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遠くの星の倫理観

ウルトラマン80』感想・第7話

◆第7話「東京サイレント作戦」◆ (監督:深沢清澄 脚本:田口成光)
 「墜落……?」
 「国際世論を無視した報いだ」
 騒音問題への風刺ネタはわかりますが、どう考えても人が死んでいるわけで、UGMのぽっちゃりが激しく人間性を下落させる一方、矢的は矢的で生徒とバンドを組んで近所に騒音を撒き散らし、警察沙汰一歩手前になっていた。
 何事にも集中力のない生徒達に、夢中になって続けるものを見つけてほしかった……と動機は教育者として真っ当で、その為に近所を一軒一軒回って許可も取ったと説明するのですが、明らかに途中から度を超えているのに自分も演奏に夢中になって気付いていないので、第1話が最高値だった矢的先生への好感度がなかなか上がってくれません。
 そんな折、新型旅客機を墜落させた怪獣ノイズラーが、今度は新幹線を襲撃。UGM戦闘機が出撃するが攻撃を次々とかわされ、巨大な耳が細かく動く事で、音に対する敏感な反応を表現したのは、好演出。
 これに気付いた矢的の提言を受け、ナイス三十路キャップが各方面の説得に奔走した結果、東京及びその近郊の音を消す東京エリアサイレント作戦が実行に移され、活動を停止するノイズラー。だが怪獣への対抗策を発見する前にサイレント作戦の継続が難しくなり、やむなくキャップは、気球で近付いて至近距離から怪獣の急所を攻撃するプランBを指示……って、気球に積んだ爆弾をぶつける、とかではなく、乗り込んだ隊員が背後から撃つのがやたらめったら命がけ。
 ところが、作戦の決行寸前に突然目を覚ました怪獣が動き出し、その向かった先は、矢的が放置していた生徒達のバンド活動。
 「よーし今の内だ!」
 UGMぽっちゃりは、生徒達が足下に居るのを確認しているにも拘わらず、エレキサウンドにノって踊る怪獣に景気良く銃撃を浴びせて、危うく中学生4人を爆殺しかける不祥事を引き起こし、冒頭の発言も合わせて、命の扱いがあまりにも雑。
 生徒達の命を守ろうと突撃した矢的機だがまさかの光線技で撃墜されると80に変身。妙に人間らしい仕草を見せるノイズラーとがっぷり組み合う格闘戦の末、迫るエネルギーの限界。
 ナレーション「ところがどうだろう。怪獣ノイズラーは、急に大人しくなってしまった。なんと、カラータイマーの音が、最も嫌いな音だったのだ」
 とナレーションさんが語る中、大人しくなった怪獣に連続チョップから顔面へのハイキックを浴びせる80先生(笑)
 それで気が済んだのか、80は沈静化した怪獣を宇宙へ連れ帰り……ウルトラ人の倫理観といえばそれまでですが、80的に〔騒音に引きつけられてやってきた宇宙怪獣(野生動物)の命 > 騒音を起こす地球人の命〕なのは、スッキリとは受け入れにくいにくいところ(途中から妙に愛嬌のある描写をされていたので嫌な予感はしていましたが)。
 なにぶんこの人、地球では教師を装っているだけに、生徒は守るけど生徒以外の地球人の命には割と冷淡な印象も強まってしまい、全宇宙的視点はともかく地球在住のヒーローとしては微妙に素直に応援しづらく、冒頭のUGM隊員の発言と合わせて、風刺意識が先行しすぎた印象です。
 怪獣に追いかけられたショックも手伝ってかバンド少年たちは勉学に目覚め、当初の目論みどおりではあったがどこか釈然としない矢的先生であった、でオチ。
 怪獣相手の大がかりな作戦行動などは特撮の見応えも含めて面白かったのですが……バンド活動の場所探し中にUGMから呼び出しを受けた矢的が「みんな勘弁してくれ」と連絡もせずに生徒を放置した事が後半のトラブルの原因となっており、これをやってしまうと、一声かけすらしない矢的は元より、「秘密の二重生活」を矢的に強いているキャップと校長の人間性まで問題が生じてしまうので(前回は80変身の為だったのでセーフだった)、UGM参加を秘密にしてしまった事が負のドミノ倒しを引き起こし、どうにも重くのしかかります。