東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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超力でも任侠伝

超力戦隊オーレンジャー』感想・第5-6話

◆第5話「激愛!!炎の兄弟」◆ (監督:小笠原猛 脚本:井上敏樹
 いじめられっ子の弟を兄が冷たく突き放す現場を目撃し、間に入った裕司の前に現れる、マシン獣・バラカクタス-1。
 カクタス花粉を浴びた弟はなにやら様子がおかしくなると、夜中にバリバリと口にした、コンピューターの頭脳とガスレンジの火炎放射能力を身につけ、実質的なマシン人間作戦が前回と被ってしまう事故。
 「僕に近づくな。下等な人間に用は無い」
 ついでにちょっと、ちちんぷいぷいな事故。
 カクタスは街で花粉をばらまくと次々とマシン人間を産み出していき、裕司がカクタス1&2に襲われるとオーレンジャーが合流するのですが……何の前振りもなく、作戦からの必然性も描かれずに同型機であるカクタス-2が突然出てくる、驚きの雑さ。
 オーレンジャーを追い詰めていくカクタス兄弟だが、カクタス1号は、必殺のカクタスコンビネーションアタックに失敗した2号に鉄拳制裁を浴びせ、私の中のクランチュラさんが、
 「兄弟なら当然連携して、闇エナジーを集めて邪面獣を召喚してくれると思ったのにぃぃぃ!!」
 と絶叫しています。
 ところがその1号は、マシン少年の兄が身を挺して弟をかばう姿に困惑を見せると、慌てた皇帝陛下が月面基地へと強制回収。誉れ高きマシン獣に兄弟愛など不要! と言いながら、拘束した2号をこれ見よがしに突きつけ、生まれたての兄弟愛を利用して1号に人間社会の破壊を命じるバッカスフンド様の精神状態に既に不安な徴候が見え隠れしますが、そもそもなぜ兄弟機にしてしまったのか(笑)
 作戦に2体の同型マシンが必要、とかなら理由にはなったのですが……なんとなく同型機を送り込んだらバグが発生してしまったので急いで回収すると、そのバグを利用して破壊活動を命じるのは、狡猾というより支離滅裂(そもそもカクタス別に、バラノイアの作戦に反対したわけではないですし……)。
 再び地球へ降り立ったカクタス1号は、特殊能力そっちのけでオーレンジャーに挑むも追い詰められるが、洗脳の進んだマシン少年がカクタス1号をかばってオーレンジャーを攻撃し、拳銃と一体化した右腕で銃撃してくるのは、面白いビジュアル。
 少年を盾にされたオーレンジャーは劣勢となるが、そこに少年兄が登場すると、冷たくしたのは強くなってほしかったからだ、と再度の説得を試み、拳銃を突きつけられながらも弟に訴えかけ抱きしめる事で説得に成功。
 時と場合によっては、説得成功……? と思ったところで、どぅうん! と銃声が響いて兄が血の海に崩れ落ち、「すまんのう、アニキ。ワシは男を見せにゃあかんのじゃ」となるところででしたが、説得成功、して良かった!
 カクタス花粉の影響を脱したマシン少年が特殊能力の喪失と共に人の心を取り戻すと、吹き飛ばされ、地面に突き刺さっていた超力ライザーを目に留めた兄弟の心に、地球人類の闘争本能が炎を灯す。
 「戦おうぜ、隆。俺とおまえ、兄弟一緒に」
 えええ(笑)
 少年二人が剣を引き抜こうとしたところに、弟を探して別行動を取っていた裕司が現れると、「君たち2人の分まで、俺がやる」……などとは言わずに一緒に参加し、正気を取り戻したと思ったら別の狂気の淵が口を開けていました。
 「俺も仲間に入れてくれよ。俺も欲しかったぜ。君たちみたいな兄弟がな」
 それは、なんか、別の形の兄弟では。
 力を合わせてぐいっと剣を引き抜いた3人は、赤緑黄桃を追い詰めるバラカクタスに向けて、お月さんのかたきじゃぁぁぁぁぁぁと走り寄ると、ドスもとい超力ライザーをカクタス1号の土手っ腹に突き刺し、ここだけ異常に面白かったです(笑)
 オーレ! ポーズを準備動作として初の正面揃い踏みを決めたオーレンジャーは、弱ったカクタス1号を飛び道具の一斉射撃で瞬殺し、主題歌インストまで流しておきながら、名乗りから20秒で戦闘終了(笑)
 ビッグバンされなかったカクタス1号は瀕死の状態で月面基地へと戻るが、そこで目にしたのは、既に無残なスクラップとされた弟、カクタス2号。1号と同じバグを発生させる可能性を持った2号は既に処分した、と冷酷に告げた皇帝が、1号も木っ葉微塵に粉砕する一ひねり。
 「如何なる愛もいらぬ。機械の沈黙こそ我が理想。この次こそオーレンジャーに死を。そして大いなる沈黙が全世界を覆うのだ。どぅわははははは!」
 地球人類との接触により「心を持たない鋼のマシン」に生じた変化を粉砕するバッカスフンドの非道さを強調して、バラノイアとは如何なる存在かが示されるのですが、まだ番組立ち上がりの時期だけに、敵のコンセプトを重視して欲しかったのが正直。
 レッド無双だった第1話、中型マシン獣を5人揃って倒す第2話は変則的だったにしても、3-4話と無言を貫いていたマシン獣が、喋るようになるや否や(これが……愛?!)と甘酸っぱい胸のときめきを感じるのは対比を描くにしても飛躍しすぎで、タイミングが早すぎた感。
 そこに重きを置くなら置くで、「カクタス1号と2号の同時投入」「カクタス1号が兄弟の行為に目を留める」といった要点をもっと強調してほしかったのですが、随分さらっと流されて、物語の劇的な起伏に欠けていたのも残念でした(そこの演出次第では、もうちょっと感触が変わったかなと)。
 前作には参加していなかった井上敏樹がサブライター一番手として登板し、第5話でのサブライター投入は、過去5年では『ダイレンジャー』と並ぶ早さ(参考:『ファイブ』6~『ジェット』7~『ジュウレン』12~『カクレン』7~)となりましたが、いまいち作品コンセプトが明確にされないまま、幾らでもお茶を濁せる内容を出してきたような感じ。
 玩具の販売タイミングもあったのでしょうが、次回から巨大ロボ前後編となる事も合わせて妙に浮いたエピソードになってしまいました。
 ちなみに、井上敏樹は『高速戦隊ターボレンジャー』第19話「激突!魔兄弟」(監督:長石多可男)を書いており、サブタイトルの形式がだいたい一緒ですが、「兄弟愛」テーマ以外の中身は割と違う話でした(笑)

