『太陽戦隊サンバルカン』感想・第1-2話
◆第1話「北極の機械帝国」◆ (監督:竹本弘一 脚本:上原正三)
イントロに乗せて画面いっぱいの太陽にかかる番組タイトル、作曲:渡辺宙明/作詞:山川啓介/歌:串田アキラ、という、ザ・東映ヒーロー感溢れる(実際にこの組み合わせが何曲あるかはさておき)主題歌で、爆発! 爆発! 爆発!
そして大写しになる戦闘母艦からメンバー紹介に入る強烈に格好いいOPで、巨大ロボットの前に並ぶ戦隊メンバーの画で締めるのも定番となり、前作を受ける形で戦隊OPの基本形の完成を感じさせます。
北極海で起きている異変の調査に赴いた地球平和守備隊の原子力潜水艦が、海中から浮かび上がった巨大な鋼鉄の手に撃沈されたところから物語は始まり……
ナレーション「異常気象が、世界を襲った!」
相次ぐ火山の噴火や大津波など、世界中で同時多発的に発生した異変に対して国連平和機構は緊急サミットを召集するが、そこに響く謎の声。
「世界の指導者たちに告ぐ。地球はやがて、我が機械帝国ブラックマグマのものとなる。無駄な抵抗はやめろ!」
ナレーション「機械帝国ブラックマグマの、宣戦布告に、サミットは、太陽戦隊の結成を、満場一致で決議した」
メンツを潰されたら仕事にならんのじゃ、と右の拳で殴られたら左の拳でクロスカウンターを放つ事が即座に可決され、クラシックの楽曲をBGMに地球規模の壮大なスペクタクルが強調される導入で、謎の敵の攻撃を回避し、スナックサファリへと集まったのは、国連平和機構・地球平和守備隊の陸海空から集められた三人の精鋭たち――大鷲龍介・鮫島欣也・豹朝夫。
民間人がスカウトされ公権力に所属していなかった(まあ何故か警察とは何度か協力関係を見せましたが(笑))前作から一転、国連をバックにした組織体制×軍属のメンバー、による公権力下の特殊部隊へと回帰すると、指輪による認証・店の奥に隠された地下通路、など秘密基地のワクワク感をアピール。
EDテーマ(名曲!)をバックに秘密基地へと向かう道中、怒濤の勢いでキャラクター紹介が詰め込まれ、辿り着いた検問所の先は何故か、いきなり室内プールだった(笑)
「ウェルカム、サンバルカン」
3人は、一泳ぎしていた女・嵐山美佐に声をかけられ……予算の私的な流用が見られないか、太陽戦隊には第三者機関による監査が必要なのでは?!
美佐に案内された部屋で3人を待っていたのは、表の顔はベーゴマ好きなスナックサファリのマスター、こと嵐山長官で……先程から朝夫の「ひょひょー」が、だいぶうるさい。
「今日から諸君は、太陽戦隊サンバルカンのメンバーになった。敵は、機械帝国ブラックマグマである」
事あるごとに腕立て伏せをする朝夫は、露骨に前作のアイシーを想起させる喋る犬の出現に慌てふためき、犬の存在も不穏ですが、朝夫のリアクションがあまりにも過剰なやかましさで、結構辛い……。
「では、合体訓練に移る。諸君は、バル強化服を着て、サンバルカンになるのだ」
ブレスを構えると戦闘服が画面奥から飛んでくる演出で、3人はそれぞれ、バルイーグル・バルシャーク・バルパンサーとなり、巨大空母ジャガーバルカンに搭載されたマシンに乗り込み、合体訓練を開始(変身ヒーローよりも、巨大ロボ誕生の方が舞台のクライマックス扱いの組み立て)。
「恐るべき超兵器だ。赤子の内にひねり潰すに限る」
北極の地下では、ブラックマグマの偉い人がこの映像を入手しており、レオタード風衣装の女性ばかり4人の配下を侍らせるその姿に早くも、大丈夫かなこの人……感が漂いますが、大丈夫なのでしょうかこの人?!
前作から続けて見ていると、声が飯塚昭三なのも、むしろ不安を掻き立てられます。
ダース・ベイダー風味の姿が、そういう顔なのか、仮面を被っているのかは判然としないのですが、ベーダー怪物最後の生き残りとかなのでは……。
その正体はさておきブラックマグマの偉い人(宣戦布告の際に名乗らず)が、機械生命体・ジムシモンガーを生み出して地球平和守備隊の基地を攻撃させると、それを阻んだのは、太陽戦隊サンバルカン!
OPのイントロがヒーロー登場のジングルとして完璧で、太陽をバックに高いところで赤青黄の3戦士が構えを取る会心の構図から、それぞれのモチーフ動物を模したポーズで名乗ると、チーム名を宣言する前に敬礼が入るのが軍属っぽいスパイス。
「「「輝け!」」」
「太陽戦隊!」
「「「サン・バルカン!!」」」
割と明確に「サン」と「バルカン」の間が空いており、「さん」は「3」にして「サン(太陽)」なのでしょうが……つまり、俺達はブラックマグマの喉元に突きつけられた3門のバルカン砲だ!!
