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最悪メガネ同盟

仮面ライダーガヴ』感想・第15話

◆第15話「脱走グラニュート!」◆ (監督:諸田敏 脚本:毛利亘宏)
 シータ・ストマックが誕生ケーキの炎に消えた夜――
 「こんばんわ」
 「やあ、ニエルブくん! こないだの置き配、ありがとね」
 酸賀とニエルブは朗らかに挨拶をかわし、なんかもう、アバンタイトルから、最低な感じだった。
 どうやらニエルブは、グラニュート研究者として酸賀と接触しているようで、カバンの中から取りだしたのは、先日さらったガヴの眷属と、新たなグラニュートの肝。
 絆斗に移植されたグラニュートの器官の出所が明確になりましたが、ここでまた一つ酸賀の手に渡るという事は、更なる改造の犠牲者が出るのか、或いはヴァレンを強化する、マーキュリー回路の役割を果たすのか。
 酸賀なら「よーし、次は心臓を取り替えてみようか、絆斗くん」とかにこやかに言いそうですが、絆斗と同じタイプの改造人間が増えるのは特徴付けの面であまり面白くなくなりそうなので、個人的には絆斗の強化用を期待したいところです(それはそれでどうなのか)。
 OP映像からはシータが消滅し、両手ポケット組長をセンターに、ストマック兄妹5人が画面手前に向けて歩いてくる場面が割と好きなのでどう処理されるかと思ったら、5人で並んでくるところまでは居るが、各個のアップになったところで消滅処理がされて姿が消える凝ったマイナーチェンジが施され、普通に居なくなっているよりも、喪失が強調されてえげつない。
 この後、物語の進行によって一人ずつ減っていくのかと思うと、今から心臓がバクバクします(笑)
 人間界にはクリスマスが近づき、小説『賢者の贈り物』(オー・ヘンリー)に影響を受けたショウマは、その流れで幸果に贈り物をしようとしてさすがに断られるが(なんて無邪気に恐ろしいボールを投げるんだ……)、その幸果に勧められて、絆斗にプレゼントを贈ってみる事に。
 商店街での仕事中に出会った絆斗に、クリスマスな雰囲気の眷属をプレゼントしてみるも、(なんか違う気がする……?)とショウマが首をひねっていた頃、ストマック社の重役会議には、シータ死亡の報告がもたらされていた。
 「シータが赤ガヴにやられた?」
 「嘘でしょ。いくらあの子たちとはいえ、赤ガヴなんかに」
 割と感情を見せたグロッタの姐さんですが、比重は、兄妹の情ではなく「兄妹の強弱」に置かれていました。狂犬でした。
 「ニエルブも意地悪よねぇ。助けてやれば良かったのに」
 「……ふん、あいつはそういう奴だ」
 シータ死亡に対する年長組の反応は気になっていたのですが、未熟者が下手を打った扱いで片付けられ、話題に出てきたニエルブは、人間界出張の土産を手に研究室に戻ってご満悦。
 「赤ガヴの進化を見られたのは、シータの尊い犠牲のおかげだ。――感謝しなきゃ」
 人間界で貰ってきたプリンをシータの魂に捧げ、回想における「人間はこんなものを喜んで食べるのかい?」の言葉により、酸賀は、ニエルブがグラニュートと知った上で付き合っている事が明白に。
 互いに笑顔の裏で何を考えているのかまではわかりませんが、恐らく物語開始以前の段階からマッドメガネ同盟が結成されて情報交換が行われていたのは酸賀の情報源について妥当な答合わせとなり、つまり塩谷師匠が早々に狙われたのは……
 「酸賀さん、ちょっとメガネが多すぎると思わない?(くいっ)」
 「そうそう俺もそう思ってたんだよね~(ぱちん)」
 だったのかもしれません。
 プリンを一口含んだニエルブの表情が微妙なのは、デンテとの差別化はありそうで、
 「赤ガヴくんの戦闘能力の源でもある」
 「酸賀さんはこれをヴァレンシステムに応用したわけ?」
