東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
旧ダイアリー保管用→ 〔ものかきの倉庫〕
特撮作品の感想は、順次こちらにHTML形式でまとめています→ 〔特撮感想まとめ部屋〕 (※移転しました)
HP→〔ものかきの荒野〕   X/Twitter→〔X/Twitter/gms02〕

自分以外 誰の強さ信じられる?

仮面ライダーカブト』感想・第1話

(※サブタイトルは本編中に存在しない為、筆者が趣味で勝手につけています。あしからずご了承下さい)
◆01「天命の男」◆ (監督:石田秀範 脚本:米村正二

 「7年前の話――宇宙がちっぽけな落とし物をしたせいで、ボクは、ひとりぼっちになったの。……渋谷の街は、瓦礫の山になって、ボクの心にも、ちっぽけな穴が空いたんだ。でも、宇宙の落とし物は、それだけじゃなかったんだ――」

 本放送時は断片的に数話を見ただけで、物語の全体像は全く知らないのですが、OPイントロの、で! ででで! に合わせて、昆虫の羽のような模様に弾痕が刻まれる画で始まるスピード感と楽曲に合わせた映像は、改めて滅茶苦茶格好いい。
 物語は巨大隕石の落下により壊滅し、封鎖された渋谷の光景で始まり……ビルのガードマンが目にしたのは、自分と瓜二つの男が変貌した、緑色のグロテスクな怪物の姿。
 この怪物に対応する為に、アリっぽいマスクをかぶり、アームガンを装備した部隊(印象としては、『ファイズ』終盤に登場した、量産型ライダーズ)が出動し、しばらく、アリさん部隊vs謎の怪物の戦いが特殊部隊物のタッチで描かれる、シリーズとしては非常に珍しい切り口。
 雨あられと注がれる銃弾をものともしない怪物に加え、更なる個体も現れて部隊はのっけから壊滅の危機に陥ると、怪物の一匹が脱皮して蜘蛛モチーフめいた姿となり、どうやらこれまでの姿は幼虫というかサナギというかだった模様。
 この状況でもデータ収集の為に現場で撮影を続けている遅刻青年は、根性が座っているのか頭が悪いのか両方を兼ね備えているかのどれかだと思われますが、脱皮した怪物は超高速移動により隊員たち次々と薙ぎ払い、冒頭かなりの時間をかけた戦いは、特殊部隊の完敗で終結
 「ワームの消息、途絶えました。……負傷者6、死亡――21」
 隊員の一人がシビアな結果を告げ…………指揮官の男はどうして、最前線で戦っていた部下からの報告を、片手ポケットで背中向けながら聞いているの……?!
 一応、無言のまま川を見つめる姿は悲痛さの表現らしくはあるのですが、凄くダメな上官なのか、それとも、凄く命の安い世界なのか。
 先程まで怪物退治のSF特殊部隊物だったのに、急に東映ヤクザ時空に接近してきた事に困惑しつつ日が変わり、うなだれながらバイクを引きずっていた遅刻太郎はひったくりにナイフを向けられ……やはりヤクザ時空なのかもしれません。
 通りがかった作務衣に下駄履きの男が、振り回されるナイフを気に留めた様子もなく真っ直ぐに突き進んでくるトラブルこそあったものの、伊達にワームどもとの抗争を経験していない青年はひったくりを取り押さえ、
 「危ないだろ! なぜ逃げない!?」
 ……え、何故、完全に巻き込んだ形の通行人に向けて、君は急にキレているのか。
 「俺は誰からの指図も受けない」
 「なぁにぃ?」
 ……いやだから、君はどうしてそこでキレるの……。
 現場で犯人を確保しようとしていた警察官とかならわかりますが、そういうわけでも無さそうなので、あの上司にしてこの部下ありにしても、通りすがりの一般人が君の指示に従うべきという理屈がわからないよ……!
 まあ多分、多少は荒事慣れしている自信と、独自の使命感から、一般市民は守るべき対象にして守られるべきだと頭から決めてかかっているところがあるのに加えて、《平成ライダー》序盤にままある、〔キャラがまだ定まっていない×若い役者の演技も不安定〕による、情緒不安定気味のパターンでもありましょうか。
 「俺の通る道は俺が決める。そしてもう一つ。下手にかわせば、折角の豆腐が崩れる」
 ナイフの刃よりも、豆腐が崩れる方が一大事、と言わんばかりの作務衣男の態度に唖然とした遅刻太郎は、思わぬ身体能力を発揮したひったくりに隙を突かれて逃げられそうになるが、作務衣男がひったくりを鮮やかに沈黙させて財布も取り戻し、ますます唖然。
 「なんだ、おまえ……」
 「お婆ちゃんはこう言ってた……天の道を往き、総てを司る男」
 右手を掲げ、どこか陶然とした表情で天を見つめる作務衣の男が、振り向き様に真っ直ぐに指を向けて指し示したものは――太陽。
 「俺の名は――天道、総司」
 やたら壮大なBGMと共に、妙に芝居がかった調子で男は名乗り、素性を尋ねられる度にそれをやっているのか気にかかりますが、今見ると……結構、桃井タロウ(笑)
 まあ勿論、細かく比べれば色々と異なるとは思いますが、カテゴリとしては同じ箱というか、第一印象は、俺こそオンリーワン。
 なお、天道の登場前に、ひったくりが何もない地面で急に転ぶと、見えない何かに足を掴まれてもがいているような芝居が入るのですが、盗んだ財布を投げ捨てると怪現象はピタリと収まり、今回限りでは以後特に注目も言及もされる事はなく……遅刻太郎の財布に守護霊でもついているのかもしれません。
