞う強烈なインパクトの一撃に加え、その衝撃で吹き飛ばされた鋼牙の手を零が掴んで引っ張る事で、壁を蹴りながら鋼牙が舞台上へと舞い戻るのは、大変格好いいアクションでした(この戦場の高低差が、比喩としての「舞台を降りる/降りない」に掛かっているのもお見事で、ラスト3話の中でも一番好きなアクション)。
「カオル! おまえの手は、剣を握る為にあるんじゃない!」
カオル=画家、の部分をきちっと拾った鋼牙が、カオルを抱きしめるヒーロームーヴを決めると意識を失ったカオルは倒れ、鋼牙はカオルの体を通って深魔界へと向かい、直接メシアを食い止めようとする。
「おまえらもバラゴと同じ道を辿るがいい」
零はしぶとく立ち上がったガルムを食い止めるべくその場に残り、鋼牙は魔界へと向かう道の途中で、カオルの意識と再会。二人の周囲をカオルの描いた様々な絵が巡り、鋼牙はその中の一枚に目を止める。
「……これは?」
「私が……これから書きたかった絵!」
鋼牙が幻影のキャンパスを手に取るとその身に光が宿り――それは、未来へと繋がる力。
「この絵……俺が必ず描かせてやる」
鋼牙とカオルの関係性において、言うほど“カオルの絵”に対する鋼牙のこだわりが見えないのはちょっとした不満点だったのですが、鋼牙がそれを示すと共に、魔戒騎士として人を護る以上に、冴島鋼牙としてカオルのパーソナルな部分を護る宣言になっていて、二人の関係の集大成としてこれは文句無しの格好良さでした!
後ちゃんと、カオルの目を見ていいました!!
カオルと固く約束を交わした鋼牙は魔界の深奥へと乗り込み、そこで、復活しつつあるメシアの姿を目にすると、鎧を装着し、馬を召喚。モノクロームの世界に屹立する大地母神といった姿をメシアは顕現し、ヒーロー達がやたらと女性に蹴られまくったこの2話を締めるのが、上半身裸のホラーの女神に挑むCG黄金騎士、というのは実に『牙狼』らしいクライマックス。
メシアはガロをあしらいながらカオルの肉体を探り当て、零は再び鎧を装着して神官ホラーと激突し、二人の狼の苦闘が佳境に入る中、つづく。
予告は指輪のアップで本編映像は一切見せず、最後の因果、切り裂け、ガローーー!!
◆第25話「英霊」◆ (監督:雨宮慶太 脚本:梶研吾/小林雄次)
メシアはとうとう魔界で立ち上がり、雄々しく挑むガロだが、バリアに阻まれ吐息で撃墜される絶望的な戦況。ゼロもまた、神官ホラーの新体操攻撃に翻弄され、魔界ではメシアの足跡から次々と生み出されるホラーの前に、鎧の外れた鋼牙は危機に陥る。その危機を感じ取ったカオルの前に姿を見せたのは……亡き父の幻像。
「お父さん、あたしどうしたら!」
「描けばいいんだ」
「え?」
「おまえは剣士じゃない。だから絵を描けばいいんだ。その絵が、誰かの力になる事もある」
「お父さん……」
「私が出会った黄金騎士、冴島大河の受け売りだけどね」
絵描きとしてのカオル、それぞれの出来る事、にスポットが当たり、父娘の和解も補強。“創作の力”は好きなテーマ性なので最後にそこに焦点を当ててくれた事は嬉しく、意思の世界で生まれたキャンパスに、カオルは筆を走らせる――。
魔界ではゲートたるカオルの肉体に向けて遂にメシアが飛翔し、奮戦むなしく鋼牙が無数のホラーに押し潰されたその時――カオルが描き上げたのは、翼を広げた黄金の騎士!
その力は魔界の鋼牙へと届き、今、黄金騎士は空を翔ける!
