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約2ヶ月ぶりの爆上げ

『爆上戦隊ブンブンジャー』感想・第33話

◆バクアゲ33「調達屋は譲らない」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:樋口達人
 ブンブンジャーが再利用怪人2体と戦う一方で、VDロボが巨大マッドレックスと戦っているハシリヤンの分断作戦からスタートし、モチベーションは高くないのだろうとはいえ、のっけから再生マッドレックスがコラボ合体烈車VDロボに敗れる、テンションの下がる展開。
 コラボロボの踏み台なら他にも用意できたと思うわけですが、ただでさえ復活後は歴史修正でキャラが微妙に変わっているのに、一応、赤のライバルっぽい扱い、というアイデンティティまで消滅させてどうするのか……。
 三下トリオは撤収するが、意外や、足りない頭を使っていると評価を与える上司ディスレースの元にはどこかから電話が入り……
 「もしかしてぇ……もしかするとぉ……もしかするぅ?」
 ディスレースが何かを気にする一方、相撲と電車ごっこを体験して自分が何戦隊だかわからなくなってきた玄蕃は、地面に転がっていたマッドレックスと出会い、再生されてこの方、サンシーター補強の生贄みたいな扱いになっているマッドレックスですが、映し方によって、隻眼や、片目をすがめているように見えるデザインはやはり秀逸。
 「てめぇはまだ、ハンドルを取り戻せる。……俺と違ってな」
 とうとうマッドレックスにまでアドバイスされてしまった玄蕃は、四方八方で衝突事故を繰り返し続けた末にとうとう自らブンブンガレージに顔を出してしまうが、タイミング悪く誰もいなくて困っていたら、よりにもよって細武さんと鉢合わせして、ウルトラ気まずい。
 不在のメンバーは、記憶を取り戻した事をディスレースに感づかれ、呪術による違法改造でただ暴れ回るだけの存在と化した暴走マッドレックスと戦っており……とにかくこの数話、
 ・改造隊長編のサボりすぎが響いて三下トリオへの好感度がゼロを割っている為、マッドレックスの為に奮闘する姿を見せられても何も響いてこない
 ・玄蕃の離脱と彷徨が全く面白く感じられず、ストーリー上の妙味も見えない
 ・ブンブンジャーがマッドレックスをどうしたいのかさっぱり理解できない(納得できない)
 の三重苦がひたすら続くのですが……いやホント、大也さんは、「自分のハンドルを握っていない奴には殺す価値もねぇぜ! 俺に殺されたかったら、自分のハンドルを取り戻してからにしな!」みたいな主義なの…………?
 「彼は、ディスレースに全て奪われたんだ……誇りも、夢も、自分のハンドルも……」
 玄蕃はマッドレックスの姿に自身を重ね、ディスレースが、他者を道具として扱い自由と尊厳を踏みにじる“悪”として既定されるのですが…………うーん、多分、マッドレックスの夢とハンドルを最初に奪ったのはブンブンジャーですし、破壊行為の末に死亡した後で傀儡として利用されているマッドレックスと、故郷や家族を不条理に奪われて何もかも捨てるしかなかった自身の境遇を同一視するのは、あまりにもごく一部をクローズアップしすぎて何を言っているの玄蕃さんとなっており、だいぶ精神的に参っているのは伝わってきますが、今ならどんな契約書を出されてもよく読まないでサインしそう。
 そんな玄蕃に細武が差し出したのは、保証人の書類……じゃなかった、大也が用意していた、新たなチームジャケット。
 細武は玄蕃に、ブンブンジャー一同は玄蕃の帰還を皆当たり前のように待っていると伝えてメッセンジャーの役割となり、前半から危うさはありましたが、どうも中澤監督を筆頭にスタッフが細武さん(の演者さん)を好きすぎる感じがあり、道中における存在感や掘り下げ度合いに比べて、節目節目の扱いが優遇されすぎているのが、ますます作劇に歪みをもたらしているように感じます。
 「見つけたよ……自分のハンドル」
 チームジャケットをかきいだいた玄蕃は、ちょっと恍惚とした表情で呟き、若干、宗教体験みたいになっていた。
