東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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バイオレンスなバイオレット

『爆上戦隊ブンブンジャー』感想・第15-16話

◆バクアゲ15「錠とキー」◆ (監督:葉山康一郎 脚本:山口宏)
 三下トリオが恐竜の化石をイグニッションして誕生する化石グルマーだが、ブンブンジャーと遭遇すると……すたこら逃げた。
 「なんなんだあいつ……戦わずに逃げちまったぞ」
 「材料が古すぎたせいかしら」
 「そんなー。カーの恐竜が~」
 手分けしてクルマ獣を探すブンブンジャーだが、化石グルマーは人を襲うどころか茂みに隠れて人に怯える臆病なクルマ獣で、問答無用のダイナミックチョップできなかった阿久瀬は情が移ってしまい……予告から予想された通りの“いい怪人”回にして、良くも悪くも予告から予想されるものから飛躍もひねりもない、『ブンブンジャー』クオリティ。
 「しっかし本当にカセキーしか言わないな。それじゃあ……おまえの名前はキー太郎でどうだ?」
 「カセキーー!」
 化石グルマーが人を襲わない事を証明する為、阿久瀬は玄蕃の調達した倉庫に籠もって化石グルマーと一晩過ごすが、夜が明けると化石グルマーを捜索していた三下トリオと出くわしてしまい、デコトラとイターシャは……ゴーストバスターズインディ・ジョーンズのコスプレでしょうか……?  恐竜がやたら気に入ったらしいヤルカーは、帽子とスカーフで、なにやら西部劇風味。
 大也たちが駆けつけて戦いを請け負い、逃走しようとする阿久瀬と化石グルマーだが、改造隊長キャノンボーグの“実験”により化石グルマーが凶暴化し、いい怪人と心の繋がりが生まれるが、敵の策謀により暴走するところまで、定番オブ定番。
 一暴れした化石グルマーが副作用で巨大化すると、その攻撃によるビルの倒壊と、足下の被害が克明に描かれ、個人的には『魔進戦隊キラメイジャー』第40-41話以来となった葉山監督、『キラメイ』第40話の際に怪獣映画が好きそうな印象を受けたのですが、今回も、巨大化してからの見せ方にこだわりが感じられます(特撮班の仕事かもですが、共通した印象から本編班と推察)。
 人命を守る為には戦うしかない、と阿久瀬が肚を決めて、ブンブンジャーロボと殴り合っている内に夕焼けとなり……やはり、怪獣ものというか《ウルトラ》が好きそう。
 Bロボモンスターは化石グルマーを粉砕し……これは個人的な好みの話になりますが、化石グルマーの凶暴化が、阿久瀬が気付かない間に背後に立ったキャノンボーグの手でなされた、のは不満点。
 現時点で改造隊長と顔合わせさせたくない事情があったのかもですが、「対話可能な怪人と友好が生まれるが、最終的には戦わざるを得なくなり悲劇的結末を迎える」パターンの場合、“真に怒りを燃やすべき相手”が視界に入っていないと、ただ物悲しいだけになってしまうので、そこは、倒すべき悪を見定める流れと繋げてほしかった部分。
 また、残りメンバーも事情を把握している筈なのに、化石グルマーへの関与が阿久瀬と一対一の関係に終始してしまい、一番懐いている阿久瀬に任せる、という理屈は成り立つにしても……中心となる要素から縦横への広がりが少なく、これといった今作ならではの面白さも生まれてこないのが、現状の『ブンブン』クオリティ。
 筋書きは別に定跡通りで構わないのですが、その中に一匙の“『ブンブン』ぽさ”が欲しいわけで、「いい怪人話を『ブンブンジャー』でやるとこうなる」が見えてこないのが残念です。
 次回――新たなるタイヤ!