◆第6話「強敵 頭脳マシン」◆ (監督:小笠原猛 脚本:杉村升
 バラノイア帝国は、オーレンジャーが5台の新型メカを開発しているとの情報をキャッチしており、相変わらず、諜報部隊が有能(笑)
 だがその建造を進める工場の位置だけが特定できず、皇妃ヒステリアは、新型メカ開発を指揮している三浦に狙いを付け、地球へとバラブレインを送り込む。
 「どこに居る三浦……どこに居るんだ……我が念力よ……三浦へ届け!」
 大丈夫なの?!
 雷鳴轟く中、三浦の写真を睨みつけ一心に呪文を唱え続けるバラブレインの姿は完全に呪殺でしたが、新型メカ完成に向けたデスマーチ真っ最中で精神抵抗力の弱っていた三浦は、まんまと念力に引っかかると、亡き親友の娘・光子の幻覚を、基地内部で目撃。
 不安のあまり、三浦は光子の様子を確認しに小学校へと向かい、怪訝そうながらも護衛兼運転手役を務める隊長ーーー!!
 明らかに上司の私用に付き合わされているのですが、終始シリアスな隊長が周囲を警戒しているだけで格好良さが担保されるのが、今作の強みです(笑)
 娘を救う為、自ら崖に身を躍らせた旧友との壮絶な過去が語られ、三浦は以後、光子の後見人のような立場になっていたのであった……なんか、どこかの世界ではそんな感じから、親友の忘れ形見を隠密同心に育て上げていたような。
 完全に私用で遊びに寄った後楽園ゆうえんちがバラノイアの強襲を受け、今見ると隊長は、最初から吹き替え無しでかなり動ける人のようで、上段蹴りが大変格好良くあちゃぁ!!
 三浦のアクションには厳重な封印が施され、逃げた三浦と光子の前にバラブレインが現れると、光子の体に憑依し、塩沢兼人の声で喋る小学生女子が誕生。
 「おまえの大切な光子は、私のサイキックパワーで言いなりだ。ふふふふふふ……ははははははは」
 三浦を捕らえたバラブレインは、巨大マシン獣・バラセパレートを作り出して街を攻撃すると、光子を利用して三浦のトラウマを抉り、建造施設の場所を明かすよう執拗な精神攻撃を仕掛けるが、少々演出を凝りすぎた結果、却って三浦に腹を括られてしまう。
 超力砲が通用せずにサンダーウイングを撃墜された裕司と桃は基地に戻ると、完成間近の新型メカ2台を独断で発進させ、とにかく挿入歌『虹色クリスタルスカイ』が超格好いい。
 ライオンメカが砲台メカを引っ張る形で青と桃はセパレートに立ち向かい、残り3人が参謀長の捜索に向かう一方、光子ちゃんは吊られたり地面を転がったりの大活躍。
 果たしてオーレンジャーはこの危機をくぐり抜ける事が出来るのか、でつづく。
 概ねパイロット版でなんとなく巨大ロボが登場する80年代戦隊(精神的な意味で『ファイブマン』を含む)に対し、戦隊結成→巨大ロボ誕生、までを序盤のチームアップとして描く手法が持ち込まれたのは90年代戦隊の大きな変化の一つといえますが(この手法自体は、後にまた変化しますが)、
 『ジェットマン』 第1話:ジェットマシン登場 第5話:合体巨大戦闘機 第6話:合体ロボ
 『ジュウレンジャー』 第2話:守護獣ティラノザウルス登場 第6話:合体ロボ
 『ダイレンジャー』 第1-2話:気伝獣・龍星王(龍型/人型)登場 第6話:4体の気伝獣登場 第8話:合体ロボ
 『カクレンジャー』 第1話 真・無敵将軍先行登場 第2話:巨大獣将の術(赤) 第4話:合体ロボ
 過去4作がいずれも、合体パーツはパイロット版の内に出していたのに対して、合体パーツとなるマシン自体が第6話にして初お目見え、というのは今作の特徴。
 これは第1話でサンダーウイング×超力砲を強調した為であり、立ち上がりの戦闘機特撮も今作の特徴といえますが、その分、欠片も無かった巨大ロボ要素が急に出てくる形になってしまったのは、ちょっと残念。
 個人的に、サンダーウイング×超力砲そのものは好きなのですが、この構成ならば、もう少し巨大ロボ登場へ繋がる布石は散りばめておいてほしかったところで、今作はどうも約30年後の今見ると、80年代的な要素×90年代的な洗練、の掛け合わせの意図は見えるもあまり巧く行っていない、のが序盤では気になるところです。