 互いに資料を提供し合い、持ち帰ったプリンをシャーレに取り分けたニエルブは、なにやら実験を進め……ランゴがショウマの精神に揺さぶりをかけようとしてクラゲを選抜した思惑とどう繋がるのかはまだ見えませんが、これはクラゲが、第三の仮面ライダーになる可能性もありそうでしょうか。
 一方、時代の変化についていけず、シノギの細るばかりのカニラニュートは、敢えて自らショウマに接触していた。
 「どうする? 二度と闇菓子に関わらないか、それとも俺に倒されるか」
 「はい! もう、闇菓子には関わりませーん!」
 「わかった」
 スムーズに必殺キックに移行しようとしたガヴは、可児の言葉の意味に気付いて慌てて体制を崩し……うーん…………カニの作戦にガヴの「どうする?」を取り入れる、くすぐり自体は面白かったのですが、それに対してガヴが、どうせ提案を受け入れるわけがない前提で殺意を向けてしまったのは、「問いかけ」の持つ意味を軽くしてしまって、大変残念。
 どこベースがわかりませんが、瞬間的な笑いの為に、積み重ねてきた文脈を軽視しがちなのは、いつもの諸田監督っぽいノリではありますが……。或いは、ヴァレンと共闘する中で使いにくくなってきたこの問いかけそのものを、これを最後に封印するつもりなのかもですが。
 可児はストマック社を抜けたいので力を貸してほしい、とガヴにすがりつき、事情を説明されたショウマが対応に悩んでいるところに、絆斗が乱入。
 「ふざけんな! もう人間は襲わない? そんな寝言おまえは信じんのか?!」
 「……完全に信じたわけじゃない。でも、そういうグラニュートが居るかもしれない」
 善良ではあるが無知でも無垢でもないショウマは、安易に情にほだされるわけではなく、カニに対する疑念と、闇菓子業に関する「許せない」という一線は引きつつも、カニの言葉に感じる希望を消せず、ショウマにおける「許せない」と「信じたい」のせめぎ合いとは即ち、“自分がこの世界に居てもいいのか”と密接に関わっているのが、葛藤の発生に絶妙なバランスです。
 「話になんねぇ」
 「もし! ……闇菓子に関わらないグラニュートが居たとしたら……絆斗は、信用できる?」
 「無理に決まってんだろ。グラニュートは、根こそぎぶっ倒す」
 互いにストマック社について知っている事が確認された上で、さすがにストマック社との関わりについてはショウマが誤魔化すと、怒りの収まる筈のない絆斗は、カニラニュートの扱いについてショウマと決裂。
 両者の間にグラニュート全体に関する視点の違いがあるのは当然なのですが、ショウマにもショウマの事情がある為に、絆斗に対して“情報を止めている”状態になっており、絆斗にとっては後々、ショウマの正体問題とは別に、異世界の知的生命体が、必ずしも全て人間の敵たる怪物ではない、と知る事になるのは、割と背中からガトリングで撃たれるような事になるかもしれない……とは思ってみたり(これもなかなか、取り扱い注意の要素になりますが)。
 逃げたカニはがジープに接触する一方、とある裁判所の傍聴人席に座る黒い帽子の男……その正体は、改造手術を受け、正式にストマック社のアルバイトに採用されたクラゲのグラニュート――ラーゲ9。
 人間界へ送り込まれる経緯が回想シーンで描かれ、扉をくぐった途端におどおどした感じが消え失せるラーゲ。
 「ここが人間の世界か。……やっと近づいたと思ったのに。コツコツ実績作ってぇ、本社戻れってか? ……だる」
 ……想像の余地が色々と生まれる台詞ですが、これはもしかすると、グラニュート界の官憲がストマック社に送り込んだ秘密捜査官とかの線がありそうでしょうか。この後の行動を見ると、ヒトプレスを作る事には全く躊躇していませんが、異世界の生命相手なら割り切れるのは頷けますし、仮に3号ライダーだった場合、その辺りの「変化」が物語に関わってくる可能性もありそうかな、とは。
 そう考えると、ストマック家の人間が機密エリアでは人間の姿をしているのは、万が一の時に、グラニュートとしての正体がバレるのを避ける為……?