◆バクアゲ16「ムラサキの始末屋」◆ (監督:葉山康一郎 脚本:冨岡淳広
 ブンブンジャーの面々は、ハイウェイ空間でテスト走行中……
 「運転屋ミラ! ビッグバングランプリは貰ったーー!!」
 これまで具体的な言及が全くなく、「チーム」の意味も結局触れず仕舞いだったBBGに、唐突に桃がレーサーとして走る気満々で、冒頭から困惑。
 「まだまだ! こんなもんじゃないぜ、ミラ!」
 「え?」
 「ビッグバングランプリは、爆上げレーサーだらけなんだから!」
 「だから勝ちにいくんだろ、ブンブン!」
 スリップストリームについていた赤の車が、ブーストをかけて黄の車を抜き去り……第8-9話において、“公と私の衝突”テーゼをやりたいあまりに、本来外野から文句を言われる筋合いのない「ブンブンカーはビッグバングランプリに出場する為に作られ、大也とブンブンの夢はBBG出場」をメンバー亀裂の争点にしてしまい、結局その後
 ――「ブンブンジャーって、大也さんにとってなんなんですか」
 ――「大也にとって、あたし達ってなに?」
 については一切言及されないまま第16話まで来てしまったわけですが、その答は、
 ドライバーの頭数だぜ!
 という事でいいのでしょうか。
 それこそ阿久瀬とか、「ブンブンジャーとしては戦いますが、警察を休んで宇宙レースはちょっと……」な立ち位置だと思うのですが、その問題を別の問題にずらして解決した扱いにしてしまった為、本来残っている筈の問題が無かった事にされたまま地球を飛び出して目指せBBGマスター! を皆が揃って承認しているみたいな空気になっているのは、幾らなんでも山ほどスキップしすぎの感。
 個人的には、無駄に言葉を濁して必要な説明を後回しにしていた大也の不誠実さに対する心理的しこりも残ったままなのですが、地球に未知の飛翔体が接近と細武から通信が入った直後、ハイウェイ空間に謎の大型マシンが乱入すると、超高速でブンブンカーを吹き飛ばして姿を消す。
 謎のマシンはどういうわけか、メイド・イン・ブンブンの印であるブンブンシグナルを発しており、心当たりの無いブンブンが首をひねる中、地球に降り立ったのは、フォーミュラカーを人型にトランスフォームしたような機械生命体と、座り方と口調がヤンキー風味な紫色のタイヤ人間。
 「久しぶりの故郷はどうだ?」
 「別に? どうってことねぇよ」
 両者もまたブンブンシグナルを検知すると、届け物の仕事を後回しにしてシグナルの反応へと足を運び、濃い目の男が既存メンバーの前で力を誇示して回る井上メソッド(笑)
 「俺の仲間にちょっかい出してるのはあんたか。何故だ?」
 挨拶代わりの加速飛び蹴りーーー、を大也が回避すると、両者はハンドル銃とハンドル弓矢を向け合い、今回通して、ハンドル操作による生身加速の表現が格好いい紫ジャケットの男は、大也に匹敵する実力を見せつける。
 「焔先斗だ。覚えとけ」
 フォーミュラ・サーキットもとい焔先斗、名前があまりにも主人公ぽくて、もともと主人公の名前案の一つだった、と言われたら信じます(笑)
 そして、先斗が持つハンドル弓矢は、レーサー時代のブンブンが加速装置として制作したが途中でぶん投げた上に存在を忘れ去っていたコントローラーだと判明し、ブンブン総司令の魂の中に、東映マッドサイエンティストのDNAが!!
