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肉肉お菓子肉お菓子

『騎士竜戦隊リュウソウジャー』感想・第10話

◆第10話「無敵のカウンター」◆ (監督:柏木宏紀 脚本:金子香緒里)
 注目は、
 「どんな攻撃でもカウンター攻撃で返してくるだと……?!」
 深刻そうに眉を寄せながら、今日もYoutuber家まで来てしまっているバンバ兄さん。
 ……と思ったのですが、よくよく考えるともう、共同歩調を取っているという事で良かったのか……? なんか、魂のグータッチとかしていたから仲間……? と、本来はチームアップ回としてバンバとコウ(達)の関係性を掘り下げる想定だったと思われる第5-8話が大惨事の釣瓶打ちだった為、未だにバンバ兄さんとコウ達との距離感が腑に落ちず、様々なシーンが必要以上におかしく見えて悩ましい。
 なお今回もアスナ・メルトが個別にトワ・バンバと会話をかわすシーンは無いのですが、もはや、徹底してビジネスライクな関係と受け止めた方がいいのか。
 「今忙しいから。アスナは菓子でも食べてて」
 「お菓子はういの部屋に置いてあるから」
 あらゆる攻撃に強烈無比のカウンターを放ってくる貘マイナソーに手も足も出なかったコウとメルトは、バンバとトワを呼んで対策を練り始め、素体に心当たりのあるアスナが話しかけようとすると、筋肉担当は隅っこでビスコでもかじってろ、と邪険にする物凄い感じの悪さ。
 ……というか急にマイナソー対策を真剣に検討し始めるコウが先週と別人格なのですが、これは既にワイズルーと入れ替わられているのでは。
 まあ既に、「とりあえず攻撃」してみた結果、カウンターの流れ弾で民間人に被害を出しかけたので次のフェーズに入っているのかもですが、ただでさえ前回、自由すぎて印象を悪くしたコウが度々メルトにたしなめられる破壊行為優先の結果、あわやの被害を出しかけるもドラマをアスナに割り振る都合で自身の行動を一切顧みない、という無神経な話運びで、しかし、もはやこれぐらいの事故は『リュウソウジャー』では日常茶飯事レベル。
 「なんにせよ、マイナソーを生んだ奴を探せばてっとりばやい」
 バンバの発言にコウも頷いているのですが……え? なにが?
 素体の体調を心配する会話の流れならわかりますが、現在の議題はマイナソー対策なので、文脈からするといざとなればぶった斬れるなのですが、コウは、それに頷いてはいけなかったのでは。
 アイドル回の下手な歌アレルギーの件があるので、素体の特性=マイナソーの特性(弱点)だから、素体がわかれば対策が立てやすい、という事なのかもですが、「マイナソーは素体の特性を持つ」も「マイナソーはモチーフになった動物(物語上の意味づけがないのでほぼメタ要素になっていますが……)の性質を持つ」も、どちらも話の流れでなんとなくそういう事になった、みたいな見せ方の為、動機付けとしてどうにも根拠薄弱。
 そして、本当に「いざとなったら」わかりませんが(多分、バンバは最終的にその覚悟がある人、という位置づけだとは思うのですが……)、基本的にバンバ&トワもコウ達と共同戦線を張る事にした時点で「素体を抹殺する」という選択肢を封印している筈なので、実は、リュウソウジャー側に素体を探す積極的な理由が消滅しているというミラクル。
 勿論、既に素体を見かけたり関わっていたりする場合は、たとえ“マイナソー対策と無意味でも”気に懸けてこそヒーローフィクションとして効果的になるわけですが、そうでない場合、限られた時間でマイナソーよりも素体を優先的に探す理由が、実は特に無くなってしまっています。
 となると「リュウソウジャーと素体を絡めたドラマを作りやすくする」為には「素体を見つけるとマイナソーの弱点がわかる/行動パターンがわかる」など、素体を探す明確かつ積極的な理由を、設計図段階で組み込んでおかないといけなかったわけですが、それが無い為に、リュウソウジャー側が素体をどう扱いたいのかが既に迷子になっており、基本的な行動方針の説得力が欠落してしまう事に。
 そういう点では最序盤における「マイナソーは素体の執着に影響を受ける」という点を押し進めていければ良かったと思うところなのですが、犬マイナソーの辺りから早くも有耶無耶かつ曖昧になってしまい、シナリオの自由度を優先した故なのか、基本的なルールの整備を嫌がった事により、“ルールの中で生まれる面白さ”や“ルールを踏まえた意外性の面白さ”が生じなくなってしまい、あらゆるルールが足すも引くも話の都合次第、に見えてしまう状況に自ら陥ってしまっています。
 そして炸裂する、
 「やったー! お肉お肉!」
 ですが、生粋戦士として緊張と弛緩を巧くコントロールしているというよりも、状況をわきまえない脳天気、に見えてしまうのがリュウソウジャー全体の好感度の下がっていくところ。話の緩急としても対策会議からの落差が悪い形で大きすぎますし、こういう時こそ、Youtuberが明るくアプローチしてきて、コウ達はその激励に応える、という形でも良かったかな、と。
 一方、てめーは部屋の隅っこでフルタチョコでも数えてろ、と戦力外通告を受けたアスナは公園で体育座りしていたが、ティラミーゴに励まされて立ち上がり(ようやく、ティラミーゴの会話能力、役に立つ)、ボクサー少年、そして少年から生まれたマイナソーと接触して戦闘に。
