東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
旧ダイアリー保管用→ 〔ものかきの倉庫〕
特撮作品の感想は、順次こちらにHTML形式でまとめています→ 〔特撮感想まとめ部屋〕 (※移転しました)
HP→〔ものかきの荒野〕   X/Twitter→〔X/Twitter/gms02〕

譲れないもの

太陽戦隊サンバルカン』感想・第9-10話

◆第9話「怪物になったパパ」◆ (監督:小林義明 脚本:上原正三
 ギターは俺のアイデンティティ
 ギター片手に海岸線を歩いて海を見つめたりする鮫島は、海水から安価に金属資源を取り出す装置の開発に成功した大学時代の恩師・小坂教授の元を訪れるが、教授の息子と遊んでいる内に港に現れたタコ……じゃなかったサソリモンガーにより教授がさらわれてしまう。
 「装置の設計図を、頭で書くのじゃ」
 「無理だぁ!」
 ブラックマグマの基地で、恐らく思考を読み取る系の装置にくくりつけられた教授の叫びが、大変生々しい(笑)
 逃亡しようとした教授がヘルサターン総統の手にかかって死亡すると、ブラックマグマの職人たちによるメカ人間の開発と性能テストの模様に尺が割かれ、優れたメカ人間は、職人の丹念な手仕事と、それを支えるブラックマグマ健康青汁@グルタミン酸配合から生まれます!
 今なら一ヶ月分に初めてのお客様限定でもう2箱お付けして、3,800円の大ご奉仕価格!
 ナレーション「厳しいテストをくぐりぬけて生き残ったものが、スパイ・ダークQとなる。ダークQは、機械帝国の戦略を実行する、大事な、スパイの役目を果たさなければならない」
 教授の死体から顔かたちや指紋がダークQに写し取られる、かなり酷たらしい場面が(映像上はさらりと)描かれ、故人と瓜二つのダーク教授が誕生すると、ボートで漂流中に漁船に救出されたという設定で、家族の元へ帰還。
 「シャーク、行って警護につくんだ」
 「は!」
 長官の命令を受けた鮫島は、なぜギター片手ですか。
 病室で母子を迎える鮫島は、なぜギター片手ですか。
 (ブラックマグマはなんの目的で、小坂教授を……)
 病院には既にブラックマグマの手が回っており、偽装したレントゲン写真をわざとらしく見せつけて人間である事をアピールするなど、前回に続き、ディテールに凝った見せ方。
 退院した教授と、助手でもある妻、そして息子との研究所での家族の風景が描かれ、にこやかな父親は既にロボスパイの描写がだいぶえげつないですが、やはり今作には、冷戦の時代を背景とした“日常に存在する漠然とした不安”への意識の強さ、それを寓意的に取り込んだ1950-60年代~の英米SFの息づかいと、それを内包する《ウルトラ》シリーズを経由した流れを感じます。
 ダーク教授は装置の設計図の収められたマイクロフィルムを探し回り、少年が父に不審を抱くのが、些細な違和感に気付く……というより直感と本能みたいな処理だったのがここまでのディテールの描き方と噛み合っていなくて残念でしたが、母親の命を盾に少年を脅しつけるとラバーマスクを自ら引きはがし、
 「パパの本当の顔が……これだって事をな! ……おやすみ、坊や」
 は直球でトラウマもののホラーで、見たのが大人になってからで良かった(笑)
 少年を閉じ込めたスパイ教授だが、装置の設計図の記されたマイクロフィルム探しに夢中になっている内に妻にも正体を見られてしまい……ブラックマグマでは、メカ人間性能テストの項目見直しが早急に求められます。
 戦わなければ生き残れない、と頭脳回路に筋肉が詰まっている教授スパイは、研究室の壁をぶち破って母子を追い、日常系サイコサスペンスから一転、怪物から逃げ回るパニックアクションとなると、メインかと思っていたら7分ほど出番が無かった鮫島が、研究所の異変に気付いた(ギターを片手に)。
 岩壁に追い詰めた母子からマイクロフィルムについて聞き出そうとするスパイ教授の頭部にサッカーボールが直撃し、いよいよ鮫島の見せ場……かと思ったら、背後の海からバンクで飛び出すバルシャーク(もう変身していた)。
 ……いやまあ、変身していても見せ場は見せ場なのですが。
 「設計図は先生の頭脳に隠されていたんだ! 設計図を守る為、先生は自らの命を……!」
 小坂教授は書こうと思えば頭で設計図を書け、逃亡によって殺害されるのも覚悟の上だったと鮫島フィルターで補強されると、物陰から顔を出したゼロレディーズの
 「任務は終わった。消滅!」
 宣告により、スパイは爆死。
 「サソリモンガー!」
 約13分ぶりに登場したサソリモンガーがシャークに襲いかかるとサンバルカンが勢揃いし、輝け! 太陽戦隊!!
