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ドクターは倒れない

仮面ライダーエグゼイド』感想・第43話

◆第43話「白衣のlicense」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:高橋悠也
 衛生省印の独房から出して下さい、と訴えてくる綺麗を装った黎斗を鼻であしらっていると、突然もんどりうって床を転がる貴利矢。
 一度は治療された筈のゲムデウスパンデミックが再び起こっている事が判明し、事態を引き起こしているのは、自ら倒したゲムデウスと融合する事により、人間をやめ、現実を侵食するゲームの世界の神と化した檀正宗!
 ……と書くと、今作がやろうとした仕掛けがなんとなく見えてきますが、問題その1は、3クール目前半において『クロノクル』起動により“ゲーム”に飲み込まれていく“現実”の描写が上手く行っていなかった事。
 問題その2は、その上で正宗登場後に『クロニクル』をあくまで「ゲーム」として利用し、自らの野望を達成しようとする……とボスのアプローチを変えたにも拘わらず、前回ぐらいから急にまた広がったオンラインRPGに入り込んだ的世界観が「ずっとそうでしたよ?」みたいな顔で再浮上している事。
 商品として利用し尽くす筈だったゲームに取りこまれた檀正宗が、自ら「駒」とみなしていた存在になり果てる……のは悪役の末路として面白くはあるのですが、本流 → 支流 → 本流を意識していたにしも、一度変更したルートへの再接続は、もっと丁寧にやってほしかったところです。
 『クロニクル』に関しては開始間もなく躓いた面もありますが、成果物は全て私がおいしくいただく、みたいに出てきた正宗の次の一手が「もっとプレイヤーを増やすぞ!」だったのはつくづく致命傷だったと思いますし、それは世界と『クロニクル』の関係性において、パラドルートから見れば明らかな後退でありながら、そこに生じたズレ(空白)を埋めようとする事なく実質ゲムデウス一手で、え? 結局またそこに戻るの? としてしまったのは、残念。
 要するに今作、世界に対する『クロニクル』侵食度という隠しパラメータが存在していたのですが、作り手側は正宗登場後もそれが着々と進んでいるように見せているつもりだったのかもしれませんが、私には進んでいるどころかむしろ後退しているように見えた為に、正宗の言行全てがぺらっぺらに見えてしまった、というのが最大のボタンの掛け違いであったのかな、と。
 後、黎斗と貴利矢の復活による「命」の定義づけの揺らぎ、は侵食度を大きく進める要素だったのですが、黎斗と貴利矢の存在にあまり踏み込まないまま気がつくとパラド説得タームで「命は唯一無二なんだ!」に戻っており、それそのものは構わないとして、それによって侵食度が下がっている事に対する意識不足が見えるのは、3クール目後半以降の構成にちぐはぐさを感じます。
 街に混乱が広がる中、顔に青い血管が幾筋も浮かぶゲム正宗は、禍々しい剣と盾を構え、目が真っ赤に充血したゲムクロノスへと変身。
 恒例の《ポーズ》で提督スナイプを一蹴しているところにブレイブLと無敵エグゼイドが乱入するが、ポーズ無効の無敵エグゼイドとも互角以上の戦いを見せ、やはり最後に物事を解決するのは、自前の筋肉です。
 無敵リプログラミングもゲムシールドに防がれ、ドドド爆龍剣の直撃により、3人はまとめて変身解除。
 「案ずるな。もはや君たちに、用は、無い」
 「なんだと?」 「どういう事だ?」
 「真のラスボスに挑戦できる資格を持つのは――君だ」
 「……え? あたし?」
 ゲムクロノスは『仮面ライダークロニクル』の中にニコを取りこんで姿を消し、その目的は、勝利のトロフィーを全て集め、ゲームクリアの可能性を持ったプレイヤーであるニコを抹殺する事。
 「君に与えられた最後の運命は、ゲームクリアか、それとも、ゲームオーバーか?」
 全てのトロフィーを集めたニコに対して、真のラスボスへの挑戦権として伝説の勇士・クロノスへの変身を促すゲムクロノスは厭らしく嗤うが、そこに患者から回収した『仮面ライダークロニクル』を起動した大我が乱入。
 なぜ大我が、ラスボスのゲームエリアに入り込む事が出来たのか?!
