『仮面ライダーX』感想・第31-32話
◆第31話「立て! キングダーク!!」◆ (監督:折田至 脚本:村山庄三)
風光明媚な那須りんどう湖ファミリー牧場、今この地に、忍び寄る恐るべき狂気――
「人間の敬介はちょっと銃に撃たれただけで死んでしまったが、マシンのおまえは簡単には死なない。やりようによっては、人間の何百倍のパワーも持てるし、ライドルだって内蔵する事ができるんだ」
……すみません、約20年後のマッドサイエンティストが混線しました。
物語は1975年頃に戻りまして、牧場の管理事務所に住まう一家の少女が湖で拾った人形を持ち帰ると、夜半にその瞳が怪しく輝き……この人形、左腕はもげているわ頭髪は半分無いわで、とても少女が好んで家に持ち帰りそうな姿ではないのですが、この不気味さには前半のゴッド指令人形を想起させる意図があったりしたのでしょうか。
人形を狙うゴッド悪人軍団・トカゲバイキング(爬虫人類感のあるグロテスクなマスクの風貌が秀逸)が事務所を襲撃すると、人形を手に逃げ出した少女が道ばたに倒れているのを、マコとチコが発見。
那須ビューホテルに逗留中の藤兵衛&敬介と合流し…………だ、駄目だ……一週間の間を空けてから見ると、敬介の頭に起きた異変が……申し訳ないけど面白い……!
トカゲ人間について聞いた一同は、背後にゴッドの気配を感じ取り、取ったりしないから大丈夫、と少女から受け取った人形を、言った端から地面に落とす敬介、敬介ーーー!
ところがその拍子に、人形の中に仕込まれていたメッセージが再生され、人形の中に設計図の断片が隠されている事が判明。メッセージは女性の悲鳴と共に途切れるが、大事な人形に対する知らないおじさんの粗略な扱いに少女は人形を掴んで走り去ってしまい、神敬介はまた一つ、取り返しのつかない何かを失った!
真空地獄車を走らせるメモリを確保する為に、デリカシーなど不要!!
更新して再起動する度に人として何かを失っていく敬介は少女を追いかけると、トカゲバイキング率いるゴッド騎馬隊に囲まれている姿を発見。
「この化けもん野郎。罪も無い子になんてことしやがる」
……なんだか、最近見た映画の影響を受けたような啖呵を切る敬介だが、ゴッド騎馬隊に苦戦している内に少女をさらわれてしまい、大変身。
工作員から奪った馬にまたがると、双方馬を走らせながら、馬上からのチョップで工作員をはたき落とすのは、見ていてなかなか怖いアクションです。
トカゲバイキングに連続攻撃を浴びせると少女を逃がして人形も確保する敬介だが、今度はマコチコが人質に取られてしまい、鉄塔から助けての大合唱。
「卑怯者め!」
「ぼーははははは、卑怯なとこが俺様の取り柄よ」
やむなく敬介は人形を渡すと、自らも囚われの身となるが……人形の中には既に設計図はなく、炸裂する
「この馬鹿者ぉ!!」
いつの間にやら設計図を抜き取っていた少女はホテルの藤兵衛の元まで戻ると事情を説明し、
〔湖で拾った壊れた人形を大事に持ち帰る → 人形大事のあまり敬介たちの元から逃げ出す → その割には途中で中に手を突っ込んで設計図を入手している → 特に良い印象は無いはずの藤兵衛(たち)の元へ戻る〕
と、幼い少女にしても、あまりにも話の都合だけで動き回り、人形を行動原理とした逃亡の必要がなくなると、人形に全く興味を見せなくなるのもいただけないところ。
敬介救出へとジープを走らせる藤兵衛だが、トカゲバイキングの強襲を受けると少女ともども囚われの身となってしまい、先に囚われたマコチコは投石機の的にされ、厳重に拘束された敬介は益子焼製造直売所に引っ立てられて竈の中に放り込まれようとしており……
ロケ地でその処刑方法はいいのか。
これまで数々の死線をくぐりぬけてきた藤兵衛一党も、那須高原でいよいよ年貢の納め時が近づくが、生きながら益子焼にされそうになっていた敬介が、竈の高熱を利用して拘束を解くと大変身に成功。
工作員を蹴散らして藤兵衛らを救出すると逃げたトカゲをクルーザーで追い、せっかく那須高原なのでという事か、しばらく街道チェイスシーンが続いた後、物凄い勢いで斜面を駆け下りていき…………あ、コケた。