 「君のマイナソーなら……右手が、弱点の筈!」
 なんかまた、新しいマイナソー設定が(笑)
 結局、弱点かどうかよくわからなかったので、単なるアスナの勘違いと思い込みだったのかもしれませんが、マイナソーを生む前の負傷ならばまだともかく、生んだ後の素体の負傷がマイナソーに影響を与える、という発想がそもそもどこから沸いて出てきたのか凄く謎。
 これも本来は初期段階(第3話ぐらいまで)で明確に提示しておくべき基本的ルールを、後から小出しにする癖をつけてしまう事で、それが真実なのか誤解なのかハッキリせず、それによってキャラクターの判断力を見せたいのか失策を描きたいのかもわからない、という混乱状況を無駄に生んでしまっているわけで、マイナソー問題が全方位に亀裂を広げていきます。
 コウ達もマイナソーの性質について手探りで対応している、というならばそれはそれで一つ一つのリアクションが必要ですが、そういう作劇にはなっていないわけですし。
 マイナソーに敗れたアスナはコウとメルトに揺り起こされ、前回の今回なので脚本段階での摺り合わせは出来なかったのでしょうが、前回「お前達は人の話を聞かない!」と憤っていたメルトが、「アスナはお菓子の事しか考えてないから話を聞く必要を感じなかった」と宣ってしまう地獄絵図が、『リュウソウジャー』の日常。
 赤青緑黒が貘マイナソーと戦っている間に、ボクサー少年を再び見つけたアスナは少年の事情を知るが、そこにワイズルーが変装で介入。親友’(偽物)から憎悪を突きつけられたボクサーが絶望に陥り、マイナソーが(急激に)成長して巨大化する場面が、ドルイドンの干渉により素体が負の感情を爆発させるという形で、ようやく、劇的に描かれる事に。
 正直、本来やって当たり前レベルの話ではあるのですが、第10話にして本当にようやく、今作の志向するドラマ性と、《スーパー戦隊》の基本的魅力、との掛け算から無理なく発生しうる「型」を見る事が出来ました。
 合わせて、素体の精神を徹底的に追い詰め、落下しそうになった少年に手を伸ばしたアスナを直接妨害する事なく敢えて周囲であおり立てる、というワイズルーの性格の悪さも示せて良かったです。
 「なんかさっきから腹立つんだけど……!」
 「ふふ、命乞いでもしてみるか~? でも、助けないけどなーはっはっは!」
 「おまえなんかに、そんな事するかっ!」
 ファイト一発、気力を奮い起こしたアスナは、持ち前の怪力を発動して少年を無事に救出し、お姫様抱っこ一番乗り(する方)。
 「人の気持ちを弄んで笑うなんて――おまえだけは……おまえだけは絶対に許さない!!」
 前作で初参戦ながら随所に光る部分を見せた金子さんが、前作のノウハウを活かしてか変身にきっちりと焦点を合わせたシナリオで、初参戦の柏木監督もヒーロー物としてそこを巧く汲んでくれ、アスナ回としてはしっかりとまとまりました。
 一方で、
 カウンターのシステムが解明され、「そうとわかれば!」と勇躍ロボットを繰り出すも、何も有効打を打てない赤
 噴射口を塞げれば、と聞いて「私に任せて!」と騎士竜桃になるも、やはり特に有効打を打てない桃
 と、対マイナソーは最後までドタバタ。
 そして何より、結局、マイナソーの弱点と素体に何の関係もないという、今回のエピソードを通して、物語全体のフォローとして抑えてほしかった部分が「やはりそんな事はなかった」で放り投げられてしまい、とにもかくにも、マイナソー関連の緩さが、全てをドロドロに溶かしていきます。
 検討会議でのバンバの発言から「いざとなったら素体を斬ればいい」という意味を薄くするには、「素体を見つけた事がマイナソーの攻略に役に立つ」エピソードにしないとならなかったのですがそれが出来ず、合わせて素体とリュウソウジャーを絡める動機付けの補強も不発となり、繰り返しになりますが、今作には設計図段階でのミスを強く感じます。
 冒頭の輪投げを伏線とした巨大戦でのピタゴラ装置は面白かったですし、「バンバの抱える覚悟」はむしろ、「一人を救う為に目前のマイナソーを倒す事に最後の最後まで全力を注がない逃げ道」であり、「それは覚悟ではない」まで持ち込んでくれたら、個人的には好みではありますけど。
 貘マイナソーを桃メイスで磨り潰し、ボクサー少年はアスナのアドバイスで親友と改めて向き合う事を選び、焼き肉ドッキリパーティで一件落着。だがドルイドンが、何やら企んでいるのであった……と巨大なシルエットを見せて、つづく。
 アスナ回としては程よくまとまり、部分的には光明も見えた一方、マイナソー関連の施工ミスが致命的な様相を呈しているのが回が進むごとに深刻になっていき、もはや図面を引き直した方が良いのではレベルですが、果たして打開の一手は出るのか出ないのか。
 ところで普段、元気系女子は全くの守備範囲外なのですが、ただでさえ諸々不憫な扱いだったのに、幼なじみ達に邪険にされた回で熱く友情を語る姿があまりにも哀しすぎて、段々、アスナを応援したくなってきました(笑) 我ながら大変珍しい。
 見た目・ポジション・台詞回しと凄く好みのバンバ兄さんが、完全に話の都合の操り人形になっているのが辛いので、早く人間になってほしいのですが……。