 紫が再利用怪人2体を相手取り、三下トリオが物陰から声援を送り、マッドレックス:オーバーヒートがブンブンジャーをなぎ倒し、変身も解けて地面に倒れた大也らに必殺の一撃が放たれようとした時――それを防いだのは、調達されたマンホールの蓋。
 「マッドレックスからの依頼だ。俺を倒し、ディスレースから解放して欲しい、と」
 「…………ハハハ、それは……大変な依頼だな」
 玄蕃がブンブンジャーに再合流し、笑みと共に大也が立ち上がり、誰も彼もが執拗に「自分のハンドル」を繰り返す今回、それなら物語のキーフレーズとしては「届け」の方にもこだわりを見せて欲しかったのですが、全くそんな事は無し。
 玄蕃が戻ってくる言い訳も兼ねて「伝言」が「依頼」に昇格しているのですが、届け屋にする依頼でもなんでもないのでそもそも「依頼」として成立していないわけで、にもかかわらず、大也がまるで「依頼」を受けたように描かれるのは、粗雑を通り越してもはや不誠実の領域で、大変残念です。
 「で! 調達屋は、何を調達してきてくれたんだ?」
 「……勿論――私自身だ」
 玄蕃は会心の笑みを浮かべ、う、ううん……第27話で離脱後、復讐するぜ! → 勝てなかったぜ! → 戻れないぜ → ハンドルが見つからないぜ! と迷走してフェンスに衝突しまくった玄蕃の離脱騒動は、ハシリヤンとの戦いに影響するわけでも怪しい大人たちの動きと繋がるわけでもなく、ブンブンジャーにさしたる変化を及ぼすわけでもないまま、みんな待ってるから元の鞘に収まるだけの話に着地し、一ヶ月半(全体の12%ぐらい)をかける重みはどこにあったのでしょうか……。
 ブンブンサイドの、玄蕃が帰ってくると信じて待っている、も一見美しいのですが、つまるところ玄蕃の離脱前/中で“何も変わっていない”わけで、そもそも玄蕃が離脱したときの台詞が
 「自分のハンドルは自分で握る……そうだろ? 大也」
 だったのですが、今回ずっと「玄蕃はハンドルを見失っている」事にされ、故郷の復讐が「青春のはしか」と同じような扱いをされた上で実際そんな感じで戻ってくるのは、本当にいかがなものなのか。
 ヒーローだって間違えたり道に迷ったりする事もあると描くのは構わないと思いますが、やるならやるなりの重みは与えてほしいところで、ただただ「波乱を起こす」だけが目的化されてしまった印象です。
 「自分のハンドル……取り戻したか」
 「ああ」
 そしてなんだか、パワーアニマル教団やダイノガッツ教団のような感じで、自分のハンドル教団が生まれそうになっていた。
 …………まあ、とはいえここまでは『ブンブンジャー』平常運転の範疇で、いわば想定内の物足りなさの内だったのですが、本当の惨事はこの後すぐ。
 「ブンブンジャー……ここが私の――生きる場所だ」
 玄蕃はうそぶき……えー、『トッキュウジャー』も放映から10年経っていますし、言い回しがたまたま似たとか、ちょっとしたところでオマージュを入れるとか、そういう事は全く問題ないと思うのですが、前回の『トッキュウ』コラボ回で充分に意識をさせた上で、『トッキュウ』レギュラーキャラの一人が最終話で到達する台詞をほぼそのまま、玄蕃復活の決め台詞にするのは、あまりに酷すぎて言葉を失いました。
 冒頭からコラボ合体があったり、玄蕃とマッドレックスが「死に場所」について語るなど、スタッフ的にはもしかしたら、前回のコラボ要素を完璧に拾った! みたいなつもりだったのかもしれませんが、他作品の約3クール分の集大成を6話ほど青春に迷っていた程度のキャラに口にさせるのは、『トッキュウ』に思い入れのある身からすれば雑で無粋な文脈の盗用でしかなく、『ブンブンジャー』として見てもほとんど、物語としての自殺行為。
 どこから出てきた台詞かわかりませんが、トッキュウ6号を世に送り出した中澤監督がこれを通してしまったのも、実に辛い。
 一ヶ月半の彷徨の末に辿りついたのがシリーズ過去作品の台詞の引用だった振騎玄蕃というキャラクター自身も溶けたチーズのような存在になってしまい、再開直後になんですが、私の中の『ブンブンジャー』はこれで最終回を迎えても憂いはない感じになって参りました。
 ……いやまさか、コラボ回が、一週間後に時間差で大惨事を生むのは、想定を遥かに超えていました、はっはっは。
