『恐竜戦隊ジュウレンジャー』感想・第４８話
◆第４８話「闇からの息子」◆ （監督：渡辺勝也 脚本：杉村升）
無抵抗の大獣神を蹴散らしたドーラタロスは街を蹂躙。刻一刻と増えていく被害者を見過ごせず、やむなく反撃する大獣神はドラゴンシーザーを召喚するが、カイの操る念動力を増幅するタロスの力に苦戦し、剛龍神にドラゴンミッションすると……
プテラノドンが！ 空から！ 支援攻撃を行った！
第４８話にしてほぼ初めて、余り物が余り物せずに活用されましたが、ドラタロウは超念動でティラノソニックすらはじき返すと、剛龍神の裏技・モヒカンスラッガーも通用しない。
「駄目だ！ 強すぎる！」
「ははははは、行け、ドーラタロス！」
もはや手段は選んでいられないと究極合体しようとするとするジュウレンジャーだが、神より託されたダイノ啓示録の解読を終えたバーザーが、それを制止。
バンドーラ一味の目的は、ブラキオンが体内でで保護中の、恐竜のタマゴにこそあったのだ。
「タマゴが破壊されれば、守護獣たちも滅び、地球は大サタンのものになる！」
「はははははは！ その通りだよ。全ての運命はそのタマゴにかかっていたというわけさ」
自転車で現れたバンドーラ様が声高く嘲弄する中、ドラタロウはチェーンナックルを放ってティラノと剛龍神を同時に攻撃して電流を流し込み、最終決戦ロボだけあって、デザインの格好良さに負けない豊富な武装が光ります。
ジュウレンジャー絶体絶命のその時、自らの意志で出現したブラキオンの砲撃がタロスに突き刺さると、フルオートで究極大獣神が誕生し、大事の前の小事！ と、洗脳された子供たちごとパニッシュを迫る神！
「よし。みんな、キングブラキオンを信じよう！」
撃った。
そして、弾け飛んだ。
幸い、コックピットのあった頭部は爆発四散したボディから離れた地面に転がって無事でしたが、どうも素直に、神の判断を信じる事が出来ません（笑）
カイは姿を消し、ジュウレンジャーは誘拐されていた子供達の解放に成功し……悪夢は終わった、かと思われたその時！
「終わったぁ？ 笑わせるんじゃないよ。最初からドーラタロスは捨て駒なのさ！」
実に豪華な捨て駒の生んだ隙を突いてバンドーラ様が巨大な蟻地獄を作り出し、飲み込まれていくブラキオン。ここに来てブラキオンもバンク以外であれこれ動くが、砂地獄に飲み込まれて、無念の大爆発！
「はーっははははは！ キングブラキオンは死んだ！ 体内にある恐竜のタマゴも死んだというわけよ。これで、地球は私のものになる！」
失意のジュウレンジャーはアジトに戻ってバーザから説明を聞き……
「つまり、唯一残ったタマゴが破壊されれば、恐竜は完全に絶滅し、守り神である守護獣たちもやがて滅んでしまう」
という理屈はちょっと？？？でしたが、此の世から恐竜という存在が消えてしまうと、信仰の核として「恐竜」を型とした守護獣たちも、現世に存在を保てなくなってしまうとか、そういった具合でしょうか。
更にダイノ啓示録によれば、恐竜時代の神と悪魔の戦いは、とある悪戯王子が恐竜の怒りを買って崖から転落死した事がきっかけであり、その事件で王子を失った悲しみから恐竜を憎み、悪魔に魂を売った女王こそ、魔女バンドーラであった事が明らかになる。
母親の愛情が歪んだ末に裏返って今作最大の「悪」を生み出す……のは納得なのですが、啓示録中のカイ王子が恐竜のタマゴを遊び半分に割る“悪”として描かれている為にバンドーラの憎悪も逆恨みとなっており、そこで「心優しい王子が恐竜の関わる不慮の事故で死んでしまったが、神の恩寵を持ってしても命の再生は許されず、信仰が絶望に変わったバンドーラはあらゆる子供を憎む魔女となった」ぐらいまで捻れてくれると、ブライのテーゼとも繋がりますし私好みだったのですが、まあ、今作でやるには厄介でありましょうか。
これは個人的好みの暴走なので、作品の取捨として納得でありますが、バンドーラの背景に「子供」と「命」を繋げるのならば（それ故に、最終盤でいきなり明かされた秘密でも物語の中に収まっているわけなので）、最初から“悪”に寄っていたというよりも、「愛の反転」が見たかったな、とは。
恐竜のタマゴを葬り去って勝利を確信するバンドーラは、地球征服の暁にはかつてのように母子で楽しく暮らそうと望むが、カイはひたすらにバンドーラの抱擁を拒み……
「ママ、そんなこと考えちゃいけない。ママは悪魔に魂を売って魔女になった」
「そんな事わかってる！」
「ふふふふふ」
それでも、芝居の力でそこに身勝手だとしても一抹の悲しさを漂わせるのは曽我町子さんがさすがで、それを見つめるカイが不気味に笑う中、バンドーラは一気に地球をマッシュポテトにしてやる！ と大サタン召喚の儀式を開始。
召喚前から自力で地球に向けて飛んできていた大サタン（実は物理で宇宙にホームランされていたのか……？）は悪魔の塔の導きにより地球に再臨し、その息吹は地上の生命にとって致命的な毒となり、その目が輝くだけで吹き飛んでいく高層ビル群。
「あーっははははは！ こんな事で驚くんじゃない。バンドーラ最大の魔力を見るがいい。いやぁ！」
バンドーラが魔力を放つと、パニッシュされた筈のドーラタロスは三本角となって大復活し、大獣神で立ち向かうジュウレンジャーは、コックピットの中で変身する一ひねり。
迫り来るトライタロスに向けて珍しく背中のキャノンを活用する大獣神だが、遂にアームブレードにより左腕がもぎ取られ、半機械生命体（みたいな存在）としてこれまで避けていた部分破壊描写も投入され、前回－今回と、これでもかとギミックを盛り込んで巨大戦を盛り上げてくれているのは、素晴らしいところ。
大獣神に迫るタロス必殺の刃。その背後には凶悪な形相の大サタンが哄笑する姿が浮かび、伝説の戦士たちは、この逆境をはね除ける事ができるのか？！
