『牙狼<GARO> -魔戒ノ花-』感想・第3-4話
◆第3話「温室」◆ (監督:阿部満良 脚本:藤平久子/田口恵)
「美しい……これが本物。私自身の手で作り出した、死」
なにかに取り憑かれたかのように、花と人体を組み合わせたオブジェの制作に打ち込む芸術家が、創作への執着のあまり自らの手で人を殺める、狂った芸術家パターンで……Aパート、雷牙の出番、無し。
殺人の一線を越えたのを契機に芸術家はホラーに貪り喰われ、ここまでのところ基本、ホラーの異形を「目」で見せる路線。
サイコ芸術家描写が延々と続き、フラッと散歩に出たマユリは芸術家ホラーの接触を受け、番犬所で業務報告を行っていた雷牙は、マユリがホラーの手に落ちた事を告げられる。
「待ちなさい。……大切なのはホラーの殲滅」
「わかっています」
「魔道具の奪還ではありません」
「……わかっています」
マユリを「道具」として扱う番犬所と、「人間」を見る雷牙のスタンスの違いが明確に描かれるのですが、それはそれとして超重要ミッションの真っ最中、仮にマユリを失った場合、そうポンポン次が出てくるものなのかどうかは、ちょっと気になります。
……もう二つほど、石板の欠片も消化しているわけですし。
痕跡を追った雷牙は、ホラーが根城にしている温室で、鉄鎖に拘束されたマユリを発見し、
「この娘は面白い。まるで無だ。こいつを使って、生も死も越えた、最高の作品を作ってみせる」
と、“魔道具”マユリを素材にしようとするホラーの物言いに雷牙が反駁を繰り返すのですが、〔フラッと散歩に出る → ホラーと出会う → いきなり捕まっている〕マユリの動きが雑すぎる上に、“雷牙とマユリの関係”を描いていく事で、視聴者にマユリへの思い入れや雷牙への共感を発生させるのではなく、視聴者にとってマユリが何者かよくわからないままに、“雷牙vs悪役&胡散臭い奴”の構図だけでマユリに絡む雷牙の発言に正当性を持たせようとするので、手抜き工事。
「死を恐れないという事は、生きている実感もない筈。……まるで物と一緒だわ」
「違うッ。彼女は生きている」
とか、
「私は人間なのか?」
「当たり前だ」
とか、視聴者に全く感じ取れないところで雷牙だけが盛り上がっていて、中身も支えも無い台詞が浮かんでいるだけになってしまいました。
……後々、どうして雷牙がそうなのか、を明かす構成の可能性もありますが、少なくとも今回時点では、あまりにも基礎工事が足りず、看板の裏には何も無い、みたいな事になって残念。
花を生けていたゴンザが途中で席を外したところに姿を見せたマユリが、興味津々で手を加えるも上手く行かず、最終的に、一番派手な花を皿の中央にぐさっと突き立てて満足げに去って行くED映像が、一番面白かったかも(笑)
◆第4話「映画」◆ (監督:山口雄大 脚本:江良至/山口雄大)
「一つ、言い忘れてました。この映画の登場人物は、ササジマさん――貴方だ」
雷雨と墓地、白黒ホラー映画調のスタッフロールで始まると、標的を映画の中に取り込むホラーの討伐に向かった雷牙がゾンビ映画の中に放り込まれ、そこから古今東西のホラー(サスペンス)映画のパロディやオマージュが多数盛り込まれて映像的にも色々と遊びを交えながら、テアトル昭和でホラー映画への愛を叫ぶ変化球。
ホラー映画への造詣は全く無いので、元ネタなどはあまりわかりませんでしたが(とはいえ、わからなくて面白くない、とならないように、なんか知っているかも……ぐらいの有名作を中心にした感じ)、ゲストホラー役のきたろうさんが好演で、薄暗いサイコサスペンスとしての説得力が全体を引き締めてくれました。
事件に巻き込まれたホラーマニアの男の使い方は好みではない方向性でしたが、「ホラーって見方によるとちょっとギャグになる」辺りも、意識した演出であったのかな、とは。
……なお、2024年の今見ると、最終的なジャンルとしては、デスゲームのお約束を超人(など)が台無しにしていくやつでした(笑)
そんなわけで、ゾンビ? 両断すれば問題ないよね?
と感染パニックを100人斬りで突破した雷牙は、フィルムを操るホラーの能力により不穏な気配の漂う室内へと場面転換。
「ハロー雷牙。基本的なクイズといこう。ジェイソンは斧、フレディは鉤爪、レザーフェイスはチェーンソー。では、この映画の殺人鬼の、武器は?」
「……知ってるか?」
「いや。知らないホラーの名前ばかりだ」
ホラー(怪物)とホラー(映画)が掛けられた台詞でクスリとさせると、スクリームな殺人きたろうがナイフを手に雷牙を襲撃するが、魔戒騎士は慌てず騒がず肉弾戦で殺人鬼を圧倒し、普段の敵が敵なので当然ですが、毎度ながら無表情で骨を折りにいく雷牙スタイル。
「あなたは、私の映画を否定した。冒涜した!」
「……無駄だよ。おまえの想いは一方的だ」
今度はサイコサスペンス風味の世界に切り替わると、ハンニバル・きたろうは鉤爪とチェーンソー装備の本性を現し、だいぶ、付き合う相手に合わせる、もとい、器にした人間の影響を受けやすいタイプ……?
ザルバ事典によると基本的に領域展開系のホラーのようなので、展開する領域作成の為に器の執着を利用する、といった具合でありましょうか。
「映画の価値は、人がどれだけ無駄に、殺されるか! それだけだ!」
フィルムのコマの中でホラーとガロが激突し、コマ送りの世界でホラーに主導権を握られるガロだったが、映画の特性を得たホラーが炎に弱い事に気付くと、内部からザルバファイヤーで遠慮無く焼却。緑の焔を剣より十文字に放つ必殺技(初代主人公が途中から使っていた強化技でありましょうか)でホラーを撃破すると、現実世界に帰還するのであった。
「面白かったぞ、おまえの映画」
「俺はあいつの映画の登場人物じゃない」
「……で、おまえの主演映画は、いつ見れるんだ?」
ザルバの言葉に、画面にむけてにっこり笑う雷牙で、幕。
次回――クロウ再び。