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『ルーブ』完走

ウルトラマンルーブ』感想・第24-25話

◆第24話「私はハッピー」◆ (監督:武居正能 脚本:武上純希
 「母さんの活躍で」「さすがだぜ母さん」「もう少しで異次元に封印できるところだったのに」「美剣のやつがまた邪魔してきやがった」「結局、ルーゴサイトは怪獣化してしまった」「最終決戦が近づいてきたって感じだな」
 という冒頭の前回振り返りに、今作の悪い所の6割ぐらいが詰まっている感。
 「また○○してきやがって、結局○○してしまい」主人公達の関与しないところで気がつくと「○○が近づいてきた」原因の半分ほどはルーブ兄弟が常に勢い任せな為かと思われるのですが、自覚もなければ好感度も無いのが辛い。
 前回あんまりな扱いだったルーゴサイトは、とりあえず凄いビームで街を焼き払い、レイラインエネルギーの集中まで時間を稼ぐべく、美剣は再びグルジオMAXとなってルーゴサイトに立ち向かう。一方、気絶していた兄弟は父とアサヒに拾われるが、異次元で垣間見た未来の映像を恐れる母の頼みにより、父は2人のジャイロを隠してしまい、それでも怪獣と戦おうとする兄弟。
 「なぜ……お前達だけが犠牲にならなければならないんだ」
 「俺たちは――ウルトラマンだから。この星に生きとし生けるもの、全ての命を救うのが使命なんだ」
 ええ?!
 いったいカツミは、何を言い出しているのでしょうか。


 「あいつの言う通り、俺達はウルトラマンじゃない。ヒーローでもな。俺は湊カツミ。おまえは湊イサミ。湊アサヒの兄貴だ。俺達のやるべき事はなんだ?」
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 「偽物上等! 別に本物になんかなりたかねぇ!」
 「俺達はウルトラマンじゃない! ……俺は、湊カツミ!!」
 「俺は、湊イサミ!!」
 「父さんはウシオで、母さんはミオで、妹はアサヒ! 俺たち湊家は、地球の日本の綾香市の、クワトロMの、ただの家族だ!」
 第21話において長きにわたる迷走から初心に返り、愛染や美剣にかき乱された末の「ウルトラマンの引用」という呪縛から兄弟がようやく脱した筈なのですが、そこから突然、助走ゼロで英雄の大義へ大飛躍。
 恐らく、一度、自分たちの在り方を取り戻した上で、
 「俺はアサヒの全てを守る。アサヒの命と、願いを」(第21話)
 「お前も倒さないし、地球も爆発させないし、ルーゴサイトにも勝ってみせる」(第21話)
 「俺たちが止めてみせる。……そして全てを救ってやる」(第23話)
 という信念の元に改めて自分たちから「ウルトラマン」を名乗る(事で真の「ウルトラマン」になる)という意図なのかとは思うのですが、
 第21話「俺達はウルトラマンじゃない」
 と
 第24話「俺たちは――ウルトラマンだから」
 の、間を埋める出来事が何も描かれていないので、ただただ、虚無の闇が広がっているばかりです。
 22-23話において、「じゃない」から「だから」に変わる物語が描かれていれば、面白い面白くないはさておき、カツミの意識の変化に一定の納得はできるのですが、そんなもの素粒子レベルですら存在していなかったので、カツミの発言がもはやギャグ。
 で、22-23話において何をしていたかといえば、帰ってきたお母さんがスポットライトを集めていたわけで、ただでさえ、あばらや同然だった『ルーブ』という物語の積み木を、お母さんがドロップキックで全て崩して完全に葬り去ったという事に。
 正直、今作のシリーズ構成は、本当にどうなっているのか。
 あと今作のもう一つの失敗は、「家族愛」は「家族愛」で良いのですけど、その「家族愛」最大の対象であるアサヒを、「大衆」の象徴にしてしまった事で、「アサヒの願いをかなえる」と「人々の祈りに応える」が混線してしまった事。
 今作、精神的一般人が「世界を救う」なんて大それた事を言う理由付けとして「妹の願い」を持ち込んでいるのですが、その「妹」を作劇上「ヒーローを支える大衆」のシンボルとして置いてしまった為、ルーブ兄弟が「身内のエゴで世界だって救ってやる」(これはこれで、突き抜ければ面白かったのですが)のか「ヒーローの大義として世界を救う」のか、言っている当人達もよくわからなくなっている節があり、「家族」と「大衆」は分けた方が良かったのではないかな、と。
 これはまた今作における、クワトロMとアイゼンテック社の間に“何も無い”という短所に繋がるのですが。
 地球壊滅寸前、父を説得した兄弟はルーブに変身し、その背に兄達の面影を見た美剣グルジオは、2人をかばって消滅。美剣は立ち位置そのものは非常においしいキャラクターだったので、上手く描けば例えば『星獣戦隊ギンガマン』における黒騎士のような存在感を発揮できた可能性もあったと思うのですが、物語全体の軸の弱さとウケ狙いに振り回され、ポテンシャルを発揮しきれなかった感が強いのは残念でした(ルーブ兄弟に実の兄の面影を見るのも、前振りゼロでしたしね!)。
 そして未だに『ビルド』後遺症で、キャラクターがキラキラした粒子に包まれると反射的に笑ってしまうのが大変困ります。
 アサヒは消滅直前のサキからウルトラジャイロを託され、次回、最終回。

