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破壊王降臨

ウルトラマンガイア』感想・第34話

◆第34話「魂の激突!」◆ (監督:村石宏實 脚本:川上英幸(原案:笈田雅人) 特技監督:村石宏實)
 「しばらく、山にでもこもって、一から根性たたき直せ!」
 チーム・ハーキュリーズ桑原の従兄弟、マンモス大剛(桑原役の中村浩二さんによる二役)は、仕事を辞め勘当を受け恋人に去られながらも、夢であったプロレスラーとしてトレーニングを続けていたが、師事する破壊王橋本真也(本人出演)から不甲斐ない戦いぶりに叱責を受け、夢と現実のギャップに苦しんでいた。
 一方、街では以前出現したウルフガスに酷似した狼男の怪物が出現し、またも襲われる「らくだ便」の清水。
 「ウクバールは、どっかにあるんだ。だって、俺の故郷なんだから」
 失意のマンモス大剛はウクバールを求めて街を彷徨うが、その前にウクバールの守護者ルクーが姿を見せ……じゃなかった、律儀にリアル山ごもりし、丸太やサンドバッグと戦っていたマンモスも狼怪物に襲われ、狼怪物の背後に暗躍する謎の光球により、小型の機械装置を取り付けられてしまう……。
 プロレスラーの格闘シーンから始まり、前回の雪辱とばかりむしろ意気揚々と狼怪物に挑んでブルース・リーのパロディみたいな仕草も見せる清水、それを助けてこれも生身で狼怪物に躍りかかる桑原の生アクション、とウクバール回や魔頭回とはまた違った、ある面ではこれまでで最もスタイルを変えた、左アンダースローによる変化球の連投でスタート。
 脚本原案としてクレジットでは通常〔企画〕に名を連ねる笈田雅人、脚本は今作における便利屋ポジション的なところのある川上英幸と、プロレスラー・橋本真也本人出演によるある種の企画回と思われ、それに合わせて生アクション中心に揃えたという演出の意識はわかるのですが、いきなり怪物に躍りかかる桑原が完全に東映ヒーローノリで、『ガイア』としては正直困惑します。
 ゲストの魅力を如何に引き出すのかが主眼で、シリーズとしての整合性は二の次のエピソードではあったのでしょうが、基本的に巨大怪獣(人類に対する災厄としての破滅招来体)と戦っているXIGが、それこそウルフガスという前例はあるにしても、人間大の狼男に対してさしたる驚きも逡巡もなく「倒すべき怪物」と認識して平然と受け入れてしまうという点への違和感は、どうしてもぬぐえませんでした。
 完全に無力な一般市民を咄嗟に助けるといった流れならまだ説得力も生じたのですが、嬉々として雪辱戦を挑む清水、というサービスが心理的誘導としては完全に悪い方向に転がってしまい、あの怪物は何者なのか――ざくざく撃ち殺していい存在なのか――を検証するというワンクッションは欲しかったです。
 ……それはそれとして、祝・梶尾さん、人間大の標的に射撃を命中させる。
 伊達に後期OPで、腰をクイッと入れていなかった!(我夢のバック転と梶尾チームの登場シーンは、何度見ても笑ってしまいます)
 狼怪物を倒した後に現場に残される機械装置を我夢が解析し、それが取り付けた生物の身体能力をフルに発揮させると共に、その性質を凶暴化させる事が判明。瀬沼の調査によると20代~30代の体格の良い男性が次々と通り魔怪物の被害に遭っており、謎の存在は人類を新たな実験材料に選んだのでは、という推論が導き出される。
 その頃、機械装置を取り付けられたマンモスは橋本に戦いを挑んでおり、放射される電磁波をキャッチして現場へと駆けつける我夢と瀬沼。リングに上がろうとした我夢は止められ、仕方がないのでリングの外から装置の効果を橋本に説明する事になり、本来なら、主人公が壁を乗り越えて状況を変える事で劇的なダイナミズムが生まれる流れなのですが、ロープ3本に阻まれてしまう事で躍動感が失われて間の抜けたテンポでシーンとシーンが分断されてしまい、橋本真也新日本プロレス)との絡みありきという事情はわかりますが、構成にもう一工夫出来なかったのか、とは思ってしまうところ(演出の立場も辛い)。
 強化マンモスに防戦一方だった橋本は、それを聞くと怒濤の反撃でマンモスを押さえ込み、合図を受けてリングに飛び込んだ我夢、素手で装置をねじって外す(笑)
 ロープを飛び越えてリングに上がる我夢の姿は格好良く、ああホント、役者さんは運動神経いいのだな……というのが裏打ちされますが、我夢的にはそれでいいのだろうか、というのも若干。……いやここで、不器用にロープの間をくぐったら、大変間抜けではありますが。