 切り替えスイッチとしてのOPテーマは抜群に格好よく、前作の流れを受け、この後に繋がっていくシリーズとして一つの「型」の成立が見える一方、掴みとクライマックスバトルの間に挟まっているのが、密着ドキュメンタリー「ブラックマグマ72時間」なのが、独特の作風です(笑)
 赤と黄が戦闘員を相手取っている間に、青は水中ダイブとジャンプを繰り返しながらタコ……ではなくてサソリとの一騎打ちに挑み、だいたい海辺で戦っているし、これといって能力が話に絡むわけでないし、もうタコで良かったのではないかモンガーに、必殺シャーククローが炸裂(鮫の噛みつきを模しているのが格好いい)。
 ダメージを負いながらもサソリモンガーが立ち上がると、シャーク、巻いていこうぜ! みたいな変な手の動きでイーグルがバルカンボールの指示を出し、下が岩だらけの海岸でもパンサーがバック宙を決め、アタック炸裂。
 ……バルカンボールの準備動作、くるっと回りながら入ってくる青と黄に対して、センター後方に陣取っている赤が地味になる現象が起きているのですが、それもあっての事前の手をグルグルでしょうか(笑)
 巨大モンガーのサソリスピア連続攻撃を受けるロボだが、チェーンによる放り投げから、サソリバルカンを太陽シールドで防ぐと、オーロラプラズマ返し。
 父を失った少年は、鮫島と共に海岸で元気な姿を見せて前向きに歩き出す姿が描かれ、珍しく嵐山長官が持っていかずに、それを見つめる鷲と豹の姿で、つづく。
 ……誰のメイン回だったのかといえば、ダークQのメイン回だった気がしますが、標的が恩師でその息子と仲良し設定まであったのに、真ん中の7分間全く画面から存在が消える鮫島が、ひたすらギターを持ち歩いていたのは印象に残ったエピソードでした。
 その割にギターを弾く場面は一切無いのですが……これはつまりあれでしょうか。
 「どうだろう? この世の別れに、ギターを一曲弾かせてくれないか」
 ギターに偽装した自爆装置。

◆第10話「待ち伏せ毒ぐも館」◆ (監督:小林義明 脚本:曽田博久)
 上原大先生の9連投で始まった今作ですが、前作に続いて曽田博久が参戦。
 ブラックマグマの送り出した蜘蛛モンガーが、忍法・蜘蛛の子散らしによって次々と科学プラントを爆破。蜘蛛の子散らしは更に、発電所や交通管制センターのコンピューターも狂わせて各地で爆発事故を発生させ、走行中の新幹線が真ん中から吹っ飛ぶのは、なかなか強烈な映像でした。
 「見たか、ブラックマグマの恐ろしさを」
 管制センターに急行したサンバルカンは、壁を移動するスパイダーアクションで登場した蜘蛛モンガー@有能の糸攻撃に翻弄されて逃走を許し、香山浩介直筆サイン色紙を泣く泣く素材に投入した回があったと自慢げなヘルサターン総統は、次なる一手としてヨーロッパ旅行を餌に若い女性のデータを収集。
 「あれこそパンサーにぴったり」
 その中からハニートラップ要員を選抜すると、ヨーロッパ旅行に行きたければこの男を籠絡しろ、と豹朝夫の写真とデートプランの指示書を渡し……何この、ストマック社も真っ青の暗黒バイト(笑)
 かくして幾分ノリも頭も軽い少女が、渡された指示書に従って豹にアプローチを仕掛けるが、美佐(特に気があるわけではないが、周囲の男が自分以外の女に鼻の下を伸ばす事そのものが許せないタイプ)の睨みもあって、意外や豹はお断りすると店から逃げ出し、少女のこぼした「コンピューター」の言葉に反応するのは勿論、嵐山長官。
 「付き合ってみろ。これは敵の罠かもしれん」
 背広でキめた長官(映し方が、完全にサービスカット扱い(笑))は逃げ回る豹に命令を下し、声と表情が格好よくて誤魔化されそうになりますが、内容は紛う事なき人でなしです!!
