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もひとつ爆上げ

『爆上戦隊ブンブンジャー』感想・第34話

◆バクアゲ34「夢を運ぶクルマ」◆ (監督:渡辺勝也 脚本:冨岡淳広
 見所は、
 東京?と筑波?の間に、果てしない荒野と断崖絶壁が!
 ……いやホント、ここどこ……。
 ブンブンガレージでは、おかえり玄蕃パーティが開かれ、射士郎が暗に謝罪を要求し、玄蕃がちゃんと謝ったのは、最低限のケジメとして良かったです(なお、細武さんはパーティーに呼ばれませんでした!)。
 玄蕃復帰も記念して、他のブンブンカーを乗せて運べる巨大マシン・チャンピオンキャリアーがお披露目されると、
 「BBGは宇宙のいろんな惑星を転戦してレースをする」
 と、私の記憶に間違いがなければ「BBG天の川サーキット」への言及(第19話)以来にして、劇中でほぼ初めて、「BBG……ビッグバングランプリ。全宇宙で開かれている、車のレースだ」(第8話)についての具体的内容に触れられ、それはまあ、うっすらとは想像は付くにしても、この一言を、第34話まで引っ張る必要が一体全体どこにあったのでしょうか。
 20話ぐらい前にちょっと言わせておくだけでも、2クール目と3クール目の印象が多少なりとも変わったような気がするのですが、序盤時点ではどこまでBBGを物語に組み込むか決まっていなかったとしても、使わなければ使わないで世界観のフレーバーテキスト扱いでもなんの問題も無い内容なわけで……とにかく、無駄玉を恐れるあまりに盤面に布石が見当たらない『ブンブンジャー』の悪癖が大爆発。
 「BBGは全12コース……地球時間でいうと、1年はかかる。全銀河の12の星を巡る大レースなんだ」
 「12個も?」
 本日は大盤振る舞いで更なる情報が明らかになり、これまた「今になって説明する」内容としては随分な初心者ライセンスですが、それに対する未来の反応により「今の今までこのレベルの説明さえ受けていなかった」事が裏打ちされてしまい、もはや大也×ブンブンの所業が、宇宙レベルの人さらいみたいになっているわけなのですが。
 劇中の事象に対して、視聴者と登場人物の目線を合わせる事で驚きの効果を引き上げる手法は定番中の定番でありますが、結果として「BBG出場」=「約1年かけて銀河の12の星を転戦する」という最低限も最低限の説明もされないままドライバーの頭数に加えられていた件について、未来と阿久瀬は一度、足を止めて真剣に考えてほしい。
 阿久瀬に至っては立派に就職している上で、警察官としての市民を守る使命感そのものがブンブン活動の動機付けにもなっているわけですが、「地球での警察活動」と「BBG出場」が相容れないという、自身のアイデンティティに深く関わる問題について検討する事さえ大也に阻まれてきたのは、もはや尊厳の蹂躙レベルであり、毎日カレーを食べている内に洗脳されたみたいな事になっている阿久瀬のハンドルこそ、行方不明の真っ最中なのでは。
 ちなみに、遡れば第16話で、
 「運転屋ミラ! ビッグバングランプリは貰ったーー!!」
 と絶叫していた未来さんですが、この時点では、BBGについてなんにもしらなかった事がめでたく明らかになりました。
 チームブンブンが、ビルの5階から落とした木綿豆腐みたいになっている頃、ディスレースからマッドレックスの殉職を聞かされた三下トリオは弔い合戦に立ち上がり、急にヤルカーが妙に達観したような物言いを始めるのですが、マッドレックスを生贄に捧げてまで味付けを加えようとした三下トリオも、相変わらず70年代の駄目なコメディリリーフのような存在感。
 内藤の依頼でイベントに向かうチャンピオンキャリアーをハシリヤン暴走軍団が襲撃し、マッドレックスの仇討ちを『マッドマックス』パロディで行う趣向で、巨大マシン同士のデッドヒートから車上バトルに繋げるのは面白かったのですが、市街地の外へ一歩出たら、最終戦争後みたいな荒涼とした大地が延々と広がっているのは面食らい、どうなっているの『ブンブン』世界?!
 ハイウェイ空間の擬似的なフィールドとかなのかもですが、それにしても一言ぐらい説明が必要だと思いますし、パロディの都合でこれでいいのだ、と消化するには幾らなんでも超次元すぎて、あっけらかんと楽しみにくかったです(笑)
 激しいカーバトルの末にハシリヤン軍団は崖下へ落下していき、転落を辛うじて回避したキャリアーとブンブン一同が、ひとまず洞穴に退避していた所に始末屋コンビとブンブン総司令が合流するが、そこに現れたのはディスレース。
 「生きていたとはなぁ、ブンドリオ・ブンデラス」
 何者かと情報交換を続けていたディスレースが突きつけたのは、ブンブンはかつてハシリヤンに所属していた裏方で開発のスペシャリストでありボスのお気に入りだったが、どういう理由によってか処刑された筈の存在であったという真実。
 「おまえの大切な、仲間とやらに教えてやれよ。自分が、元ハシリヤンだったと」
 「……もう、喋らないでくれるか。ブンブンは俺が惚れ込んだ仲間だ! あんたが何を暴こうが何を企もうが、ブンブンジャーは決して揺るがない!」
 大也はディスレースめがけて銃をぶっ放し(重力制御で無効)、前半部分で止めておけば良かったのですが、今までなんの説明もせず、真相を暴露しようとした相手の口を率先して封じようとした人間の台詞としては、どの口がすぎて、大爆笑してしまいました。
 いやどうして勝手に、他のメンバーの内心まで決めつけてるの……?