太陽を背に、若さと殺意の炎を燃やすサンバルカンは、鷲・鮫・豹を取り込んだアクションを見せると、地虫モンガーに、3人一斉太陽キック!
「バルカンボールだ!」
怪人がひるんだところに、キックオフから、レシーブ・トス・スパイク! の要領でボールを叩き込むと、直撃を受けた地虫モンガーは大爆発から巨大化。
……以前の配信の際に第1話だけ見た時は、近年の作品から舞い戻っていた事もあって戦闘がややもっさり気味に感じていたのですが、『デンジマン』から続けて見るとそんな事はなく、3人に絞ったメンバーに陸海空の属性を与え、個々のモチーフに基づいたアクションで個性を強化する事で、メンバー個々をよりキャッチーにしようという狙いが見て取れます。
巨大モンガーを前に戦闘空母ジャガーバルカンが召喚されると、発進シークエンスの中で、浮上前に目にあたる部分に光が入るのが格好よく、顔がやたら獰猛なジャガーバルカンが雷雲をくぐりぬけて現れるとサンバルカン搭乗。
ミサイルを一発ぶつけた後、格納されていた二台のメカが発進し、前作のデンジファイターを引き継いだようなデザインのコスモバルカン(三角戦闘機)はともかく、二つの塔をつなぎ合わせたようなブルバルカンは、もう完全に、足(笑)
デンジファイターは見た目が戦闘機の割には、特に空中戦を展開する事なくダイデンジンに変形してしまうのが拍子抜けするところがありましたが、今作では地上メカのブルバルカンの戦闘ギミックが描かれてから、二つのメカが空中で合体し、
「チェンジ! サンバルカンロボ!」
にかなり力の入った見せ方…………両手が踵に収納されていたのはビックリしました(笑)
もしこれが、「ダイサンジン」とか「ダイバルジン」だったら、シリーズの歴史が変わっていたかもしれないサンバルカンロボが大地に立つと、太陽シールド大回転で地虫モンガーの槍を破壊。回転攻撃を直立ジャンプで回避すると、背後からチェーンで引っかけて振り回し、トドメは、太陽剣オーロラプラズマ返し!
上段に構えた太陽剣を振り回すとオーロラが生じる表現が格好良く、プラズマすなわち太陽の光を纏って繰り出された刃が巨大地虫モンガーを横一閃に両断し、サンバルカンロボは初陣を勝利で飾るのであった。
――だが、基地に戻った3人を待っていたのは、長官の衝撃発言。
「ご苦労。――ところで、ここに、スパイが居る」
「え?!」「スパイ?!」「まさか!」
こ、このタイミングでーーー?!
「ブラックマグマは明らかに、サンバルカンロボを狙っていた」
ねぎらいの言葉もそこそこに、悪の組織の情報入手ルートがなぁなぁにされず、内部に入り込んだスパイの存在が突きつけられるひねりの利いた展開で、機械帝国のアンドロイドスパイである事が暴露された助手は基地を道連れに自爆を図るが、慌てず騒がず長官が発動したセキュリティにより基地外部に放り出され、虚しく爆死を遂げるのであった。
凱旋気分も一発で消し飛ぶ諜報員の処刑でしたが、つまり長官はこうおっしゃりたいわけです。
もしも太陽戦隊を裏切るような事があれば、君たちの末路もアレだ、と。
……真面目な話としては、太陽戦隊の中枢部にさえ人知れず入り込む機械帝国の脅威を初回に印象づけているわけですが、隣人の顔はスパイというのが冷戦構造下の寓話を感じさせると共に、髪と衣装は人間だが顔だけ鋼鉄の機械なのは、定番ながらインパクトのある不気味さ(同時に、「断絶した隣人」の象徴でもあり)。
「平和というものはね、動物たちが、安心して野山を駆け巡れる環境の事だよ。その動物たちの命を奪うものを、私は許さない。断固戦うぞ」
太陽基地がサファリパークの地下に存在する事が明らかになると、嵐山長官は嵐山長官で、ちょっとズレると環境テロリストまっしぐらな事を言い出し、三浦参謀長あたりと混ぜると危険な香りがします。
ナレーション「ブラックマグマのヘルサターン総統は、火山エネルギーの多い日本を、機械帝国の、基地にしようと狙っている。そして、地上の、命あるもの全てを抹殺しようとしている。戦え、太陽戦隊。サンバルカンロボ、発進せよ!」
敵組織の目的と首領の名前が最後に全てナレーションで突っ込まれる荒技が放り込まれ、戦え、太陽戦隊サンバルカン!