 「俺は、宇宙一の、始末屋だ! 揉め事、秘め事、汚れの仕事……表も裏も、始末をつける。今度の始末は、ハシリヤン本家からの届け物だ」
 タイヤマシンとフォーミュラ生命体はキャノンボーグの元を訪れ、物騒な職業名ですが、ニュアンスとしてはグレーゾーンのトラブルシューター、といったところでしょうか。
 ハシリヤン本家から届けられた伝説の剣がイグニッションされると、ソードグルマーが誕生。戦闘員と共に直接的に人々を脅かしてギャーソリンを集め、戦闘スタイルとしては時計グルマーと丸被りになりましたが、ここまでのところ結局、直接攻撃で殺さない程度に人を恐怖させるのが最も効率的なギャーソリン収集方法になっているのは、今作の苦しいところ。
 今回は強敵登場回ではありますが、普段からギャーソリン集めの扱いが雑になりがちな上に「非効率だけど面白い」を表現できてもいないので、丁寧に掘ってほしい鉱脈を掘ってくれない不満は募ります。
 ギャーソリンを吸収していくソードグルマーから人々を助けたブンブンジャーは、戦闘員を蹴散らしながらのフル名乗りを行うと、ソードグルマーを集中攻撃。
 「良い……良い良い……!」
 だがソードグルマーはとんだMパワーの持ち主であり、受けたダメージを蓄積して剣の鋭さに変えて放つ回転斬りに、次々と吹き飛ばされるブンブンジャー。
 そこへキャノンボーグが姿を見せて初顔合わせとなり……うーん、どうせ今回会わせるなら、前回時点で化石グルマーの凶暴化の際に阿久瀬には目撃させ、奴は何者?! としておいて良かったのでは(前回感想で触れた、化石絡みのドラマ性としても)。
 「もう一つの正体不明の侵入者?!」
 ガレージではブンブン総司令と細武が顔を合わせて驚くのですが、別に背後で暗躍が効果的になっていたわけでも無く、回想シーンまで入れて強調する意味は薄く感じました。
 キャノンボーグが高みの見物を決め込む中、再びぶつかるブンレッドとソードグルマーだが、その間に割って入る紫の閃光――焔先斗。
 「ビュンビュンチェンジ!」
 ハンドル弓矢を構え、説明書感の強い音声ガイドに従ってボタン入力すると、迅雷そして矢のモチーフが降り注ぎ、立っていたのはスポンサーの沢山ついた紫のタイヤ人間――
 「始末屋! ブンバイオレット!」
 は「カオスな方に、転がしてぇのさ!」と、自ら混沌を招こうとソードグルマーと戦闘を開始。
 高速機動でクルマ獣の斬撃を交わし、ガトリングアローの連射とフォーミュラカーキックによる一転集中攻撃でソードグルマーの剣を折る、Mを越えるSパワーを見せた紫は、ビュンビュンアロードライブで爆上げファイヤーし、変身アイテム&個人武装、実際のフォーミュラカーに様々なボタンがついているところからの発想があるのでしょうが、効果音といい、ボタン配置といい、やたら喋るところといい、なんとなくワンダースワンが覇権ハードとなった世界を思い出してなりません(笑)
 まあ実際、ゲーム機、のモチーフも入っていそうな感じではありますが……多分、焔先斗が地球から姿を消した10歳の時、この世界ではワンダースワンが覇権ハードだったのです。
 ――「久しぶりの故郷はどうだ?」
 ――「売ってねぇ! ワンダースワンのソフトが売ってねぇよ?!」
 悲しみを乗り越えて爆上げされたソードグルマーが何故か伝説の剣に戻ると、改造隊長は計算通りとそれを回収していき、残ったのは5人のブンブンジャーと始末屋ブンバイオレット。
 「この始末、高くつくぞ」
 「……何が望みだ」
 「これを作った奴に会わせろ」
 「――ブンドリオ・ブンデラスの事だ」
 そして姿を見せる、二枚目声のフォーミュラ機械生命体。
 「ビュン・ディーゼル?!」
 それはなんと、ブンブンのBBGレーサー時代の知己であり、果たして、ブンブンジャーの知的財産権は認められるのか。商標登録を先にしたのはどちらなのか。「勝手にブンブンジャー名乗って活動されちゃ困るんですよね~」。大富豪から一転、大也に迫る破産の危機。次回――スペース訴訟の嵐が吹き荒れる?!