『仮面ライダーガヴ』感想・第8話
◆第8話「デュアル チョコレイト」◆ (監督:杉原輝昭 脚本:香村純子)
ヴァレンvsグロッタの激突が開始される一方、ガヴはプレートを取り戻した芸術家の卵をフリーズドライから解放し、ショウマは、《人間の解放と同時にダッシュで物陰に飛び込んで変身を解除すると道でバッタリあれ~奇遇ですね!》を修得した!!
そして杉原監督は、眷属の昇天演出にこだわりを見せていた。
こちらも昇天3歩手前ぐらいが心配されるヴァレンはグロッタに銃撃を軽々とかわされ、前回ラストの武器ギミックの格好良さで個人的に株価急上昇のグロッタ姐さん、大鎌、というか、半分ほどはステゴロで、ずっと高笑いしながら鎌を振り、蹴りを入れ、殴りつけ、身体能力の圧倒的高さで蹂躙してくるタイプでした。
実写で大鎌振るうなら、確かに華麗な立ち回りよりも、暴力の権化めいた方が納得感は高く、戯れに得物を使ってくる吸血鬼、みたいな戦闘スタイルで怒濤のバーサーカーぶりを見せると、
鎌で打突してきた?! から、間髪入れずに顔面に右ストレートぉ!!
のコンビネーションが特に好きです(笑)
後、ヴァレンの蹴りを、蹴りで潰すところ(笑)
「人間にも抵抗する奴が居たとはねぇ」
そこからヘッドバッド二発を叩き込むと(掴んだヴァレンの耳がパキッと割れそうで不安……)、敢えてヴァレンの拳を顔面で受け止め、クロスレンジのアッパーカットで浮かせたところに大鎌の斬撃を放つ空中コンボそして追い打ちの17cmピンヒールで壁に縫い止め、完封勝利。
「勝てると思ってるなら甘過ぎね」
そのまま悠々と笑いながら去っていき、姐さんはストマック社のセクシー工場長どころか、ストマック会の狂犬でした……!!
ストマック兄妹は、だいたい初登場における印象から順当なキャラ付けをされてきましたが、考えてみればヤクザ組織にはゴリゴリの武闘派枠が必要であり、そこにグロッタ姐さんが入ってきたのは、予想外ながらも面白い(笑)
……今回、あまりにもここまでの満足度が高すぎて、OP以降全ておまけ、みたいになってしまったのが、問題といえば問題。
「……あいつ……この前倒したのと、全然、ちげぇ……」
傷だらけで地面に転がった絆斗は、酸賀の研究室に転がり込んで、グラニュートの変身能力について確認。
「恐らくなんだけど……俺達が服を着替えるみたいに、奴らはいろんな人間の姿になれる……思いのままだ」
歯形のメモリの中に人間の“外装データ”が入っているらしき事が挿入映像で示唆されると、「腹の口は隠せない」点について言及する酸賀、今回も“研究者”といってもあまりにも訳知りですが、すかさず絆斗が酸賀の服をまくってみせるのが実に隙がなく、酸賀の腹には口はついていなかったが……何やら、一般グラニュートの腹の口のある辺りに四角く筋が付いているような付いていないような……というのがまた、絶妙な見せ方。
「舌打ち?!」
濡れ衣にせよ、どんぴしゃりにせよ、まくられた後のリアクションも面白く、明らかに壊れた人物なのに、早くも愛嬌が付き始めていて困ります。
一方ストマック社では緊急重役会議が開かれて、「仕入れの邪魔をしている奴」が議題にあがり、慌てて赤ガヴについて弁明する双子は、盛大な自爆を遂げていた。
「赤ガヴだと……?」
「私が見たのは赤ガヴじゃないんだけど」
「「え? ……あ」」
のやり取りで余計な事を口にしたと気付くのは定番ながら面白く、丁度その場面で一緒に画面に入っているニエルブが双子に視線を向けているのも、上手い。
……後すごくどうでもいい余談ですが、この場面で下に流れるテロップタイム「TTFC 『仮面ライダーガヴ』を彩る女子キャストが集合!」のところに、グロッタ姐さんの名前もあって、ちょっとホッとしました(笑)
大事な報告を怠ったシータとジープは、組長の一声でさっくり解雇され、ストマック社に労働組合は存在しません。
「可哀想に。でも安心して。会社はクビでも、あんた達は可愛い妹と弟、だから」
お情けで馬小屋ぐらいには住まわせてあげるわ~なのかどうかはわかりませんが、双子が早くも無職宣告を受けていた一方、ショウマはどこか落ち込んだ様子の幸果を気に懸けており、色々と危なっかしいところはある中で、ショウマがちゃんと、近しい他人の変化に気がつける人物、として描かれているのは良いところ。
子供の頃から、明るい振る舞いと良かれと思っての気遣いが却って仇となり、他人の地雷を踏みがちだったらしい幸果は、ショウマと雅子に励まされ、前回、グロッタ姐さん(の大鎌)に興奮しすぎて触れるのを忘れていたのですが、早い内に、幸果も無敵のほだし系モンスターではないし、踏み込み方を間違えれば痛いしっぺ返しを受ける場合もある、としてきたのは堅実なキャラ描写。
そして今回むしろ、そういう経験を数多くしてきた人物として掘り下げられ、今作はやはり基本的に、“ではそこからどう立ち上がるのか?”を重視する作風に感じられます。
若い芸術家の失踪事件を追う絆斗は宝屋敷家に辿り着き、その宝屋敷家をまたも怪しすぎる画商が訪れ、ショウマ&幸果と接触した絆斗は、化け物を追っている事情を説明。
「化けもんの腹には、口があるって噂だけど……」
(ええ?! そんな事まで知られてるの?!)