一方、神官に追い詰められた零の元にへっぴり腰で駆け付けたのは、黄金の翼ではなくゴンザ! ソウルメタルの剣を振るう事ままならないゴンザだが、そのパスがアシストとり、クリティカルヒットした回転斬りにより、遂に神官を撃破……まあここは、零の見せ場というよりゴンザの見せ場になって、この3話、ひたすら蹴られまくっていた零は、ちょっと可哀想(笑)
メシアと空中戦を繰り広げていた黄金騎士はとうとう、鎧抜きで鋼牙が翼を広げる凄い画を披露し、戦艦がMSの敵かぁ! と、メシアの眉間にソウルメタルの刃を一閃!
「なぜ、たかが人間ごときに」
「我が名はガロ! 黄金騎士だ!」
《おうぉー おおおおおー おおおーおー おーおーおーーー!》
メシアは大爆発を遂げ、ここに最大最強のホラーを討ち果たす鋼牙。ところがその時、爆発の中から暗黒騎士の手が伸びて鋼牙を闇に呑み込もうとするが、鋼牙が必死に伸ばした手をカオルが掴み、ともすれば目を逸らしていた人の世と鋼牙の固い繋がりの象徴が映像に落とし込まれて、ラスト3話、とにかくあらゆるものを目一杯に詰め込んできます(笑)
鋼牙とカオルは無事の帰還を果たすが、メシアに喰われた筈の暗黒騎士が儀式の門の向こうから姿を現し、てっきり前々回でお役御免だと思っていたので、これは嬉しいサプライズ。
「我が名はキバ――暗黒騎士」
「違う! おまえは騎士ではない!」
「ああ! おまえはホラーも同然だ!
「俺たちは、ホラーを狩る魔戒騎士だ!」
鎧を召喚しようとする鋼牙と零だがキバの邪念に阻まれて失敗し、鋼牙は「俺を裂け目に投げ込め!」というザルバの言葉に従い召喚円の中にザルバを放り込む。
メシア召喚の儀式失敗の影響か、魔界へのルートとなっていた円環が巨大化してビルの上層を吹き飛ばすと、鋼牙とキバは勢いのついた空飛ぶ円環を地面代わりにした空中戦へと突入し、最後の最後まで、如何にCGによる造形物をアクションの中に目立つ形で取り込むのか、を工夫し続けた今作らしいバトル。
追い詰められる鋼牙だが零の飛び道具による援護から懐に飛び込んでの一太刀を入れる事に成功し、見せ場があって良かったよ零……!
ビルの壁面に突き刺さった円環の上で戦う三者を、ヘリ空撮のようなカメラの動きでロングの俯瞰で捉える――ニュース画面のような映像により、“見たことのある映像の一部”として視聴者の錯覚を引き起こす――事で、本当にそこに刺さっていますよ、というリアリティを引き上げるのは面白い見せ方(まあ、じっと見ていると、ちょっと人間が大きいですが(笑))。
零はビルの中に投げ込まれ、円環は再び落下。空中での死闘が突き、キバの猛攻を受ける鋼牙に父を葬った凶手が迫るが、その記憶が逆にキバの攻撃を先読みさせて鋼牙を救い、体勢を立て直す鋼牙。
円環はとうとう地面に落下すると激しい縦回転で道路を転がり始め……あ、キバの方も転んだ(笑)
長く激しい戦いの末、円環は埠頭の貨物船に突っ込んで大爆発。満身創痍の鋼牙がキバの斬撃を辛うじて弾くと、その切っ先の軌道が虚空に円を描き出し、キバの邪念を打ち破って鎧を……天使が運んできた(笑)
「ザルバ!」
「待たせたな」
ザルバの帰還と共に鋼牙は鎧を装着し、マントをはためかせた真なる黄金騎士がここに誕生!
