『仮面ライダーガヴ』感想・第13話
◆第13話「約束の手作りケーキ」◆ (監督:杉原輝昭 脚本:香村純子)
ヴァレン=絆斗と知ったショウマは、早速ヴァレンの映像をデンテに見せて、人間が眷属を生み出せない事を確認。
「ヴァレンがされた改造というのは、恐らく、グラニュートの力を体内に宿す手術じゃ」
そんな実験成果があった気がする、とお気楽に請け負うデンテは、発想からして改造したのはグラニュートではないかと推測するが、絆斗の心情を知るショウマは、それを否定。
「それは無いよ。絆斗はグラニュートの事を憎んでるから。グラニュートと手を組むなんて、絶対しない」
その言葉が、絆斗の謎の協力者ばかりではなくショウマ自身にもかかってくるのが上手い言い回して、OPナレーションと合わせて、ショウマと絆斗の間に埋設された特大の地雷の存在をこれでもかと強調してきます。
またショウマにとってはデンテの存在も爆弾といえ、下手に選択肢を間違えると、チョコまみれになったデンテのオジキの死体が浜名湖に浮かびかねないので、絆斗の協力者について直接つつきにくい状況設定が巧妙。
絆斗繋がりで写真と頭痛について思い出したショウマがデンテに尋ねると、
「おまえさん、もしかして、ところどころ記憶が抜けとるのかもしれんぞ」
「え?!」
……その場合、容疑が一番濃いのは赤ガヴシステムの副作用なわけですが(笑)
「儂の事も覚えとらんかったしなぁ」
“記憶の欠落”は、いつでもなんでもありになってしまうので基本的にはズルいジョーカーなのですが、デンテが出てきた時点で匂わせていたよ、と右手に注目させて左手を開いてみせるのも巧妙で、危うい要素ではありますが華麗な手品で騙してほしいところです。
今作どうも、意識的に“情報整理”のターンを作って見せている感じですが、ガヴとヴァレンが互いの正体を知ったところから、次のステップへ向けた重要なポイントを手早くまとめ、いずれ用済みになったオジキがキャンディとチョコの海に沈むのかは、とても気にかかります。
一方、めでたく住所不定無職となった双子は、赤ガヴに復讐する機会を狙い、憎悪を滾らせていた。
「次こそ絶対始末する!」
「「――必ず、この手で」」
苛立ち紛れにダブルで壁パンすると拳がコンクリートにめり込み、双子もまた、その気になれば怪物的な力を持っている事をアバンの最後に示すのは、印象的で鮮やか。
……ただ今作の杉原監督、基本設定の暗さとのバランスを考えてなのか、少々緩めすぎな部分も目立ち、デンテのリアクションに漫画記号を浮かべたりするのは、個人的には好みではない演出。
はぴぱれでは、こども会のクリスマスパーティの為に幸果が試作したブッシュドノエルを試食したショウマが感動に打ち震え……今日は人類の誕生日や!!
……すみません、太陽の方から混線が発生しました。
ケーキは知っているけど食べた事はない、とまたも切ない過去を口にしたショウマは、廊下越しに双子の誕生パーティを見つめ、兄妹揃ってのパーティに招かれないなりに、双子にプレゼントを贈ろうとするも拒絶を受け足蹴にされた世知辛い少年時代を思い出し……
「だから、食べてみたかったんだ。こうやって、誰かと分け合って」
「……そっか」
回想の詳細は明かされないにしても、どう聞いても重苦しいショウマの言葉を笑顔で受け止める幸果さん、大物。
「こんな綺麗でおいしいケーキ作れるなんて、やっぱ幸果さんは凄いな」
「マショウも作れるよ」
またもショウマから幸果への尊敬ゲージがぎゅいーんと上昇したところから、1クール目も終わろうとするところで“食べる”だけでなく“作る”事にショウマが興味を示すのは納得の流れで、テキストに目移りしつつも幸果の希望を問うショウマも、そこでスタンダードなショートケーキを選ぶ幸果も、互いへの心配りが見えて気持ちの良いところ。
その頃ランゴは、ストマック精神を注入したクラゲを自らニエルブの研究室へと連れて行き、ランゴ兄さんはどうもワーカーホリックの気がありそうですが、部下にも厳しいけれど、部下に5を要求したなら、自身は10をこなすのが上に立つ者として当然、とか思っていそう。
……終盤、「ランゴ社長はお疲れのようだ。しばらく休暇を取っていただく事にしましょう」とか社内クーデターを起こされて座敷牢に閉じ込められたりしないか今から心配です(そこで父親と再会するまでがお約束)。
「え……あ、あの……私は、いったい何をすれば?」
「じゃあ……ここに寝てみようか」
置き去りにされたクラゲにニエルブが爽やかな笑みを向け、今回の出番はここまでのクラゲ、随分と引っ張ります。
廊下に出たランゴはグロッタに声をかけられ、
