『ウルトラマンブレーザー』感想・第16話&特別総集編
◆第16話「恐怖は地底より」◆ (監督:辻本貴則 脚本:継田淳)
見所は、腰の入った貫手をブレーザーの土手っ腹に叩き込む巨大エミ隊員。
エミが格闘アクションを見せた第4話と同じ座組なので狙った描写でしょうが、面白い組み合わせとなりました。
とある工事現場に発生した巨大な陥没が地下生物の巣穴に繋がり、姿を見せた巨大生物を目撃した作業員の証言は、全くバラバラ……で、その全てを組み合わせて「証言を元にした怪獣の予想図」を描いた人、偉い(笑)
昔ながらの怪生物目撃談を下敷きにしてニヤリとさせると、地下に潜む巨大生物に対処する為「とにかく……なんとかして、正体を拝まなきゃだな……」とスカードは現場近くで交代で見張りに当たる事に。
目撃証言がちぐはぐなのは、ガス中毒による意識の混濁が原因なのではと推測し、ガス検知器を用いようとしたテルアキも怪獣に遭遇し、穴の底に目にしたのは……赤黒く蠢くおはぎ………………?
恐怖へのリアクションなど、今回、緩めたところはかなり緩めた描写が続き、テルアキとヤスノブのやり取りもシリアスながらコミカルでもあるのですが、蠢くおはぎのイメージCGそのものはかなり気持ち悪くて、これなら正気度判定を求められても仕方ありません(笑)
判定に失敗したテルアキは恐慌状態に陥った末に意識を失い、穴の底に蠢く正体不明の何かを見て次々と恐怖に陥るのは、クトゥルフ神話風味も意識されていそうでしょうか。
テルアキは、スキル《大いなる星辰の知識》を手に入れた!
病院に運び込まれたテルアキの「おはぎを見た」発言から、穴の底で確認された光が見る者の恐怖を投影するのではないか、と推測するスカードだが、遂に問題の生物が地上へと出現。
その放つ光を浴びると、アンリはタガメ怪獣を、ヤスノブは縞々シャツ同盟を……そしてゲントは、半壊して燃え上がるアースガロンを目にするが、意識を集中してゲントが幻覚を振り払うと、そこに立っていたのは、そこはかとなくモグラっぽいでべその怪獣(手の平でミミズ状のものがうねうねしていて気持ち悪い)。
病院のテルアキからの連絡により、コードネーム:モグージョンは、手の平から放つ光によって生物の視神経から扁桃体にダメージを与え、行動不能に陥らせる事が判明。
長い舌を伸ばして対象を捕食しようとするのも気持ち悪い怪獣が街に繰り出すと、スカードの半数以上が戦闘不能の危機的状況に、基地で待機していたエミがアースガロンを現場まで運ぶ事になり、搭載作業の進められていたAI対話システムが、初出勤。
「落ち着いて下さいエミさん」
それはあまりにも予想外すぎる、優美で丁寧な二枚目声でした。
……というか誰だ! アースガロンのAIボイスに、ちょっとけだるい系石田彰を設定したのは、誰だ!(OPクレジットで名前を見た時点では、キバットぽい感じの演技なのかな、と想像していたら、『ペルソナ3』主人公風味でした……!)
「いつもお世話になっています。23式特殊戦術機甲獣アースガロンです。お話するのは初めてですが、皆さんの事は良く知ってます。良かったら、アーくんって呼んで下さい」
段階を踏んでいくアースガロンのバージョンアップとして、武装強化ではなく「声(思考する知性)を加える」のは面白い方向性となり、逃げ遅れた民間人を助ける為、まだ臨機応変な融通の利かないAIの指示を無視して怪獣に体当たりを仕掛けるエミだが、怪獣をビルから引き離す事には成功したものの、至近距離でモグージョンの光を浴びてしまい、その脳裏に薄し出された恐怖は……エミ自身の姿。
巨大エミに組み付かれたところで視界がブラックアウトするのは印象的な演出となり、現場に到着したゲントは、らーっせっせ! らーっせっせ!