上述したように、以前に一度、第1話だけは見た事があったのですが、改めて太陽ダストシュートが、インパクト絶大。
それだけでもポイントの高い第1話でありました(笑)
あと個人的にEDテーマ「若さはプラズマ」が大好きで、好きな戦隊ソングは数多くあれど、EDからどれか一曲、と言われたこれを選びます。
私の中で、“スーパー戦隊イズム”を象徴していると感じる歌であり、1番の、
一人より 二人がいいさ
二人より 三人がいい
力も夢も そして勇気も
それだけ強く でかくなる
もいいですが、2番の
君がもし 一人だったら
今すぐに 仲間をさがせ
からっぽの手を にぎりあうのさ
いっしょに明日へ 行くために
が最高に好きで、“手が空っぽ(マイナスの状況)”という事は、これから“誰かと手を握り合える(プラスへの転換)”という事なのだ、と示す表現の仕方が素晴らしい。
マイナスからプラスへの転換という点では主題歌もまた、太陽の尊さを示すにあたって「太陽がもしも無かったら」から始まるのがインパクト抜群で、山川啓介の作詞の光る、名曲(こちらも2番の歌詞もいい)。
ちなみに個人的に、後の海賊戦隊ゴーカイジャーの根本にあるチーム観は、「若さはプラズマ」だと思っています。
ED映像には、どこかで見覚えのある顔の人が早くも闊歩しており……ヘルサターン総統は本当に、唯一生き残った☆5ベーダー怪物ジゴクラーとかなのでは?!
(※なお今後、敵組織ないし首領について「ブラックサタン」と書いている事があったら、綺麗に混ざったな……と思ってやって下さい)。
◆第2話「人類が消滅する日」◆ (監督:竹本弘一 脚本:上原正三)
ブラックマグマは、北極ビームで撃墜した人工衛星を二つの大国にそれぞれ落下させる事により、疑念と扮装の火種を蒔いて全面核戦争前夜の状況を作為的に生み出し、前回に続いて現実の冷戦構造を下敷きにしたワールドワイドな切り口。
両国間の緊張が高まる中、ブラックマグマは細菌兵器を用いて世界大戦の決定的なきっかけを作り出そうとし、見所は、こんなこともあろうかと用意していた謎の銃でダークQを倒すと、アンドロイドの頭部を尋問する嵐山長官。
機械元素体と動物生命がマグマエネルギーによって合成された機械生命体・シーラモンガーが北極から送り出され、前半は、強奪した細菌の抗体を作り出せる研究者を抹殺しようとしていたのに、後半は細菌を積んだロケットを発射する為に大学教授の妻子を人質に取って前半の博士キャラの存在は忘れ去られてしまい、二つのプロットがマグマエネルギーで合成されたような展開が面食らいます。
……そして、自前でロケット発射場を持っている東都大学、とは(笑)
太陽戦隊に嗅ぎつけられた事を知ったブラックマグマが、ロケット発射を強行しようとしたところで、崖から飛び降り、海から飛び出し、木を這って現れる、サンバルカン!
「輝け!」
「「「スマイルプリキュアぁっ!!!」」」
…………すみません、一度やったので満足です。もうやりません。『スマイルプリキュア』の続きも見ます。
「太陽戦隊!」
「「「サン・バルカン!!」」」
シャークの空中滑走頭突きや、パンサーの無重力木登り(なお戦闘員は一人も倒していない)を見るに、どうもバル強化服は重力に干渉できるようで、戦闘員を蹴散らしたサンバルカンはシーラモンガーと激突し、イーグルの飛行スパイクから炸裂するバルカンボール。
ジャガーバルカンが適当に敵戦闘機を撃墜すると、EDテーマをバックにサンバルカンロボは合体し、ちょっと変わった手持ち武器の短刀を投げつけて背中のキャノン砲を破壊してから、シーラモンガーを一刀両断。
前回に続いて巨大モンガーの撃破後にもう一つのクライマックスが用意されている二段構えの構成で、発射されたロケットを追って大気圏外まで飛び出したロボは、パンチ一発でロケットを破壊し、世界大戦の危機は回避されるのであった。
平和なサファリパークの光景が描かれると、ゲスト親子も乗せたサファリバスの中で振る舞われる、長官手作りの誕生日ケーキ。
「え? 誰の誕生日?」
「人類の誕生日さ」
思想性が、思想性が強い……!
「人類は生き延びた。細菌爆弾から生き延びた」
「……なるほど」
藤宮博也あたりと混ぜると危険そうな嵐山長官(なお美佐とは父娘と判明)ですが、上官の言う事には白でも黒と頷いておくのが、軍隊組織でうまく生き延びていく為のコツです!!
次回――
襲われる国立銀行!
狙われる人間国宝!
人質に取られる総理大臣の孫娘!
本命はどれなんだ?!