 「肉体……そして精神。己の持つ全てのものを鍛え上げ、俺達レスラーは、リングに上がる。力と力、魂と魂をぶつけ合う。自分自身を鍛え上げた者同士が、ぶつかり合うから、人の心を動かす事ができる。魂の、激突だ!」
 マンモスが狼怪物に襲われてた現場を調査していた瀬沼は、光球の本体である宇宙船を発見。一方、橋本とマンモスは狼怪物に襲われ、屈せず戦う橋本の姿に勇気を奮い起こしたマンモスは、橋本の言う強さに少しずつ近づいていく。
 姿を露わにした宇宙船は生き残りのウルフファイヤーを巨大化し、我夢変身。
 心のマグマが目覚めたら 大地と共に立ち上がるぜ 愛する人を守りたい 単純にそれだけさ
 挿入歌でバトルになるのですが……駄目だ、これ、もう、梶尾さんのテーマにしか聞こえない(笑)
 宇宙船と狼の挟撃に追い込まれたガイアは、チーム・ファルコンの援護を受けるとアグルの俺格好いいソードもとい光の剣を抜き、意外性に夜戦映えも加わって格好良かった今回の見せ場。
 光の剣の高速回転で狼の火炎放射を防いだガイアは改めてアグトルニックから地球の隙間ビームで爆殺し……今作が中盤からちょっと難しくなっている部分として、この狼怪物、なんだか純然たる被害者な気がする上に以前のウルフガスの時は宇宙に帰していたのにな……という点がどうしても脳裏をよぎってしまうのですが、前回今回と、ゲスト中心のあおりで、“ガイア/我夢の怪獣への対応”を掘り進める事が出来ずにおざなりにしてしまったのは、残念でした。
 謎のUFOも、明らかにこれまでとは違うアプローチの存在なのに特に言及なく撃墜して終了してしまい、エピソードと怪獣ポジションの相性が悪いのを、そのまま押し切ろうとしてしまったのもマイナス。
 私、プロレスに対する思い入れが全くない人間なので、そこの有無でも印象はだいぶ変わってくるでしょうが(ゲストの橋本さん自身は割と違和感なく物語に溶け込んでおり、悪くなかったのですが)、前回に続き、もう少し、『ガイア』全体との連動性に配慮が欲しい内容でした(そこが今作の強みなので)。
 かくして新生ストロング大剛の熱いファイトは四角いジャングルを沸かせ……るのかと思いきや練習試合でまたも敗北するが、確かな成長を見せるそのファイトは、レスラー一同から讃えられるのであった。
 「魂をぶつけ続けろ。そうすれば、いつかは本物になれる。本物になれば、強さは後からついてくる!」
 「はい!」
 「魂の激突か……。桑原さん、僕たちもトレーニングルームに行きましょうか」
 「えぇ? これからか?」
 「自分自身を鍛えて、強くなる。ガイアだってそんな僕を望んでいる、きっと」
 桑原&ジョジーと観戦していた我夢はその戦いに刺激を受け、更なる筋肉の育成を誓うのであった!
 筋肉は光だ!
 ヒーロー的には、心身のバランスは勿論、それをコントロールする魂を磨き上げる事が重要だ、と頭だけでも力だけでもないヒーロー像への邁進が、メッセージにもなりつつガイア的な理想像として頷けるのですが、なにぶんこれまでの物語の流れが流れだけに、ラストの我夢の姿が、脳細胞がダンベル運動だぜ!に見えて口元に乾いた笑いが浮かびます。
 我夢よ、ちょっと落ち着いて、ジョジーをランチに誘うぐらいしてからエリアルベースに戻っても、地球は怒らないと思う。
 前回、ベースからロケに連れ出しておいてあの扱いはあんまりだと思ったのか、序盤とラストで、私服ジョジーが登場。まあ、誰でもいい上に、居ても居なくても話に影響しないポジションではあったのですが、前回本当にあんまりな扱いだったので、蔑ろにする気はない、という意思表示としては良かったと思います。一方で、ここで特にチョイスされない敦子のヒロイン力の低さに、全インドが泣いた。
 次回――潜伏期間中にまさかの敦子姉に真ヒロインの座を持っていかれかけて危機感募る玲子さんが久々の登場。まだまだ続くバラエティエピソードのターンで、明後日に大暴投か、意外と面白いパターンか、蓋を開けてみないとわからないといった感じの予告ですが……これ、東映ヒーローだったらほぼ確実に、連戦連敗を重ねた悪の組織が方向性を見失って迷走しているタームなので、今後の展開がどうなるのか色々とドキドキします(笑)
 がんばれ根源的破滅招来体! いざとなったら、敵か味方か謎めいた仮面の男、マスク・ド・フジミヤ(趣味:ストーキングと筋トレ)を投入だ!