雄大な景色+遠征を理由に、いつもとは違う画を撮りやすくてテンションが上がったのか、攻撃力高めの映像が幾つか飛び出してきますが、Xは疲労困憊のバイキングの頭部に連続でハイキックを叩き込むと、落ちた戦斧を投げつけて腕を切り裂き、空中でひたすらグルグル回転してから、その勢いを乗せたキックを叩き込む、俺の地獄車パート3「空中・地獄車ー」でフィニッシュ。
……もはや何が地獄車なのかはわかりませんが、映像の勢いは凄い(笑)
トカゲバイキングが湖の藻屑となると、トカゲ人間にされていた少女の両親は元に戻り、めでたしめでたし。
悪人軍団の不甲斐なさに怒りを燃やすキングダークが雄々しく立ち上がり、主人公扱いだったサブタイトルがクライマックスなパターンで、つづく。
次回も那須高原を舞台とし、怪人「アリカポネ」は思わず吹き出してしまった会心のネーミング(笑)
◆第32話「対決! キングダーク対Xライダー」◆ (監督:折田至 脚本:伊上勝)
ホテルでのんびりと遊んでいた敬介の元へ、南原博士の弟子であるノダ・サチコから連絡が入る一方、すれ違いでノダ家を襲撃したゴッド怪人アリカポネは、ノダ夫に針を刺すと人質として娘を誘拐し、再び那須高原で展開する、RS装置の設計図を巡る争奪線――。
怪人アリカポネの人間体である、くわえ煙草に帽子を被った伊達男を演じる男優さんと、設計図を敬介に託そうとする南原博士の弟子、ノダ・サチコを演じる女優さんの出番がやたら多いのですが、それが面白さよりも一場面一場面の間延びに繋がっている上、那須ビューホテルのレストランではジャンボアフリカンショーが始まり、全体的にテンポが悪くて残念な出来。
敬介に電話をかけてきたノダ博士は「私たち南原グループ」という謎の言い回しを用い、これは、この時点で話がどう進んでいても、残った設計図は全てまとめて敬介に届けられる形にしようという意図でありましょうか。
RS装置編の問題の一つとして、南原博士が設計図を託した“仲間達”の半分ほどが、「死んでいる」「死にそう」「出てこない」といった扱いの為、受け取った側の視点を用いての“科学の発展と使う者の倫理”のテーゼが全く掘り下げられない為にますます、死を招く呪いの手紙と化してしまったのは、勿体なかった部分。
争奪戦そのものも展開の硬直化を招き、興味を引く連続的な要素として発端のアイデア自体は悪くなかったと思うのですが、返す返すも「南原 破りすぎ」になってしまったなと。
設計図を入手すると、ノダ母子を揃って抹殺しようとするアリカポネだが、Xライダーがクルーザーで参上。既に設計図はすり替えておいた、とブラフを仕掛けて怪人を動揺させた隙に母子を救出し……冒頭でアリカポネの針を受けた夫が無事なのかどうかが気になって仕方がないのですが、設計図を敬介に託し、ゴッドの魔手を逃れて家に帰ったら、リビングに夫の死体が転がっているという酷い後日談が待っているのではこれ(前回は、ゲストが少女一人だったので、両親はやや強引に状態異常で済ませましたが)。
仕込み杖と葉巻からの隠し針を使うアリカポネに連続で打撃をお見舞いしたエックスが、今回は正攻法による俺の地獄車パート1でアリカポネを葬り去ると、鳴動する大地。
「わっはははははは……! Xライダー、最後の勝利はキングダークだ。設計図の全ては必ず奪う」
巨大な地割れを起こし、山を吹き飛ばしながら、那須高原に出現するキングダークの偉容!
「見ろ! 俺様の姿を!」
「……キングダーク!」
「この手で、Xライダーを、握り潰す日も、近いのだ!」
予告映像がラストまで見せていたパターンで、首から下はハリボテではなかったキングダークがXライダーに宣戦布告して、つづく。
今となっては珍しいタイプの敵ではありませんが、鋼鉄の大巨人、は改めてインパクト大。
……やはり体内に入ると、
「遂にここまで来たか敬介」
「その声は……親父?!」
「そう……キングダークは私自身だ」
となってしまうのか?!
7話ぶりの伊上脚本ながら、RS装置編における設計図争奪戦のどん詰まりといった出来の悪さでしたが、次回――危うし真ヒロイン! その時、当然、先輩たちが駆けつける!!