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快盗戦隊ルパンレンジャーvs警察戦隊パトレンジャー』感想・第46話

◆#46「抜け出せないゲーム」◆ (監督:葉山康一郎 脚本:香村純子)
 純然たる好みの問題でありますが、役者さんに直接エフェクトかける系の演出が好きではないので、魁利が「俺、透真の物真似しまーす」で武突参流のテーマ曲が流れ出した時は凄く面白かったのに、直後の透真のリアクションをCGを用いたコミック的な誇張表現にしてしまったのが、大変残念。
 ノリノリで踊りに加わっていた初美花とノエルが、透真の反応を見て無表情で直立不動になる、とかむしろそっちの方が面白かったりするわけで……出来るだけ、役者さんという素材はそのまま活かして、表情の魅力を引き出してほしかったところです。
 新年、初詣に向かった快盗トリオ+ノエルだが、境内に現れた金庫頭の持つコレクション《一緒に遊ぼう》の効果により、色とりどりのジャージ姿で異空間に閉じ込められてしまう。
 「ルールは簡単。五つのお題を全てクリアすればここから脱出! 出来なければ、永遠に出られませーん!」
 という効果を、「子供の頃よく遊んだ」アルセーヌと、「楽しいパーティにはもってこい」と説明するグッティの、改めて箍が外れた感じ(笑)
 君たちはそれで、楽しいパーティにかこつけて何人の敵を消してきたんだ。
 そんなわけで、ノリは軽いが本気でボスの椅子を狙う陽気なMC風ギャングラーにより快盗は五つのお題に挑む事となり……
 注目点1:合成の費用を浮かせる都合か、概ね鷲掴み状態のグッティ。
 注目点2:初美花の晴れ着姿(ここも個人的にはエフェクト不要)に、魁利と透真を「砂漠」扱いするノエル、からの
 「咲也くんが居たら、大騒ぎするだろうねぇ」
 「居なくて良かった」
 と毒づく透真後輩の言葉に、何やら否定的な気配を見せるが結局口を噤む初美花。
 しかし、仄かに漂う春の芽吹きは、これから開く地獄の釜の蓋の前振りであり、国際警察では圭一郎が、恐らく年末年始を返上してまとめた、失踪事件の被害者と魁利達を繋げる調査結果をメンバーに報告していた。旅行先で魁利にバッタリや、夢の中に囚われていた初美花など、これまでにあった幾つかの不自然な遭遇に筋道を立てた圭一郎は、決闘の際のルパンXの言葉から、ルパンレンジャーの目的が「大事な人を取り戻す」である事にも目星をつける。
 「間違いない。ルパンレンジャーの正体は……魁利くんたちだ」
 片や深刻な表情で向かい合う警察、片や金庫頭に尻を向けられる魁利、と前回に続けてパートの温度差が激しい構成ですが、ルパンレンジャーの「正体」と同時に「目的」もきっちり捉える事で、理屈と感情の両面から、推測を補強しているのが、手堅く鮮やか。
 また、子供時代の初美花の写真が、第33話で保護した迷子の少女と瓜二つな事から、あの時招き入れたのはギャングラーによって子供化されたジュレの3人だったと思い至る、というのは思いがけないエピソードが布石になっていてお見事でした。
 頬すりすりしていた少年の正体を知り顔から湯気を出して倒れるつかさ先輩ですが、それ以上に、迷子の3人=ジュレの3人=快盗であるならば、あの時3人は“何故、国際警察に入り込もうとしていたのか?““その為に何をしたのか?”という真実に否応なく向き合わなければならないわけで、そこにハッキリとさらけ出される「虚構の人間関係」の現実を突きつけ、表向きには面白おかしいけど内実は大変えげつなかった第33話の本質を、きっちりと破裂させてくるのが、さすが香村さん。
 少年快盗団のエピソードで描かれていたのが、「目的の為には他人の善意に付け込み、平気で嘘をつく事をいとわない快盗たち」の姿であったというのが、実に重くのしかかります。
 快盗の正体推定に関連してこれまでを振り返る警察サイドでは、ロングスパンで細かく散りばめてきた伏線と総集編が相性良く展開し、快盗サイドもお題にかこつけて色々と回想しながら、魁利・透真・ノエルが、初美花プロデュースで女装を披露。
 金庫頭の間抜けなリアクションが続いて快盗の気が緩んできたところで、仮にもギャングラーの前にビークル並べていいの……? というのがしっかり罠で、そこから夏の総集編ではおざなりな扱いだったグッティの活躍に繋げる、という流れは、グッティと快盗の関係性強化にもなって良かったです。
 新春隠し芸空間から抜け出しビークルを取り戻した快盗は、ノエルがジャイロを借りて金庫頭のコレクションを回収すると、スーパールパンXとなってサイレンストライク。ノエルにコレクションとジャイロを差し出された魁利は、コレクションだけを受け取る事を決める。