 大幅な体制変更を余儀なくされた『響鬼』直後の作品という事で企画段階から色々あったのかとは思われますが、マンガ的ともいえる濃いめの味付けで尖ったインパクトを与えて登場した主人公・天道総司は、森の隠れ家レストラン風味な自宅で妹の為に優雅に朝食を用意し、ご職業は、“天下御免高等遊民”であった。
 「いい加減、学校に行くなり、働くなりしたら?」
 「俺は準備に忙しいからな」
 「まったそれ? 大体なんの準備なの?」
 「俺にもよくわからない。だから、こうして待ってる。……でも、必ずその時が――来る」
 妹に対しては柔らかな笑顔を向ける天道は、妹の登校後は黙々とトレーニングに励み、ただ“待っている”だけではなく、その為の“準備をしている”男にしたのは、ヒーロー像の掴みとして良かったところ。
 一方、人間の姿を奪い、高速移動能力を持つ謎の怪物・ワームに対抗する組織――ZECTでは、対ワーム用の秘密兵器マスクドライダーシステムが完成し、何をもって「仮面ライダー」とするかについては、「開発者がそう言っているのでマスクドライダーです!」と理由付け。
 ところが、前線部隊に送られてきたシステムの要・ライダーベルトとそっくりのものを既に天道が所有しており、いったい如何なる由縁なのか、どうやらそれを“持っている”が故に、その時に向けて準備を重ねていたらしい天道は、バイクで自分ならぬ天命探し中、ZECTのベルトと自身のベルトの共鳴を確認。
 ZECTは擬態の現場を目撃してしまった少女を追うワームと交戦していたが、スパイダーワームに隊員が次々と千切り捨てられていき、若頭の承認を得た遅刻太郎こと加賀美が、ライダーベルトを身につけるとシステムを起動する。
 「俺は貴様らを許さない。貴様らワームは俺が全て倒す。倒してみせる!」
 加賀美が手を掲げると、空間に穴が開いて小型の真っ赤なカブト虫メカが飛んでくるが…………スカッた。
 OPクレジット時点でわかっていた事ではありましたが、酷すぎる仕打ちを受けた加賀美の手を擦り抜けたカブトメカを手にしたのは、太陽を背負って立つ、天の道を往き、総てを司る男――天道総司
 「選ばれし者は――俺だ」
 「おまえは……」
 「今、俺はこの手で未来を掴んだ。……俺はこの時を待っていた。いや、この一瞬の為に生きてきた」
 天道の言い回しからはどこか、古代中国における「天命思想」を感じるところで、元より物証(ベルト)は手元にあったようですが、そのベルトの構造が身につけた者を世界の中心に据えるファイズギアの系譜に戻っている事もあり、ここにおいて天道は、瑞獣の飛来により天帝より命を受け取り、有徳の者としての王者――すなわち“世界の中心に立つ者”――の資格を得た、とでもいった雰囲気。
 また、演出が強調するように「天道」とはお天道様すなわち太陽であり、つまるところ「世のため、人のため、メガノイドの野望を打ち砕く、ダイターン3! この日輪の輝きを恐れぬなら、かかってこい!」であるのでしょうが、少なくとも立ち上がりの天道には、宇宙一の勘違い男との紙一重性と同時に、殊更に天道を背負ってみせる事による、天命を受諾しようとする自身への自覚的装飾が感じられたので(例えばそこは、日輪そのものに近い桃井タロウと異なる部分)、その辺りを今後の物語の中でどう位置づけていくのかは、個人的に気になるポイントです。
 「――変身!」
 自前のベルトにカブトメカを取り付けた天道は、白銀の鎧を身につけた戦士へと変貌。正確無比な射撃でスパイダーワームを圧倒するも、高速移動――クロックアップによって反撃を受けるが……
 「やっぱりお婆ちゃんの言うとおりだ。俺が望みさえすれば、運命は絶えず、俺に味方する」
 地面に倒れながらも、その場にあったセメント袋や鏡を破壊し、周囲に粉塵や破片を撒き散らすと、レーザーサイトの赤外線を照射する事でワームの動きを捉え、カウンター気味にぐっさりドスをねじ込んで、逆転勝利。
 蜘蛛ワームは派手に吹き飛び、爆発に巻き込まれた加賀美は、本日二度目の吹っ飛びから壁に思い切り後頭部を打ち付けて気絶しており、ちょっと心配になります。
 デビュー戦を勝利で飾る銀色の戦士だが、アリさん部隊の銃口に囲まれ、「ワレ、どこの組のもんじゃあ」で、つづく。
 冒頭からおよ7分、世界観の背景説明と特殊部隊物テイストの戦闘にスポットが当たった結果、クライマックスバトルは実質変身したところで終了に近かったのは少々物足りない面がありましたが、特殊部隊物テイストの中に超絶的なヒーローが乱入してくるのが狙いかとは思うので、次回の暴れぶりに期待したいです。
 ……ところで、「数年前に大災害が起こった世界で、謎の怪物と秘密部隊が、薄暗い空気の中で暗闘している」基本設定には、どこか『ウルトラマンネクサス』(今作よりおよそ1年前の2004年10月スタート)を思わせるところがありますが、“9.11”後のヒーロー作品を改めて描こうとするといった、一つの時代性による重なりでありましょうか。
 そこに主人公のキャラクター性で、早々に崩しと外連味を加えてくるのは、如何にも《平成ライダー》作劇でありますが、ここからどう転がっていくのか、楽しみにしたいと思います。
 とりあえず、あの凄く格好いい赤いライダーの活躍を早く見せて! となる第1話でありました(笑)