東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
旧ダイアリー保管用→ 〔ものかきの倉庫〕
特撮作品の感想は、順次こちらにHTML形式でまとめています→ 〔特撮感想まとめ部屋〕 (※移転しました)
HP→〔ものかきの荒野〕   X/Twitter→〔X/Twitter/gms02〕

カブトゼクター 我とあり

仮面ライダーカブト』感想・第2話

(※サブタイトルは本編中に存在しない為、筆者が趣味で勝手につけています。あしからずご了承下さい)
◆02「目覚める紅」◆ (監督:石田秀範 脚本:米村正二
 「やるじゃないか加賀美」
 ……あ、勘違い、されてた(笑)
 「……おまえ加賀美じゃないな」
 あ、気付かれた(笑)
 銀色の戦士は粉塵に紛れて上手く逃走し、地面にぶっ倒れているところを発見される加賀美……基本的に前のめりな役立たずだったのですが、まるで強盗被害にあったような映像になり、減給一ヶ月程度で済むかもしれません。
 天道邸では何事も無かったかのような朝食の風景が描かれ、新聞に目を通して情報の隠蔽を確認した天道は、妹に対しては「兄ちゃん、デイトレーダーになってフォーブスの表紙を飾りたいんだ」と言って誤魔化し、常に100%超然としているわけでもない天道の愛嬌を、妹とのやり取りで確保しているのは、上手い配置。
 秘密組織であるところのZECTが、ライダーシステムを起動してしまった部外者への警戒を強める一方、前回ワームに追われていた自転車少女はスケッチブックに妖精の絵を描いており……
 「大丈夫、ボクが側に居る。ボクが側に」
 描かれた絵がいつの間にか少女のイメージ通りのものに変化しているのは、イメージシーンの間に別のページに変わったのか、実際に少女の描いた絵が動いたのか、全てはファンタジーなのか、現時点ではハッキリとしない見せ方。
 過去作で自転車×ヒロインというと『アギト』の真魚ちゃんを思い出すところですが、こちらも何やら、異能持ちの可能性は漂わせます。
 加賀美がスチャラカ後輩ムーヴを続けている頃、天道は自転車少女――ひよりが働くビストロを訪れると、ひより作のサバミソを絶賛し、サバミソじゃあ日本で二番目だ!(一番は、お婆ちゃん)
 天道の押しかけたビストロは加賀美のバイト先でもあり、どういうわけかZECTが天道を見つけ出すよりも先に、天道が加賀美の居場所を把握しているのですが、ハイパー天道センサーでもついているのでしょうか。
 天命を待ち望んでいたが、ZECTについては何も知らない天道が、加賀美から情報を得ようとするのは面白い関係性となり、ZECTの正義を訴える加賀美は「俺達の仲間になってくれ。頼む」と頭を下げられる男として、ようやくいいところを見せるが、天道の返答は、
 「……わかった。……ただし! 俺の下に付け」
 だった。
 「なにぃ?」
 そして、今日も加賀美の沸点は低かった。
 「当然だろ。一番強いのは俺だからな」
 天道は俺こそオンリーワンと人差し指を立て、ドンドン(以下検閲)。
 東京タワーが意味ありげに背景に挿入される中、ZECTの若頭・田所の部下――岬は本部から派遣されてきた正式なライダー資格者と合流しようとするが、既に物言わぬ骸と化した資格者を発見。加賀美は田所のカシラから連絡を受け……現在から見ると仕方ないのですが、渋谷壊滅というパラダイムシフトが明示され、第1話冒頭から未来的なガジェットが幾つか投入されていた中に(ZECT方面だけテクノロジーが進んでいるようですが)二つ折り携帯が出てくると、急に現実の過去に引き戻されて、なんともいえないおかしみがあります(笑)
 資格者に擬態したワームが天道を追い、それに気付いた加賀美は、本部から送られてきたライダーバイクで天道の元へと向かい、最初は、あれなんか急に、加賀美が天道を助ける気になった……?
 と首をひねっていたのですが、ちゃっかりベルトも奪って、改めて変身する気満々でした!
 そんな加賀美をカブト虫メカが先導していく構図は、神武天皇の東征における八咫烏(太陽の化身)の役割を思わせてモチーフの取り込みとして面白く、天道がワームを誘いこんだ東京タワーに辿り着いた加賀美の前には、複数のワーム幼虫が。
 地下では資格者ワームが蜘蛛ワームの本性を見せるが、天道は全く動じない。
 「おまえの考えている事はわかっている。この閉鎖空間なら俺は変身できない。だから、ここなら俺に勝てると踏んだ。……だが、おまえは俺の力を侮っている。俺が来いと思いさえすれば、奴は――来る」