 「これは、返さなくていいわ」
 「え?」
 「気付いたんだよ。金色金庫が出たら、バックルだけじゃ足んないだろ」
 「…………メルシー」
 年末のノエル前後編は、快盗サイドにせよ警察サイドにせよ、ノエルへの対応の描写がやや丁寧さを欠いて一段抜かし気味になった感じで引っかかりがあったのですが、ここで大事なビークルの一つ(異空間のやり取りで強調済み)をノエルに預ける事で、改めてノエルが快盗に“仲間として迎え入れられる”という補強が入ったのは良かったです。
 そして警察では、ジュレの3人を国際警察の監視下に置く判断が下される事になるが……
 「待って下さい! 僕が調べます!」
 と咲也が訴える必死さに、「国際警察の監視下」=「人権無視レベルの徹底的な追跡」である事が窺われ、監視社会の恐怖に戦慄する中、咲也は、もう少しだけ時間が欲しい、とヒルトップに懸命に願い出る。
 隠されていた人間関係から導き出された動機に、状況証拠を積み上げて理性で納得し、それが私情を押し殺せる圭一郎とつかさに対し、簡単には納得できないと親ジュレの論陣を張る咲也の存在によって推論のやり取りが引き締まり、同時に咲也自身が、積み重ねてきた互いの時間の象徴として機能している、というのは実にお見事なキャラ配置(名前を出しているのは初美花ばかりですが、咲也の場合、他の二人と比べて透真とも親交がある(つもり)というのがまた大きい)。
 「圭一郎先輩だって、魁利くんのこと気に掛けていたじゃないですか!」
 「………………それとこれとは別だ」
 と、長い間を置きながらも苦渋を飲み込める圭一郎の方が国際警察の一員としては“正しい”のですが、私情に大きく揺らぐ咲也を、成長途上の後輩キャラとして置いてきた事で説得力を持たせた上で、その叫びが、圭一郎の心底の願望でもある、というのも巧く出来ています。
 ここで、圭一郎が証拠を提出→一同揃って「そうだったのか!」と持ち込んでしまうと、恐らく非常に味気ない展開――これまでの両者の積み重ねはなんだったのか――となってしまっていたので、圭一郎への反論、圭一郎と近い苦悩、そして圭一郎の感情の代弁、をこなせる咲也というキャラクターが積み重なっていたのは、重ねてお見事でした。
 ……予告も含め、まさかこの局面で、魁利と圭一郎の次に扱いが大きくなるのが咲也になるとは夢にも思わず(笑)
 加えて、咲也の立ち位置は、状況証拠よりも情と直感に従う若手刑事、という刑事ドラマの類例として物語構造におけるメタ的な説得力も入手しているのですが、真実においては、そんな咲也よりも圭一郎の方が“正しい”という残酷さが、ヒーローと化合した時に最終章でどんな着地となるのか、この先に織り上げられるものの姿が楽しみです。
 異世界では、ドグラニオに呼び出されたザミーゴがボスの椅子を真っ向から否定。
 「いまどき組織背負って生きるなんて面倒、馬鹿しか選びませんよ」
 と言い放って部屋を後にするとゴーシュと接触。闇の底で銭を挟んで見つめ合う二人は何を目論むのか……そしてザミーゴが去った後に「……そういうもんか」と爪を鳴らすドグラニオの胸に去来するものは……で、つづく。
 いよいよザミーゴが本格的に快盗に牙を剥く気配を見せる一方、もともと「飽きてきたんでボス辞めようと思う」人だったドグラニオに決定的な心境の変化が訪れそうな気配もあり、「ギャングラーのボス」ではなく「一人のギャング」に戻って人間界に乗り込んでくる、なんて展開になったら、熱いかも。
 演出の方向性が好みでなかったのは残念でしたが、伏線回収と総集編構造の相性が良く、年末にやや消化不良だったノエルに関して「アルセーヌとの思い出」や「快盗との関係」を補強してくれたのも、最終章の導入としては十分な出来でした。
 そのノエルは、のっぴきならない状況に追い込まれそうな予告が思い切り殺しにかかっていますが、次回早々に警察戦隊からリアルに吊されてしまうのか。ジュレ3人を監視下に置くよりも先にノエルの首から下を海岸に埋めてみてもいい気がするわけですが、快盗の正体問題を間に孕みつつ、警察とノエルが改めて向き合ってくれそうなのは期待大。
 果たして、ギャングラーから「可愛い」を連呼されたり、生アクションの見せ場があったり、なんか友達が出来そうな気配が漂ってきたのは、全て、針山地獄に叩き落とす為の布石だったのか?!
 それとも、ノエルが殉職寸前、幸せになりすぎた咲也が横から殉職フラグをかっさらう展開なのか?!
 咲也とノエルの一人称が共に「僕」なのが実に巧妙な次回サブタイトルですが、只今のオッズは、

 咲也 2.8倍
 ノエル 5.5倍
 ヒルトップ 18.7倍

 となっております。
 次回――凍える蕾に太陽の男の笑顔は届くのか。走れ、咲也、走れ!