「鎧を纏ったところで同じだ。貴様一人に、何ができる」
「俺は一人ではない!」
カウンターパンチを決めたガロは抜刀から馬をイメージ召喚すると、それは無数の黄金騎士の軍団に。
「かつてガロの称号を得た全ての英霊と、俺はともに戦ってきたのだ!」
その気高き志と共に宿命の系譜を引き継いできた者と、力だけを求めてそれを放り捨てた者との違いが両者の間の決定的な差として描かれ、金色の剣を振るうガロは闇を切り裂く怒りの刃を叩きつけ、遂に暗黒騎士を調伏。
復活からなんと約8分、壮絶なラストバトルでありました。
「少々、力を使いすぎたようだ。今まで楽しかったぜ、鋼牙……」
だがその勝利の代償として、予告で自ら死亡フラグを立てていたザルバは、砂のように崩れ去り……鋼牙のみならず、カオル・ゴンザ・零それぞれの悲痛な表情が、ザルバの存在の大きさを示して素晴らしかったです。
そしていくばくかの時が流れ――
「カオル、しばらくお別れだ。俺は北の管轄に行く事になった」
「大丈夫。実は、私もね――」
鋼牙は北へ、カオルはイタリアへ。それぞれの“先”へ進み続ける為、二人は一時、別々の道を歩み出す事に。そこへ、首飾りも修復された零が、西のギルドからの報酬として携えてきたのは、新たに作り出された魔導輪。
「おまえか。俺と契約したいという魔戒騎士は。なら、俺に名前をつけてくれ」
「おまえの名は…………ザルバだ」
しばしの逡巡の後、鋼牙は指輪に、忘れがたき相棒の名を付ける。
「ザルバ?」
「旧魔界語で、「友」という意味だ」
「じゃ、俺もおまえのザルバだな」
ちゃっかりアピールした零は、鋼牙に代わる東の担当になったという事で去って行き…………出てくるのかはわかりませんが、次のシーズンで彼女が出来るといいですね!!
「寂しくなんかないよ。……俺には、おまえがいるからな」
零は首飾りに語りかけ、鋼牙はカオルに深々と一礼。
「おまえには、本当に世話になった」
鋼牙はゴンザの運転する車に乗り込んで走り去り……
「最後まで愛想ないやつ。…………ありがとう」
カオルはその背に呟き、それぞれの新しい道が始まる中、鋼牙が車内で手にしたのは、カオルから餞別に送られた絵本『黒い炎と黄金の風』。その、ラストページに描かれていたものは…………
涙をこらえる鋼牙の表情が絵本の影に沈み込み、その答は明かされないまま、名場面集をバックにスタッフロールへ。
「これで、私と黄金騎士との物語は、終わったわけではない。彼が、護りし者として、戦い続ける限り」
〔暗黒魔戒騎士編〕と銘打たれて「終」が刻まれ、北の地で雪原をゆく鋼牙の姿が描かれて、完。
最後の最後で鋼牙を「泣かせる」というのが、「笑わせる」以上に鋼牙の物語として鮮烈になり、そのラストシーンは胸の中に仕舞われる、というのも美しい着地となりました。……野暮な個人的解釈をするならば、鋼牙が「泣いた」事から、カオル絡みというよりは、大河絡みでありましょうか。
カオルの絵、が一番大きいポイントでしたが、コダマの正体、銀牙の名、カオル両親、魔道具と騎士の相棒関係、などなど、足りていたものも足りていなかったものも、今作ここまでの要素を出来る限り拾い、出来る限り説明を付け、超巨大なラスボス戦から、でもやっぱり暗黒騎士と決着を付けたいよね! とやれるだけの事をやり尽くすサービス満点の内容をテンポ良くまとめ上げ、濃厚にして充実のラスト3話でありました。
一挙3話配信だった事もあり、脳がちょっと咀嚼しきれていないところもあるままの感想となりましたが、個人的には、「絵」の要素をきっちり拾ってくれたのが、大変嬉しかったです。
深夜番組という事で売りの一つとして過激な表現を押し出す部分はありつつも、コアな精神が“ヒーロー物”であり、表現そのものに振り回される事なく、そのコアを貫いてくれた構成が気持ちの良い作品でした。
もう少し頭が冷えたら、補足的な事を書こうかとは思いますが、ひとまずここまで。『牙狼』感想、お付き合いありがとうございました!