 つまり……ダイターン・カムヒア!ですね!
 地上では加賀美が手を高々と振り上げ、変身チャレンジ。
 「今度こそ俺はライダーになってみせる。そして貴様らを倒してやる! さあ来い! カブトゼクター!!」
 スカッ
 カブト虫メカは加賀美に体当たりする勢いで地下へと突っ込んでいき、加賀美新、期待に応える空振りによる主人公への絶妙なアシストから、変身アイテム名の絶叫まで、大変いい仕事でした(合掌)。
 「――変身」
 地下では天命を受けし男・天道総司の手にカブトゼクターが収まり、その姿は再び銀色の戦士に。
 「なんでだ……なんで俺のところに来てくれないんだ?!」
 やりきった笑顔を浮かべて殉職の危機にあった加賀美は銀色のライダーに助けられ、手持ち武器がハンドアックスは珍しいような、意外とライダーは斧を使うような。
 幼虫ワームは圧倒するライダーだが、脱皮した二体の蜘蛛に挟まれるとクロックアップによる体当たりで吹き飛ばされ、すわ天道の危機、とワームに捨て身の体当たりをかける加賀美、若干以上に考え無しで組織の困ったさんではあるものの、たとえ反りが合わない相手でも躊躇せずに助けようとする姿勢で、好感度を確保。
 「自分を犠牲にしてでも誰かを助ける。……戦士には向かないタイプだな」
 ところがライダーの方は余裕綽々で立ち上がると、正確無比な銃撃で幼虫ワームを吹き飛ばしていき、加賀美の伝えたクロックアップに対抗する為のシステムについても、既に把握済み。
 「悪いがベルトとは長い付き合いでね。この姿で、どこまでやれるか試していたんだ」
 敢えて縛りプレイをしていた事を明かした銀色の戦士がカブトゼクターの角部分を動かすと、上半身を覆っていたアーマーがパージされ、キャストオフ。
 ワームが脱皮する怪物であるように、ライダーもまた脱皮と類似したシステムを備えている事で、“ヒーローと怪人の同根性”が取り込まれると、真紅のメタリックボディに一本角の成虫体が姿を現し……これがまあ、凄まじい格好良さ。
 前作『響鬼』も、“仮面ライダー”としては異色が過ぎたものの、デザインそのものは割と格好良かったのですが(メタリックな色彩は継承されているといえそうですし)、商業的に固く行きたい事情もあってか、ファイズギア系統のベルトに加えて、昆虫系の王様にして鉄板の人気モチーフであるカブト虫が採用されて、“スマートな格好良さ”を追及したような痺れるデザイン。
 個人的には、いっけん格好悪く見えるものが、物語や演出の力で“格好良く見える瞬間”が好きだったりはするのですが、ここまでストレートに格好いいと、もう、格好いい! しか言葉がありません(笑)
 パージされたアーマーが群がるワーム幼虫を撃破すると、ベルトのサイドをパンと叩く小気味良いアクションでクロックアップを発動したライダーは蜘蛛ワームと同じ時間の流れの中に入り込み、背景で宙を舞っていた加賀美が地面に落ちるまでの間に、蜘蛛ワーム一体を撃破。
 「あれは……カブト」
 すっかり名前公開係になっている加賀美が呟くと、真紅のマスクドライダー――カブトは逃げる最後の一体を追って盗んだバイクで走り出し、道路上での超高速バトルの中で巻き込まれた一般人をしっかりと助け、好き放題やっているだけの傲慢な自信家ではない事を手堅く描写。
 「ライダー――キック」
 エネルギーを溜め、不動の体勢から一回転してカウンター気味に叩き込むライダーキックがまた大変に格好良く、第1話のフィニッシュ同様、最低限の動きで最も効果的なダメージを与えているのが天道スタイルとでもいった具合で、歴代ライダーのアクションと差別化。
 ライダー回し蹴りは実に鮮烈なフィニッシュブローとなり、とにかく“格好いいは正義”を押し出しまくって完勝したカブトは、舞い上がる粉塵の中で天上天下オンリーワンのポーズを決めるのであった。
 「そうか……遂に、カブトが」
 ZECT上層部ではシルエットの偉い人(本田博太郎!)が思わせぶりな事を呟いて、つづく。
 ところどころ話の流れに強引さは見えますが、あくの強い美青年が、超絶格好いいヒーローに変身して、超絶格好良く怪人を倒す事を最重視した、肉汁したたる極厚サーロインビーフステーキみたいな作りの新ヒーロー登場編で、一種の開き直りも窺えるアクセルの踏み方。
 見方を変えれば、前作(特に前期)がリーチした層を前作後期以上に振り落とした部分はありそうですが、現在の視点から見ると良くも悪くもシリーズ一つの転機を感じる立ち上がりとなりました。
 次回――解説の加賀美さん@七光りは、一体どこまで説明できるのか。そして、失職を免れる事はできるのか。