 それは、5年の長きにわたって体内のバグスターウィルス(抗体)に苦しみながらも孤独に戦い続けてきた「初めて仮面ライダーになった男」だからだ!
 の理屈の意味不明さはひとまず措いておくとして、大我のこれまでのハードボイルドメモリーを振り返りながら言行の裏側について飛彩先生がとうとうと説明を始める、実に『エグゼイド』感溢れる情報開示のやり方で、いやいやいやいや、まず、「初めて仮面ライダーになった男」みたいな話は、最初の方にさりげなく出しておきましょうよ!
 そして、飛彩や貴利矢がバグスターウィルス抗体の副反応に苦しんでいた記憶などついぞ無いのですが、「大我の頃とは手術の質が違う」とか「ガシャットを使ってきた回数が違う」とか、解釈そのものは色々とくっつける事は出来るものの、ドラマとしては、見たその瞬間に劇的でないと効果激減なわけで、花家大我が苦しみに耐えながら戦ってきた、と見せるには、あまりにも場に出ているピースが足りません。
 大我に関する事情そのものは、まあそうだろうな、と頷けるのですが、今ここで明かされる衝撃の真実! みたいな熱量で物語を動かそうとするには、周辺情報という名の燃料が不足しすぎて、火力が足りず。
 「クロノスだろうがなんだろうが――この俺がなってやる」
 ニコの『クロニクル』ガシャットを手にした大我は、不正なIDでクロノスに変身。
 「自分の命を削ってでも、あいつはずっと一人で戦ってきた……しかしあいつは気付いたんだ。失いたくないものを守る為、命を懸けて戦う意味を」
 仮面ライダーは、戦い続けると危険なシステム(衛生省……)だから、誰にも何も言わず大我は全てを一人で背負おうとしていた、と語られ、それを否定するつもりはないのですが、花家先生(&ニコ)、かれこれ1クールぐらいはCRと行動を共にしている印象(確認してみたら、みんな揃って「いよいよ、上級ステージに挑む時だ」が丁度、第31話のラスト)なので、登場当初から訳あり感全開だった大我の内面の心情を明かすには、完全に時宜を逸した感。
 また、相変わらずポピ子さんがその辺りの事情に関しては私知りませーん扱いでアンタッチャブルな存在になっているのは、どうにもこうにも欺瞞を感じて仕方ありません。
 大我もニコも死なせはしない、と憤る永夢だが、二人の運命はラスボスの掌中……。
 「だがどうする……俺たちはゲームエリアに行く事すら出来ないんだぞ!」
 ……いやだから、どうして??
 トロフィーを全て集め、ラスボスへの挑戦権を持っていないと入れない筈のエリアに大我が入れたのは、5年前からずっと抗体を持っていたから、という肝心の理屈があまりに意味不明で、恐らくこれ、(意図的に)「クロノスに変身できる」と「ラスボスへの挑戦権を持つ」が混同されているのですが…………あー…………正宗、条件設定、ミスった?