水面下で、互いの“知っている範囲”についての無自覚な情報戦が繰り広げられる中、ショウマの紅茶ぶっかけ作戦が成功し、腹の口を曝したグラニュートは慌てて逃走。
うわー、ばけものだー。
「グラニュート退治、二匹目いくぜ!」
それを追った絆斗はヴァレンに変身し、少し遅れて追いついたショウマも変身し……今回は、ショウマ・絆斗・幸果の三人を一度、同じ場所に集めて怪物事件に同時に関わらせる狙いもあったのでしょうが、三人揃って情報共有の上に同じタイミングで行動すると、バレないこと及びバラさない為の話運びの不自然さがどうしても大きくなりそうで、今後の課題になりそうなポイント。
まあ今作のイベントペースだと、あまりややこしくならない内に正体バレが発生する可能性もありそうですが(とはいえ、酸賀とデンテの問題があるので、ある程度は時間かけそうと予想)、テンポを崩さず強引になりすぎずにショウマと絆斗の動きにちょっとしたズレを作る為の、事件への関わり方の違いを描くのは上手く工夫してほしい部分です。
個人的な好みとしては、前回-今回と用いられた紫バックの心情描写は、安易になりすぎるので多用はしてほしくない演出。
「ボコられんのはあんたの絵じゃない! あいつだよ!」
偽画商に騙されて舞い上がっていた事を知った絵描きは捨て鉢になって自分の絵を滅茶苦茶にしていくが、トラウマを乗り越えて一歩を踏み出した幸果は画家を止めて絵を守り、たとえこの先も傷つく事があったとしても、己の筋を通す事を選ぶ。
幸果の抱える弱さと、そこから再び歩き出す強さが描かれ、成り行き気味にガヴ&ヴァレンが共闘する場へと乗り込んだ幸果は、ピラニアグラニュートに投石ならぬ投ペンキ。
「人のこと喜ばせて騙しやがって! ふざけんじゃねぇ! 地獄へ堕ちろ!」
大変直球の啖呵が切られると、このペンキがきっかけで、ガヴは改造強化グラニュートの能力が、不死身の再生能力ではなく小型魚の集団による分身能力だと気付き、なんとなくピラニアと書いていましたが、イメージとしてはイワシでありましょうか(ピラニアも群れは作りますが)。
手品のタネがバレたグラニュートのイワシストリームに対して、ガヴはヴァレンに板チョコ銃をレンタルし、二人のガンマンがダブル二丁拳銃の趣向。
さあ、おまえが食べた闇菓子の数を数えろ!
と小魚を撃墜していくダブルガンマンですが、二人がかりで撃ちまくってもなお小魚の数が多すぎて、あまり弱らせているように見えなかったのは残念だったところ。
ただ今作、戦いの場の環境や状況設定、高低差などから生まれる動きに凝った戦闘シーンを作ろう、という意識は見えるので、当たり外れは出そうですが、方向性には期待したいです。
小魚グラニュートは弾丸の海に沈んで弾け飛び、喝采をあげる幸果のテンションに乗せられて一緒に記念撮影をしてしまったガヴとヴァレンは、慌てて逃走。
反省した絵描きは幸果に絵を贈り、今作初、3人で夕暮れの土手を歩く帰還シーンでオチとなり、当然OP映像を意識したのでしょうが、果たしてこれがセオリーになる日は来るのか、それとも束の間の美しい思い出に終わるのか……幸果もまた怪物の目撃者となるが、ショウマと絆斗が二人揃って仮面ライダーに深入りしないように薦めて、つづく。
幸果社長の掘り下げ回としては悪くなく、ペンキ事件のトラウマから一歩踏み出す場面などは見応えがありましたが、開始2分間のバトルのあまりの満足度の高さに、エピソードのピークはアバンタイトル、になってしまいました(笑)
つまるところ今回に関しては、グロッタ姐さんの前に幸果が敗北を喫した形になり、いずれ雪辱戦を期待したいです。
次回――お菓子をくれなきゃグー○ルマップに悪口書くぞ。