『仮面ライダー(新)』感想・第22話
◆第22話「コゴエンスキー 東京冷凍5秒前」◆ (監督:田口勝彦 脚本:土筆勉)
突然、怪人の名前が「コゴエンスキー」になるとビックリしますが、サブタイトルの書き文字が、氷柱が生えているような縁取りをされていて、細かい。
「あーついあーつい、なんて暑い国だ! あーたまにくるわ!」
冷凍車から降りるや早くも錯乱気味の怪人は、無駄に冷凍ガスを噴いて目についた樹木を凍らせると満足し、ラジコンセスナで遊んでいてたまたまその光景を目撃していたシゲルとその友人が事件に巻き込まれる、今作ここまであまり無かった、少年レギュラー(&ゲスト)が事件の発端に関わる形で展開。
ブランカ店内で筋トレ中に、暑苦しいから外でやれと追い出された洋は魂を筋肉という名の重力に惹かれようとしており、筋肉は空へのパスポート。
一方、ソ連、じゃなかった、サブスギール帝国からやってきたコゴエンスキー司令官は、東京を氷の地獄に変える冷凍ミサイルを持ち込んできていたが、その発射にはミサイル内部の人型にピッタリとはまる生贄が必要であり、「コゴエンスキー」はただのジャブに過ぎず、突然の架空国家とその風習に基づく魔術的仕掛けがワンツーで叩き込まれて頭がクラクラしてきますが、前回S先輩が登場した際に再び時空の壁が揺らぎ、某『ウルトラマン80』ばりのマルチユニバース移動が行われたのかもしれません。
(※同期の『ウルトラマン80』は、「テコ入れ」と呼ぶのも生やさしいぐらい、作風やレギュラーの人間性どころか世界観の土台までもコロコロ変更され、視聴者の知らない内に主人公がマルチユニバース間を移動して回っているとでも思っていた方が納得できるレベル)
「ミサイルの発射装置は、怯えおののく生贄の心臓の鼓動に合わせて作動する仕組みになってます」
「者ども、生贄を探せ!」
上司によってはいきなり「ばかもん!」ビームを撃たれても文句はいえない手続きを持ち出すコゴエンスキーですが、オオカミジンが制止を聞かずに基地内で暴れても、クラゲとサイが目の前でドツキ漫才を始めても、その場で即座に粛清しないだけの懐の広さを持っていた魔神提督は、戦闘員に生贄の捜索を命令。
一部始終を目にしていたシゲルと友人が見つかると、手間が省けたと少年がミサイルに押し込まれそうになるが、「生贄は、私好みの少女でなくては駄目です!!」とコゴエンスキーが力強く宣言し、だからそう言うのは先に説明しておけむしろ最初から用意しておけ、とさすがの魔神提督も怒り爆発。
「三日の内に生贄を探し出して、ミサイルを発射しろ! さもなくば、おまえにも死んでもらう」」
かくしてネオショッカーの手頃な少女狩りが大々的かつ無差別に始まり、新聞記事を見ながら、これネオショッカーの仕業じゃね? と気の抜けた反応を見せるブランカの面々だが、シゲルを捜索する洋の不手際により、シゲル友人の妹がさらわれてしまう。
冷凍手裏剣を左目に突き刺す残虐アクションで凍えスキーを撃退するも、冷凍ガスの効果で凍結の危機に陥るスカイライダーが「すかぁぁいたーぼ!」と絶叫すると、バイクの変身シーンが描かれ、普段使いのバイクが外装を纏ってスカイターボとなるミラクルギミックが明らかに。
何故か氷も溶けたスカイライダーはトラックを追うも見失ってしまい、
「しまった、逃がしたか」
……率直に演技力の問題なのでしょうが、どうも洋は、自身の不手際に対する深刻さに欠けるきらいがあって困ります。
ネオショッカーでは、さらってきた少女が生贄にピッタリだーーーと凍えスキーが喝采を上げ、その背後で、誰だよこの生ゴミ拾ってきたヤツ……という顔になっている魔神提督が面白い(笑)
だが、燃えるゴミでも燃えないゴミでも、人を減らせるのは良いゴミだ、と魔神提督はミサイルの発射を指令。
ブランカでは冷凍ガスに対抗する為の火炎放射リングを谷が制作すると、冒頭に登場したラジコンセスナも谷がシゲルに作ってあげたものと触れられ、シゲルが扱っているにしては随分と性能の良い高級品に見えて少々首をひねっていたのですが(最初、ゲストの金持ち少年かと勘違いしたぐらい)、主に前任者が悪いとはいえ、身内を全治10ヶ月の病院送りにした事への引け目がある模様です。