 ただ、その理屈(5年物の大我なら、ログイン初日でもクロノスになれる!)だと、パラド(16年物)を格納した永夢先生とか普通に入れるのでは。
 そのパラドは命の重みを改めて感じ、償いの方法に思い悩む姿が重ねて描かれる中、回し蹴りの打ち合いに敗れた花クロノスは、変身解除。
 「……まだ……終わってねぇぞ。……絶対に死なせない! こいつは……俺の患者だ」
 それでもニコを守ろうとする大我の姿は格好いいのですが、つい先日、「5年前の因縁だ!」とこだわり続けていたグラファイトを倒した直後にまた別のこだわり――大我が自ら背負おうとしていたもう一つの十字架――が浮上してくるのは、どうにもタイミングの悪い組み立て。
 「俺はおまえの命を守る。たとえ免許が無くたって俺は……――ドクターでありたいんだ」
 体を苛むバグスター抗体、衛生省による(たぶん)理不尽な免許剥奪……それらを自ら戒めとして背負いながら、ドクターとしてあり続けようとしてきた大我の元に集うのは、CRの同僚たち。
 「――ならば自分の命を粗末にするな」
 司法取引による黎斗の神業で飛彩と永夢がボスエリアに侵入を果たし、結局、黎斗がちょちょいと片付けてしまうのも何度目だ、ですが、黎斗、古典的な「こんな事もあろうかと」博士キャラがいっそ面白いのでは、みたいな設計思想なのでしょうが、個人的にはそれを笑って許せる程には、黎斗には好感度は持てず仕舞い。
 「おまえの犠牲など……ノーサンキューだ」
 「忘れちゃいけないんです。患者の命を救う為にも、僕たちドクターこそ、生き抜く責任がある事を」
 ただここでもう一回、「ドクター」と「ヒーロー」を繋げるのは、良かったです。
 「…………生き抜く、責任」
 「ここからはチーム医療だ。始めるぞ……おまえのオペを」
 大我が永夢から受け取った白衣(戦う時は、戦闘服!)を身につけ、最大の敵を前に3人の“ドクター”が並ぶのも、綺麗に決まり――
 「第50戦術――」 「術式LVハンドレット――」 「ハイパーーー大!」
 「「「変身!!!」」」
 はとても久々に『エグゼイド』で私好みの展開となって、第26話以来の参加となった中澤監督の効果もあってかどうか、個人的にはようやく、“第20話の先”が見られた感。
 今作序盤の惨状や、後の『ゼロワン』などを見ても、ストーリー展開について中澤監督の存在でもう少しどうにかなっていたかもとは言いませんが、第19-20話・第25-26話を担当していた中澤監督が、劇場版の関係でかTV本編から抜けていたのは、中澤演出回で作品と波長が合いだした矢先だっただけに、私にとっては一つ痛かったかなと思う部分です。
 「これより、ゲムデウスならびにクロノスの切除手術を始める」
 3ライダーはゲムクロノスへと躍りかかり、勢いはともかくいい加減、《ポーズ》使いのクロノスに飛び道具で仕掛けるのはやめなさい、と思ったら、クロノスの《リスタート》を逆に利用して銃弾を直撃させ、全方位土下座外交からの「嘘に決まってんじゃん! ばーかばーか!」事件から半年以上を経た今、華麗なチーム医療を見せるCRライダーズ。
 「何故だぁ……! 何故この私が圧倒されるぅ!?」
 「教えてやるよ。おまえのイニシャルがMだからだ!」
 ……じゃなかった、
 「教えてやるよ。俺たちが、最強の医療チームだからだ!」
 最終盤までプロップを豪快に投げ捨てる路線で、3人は一斉に必殺技を発動し、ブレイブLの火炎斬りと無敵エグゼイドの超音速キック、そして提督スナイプの零距離砲撃を食らったゲムクロノスはど派手に吹っ飛び、ゲームエリアは解除。
 「クロノス……ゲームはもう、終わりだ」
 「……ふっふっふっふふふ……はっはっはは……君たちはゲームというものが何もわかっていない」
 「?!」
 「教えてあげよう。ラスボスを倒すという事の意味を」
 最前の意趣返しめいた台詞回しでゲムクロノスが立ち上がると、ゲーム病に苦しむ患者たちが、一斉に雑魚バグスター化。更にそのバグスターに触られた人々もゲーム病に感染して雑魚バグスターと化していき、Zゲンム登場の頃より、ゾンビ物志向がある今作ですが、まさにゾンビパニックな感染拡大。
 「審判は下された。ドクター諸君、運命のパンデミックの幕開けだ。真のラスボスとは、一度倒され、最強の進化を遂げる。それがゲームというものだ」
 ゲムクロノスが巨大な怪物に変貌して、つづく。