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決闘と欲望と新皇帝

超力戦隊オーレンジャー』感想・第39-40話

◆第39話「皇子決闘に死す」◆ (監督:田崎竜太 脚本:杉村升
 『ダイレン』『カクレン』で助監督に入っていた田崎監督がデビューし、ストップモーションに昌平のモノローグを被せて“嵐の前の静けさ”を示すのは、ここまで無かった見せ方。
 敵の根拠地が明確にわかっている割には、最近静か、で済ませて守勢に徹するのは、話の都合以上に、国際空軍における高度に政治的な意志決定プロセスの複雑さや派閥争いの暗部を感じさせますが、80年代中盤以降の戦隊で模索されていた、ヒーローの主体的目標設定が不足していて、とにかく受け身の性質が強いのが、今作における個々のキャラクターの弱さの一因となってはいそうです。
 戦いと戦いの間にする事それは筋トレ、と自主トレに励んでいた昌平が顔見知りの八百屋(前に出てきたような出ていないような……)を手伝っていた頃、バラノイア帝国では今まさに嵐が吹き荒れようとしていた。
 帝国憲法に基づき、バッカスフンド崩御から100日の経過をもって新皇帝を決める決闘が執り行われる事となり、実質的な公開処刑の場に引きずり出されるブルドントとヒステリア。
 互いに細剣を手にするブルドントとボンバーだが、着ぐるみの戦闘力に差がありすぎて勝負にならず、ボンバーの連続攻撃を受けたブルドントは、トドメのミサイルアタックの直撃により五体バラバラに吹き飛ぶと、もげた首が床を転がり……予告でも強調されていたブルドント敗死のショッキングシーンにサブタイトルがかかるのですが、立案する作戦の内容はともかく、デザインと見せ方がほぼコメディリリーフだった為に、突然の大きな扱いには正直困惑が先に立ちます。
 「これで俺は、名実ともにバラノイアの皇帝だ!」
 ヒステリアと機能停止したブルドントの首はミサイルにくくりつけられて国外追放され、いよいよ正式に新たな皇帝の座に就くボンバー・ザ・グレート。
 「陛下と呼び給え、皇帝陛下と」
 檜山さんの気取った台詞回しが味の出てきたボンバーは、地球人に化けたアチャ(肝付さん本人出演)を地上に送り込むと、怪しい口上により物質を黄金に変える純金の招き犬を500円で売りさばき、正攻法の、人間の欲望を風刺する展開。
 八百屋の奥さんが招き犬を持ち帰ってその能力を披露すると、いやもうこれおかしいだろ、と即座に本部に連絡を取る昌平の姿が久々にプロフェッショナルなオーレンジャーらしく……でも、招き犬を手に入れようと店先に人々が群がっている中、真っ正面から乗り込んではいけないと思います(笑)
 隊長らが駆けつける間に、八百屋夫婦はすっかり招き犬の虜と化しており、一家の少年だけが欲に目を眩まされずに正道を語るのも定番ですが、お犬様の奪い合いに発展すると騒ぎの中で光線を浴びた八百屋父がまるごと純金と化してしまい、それを見捨ててお犬様を奪還しようとする八百屋母の姿が凶悪。
 とにかく招き犬を回収しようとするオーレンジャーだが、昌平もまた、足を黄金にされて身動きできなくなっており、見た目ユーモラスながら、オーレン側は終始シリアスに事態に対処しようとし、マシンの敵との対比として、人間の心とは何かを表現していく、大変久々に、良い時の『オーレン』が帰ってきたみたいなエピソード。
 人々の欲望を吸い上げて大きくなっていく招き犬は、より強力な黄金ビームを放つようになってますます人々を虜にしていき、
 「どういう事だこれはいったい……!」
 「バラノイアはなんでこんな事を?!」
 深刻さを増す状況にオーレンジャーが戸惑っていると、キングレンジャー登場編で唐突に出てきたっきりだったカメラ鳥が再登場し、映像を通してボンバーがバラノイアの皇帝就任を宣言。
 「見ろ! あの人間どもの無様な姿を! 何も知らず、欲望のエネルギーをあの招き犬に与え続け、やがてエネルギーでお腹がいっぱいになった招き犬は、人間の一番大事なものまで、俺の大好きな、黄金に変えてしまうのだ!」
 水も食べ物も、全てを黄金に変える事で人間の生きていけない世界を作り出そうとする地球ゴールド作戦を阻止する為、昌平不在のままブロッカーロボで招き犬を破壊しようとするオーレンジャーだが、欲望のエネルギーで成長を続ける招き犬はBロボの攻撃を無効化し、欲望! 純粋で素晴らしいエネルギー! ケーキも、テーブルも、家もビルも、街も国も、全て人の、欲しいっという想いから出来た、欲望の塊!(by鴻上会長)
 「無駄だ無駄だ! 招き犬のエネルギーは、人間の欲望だという事を忘れたのか? 欲望のエネルギーは無敵なのだ!」
 つまりこれがオーーーーーーズ!!