「シータとジープ、家出したみたいよ」
認識は、公式に家出だった。
「あいつらが暴れるなら、その裏で俺の計画を進めるまでだ」
ランゴ兄さんは今回も、思わせぶりな事を言っておく大物悪役ムーヴを決め、人間界では絆斗がグラニュートに関する情報を記事の形にまとめながら、どこかに公開するかどうかを考えあぐねていた。
周囲の会話により、“仮面ライダー”“怪物”についての噂が着実に世間に浸透しつつある様子が描かれる中、行方不明になった友人を探すSNSの書き込みを目にした絆斗は、怪しいミュージシャン探しを開始。
ショウマは眷属ライダー隊に捜査への協力を指示しつつ、幸果師匠の指導の下、ケーキ作りを開始するドタバタほのぼのタイムとなり、さすがの幸果も、ショウマにじっと見つめられ続けると、照れる事が判明。
「丁寧に……さくっと?」
「そう。……ウチはね、食べて貰いたい人の顔を思い浮かべるんだー。食べた人が幸せな気持ちになりますようにって。したら手つきも丁寧になる」
幸果はショウマにお菓子作りのコツを伝え……これ、今は亡きヤドカリグラニュートが同じような事を考えていたのではないかと考えると、物語の業が深い。
「はぁ~、どれも品質はいまいちかー。社長がランゴ様になってから、よけい注文がうるさくなったな。まあいいか。俺は昔ながらの数で勝負だ」
一方、ヒトプレスを手に溜息をつく、自称29歳シンガーソングライターなグラニュート。
行方不明事件を追う絆斗は、人気のない小さな公園などで歌うこのグラニュートに辿り着き……一曲歌ってみせるでもなく、得物が近づいてきた途端に腹の口から舌を伸ばすミュージシャン、仕事が、超・雑だった。
……ますます、プロ意識の高かったヤドカリグラニュートの事が偲ばれます。
「見つけたぜ、グラニュート」
「まさかおまえ、噂の赤ガヴか?!」
「ガヴじゃねぇ――ヴァレンだ」
ベロをヒラリとかわした絆斗が変身すると、慌てるグラニュートが現した正体はカニで偽名は可児で、凄く、雑だった。
幸果が仕事に向かった後、無事にケーキを完成させたショウマは、眷属ライダー隊の知らせを受けて増援に駆けつけるが、エージェント白に阻まれて別行動となり、ヴァレンvsカニがタイマンで激突。
二人揃って公園の噴水に転がり込むと、水のかけ合いがヒートアップして、ボーカル曲をバックにスーパーあははうふふタイムに突入し……カニミュージシャンの演者さんが過去作ゆかりのキャスト(『宇宙戦隊キュウレンジャー』スティンガー役の岸洋佑さん)という事もあって、恐らくゲスト歌唱の曲を流す時間を作る都合だったのでしょうが、率直に、悪ふざけになった感。
いちゃいちゃ回想(ではない)の終了後、またも甲殻類に弾丸を跳ね返されるヴァレンだが、ヒトプレスの回収には成功。
「昔はシンプルに、人間とっ捕まえるだけで良かったのによぉ!!」
仕事の成果を奪われたカニが、社内コンプライアンスの厳しさに愚痴をぶちまけ始めると、20年前から人をさらっているベテランバイトだった事がぽろっと判明し、おふざけぽんこつ怪人かと油断していたら、ストマック社の闇のシノギに関わる生き証人だった衝撃の展開はしてやられました(笑)
思わず母をさらったグラニュートについて聞き込みするヴァレンだが、さすがにカニは逃走し、絆斗母子の写真を見たショウマの異変に続き、絆斗母の拉致事件に一歩近づく要素を入れてくるのが、手堅い手堅い。
「……母ちゃん」
一方、エージェント白に荒野に誘い出されたガヴは、鉄砲玉に志願してきたブッシュドノエルの若い衆を用いて斧を手にした新たな姿を顕現し、パーツパーツはナルトをつけているみたいなのですが、全体で見るとパワー型の重装甲フォームとして巧くまとまっているのが、ガヴのデザインの面白いところ。
ブッシュドガヴは力いっぱい斧を振り回すと、地中から丸太を召喚する能力でエージェントの動きを封じ、これがブッシュドノエルの、命の薪だーーー!! と丸太焼きでエージェントを斬首。
息つく間もなく、背後から放たれた銃弾をノールックでかわすのが格好良く、振り向くとそこに立っていたのは、シータとジープ。
「おまえなんかに私たちがわざわざ手を下す必要はないと思ってた。でも……」
「必要かどうかじゃねぇ。この手で始末しなきゃ気がすまねぇ!」
前回のセキュリティ丸焼き大作戦は、下賤の者を相手に自らの手を汚すまでもない高慢貴族ムーヴだったと自己申告した双子は、青と白の狼へと変貌。
射撃担当と近接担当に分かれてガヴに襲いかかると、一人が背後から羽交い締めにしてグミ装甲を力尽くで剥ぎ取って作り出した急所に、もう一人が正面から往生せいやーーーとドスを突き刺し、頭を……ちゃんと使った!!