奉納の舞いからすかさず八つ裂き虹輪を投げつけるが跳ね返されてビルが真っ二つにされ、ウルトラマン変身者が今からでも入れる保険はありません。
インファイトに持ち込むブレーザーだが、怪獣のフラッシュを警戒して思うように戦えず、腕が伸びたり、トサカが回転したり、モグラ怪獣はかなりアグレッシブ。
エミの視界には、巨大エミがビルを持ち上げてブレーザーを殴打する姿が見えており、おおっといけない、これは凶器攻撃だ、危ない、危ないぞブレーザー、ああっ、ここで思い切り、鳩尾に踏みつけが入りました。苦しんでいます。ブレーザー、地面をのたうち回って苦しんでいます。
「落ち着け……はぁ、はぁ、落ち着け、私……」
エミトラファイトの幻覚を制御しようとするエミだが、髪を振り乱し、咆哮をあげる自らの姿に心臓は早鐘を打ち、正常な呼吸もまままならないその時――病院から仲間達の通信がコックピットへとに届く。
「みんな……」
エミは仲間たちの呼びかけになんとか落ち着きを取り戻し、任務上の単独行動が多く、個人的な目的も抱え、周囲には本音を見せないタイプのエミが、スカードの仲間に助けられて息を吹き返すのは、後半に向けてチームの姿を示す、良い仕掛けとなりました。
絶対安静の病室を抜け出してのエールも劇的になり、それを看護師に見とがめられての騒動も良いスパイスに。
「ありがとう……みんな!」
恐怖を押さえ込んだエミは、怪獣の姿を認識して支援射撃を叩き込み、その隙に間合いを取り直したブレーザーは……目を、閉じた。
そ、それ、まぶただったの……?!
とブレーザーの瞳から光が消えると、目ざとくそれを察知した怪獣が静かに横に回ろうとするも(今回の怪獣は、人間のような仕草を見せる路線)、ブレーザーはエミの声に反応。モグージョンの伸びーるパンチを回避するとカウンターに渾身の肘を叩き込み、OPインストと共にガラモンソードを召喚。
ノコギリ頭突きを刀身で受け止めながらパワーチャージすると、ライトニング連続攻撃で、モグージョンを粉砕するのであった。
「……ありがとね、アーくん」
「こちらこそ。急降下は、的確な判断でした」
自身が見た“恐怖”について周囲には隠すのがエミ関連の布石となりつつ、アースガロンAIと初めての会話をエミにさらわられたヤスノブがジェラシーファイヤーを燃やして、つづく。
今作の中では割と気に入っている第4-5-6話と同じ座組となり、対怪獣ミッションにおけるもっともらしさのアップデートは意識しつつも、締めすぎない適度な緩さを残した作りが、個人的には『ブレーザー』らしさとして肌に合って、今回もなかなか面白かったです。
『ブレーザー』は、このぐらいの案配が好きだなーと(そうする事で、第11-12話のような山場の回も跳ねますし)。
◆特別総集編「ブレーザー電脳絵巻」◆ (演出:清洲昇吾 脚本:足木淳一郎)
アニメ調の電脳世界で暮らす、パーフェクト・アナライズ・ガジェット――色々なウルトラヒーローや怪獣のデータを集めている電脳生物パグ――が進行役で展開する総集編。
…………て、『ガイア』のパルのオマージュでありましょうか。
何か我夢がやらかして、生んではいけない生物を産んでしまったのか……? みたいな不安感が生じて困りますが、それはさておいて、 一昔前は番組最後にあったミニコーナーを一挙まとめてみた、みたいな作りで、劇中で全く触れられないブレーザーブレスとかブレーザーストーンという名称が、初登場といえば初登場。
そして明らかになる、ガラモンソードのレバー操作「2回」「3、4回」「5回以上」という、割とファジーな作り。
前半はブレーザーの技や武装を一挙紹介し、後半は今作の新規怪獣を紹介し、次回――本編は再生怪獣?! は、成る程でした(笑)
何やら怪しいフードの男が登場し、これまでとちょっと毛色の雰囲気で、果たしてどうなる。