 5人に戻ったブンブンジャー(なおこの間、始末屋は台詞もリアクションも与えられずに画面の外で再利用怪人と戦闘中……)はブンブンチェンジし、ブンブン総司令の完成させた新アイテム(「届け」要素は一応、ここで使用)を、個別名乗りの直後に発動すると、5人が揃いのチームジャケットを羽織ってパワーアップ。
 「気分ブンブン、限界超えてぶん回せ!」
 《ビクトリー! 夢を届けタイヤ!》
 「「「「「チャンピオンブンブンジャー!!」」」」」
 上にジャケットを羽織った事で、レーサー感はむしろ下がったチャンピオンブンブンジャーは高速起動でマッドレックスへと襲いかかり、ジャケットのワッペンを押すとブンブンカーの能力が基本武装にエンチャントされるのは、わかりやすい攻撃強化・ブンブンカーを活用できる・アクションにそれぞれの個性を付けられる、と揃って面白いアイデア
 合間に紫が再利用怪人をぐさっと始末し、ブンブンジャーは赤橙のダブルアタックから、マッドレックス再上映を一斉攻撃。
 「宇宙のどんなコースも越えていく為に、いろんなブンブンカーがある!」
 「一人じゃできない事も! チームなら越えていける!」
 台詞の上では、初恋暴露回も踏まえた上で、〔BBG-色々な個性-チームの意味〕を一つに繋げて、これがチームブンブン! みたいに打ち出してくるのですが、
 ・BBGとブンブンカーに関する具体的情報がほぼ初出(うっすらわかっても、言葉にしておかないといけない「情報」はあると思うわけなのです)
 ・この期に及んで紫は枠外
 ・玄蕃がそれに気付いて打倒する相手はマッドレックスではない
 と、連動を劇的にする為の布石不足・チームの枠組みへの違和感・撃破対象のズレ、と三拍子揃ってボールはゴールポストの遥か上空へ。
 ……まあ、紫はあくまで始末屋であってBBGを目指しているわけではないといえばないのですが、ここまでベタベタの関係なのに一山から除外なのは据わりが悪いですし(この場に居ない事で、助っ人としての尊重も感じられない)、スタッフとしてはここが“第二のチームアップ”のつもりなのかもしれませんが、実態としては“第一のチームアップ”程度の内容なので、20話以上の周回遅れ。
 この分だと、すっかり時宜を逸した頃に紫を加えた“第三のチームアップ”とか自信満々で仕掛けてきそうで、戦々恐々とします。
 ……『ブンブンジャー』、個人的に何が一番ガッカリしているかといえば、立ち上がりの時点ではシリーズ不参加の脚本陣ながら「しっかりと《スーパー戦隊》を把握してきている」感じが期待させたのに、ドンドン調理が雑になった末に、これで誤魔化せるだろうみたいな手法も目についてきていて、結果「《スーパー戦隊》を甘くみていたのでは??」みたいな内容だらけになってしまった事。
 制作サイドの見えない事情もあるのかもしれませんし、根本的にはこちらが勝手に期待して空回りしているだけであり、商業的に上手くいっていて、メインの視聴者層(購買層)にウケているのなら、単に私の好みに合わなかったというだけで、それはそれで構わないのですが、シリーズに長く関わっている演出陣その他の方々も含めて、スタッフを信用できない出来になってしまっているのは、私個人としては、つくづく残念。
 ブンレッドの背中にメンバーそれぞれが活を入れる(エンブレムをタッチする)と爆上げチャンピオンドライブが発動するのは、チームの一体感を示す必殺技として面白い見せ方だったのですが……。
 チャンピオンドライブにより呪符を破壊されたマッドレックスは正気を取り戻し、本気度はともかく、じゃあ決着つけるか? と剣を向ける赤はやはり、ハンドル握ってから殺す主義だったようですが、ディスレースの仕掛けにより暴走したエネルギーが爆発寸前のマッドレックスは一人で消滅する事を選び、最後に自分のハンドルを取り戻すと、夜空の星として壮絶な自爆を遂げるのであった。
 ……最後、三下トリオと切ないすれ違いみたいに表現されるのですが、どうせ出社したらマッドレックスが死亡したのはわかるのであまり意味も感じられず、全体としてディスレースの非道を意識させたいにしても、「征服された玄蕃の故郷」と「復活マッドレックス」「奮闘サンシーター」を同列に並べるのに無理がありすぎて、ものの見事に散らかりきった3クール目前半でありました。
 次回――とうとうボス登場。