 女性ボーカル曲をバックに豹と少女のデート風景が描かれ、鷲と鮫がそれを尾行する中、指示書に基づき2人は演奏会へ。
 タクシーを捕まえて後を追おうとした鷲と鮫だが、ブラックマグマの罠にはめられて景気良くタクシーが吹き飛ぶと、その間に豹は、天才ギタリストに扮した蜘蛛モンガーによって逆さづりにされてしまう。
 「ギターの音だ!」
 爆殺を逃れた鷲と鮫は手早く変身するとバルカンイヤーでギターの音を感知し……「ギターの音」そのものには、なんの善悪も無い筈なのですが、鮫島欣也の魂が叫んでいます。
 俺以外でギターを弾くヤツは敵だ!!
 演奏会場に突入した赤青に助けられた豹も変身するが、3人揃ったサンバルカンはまたも蜘蛛モンガーの操る糸に翻弄されて吊るし吊されのロープアクションが繰り広げられると、エピソードの主題はここから「ロープアクション」となり、「欲得で動く少女」と「命令で動く軍人」の間に生じる人間的繋がりとか特に存在しないまま消し飛んでいくのに大変困惑しますが、これは大体、『ブンブンジャー』を見ている時と同じ気持ち。
 気絶したまま放置を受けていた少女がゼロガールズにさらわれていくと、蜘蛛モンガーと黄の取っ組み合いの拍子に急斜面から転落しそうになって咄嗟に黄が手を伸ばし……パンサーの行動は英雄的ではあるものの、好感度の低いゲストの危機また危機でヒーロー性を引き上げようとするのは、非常にノリにくい作劇。
 ……しかも、結局、2人で転がり落ちました(笑)
 「大丈夫か?」
 「ありがとう」
 「ひょひょー」
 「……ひょひょ?」
 はちょっと面白かったですが(笑)
 蜘蛛モンガーがロープ戦闘員を繰り出すと、捕物帖のような演出や、特殊部隊めいた降下アタックなど、次から次へとロープを用いたアクションが盛り込まれ、崖に逆さに張り付きながらのロープ攻撃を見せる蜘蛛だが、無重力崖上りから反撃に転じたパンサーの引っ掻き攻撃とバック転キックが炸裂。
 トドメのバルカンボールを受けた蜘蛛モンガーが巨大化すると、いきなり逆さ吊り状態で振り子のように揺れているのはインパクト抜群で……どこにぶら下がっているのかは、ブラックマグマの最高機密です。
 巨大化しても有能さを見せる蜘蛛モンガーだったが、チェーン攻撃からの電気ストリームにより地面に引きずり降ろされるとオーロラプラズマ返しにより大爆発を遂げ……ブラックマグマの正解は、「太陽戦隊にやられるまでモンガー忍法・蜘蛛の子散らしを続ける」だったのですが、一体なにがヘルサターン総統をハニートラップ暗殺計画に駆り立てたのか……蜘蛛の子爆弾はコスト割高だったのか。
 曽田さんの今作初登板となりましたが出来は悪く、予告からは、連呼される「かわいこちゃん」に引っかけられた豹がコミカルに転がり回りながらも奮闘する、みたいな内容なのかと思っていたら、そもそも豹は上官命令でデートのふりをしているだけ、洋館に放置されていくゲスト、ブラックマグマが特に豹を標的とした理由も一切触れられない、という随所に大雑把な作り。
 後半、明らかにロープアクションが主題となるので、色々なロープアクションを行った尺の分、前半をカットしまくったら骨組みが溶けて消えてしまったのかもですが……。
 次回――今度は死んだ娘がロボ人間。