 と、カウンターのゴールデンビームで青ブロッカーが黄金にされてしまった頃、宇宙漂流していたヒステリアのミサイルは、謎のエネルギーを受けてとある惑星へと誘導され、ブルドントの首を抱えたまま、不気味な呼び声に招かれるように辿り着いた洞窟の奥でヒステリアが見たのはなんと、地球でオーレンジャーによって真っ二つにされた筈のバッカスフンドの首。
 「ヒステリアぁ……おまえを待っていたのだァ……」
 皇帝陛下が思わぬ再登場の一方、地球ではBロボが次々と戦闘不能に陥り、オーレンジャー絶体絶命のまま、つづく。
 バラノイアでの政変から、風刺の効いた侵略活動、終始シリアスに対処するが人間の心が生んだ力に苦戦を強いられる超力戦隊(まあ、真っ正面から八百屋に入るやらかしがなければ事態がここまで深刻にならずに済んだ可能性はありますが……)と今回は割と面白かったですが……キング先輩は居ないものとし、タイヤロボも救援には来ない方が話がスッキリまとまるという、早くも壁にぶつかった感のある追加戦士作劇と、次から次に投入されるガジェットを物語の中で消化する文法を確立できないまま走ってきた(走らざるを得なかった)今作の難点が、浮き彫りになる事に。
 次回――ここからどう転がすかが腕の見せ所になりそうですが、バラノイアに新星現る?!

◆第40話「出現! 謎の姫!!」◆ (監督:小笠原猛 脚本:杉村升
 「久しぶりだな、ヒステリア。おまえの来るのを、待っていた……」
 オーレンジャーに敗れるも、辛うじて頭部だけで後方の秘密ラボに辿り着いていた事を明かしたバッカスフンドは、残された最後のエネルギーを用いて、頭脳回路は無事だったブルドントを復活させると宣言。
 一方地球では、招き犬の力で生み出された黄金を用い、ボンバーの居城となる黄金の宮殿を作ろうとアチャコチャが進言し、金の彫像と化した人々をバラノイア兵が次々と回収。昌平も捕まってしまうと溶鉱炉送りの危機に陥るが、その危機を救ったのは、八百屋の少年の願いを聞いたガンマジン!
 今回は「少年の願い」を経由して人々を救う事によりヒーロー性を加算し、前回登場時に比べると呪いのアイテム感は薄れているのですが、それはそれで、本来オーレンジャーが担当すべきヒーロー性を横から根こそぎかっさらう事になっており……どうして3話前に初登場した、オーレンジャーとは縁もゆかりもなかった超存在が劇中ヒーローの頂点に立つ事になっているのかには、根本的な疑問が生じます。
 過去の杉村戦隊を踏まえて例えると、『カクレン』終盤に突如として大獣神(別世界の摂理)が乱入してきて、神の権能を用いて好き勝手に振る舞っているような感じとでもいいましょうか。
 黄金ビームを次々と浴び、実質的な磔にされていたBロボの方には、ちょっとパリまで飛んでサーモンを買ってこいとお使いに出ていたキング先輩がようやく駆けつけると、きんぴらバーストが招き犬を粉砕し、中から出てきたのは、マシン獣・バラゴールド。
 周囲に群がっていた人々を黄金にしてしまった事で、欲望バリアーが解除されていたと捉えると悪が悪の為に足下を掬われる大やらかしですが、キング先輩が力で解決したようにも見える成り行きの為、意図はハッキリせず。
 隊長がRパンチャーを召喚して乗り換えると、バラゴールドの弱点を目と看破してピラミッダーと連係攻撃を仕掛けて形勢逆転し、ひたすら黄金ビームをかわし続けていたなど、隊長にだけは相変わらずフォローが入ります。
 そして復帰した昌平が超力変身するとOPと共に久方ぶりに超力モビルが出撃し、超力合体!