◆第25話「朝日のあたる家」◆ (監督:武居正能 脚本:中野貴雄
 アサヒ、本当にクリスタルだった。
 そしてすみません、最終必殺技がアサヒ守護霊ビームだったのは、笑わずにはいられませんでした。
 ……結局、今作におけるオーブとは何だったのか。
 “等身大の正義”というのは今作のテーゼの一つで、ウルトラマンへのフェチズムも、1300年前の因縁とも関係なく、今を守る為に戦う、という兄弟のスタンスそのものは嫌いではないのですが、「過去の因縁に関わりを持たない」ルーブと、「システムでしかない」ルーゴサイト、というのは噛み合わせが非常に悪く、半年間のラストバトルとしては実に盛り上がらない最終回。
 もはやルーゴサイト、なんで怪獣になってアイゼンテックビルを執拗に狙っているんだっけ?レベルで、ヒーローと敵の情熱に温度差があるならあるで、その「温度差」が表現されなくては面白くならず、最後の最後まで、互いに明後日を向きながら勢いで殴り合う作品でありました。
 母の見た未来と重なる映像でルーゴ光線に飲み込まれたルーブが極フォームとして姿を現し、「未来が変わった」というのは映像的には格好良かったのですが(極フォームの見た目とアクション自体は嫌いではない)、肝心の極フォームが、なんとなく合体した上に当の兄弟のリアクションが物凄く薄い代物の為、どうにもこうにも物語が劇的になりません。
 ここ数話のカツミとイサミのシスコン暴走、「アサヒの願いをなんでもかなえてやる」は、いっけんいい話風だけど、そこまで行くとただの過保護でいい話ではないのでは……と思っていたので、そのアサヒが自ら「だから私も一緒に! 戦います!」と立ち上がった時に、真の力を発動して兄弟を助ける、というのは着地点としても勝利の理由付けとしても悪くなかったですが、物語的には前回で完全に息の根が止まっていたので、何もかも土葬の後。
 個人的には、大変残念な作品になってしまいました。
 とにかく今作、全25話にも関わらずシリーズ構成がぐっちゃぐちゃなのですが、3人居るシリーズ構成は、いったい誰がどういう形で全体の音頭を取っていたらこうなってしまったのか。連続性の強いストーリーが、のべ11人の脚本家に分配されるという構造上、各話のオーダーやガイドラインはかなりしっかり出ていたのではと思うのですが、その割にはエピソードごとの要素がほとんど連動しない為、物語もキャラもあちこちふらふら。
 特に主人公兄弟は、家族の為に野球の道を諦めた事が示唆されたカツミが、それでも野球をやる道を示してくれた監督の為に奮闘するも最終的に「やたら怪しい監督から強化アイテムを貰う話」になってしまい、商店会の野球部仲間達との関係がむしろ切断されてしまう第4話
 クワトロMでは自由な弟キャラであるイサミの、店の外での顔――大学生活――が描かれるのを期待していたら、ゲストお嬢様に全て持っていかれてしまった第5話
 と、重要なキャラ掘り下げ回でいずれも世界観の拡大に失敗してしまい、これが後半戦、“クワトロMとアイゼンテックの間に何も無い”という、大きな問題状況を生み出してしまう事に。
 厄介なのは第5話が単発エピソードとしては面白い事で、私自身も好きなエピソードなのですが、ここでイサミの掘り下げに失敗したのが作品全体にボディブローのように響いており、シリーズ構成としては大きな失点になったと思います。結局、ここでキャラ回を奪われてしまったイサミにフォローが入る事はなく、最後の最後まで、定期的に都合良く兄に反発する実質専門分野不明の科学者、という溶けたスライムみたいなキャラになってしまいました。
 宇宙考古学はバイブス波を感知できるだけでなく、ハッキングも出来れば、異次元空間も一目でわかります! というならそれはそれで良いのですけど、それをキャラクターに統合して面白く見せる、という部分がすぽっと抜け落ちてしまっているわけで。
 せめて第5話で主題となった「夢」や「人生のままならなさ」がその後のエピソードで拾われてくれれば良かったののですが、カツミという絶好の素材が居るにも関わらず、布石の積み重ねもなければ、掘り下げも実質されないという、もはやミラクルの領域。
 カツミのかなりクリティカルな失言による兄弟の不和も第15話で物凄く雑に解決されてしまい、兄弟ウルトラマンとしての極めて重大な試練がスキップ気味に処理されたまま誕生する最強フォームという、どこをどうひっくり返しても劇的になりえない極フォームに至り、向き合って書く気がないのなら、最初からそんな設定にしなければ良かったのにレベル。
 煎じ詰めれば、二人のヒーロー・二重の強化アイテム、という要素を捌ききれなかったのが様々な問題点の根っこにあるのかと思うのですが、その結果として主人公兄弟の掘り下げという肝心の部分が割を食った一方で、愛染マコトではしゃぎ回っていた、というのが総合的なイメージの大変よろしくない作品となってしまいました。