 よく言えば仲間への信頼ですが、基本的に大也が仲間に対して誠実に向き合ってきた印象が大変薄いので、前回の今回で、他人のハンドルを握ろうとする大也が誕生していて爆上げが過ぎます。
 ディスレースは、ブンブン生存を本家に伝える嫌がらせをして姿を消すと、ブンブンは改めて自分が元ハシリヤンだった事を明らかにし…………これを聞いた一同の反応が、
 知ってた(赤)・知ってた(橙)・多分知ってた(青)・知らなかった(桃)・知らなかった(黒)・どうやら知らなかった(VD)・知ってても知らなくてもあまり関係なさそう(紫)
 と、全員がオブジェのように立ち尽くす“衝撃の真相”と呼ぶにはあまりにも中途半端な状況を生んでいて、オレンジ離脱編とかより、黒桃家出(と反省する赤青橙)編で良かったのでは。
 「BBGから消えて、死んだとまで言われて……悪党どものど真ん中に居たのか!!」
 ビュンディーが怒りを見せてブンブンを殴り飛ばすのですが、ともかく大宇宙における、BBGとかハシリヤンの位置づけがさっぱり不明であり、そもそもブンブンのレーサー時代の扱いからして詳細不明なので、詳細不明から詳細不明に身を落としたと言われても何も劇的にならず……
 「このチーム、秘密が多い!」
 未来が、言った(笑)
 真相の口止めはブンブンが頼んでいた、と悪印象の溜まりにくいキャラに責任を押しつけると、未来と阿久瀬は、ブンブンの前職なんか関係ない、と毎度毎度の善人ムーヴで処理が図られ……違うぞ、今、君たちが怒るべきは、「秘密の内容」ではなく「口では一つのチームと言いながら一部メンバーが揃ってだんまりを決め込んできた行為」そのものだぞ……?
 本来、「ブンブンの過去を受け入れる」のと「それを黙っていた事を許せる」のかは別の話なのですが、後者に踏み込むと大也がリーダーとしてどうしようもない存在になるので、前者を許したら後者の問題は無かった事にしてしまい、未来と阿久瀬がもはや「自由な一個人としての怒り」をどこかに置き忘れてきた人にされてしまっているのは、もう可哀想なレベル。
 未来の「このチーム、秘密が多い!」発言もそれ以上は特に広げられず、ただただ視聴者からのネガティブなツッコミを先に封じる為だけのような台詞になっていて、煮すぎた春雨のように跡形も無いチームブンブン、ここまで、底の底の底を突き抜けてくるとは思いませんでした。
 ビュンディーだけは激しい怒りを見せると先斗の首根っこを掴んで離脱し、そこに巨大化したエレキギターグルマーが出現。
 ブンブンの気持ちに配慮し、チームとしてそれが必要なのだと判断したのだとしても、いざ秘密がバレた時に大也から、未来と阿久瀬に対する謝罪が一つもないので、5人揃ってチャンピオンブンブンジャー! とかやられても、ブーンならぬふーん……感。
 チャンピオンキャリアーの機能が使われ、搭載されていたブンブンカーでBBロボサファリが誕生すると、クルマ獣の大事なエレキギターを破壊。攻撃手段を失った巨大エレキギターグルマーは逃走し、「岩の中に入り込んだ」って、何……と思っていたら、チャンピオンキャリアーに岩ごと轢き殺され、本当に岩の中に入っていました!
 ブンブンは、BBGを離れてからの経緯をビュンディーに説明する決意を明かし、それはまず、この場のメンバーにも一から説明した方がいいのでは?
 そして、宇宙のどこかにある岩だらけの星(宇宙監獄みたいなニュアンスに見えますが、刑務所の中から組織を操っているイメージ?)――。
 「あたしはねぇ、よぉく覚えてるんだ。おまえさぁ、ブンドリオを処刑したって言ったよなぁ。よぉく覚えてる。生きてたんだってさぁ、ブンの字。不思議だよねぇ。おかしいよねぇ」
 貴族風味の容姿と趣味を感じさせるハシリヤンのボス、ワルイド・スピンドーは怯える配下を一撃の下に処刑し、いっけん丁寧な口調ながら残虐非道な性質を示して顔出し初登場。
 「あたしゃゾクゾクしてきたよ。ブンの字……おまえのギャーソリン、聞きたくってたまんねぇーー!!」
 口調をガラリと変えたスピンドーが絶叫して、つづく。
 今作初期のコンセプトを見るに、時に秘密を抱え、全てを明かさなくてもチームとしてやっていけるのが、“プロの大人”同士の関係性……といった狙いが今回の惨事に至ったのかとは思われますが、BBGの参加に関して、“ずっと蚊帳の外な未来と阿久瀬の善意”に寄りかかって成立している時点で既にその狙いは破綻していますし、「本音」と「建前」のアピールなど、恐らく『ゴーカイ』とか『ボウケン』みたいなチームの距離感を描こうとしたのでしょうが、ものの見事に大失敗した印象。