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一筋に一筋に不死身の男

仮面ライダー響鬼』感想・第39話

◆三十九之巻「始まる君」◆ (監督:田村直己 脚本:米村正二
 前回、魔化魍を見て逃げ出した京介が、校舎の中で膝を抱えて震えている弱さと、恐る恐る確認した校庭に倒れているヒビキを見ると、すぐに駆け寄るのは良かったところ。
 「日菜佳さん、怒ってるなら、俺を殴ってください」
 「ハイ?!」
 その頃、ザンキに突き放されたショックですっかりやさぐれ、たちばなで自棄ぜんざいをすするトドロキは、ヒーローとして新たな階梯に進む為、《Mパワー》の修得を目指していた……?!
 「ザンキさんが、俺を殴ってくれないんスよ!!」
 倒錯を始めるトドロキの性癖発露に、今度こそお付き合いを考え直しそうになる日菜佳だが、京介から急報が入り、意識不明で倒れたヒビキを緊急回収。
 明日夢とみどりは魔化魍の巣で吊られていたが根性で脱出に成功し、みどりさん、高校生の時に再会したヒビキくんは格好良いと思っていた衝撃の過去が判明。
 明日夢とみどりが帰還を目指す中、京介はたちばなで隠し通路落ちを体験すると地下の武器庫に辿り着き、震える手で音叉を手に取る。
 「俺だって……!」
 それは、ERRORの音声と共に後方に海老反りで吹っ飛ぶやつでは?! と思ったら、見事に変身失敗した際の衝撃で背後の壁に叩きつけられると、結構いい感じに後頭部を打ち付けて気絶し、やっている事は不用意すぎるにしても、記憶を失ったり人格が変わったりしないか心配になります。
 (僕、桐矢京介。同じクラスの安達くんと友達になって、なんだかちょっと、変わってきたような気がします)
 不法侵入者が地下で転がる中、事務局長に人生相談していたトドロキは、ザンキさんに冷たく突き放されたのは期待と愛情ゆえだ! と勢地郎のたとえ話を一方的に良い方向に解釈すると、スイッチオン。
 そこに裁鬼さんがヨビコと交戦中との連絡が入り、勿論、今回もざっくり負けている裁鬼さーーーん!!
 ……床に倒れているところを、轟鬼にまたがれました。
 第36話でノツゴに逃げられ疲弊している所に鬼の鎧の攻撃を受けて倒れてから3話で復活した裁鬼さん@勇者体質はまたも教会送りとされ、轟鬼リザード魔化魍と殴り合っている数秒の間に、床の上から痕跡が完全に消えているのですが、形而上的存在でお馴染みサポーターの石割くんに回収されたのでしょうか(笑)
 「俺は負けないっス! 絶対負けないっスす!」
 ギター無効で吹き飛ばされながらも、電撃パンチの乱打を浴びせる轟鬼だったが、気合いで勝てるならスペシャルポリスはいらないですよね、とビルから転落。増援の威吹鬼も音撃無効で一方的に嬲られて完敗し……これだけ大暴れするのに、どうして雑な合成怪人みたいな見た目にしてしまったのか、ヨビコ。
 激しい雨の降りしきる中、トドロキはザンキの前で自力で立ち上がってみせると改めて卒業を宣言し……トドロキに関しては、お題としてイブキやあきらと歩調を合わせようとして、無理に後退して回り道をさせたような感じになってしまいました。
 また、立ち直りのきっかけとなった勢地郎とのやり取りがギャグめいた処理をされていたのも展開の無理を感じさせ(今作世界の基本ルールとして、勢地郎はヒビキさんよりメンター性を発揮してはいけない事情もありますが)、ただでさえ前期/後期の作風の変化もあり、この局面で初参加の監督・脚本は、作品の空気を掴むのが難しかった印象となりました……この点だと、後期スタート時の諸田監督の空気の掴み方と描写のバランスが凄く巧かった、のは光ります。
 スクラップの下から這い出したイブキが、鬼になるかどうか自分で結論を出してほしいとあきらに告げていた頃、地下室で発見されて一命を取り留めた京介は、気絶から回復したヒビキに直談判。
 「弟子にして下さい!」
 「……鬼になってどうするんだ?」
 「親父を越えたいんです。……死んじまった親父を越える為には、それしかないんです」
 「そんなんで務まんのか? 鬼が」
 ここで初めて、身勝手な自己主張の延長線上ではあるも、京介が真正面からヒビキと向き合う姿が描かれるのは、今後の京介の「変化」にも期待したいところ。
 「負けるのがわかってるのに! ……戦うなんて……意味ないですよ!」
 「――それが意味があるんだよ。待ってる奴が居るからさ」
 みどりからの連絡を受けてヒビキはその救出へと急ぐと、自然の響きに耳を澄ませた明日夢くんのナイスサポートにより、リザードマンの音バリアーを打ち破る事に成功。
 アームド拡声バーから飛び出した清めの音の具現化である鬼の文字を、斬撃で加速して魔化魍を切り裂く新必殺技で、難敵ヨビコの撃破に成功するのであった。
 「ありがとな。…………明日夢
 明日夢くんがいきなり超音感を発動したらどうしようかと思いましたが、前回のヒビキさんの教えを胸に活路を見出すのは許容範囲に留まり、3クール目の終わりにして遂に、明日夢魔化魍の撃破に一役買って、つづく。
 サブタイトル通りの転機のエピソードとなりましたが、イブキ師弟・ザンキ師弟・ヒビキ師弟……になるかもしれない少年たち、の関係をそれぞれ描いた上に、新たな一歩を踏み出す明日夢くんまで収めるのは詰め込みが過ぎて、残り話数とのデッドヒートになっている事情はあるのでしょうが、特にイブキサイドとトドロキサイドは、強引に付け足した感になってしまったのは残念でした。
 奮起して魔化魍に痛打を与えるわけでもないので、苦悩を乗り越えた末の劇的さみたいなものにも持っていけず、ヒーローフィクションとしてのスッキリが弱かったのも、苦しかったところ。