双子、ここ数話で株価が大暴落していたので、ちょっとした事でV字回復します(笑)
「なんでだよ! なんでそんなに、俺の事が憎いんだよ?!」
「「うるさい!!」」
「おまえのせいで、私たちが惨めになるのォ!」
「おまえなんか、最初から存在しなきゃよかったんだ!」
そこにあるのは、混ざり者の落ちこぼれと蔑んでいた末弟に足を掬われた屈辱なのか、クリティカルダメージを受けたガヴはポテトを発動するも、双子を突き動かす怨念のオーラ力と、高速機動を駆使しながらのピタリと息の合った遠近に隙の無い連携に大苦戦。
「おまえのせいで!」
「俺たちは引き離される!」
チョコガンマンの銃弾も回避されると、ノックバックによる衝突ダメージはマシュマロで無効化し、反動を利用したガヴは空中で基本フォームに戻りながらオレンジグミとソーダグミのダブルイートで着地と共に大技を放つが、双子はそれも回避。
間髪入れずにオレンジキックで大地を揺らすと、宙に浮かせた双子めがけてソーダパンチを放つガヴだが、殺(と)った――! と思ったその瞬間、双子が“手を繋ぐ”事で互いの軌道を強引にずらして必殺パンチを避けるのが大変格好良く、逆に追い詰められて地面に転がるガヴ。
「やばい……もう……駄目かも……」
かつてないダメージを受けたガヴが息も絶え絶えに横たわる中、トドメを刺そうと迫る双子の足下に、組長を守ろうと若い衆が群がるのはゴチゾウの在り方と可愛げが出て良かったところ。
その姿を見たガヴは、意識朦朧としながらも全身全霊を振り絞って立ち上がり、完成したケーキを幸果と一緒に食べる約束を守る為に、再びブッシュドノエルの眷属をセット。
「駄目だ……ぜっ対に……! 絶対に……ぜったい、かえんなきゃ」
必殺キャンプファイヤーを放つノエルガヴだが、双子はこれも紫電の動きで全ての丸太をくぐり抜けてみせ、斬撃を銃撃でブーストする双子シンクロ必殺攻撃(なにか既視感あると思ったら、海賊戦隊)を受けたガヴは、咄嗟のキャンディガードでも耐えきれずに吹き飛ばされ、変身解除しながら崖の下へと転落していき……つづく。
双子の本気によりガヴ完敗となり、締めが落下なのは第1話冒頭との被せもありそうですが、双子ならではの連携アクションと、負けはするもガヴがこれまで全てのフォームを使用して戦う趣向は大変見応えがあり(最後にキャンディでダメージを軽減するなど、全フォームの使い切りかたが実に鮮やか)、前々回の路地裏バトル同様、筋の通った流れ×スピーディなフォームチェンジが噛み合った、幹部クラスとの決戦にふさわしい好勝負でありました。
次回――なんかちょっと邪悪な感じのガヴが生まれ、果たして双子は新春の初日の出を拝む事ができるのか?!
いよいよ上位フォームの登場となりそうですが、双子の始末を(ひとまず)どう付けるのかも読めないので、楽しみです。