そのラジコンセスナが、洋へのメッセンジャー(罠)として使われるのは気の利いた展開で、助けを求めるシゲルのメモを利用した魔神提督により、倉庫に閉じ込められてしまう洋。
「おまえも死ね! 凍って死んでしまえ!」
洋が全身に冷凍ガスを浴びて倒れると、勝利を確信した魔神提督は椅子にふんぞりかえってミサイルの発射を待つが……
「ここで俺が死んだら、東京はどうなる!」
懸命に立ち上がった洋は変身し、拳禅一致――今こそ筋グリコーゲンを燃やす時! と、渾身のドリルパンチで壁を破壊して脱出に成功。
ネオショッカーの基地では面倒くさいミサイルの発射準備が着々と進み、「生贄の脈拍が120を越えました」と、“怯えおののく生贄の心臓の鼓動に合わせて作動する仕組み”を拾うのですが、ミサイルの中に収められている少女の表情がどう見ても、状況が全く把握できない無表情、の為に緊迫感はいまいち(笑)
「あと6秒だ」
冷凍ミサイル発射が迫る中、信じて育ててきた筋肉の力で絶体絶命の危機をくぐり抜けたスカイライダーがアジトへ突入したのに続き、谷の操るラジコンセスナが装置に衝突して爆発するとカウントダウンは停止。
よくある導入の小道具だと思われたラジコン飛行機を、メッセンジャーそして破壊工作と使い切ってみせたのは今回の面白かったところですが、谷がシゲルに上等なラジコンを与えていたのはつまり、姉の入院への気遣いでもなんでもなく、いよいよという時は、
「この世の別れに、ラジコンを飛ばさせてはくれまいか」
「……よかろう」
(ちゅどーーーん!)
する為だった事が明らかになり……少年ライダー隊は死ぬ。死ぬために我々は存在する。だが仮面ライダーは永遠である。つまり―――貴様らも永遠である!
谷については、このぐらい頭おかしい方が、初登場時のキャラ付け(偽名を名乗り、家族の復讐の為にネオショッカーを追っている)には合致するのですが。
「ここがおまえの死に場所だ!」
ミサイル発射に失敗し、逃げる凍えスキーをスカイライダーは追いかけ、怪人が作り出した氷の槍を戦闘員が装備するのは、面白いギミック。次々と戦闘員を串刺しにして血祭りにあげたスカイライダーは、凍えスキーとの一騎打ちに挑むと冷凍ガスで氷漬けにされてしまうが、燃えろ! 筋グリコーゲン!
火炎放射リングを脱出の手助けにと迷わずシゲルに託していたスカイライダーは、ならば筋肉こそが俺の炎だ! と内部から氷を溶かしてみせ、昆虫魂とはすなわち筋肉の奏でるシンフォニーなんだ、とビーファイターも言っていました。
タイミング的に新必殺技について演出サイドで共有されていなかったのか、普通のスカイキックでコゴエンスキー司令官が弾け飛ぶと、冷凍ガスを浴びた少年は息を吹き返し(恐らく、物理現象ではなく呪術の類だった)、なら他の被害者たちも元に戻ったのではないか、という空気になって、つづく。
一体いつの時点の文芸設定が説明されていたのか、突然のサブスギール帝国に始まり、デストロンやブラックサタン寄りのオカルト仕掛けが飛び出してきて当初はどうなる事かと思いましたが、小道具の使い方に工夫があって、後半からは割と楽しめた一本でした。……スカイライダーのピンチ脱出×3が全て理屈を越えてくるのも、個人的には説明がついてしまったので(笑)
後、姉の代わりにレギュラーに収まったシゲルの存在がフワフワしていたので、一度シゲルにスポットを当ててくれたのは、人間関係の整理として良かったところ。……シゲル(の所属するコミュニティ)の方にカメラを向けると、ガールズ&沼の存在理由が更に希薄になる問題は出ますが。
脚本の土筆勉は、くしくも以前に『ウルトラマン80』で2本見た事があり、その内の一本が序盤の問題作、第10話「宇宙からの訪問者」(監督:湯浅憲明)だったのですが、変な方向で、相性はあまり悪くない脚本かもしれません(笑)
■〔遠くの星から来た女/『ウルトラマン80』感想・第10話〕
次回――1話挟んで、またも先輩来日!