 ……と思ったのですが、思い切りストマック社と言っているので、それは無いか……?(笑)
 クラゲがこれで秘密捜査官(ないしは別の組織のスパイ)だった場合、ランゴ兄さんと愛憎半ばする友情で結ばれると、ますます香港ノワールの世界に入っていきますが、裁判中にやおら立ち上がってグラニュートの正体を現すと法廷内部に触手を伸ばし、強制的に多幸感を与えてから不自然な笑みに固まった人間たちを圧縮していく仕事ぶりは、効率的だが大雑把でした!
 気弱なクラゲ男が一転、腹に一物ありそうな謎の人物にジャンプアップしていた頃、ショウマはデンテに、組織からの足抜けについて相談中。
 「ストマック社を辞めたいグラニュートか。そんな奴おるかのぉ、闇菓子の魅力に、抗えるかのぉ?(※悪意は無い)」
 「やっぱり、そうなのかな……」
 「おったとしても、そういう奴は、誰にも言わず、こっそり消えるもんじゃなからなぁ。いや、ひょっとしたら消えたんじゃなく、秘密裡に消されとるのかもしれん(※悪意は無い)」
 デンテの発言にショウマがショックを受けているところに、ちょうど眷属が可児の危機を伝えに現れ、迷いながらもエージェント青に襲われていた可児を助けるガヴ。
 だがニヤリと笑った可児は、正体を現すと背後からガヴを奇襲し、もう少し懐に入り込んでから何か仕掛けてくるのかと思ったら……小者なので、裏切り早かった(笑)
 「へへへへへへ、まんまと引っかかったなぁ!」
 「やっぱり、騙してたのか?!」
 「当たり前だ。そんなに簡単に闇菓子を諦められると思うなよ! ははは!」
 カニが何やら企んでいるのは最初から見せていたので、物語の焦点はショウマの心情にあったのですが、ここで闇菓子の常習性をより強調できたのは、良かったポイント。
 「……信じたかったんだ。人を襲わないグラニュートが、居たらいいなって」
 「あーまーちゃん、だなぁ! うぉぉらぁっ! ……おぉ、あれ?」
 「――残念だよ」
 これで心置きなく、おまえの新しい旅立ちの日を祝う事ができる――とガヴは容赦無用のケーキング。デコレーションの能力で眷属武装のホイップ戦士を生みだし、予告からは面白いアイデアで期待していたのですが、今回のところはバトルシーンがドタバタするだけになってしまい、あまり面白さには繋がりませんでした。
 遅れてきた絆斗が逃げたカニを追うと、腕ひしぎチョコ絡め変身を見せるヴァレンだが、カニが保険として配置していたエージェントの攻撃を受け3対1の形勢不利に陥ると、伊達にキャリア20年ではない焼きカニプレスの直撃を受け、変身解除から気絶。
 ガヴかヴァレンをストマック社に突き出し、一発逆転を狙うカニの秘策がまんまとはまってしまい、まさかの、4話連続登場なのカニ?! で、つづく。
 上位フォーム誕生&幹部退場の大きな山を一つ越えたところで、年明けの新展開に向けて布石を打ちまくる繋ぎの回という内容でしたが、コラボ仕事人・毛利さんが、そつの無い仕事。
 オーダー多めの内容だったと思われ、そつがないが故にノルマを淡々とこなしていく感じが出ていましたが、その中で味付けに使われた『賢者の贈り物』が綺麗に効いてくれるのを、期待したいです。
 なお予告には新たなドライバーみたいなものが見えており、これはキャスト的にもクラゲがプリンのライダーでほぼ決まりな雰囲気。