 「「「「「オーレンジャーロボ、オーレ!」」」」」
 危機を乗り越え全員集合からOP合わせの流れはさすがに格好良く決まり、オーロボの支援からバトルフォーメーションを発動したキングピラミッダーは、バラゴールドを無傷圧殺。
 八百屋の少年は、逃げたボンバーにケジメを付けさせろとガンマジンに命じ、オーレンジャーとキング先輩も合流して機械油も凍り付く仁義なきショータイムが始まろうとしたその時――烈風と地鳴りを巻き起こしながら地球に降り立ったのは、新生ブルドントの力にするべく、ヒステリアがその持てるエネルギーを注ぎ込んで地球に送り込んだ、ヒステリアの姪(姪……)。
 「誰だおまえは?」
 「あはははははは、わたくしはマルチーワ姫」
 スモークの中から現れるシルエットと、小刻みにカットを割っての全身パーツのアップ、ほぼほぼ、ニューヒーロー登場!な、やたら力の入った演出で姿を見せたマルチーワはガンマジンを含めた一同を蹂躙すると高笑いを響かせ……果たして、物語の主導権を握るのはいったい誰なのか?!
 そして謎の惑星では、バッカスフンドの完全な沈黙と共に、改造強化ブルドントが、蛍光灯ヘッドはそのままに、7頭身ぐらいになって復活。
 「ブルドント! おまえなのね!」
 「……はははははは……ふははははは……あははははははは!」
 地球ではマルチ姫が大暴れして一難去ってまた一難、今回も大ピンチのまま、つづく。
 自らバッカスフンドより格下を宣言して現れたボンバー・ザ・グレートを踏み台に、最終クール突入の狼煙としてバラノイア上層部のモデルチェンジが発生し、地球を巡るバラノイア帝国との戦いはいよいよ最終局面へ。
 ……なのですが、今作が当初から抱えるバラノイアの大きな矛盾点――何故、人間の持つ「愛情」を徹底的に否定している筈の皇帝バッカスフンドは、自らを「あなた」や「父上」と呼ぶロボットを間近に置いて「家族」を構成しているのか――が解消されないまま敵方の強化に繋げてしまった為に、今ひとつ盛り上がりきれない事に。
 例えそれがプログラムに過ぎないものだったとしても、バッカスフンドは時に「妻に頭の上がらない夫」としておどけ、ヒステリアは「子煩悩な教育ママ」が基本のキャラ付けとなっており、そもそも共存不能といってもいい概念を演じてきたわけですが、その持つ意味に特に焦点の当たらないまま、マシン帝国の基本理念とは矛盾を感じる描写を積み重ねてきた末に、ヒステリアはブルドント大事で首をかかえて宇宙を放浪し、バッカスフンドが父として息子に最後のエネルギーを与えるような流れになってしまったのは、物語としての詰め(及び、演出・脚本サイドの連動)不足を強く感じます。
 敵王朝の世代交代には『科学戦隊ダイナマン』の印象が重なりますが、ブルドントは別に「成長」しているわけではなく、外部からのエネルギーにより強化再生しただけですし……それはそれで無機質さがマシンらしいとはいえるかもしれませんが、もう少し、バラノイアの持っている要素を繋げて、ブルドントのバージョンアップに“物語”を乗せて欲しかったところ。
 わざわざ付け加えたリキとの因縁も空中分解してしまうバラノイアの扱いでありますが、いっそ、「儂がお前たち二人を特別扱いして側に置いておいたのは何故だと思う? それはおまえ達が、儂の予備パーツだからだ! ぼははははは!!」と、ヒステリアとブルドントを吸収して、真・バッカスフンド復活! とかでもしてくれたらテーゼは貫けたかもな、とは(笑)
 ……まあ次回、復活ブルドントの人格と声がバッカスフンド、の可能性はまだありますが!