東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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狼、吼える

牙狼<GARO> -魔戒ノ花-』感想・第21話

◆第21話「残像」◆ (監督:大橋明 脚本:梅田寿美子)
 「これは勝手な考えですが……私は、クロウ様も、家族と思っておりますよ」
 「……ありがとう、ゴンザさん」
 注目は、さっくりとクロウを攻略するゴンザ。
 ……まあ、雷牙不在の冴島邸を訪れたクロウが、おもむろに自分は両親を知らないと語り出すのはどうにも無理がありましたが、最終章へ入る前の必要なピースとして、強引に入れざるを得なかったような雰囲気。
 「た、助けてくれ!」
 「御免ねぇ……そういうわけにはいかないんだよ」
 チンピラを魔戒騎士の武器めいた剣で真っ向両断した謎の男が、白い服の少女と笑顔をかわして手を取り合う謎めいた導入から、夜の街でホラーと死闘を繰り広げる雷牙へとカメラは移り、第18話「紅蓮」に続いての大橋監督(アクション監督兼任)の登場で、今回も冒頭からワイヤーアクションが駆使され、飛んで回って大暴れ。
 「おーい……手伝おっかー?」
 「フ。どこの誰だか知らないけど、必要ないね」
 陽気に手を振ってくる謎の男の前で、雷牙はガロ召喚するが、直後、飛び上がったホラーを、宙より舞い降りた漆黒の鎧の騎士が切り裂くと、如何にも邪悪な面相に禍々しい装甲を纏った漆黒の騎士はガロへと刃を向ける。
 数合打ち合い、鎧を解除すると顔を見せたのは、チンピラを両断し、雷牙に陽気に話しかけてきた、謎の男。
 「魔戒騎士か」
 「違う。こいつもホラーだ」
 警戒を強める雷牙の前で男はホラーを剣で貫くとその闇を食らい、続けて雷牙と激突。
 「いいねぇ……ね、僕と手を組まない?」
 「なに?」
 「僕は君のホラー狩りを手伝う。君は僕が人を喰うのを見逃す。どう?」
 「面白くない冗談だな」
 飄々とした言行ながらも雷牙と真っ向から斬り結んで劣るところのない達人ぶりを見せるホラーだが、不意に現れた白い服の少女を抱き上げると、思わず動きの止まった雷牙の腹に蹴りを入れて撤収。
 「紹介するよ。アイっていうんだ。可愛いだろ?」
 果たして男の、そして少女の正体は何者なのか――エイリスを封じていた石板のホラーも残り2体となり、マユリの行く末を案じる雷牙が、恐らく元々は魔戒騎士であろう強敵ホラーに翻弄され、話の筋を考えると謎の少女アイが純白の服装なのは漆黒のマユリとの対比かと思われるのですが、冴島の男の根源的弱点(白ワンピース概念)にクリティカルヒットしているようにも見えて困ります。
 「やあ。また遊んでくれるか?」
 「悪いが、おまえと遊んでいる暇はないんだ」
 「貴様を倒し、エイリスを封印する!」
 「悲しいねぇ。僕は眼中に無しか」
 クロウと合流した雷牙は達人ホラーを追い、飄々と立ち回る、ちょっとくたびれた気配を出す優男の感じ悪さが、バトルそしてバトルの展開に緩急と緊張感を与えているのですが、演じた渡辺大さんを知らず、ちょっと調べてみたところ、父は渡辺謙! 妹は杏! という凄い家族構成でした。
 今回はこの渡辺大さんの好演あって成立したといってもいいぐらいのエピソード。
 「僕を倒したらあの娘の中にエイリスを入れるんだろ? あの器にエイリスは大きすぎる」
 「どういう意味だ!」
 「壊れないといいけどねぇ」
 マユリに危機が迫ると、白ワンピース概念を乗り越えた雷牙は幻の少女を切り裂き、素体の想いの残滓があったのか、消失した少女への執着を見せたホラーは絶叫……と思わせて、けろっと表情を変える。
 「……あーあ、けっこう気に入ってたのになぁ~」
 「なに?」
 「本当に僕の子だと思った? ……娘なんて嘘だよ。あれはね、僕がホラーになって最初に食べた人間だ。本当の父親の目の前で、喰ってやったんだぁぁあっはっはっは……!!」
 哄笑と共にホラーは禍々しき漆黒の鎧の魔獣となり、もともと魔戒騎士のデザインには、聖と魔の中間(境界)的ニュアンスは感じますが、歪んだ刃も象徴的に、そこから思い切り邪悪に振った姿がシンプルな格好良さ。
 「……貴様だけは……貴様だけは絶対に許さん」
 怒りの雷牙は気迫の猛攻から空中ダッシュ鎧召喚で黄金騎士となり、マユリとクロウが棒立ちで見つめるしか出来ない暴威でホラーをねじ伏せていき、恐らく今回、「クロウの過去に触れる」「マユリの先行きに触れる」そして「雷牙が激怒する」の3点が必須要素だったのでしょうが……確かに鬼畜外道とはいえ、「……貴様だけは……貴様だけは絶対に許さん」は、既にホラー100体狩りを成し遂げ、数多の闇と対峙してきた歴戦の魔戒騎士としてはあまりに月並みな怒りの表明となってしまい、クロウ同様に、必須要素を果たす為の強引な話運びが気になってノりにくいクライマックスバトルでありました。
 ヒーローアクションとして「怒り」の要素はあって嬉しいのですが、“雷牙の「怒り」”を劇的に見せるには、もう一段二段の組み立てが必要であったように思います。
 荒ぶる鬼神と化したガロは、怒りのままにいつもより多く回ると達人ホラーを蹂躙しながら撃滅し、虚空に浮かび上がるエイリスの種……開きかけのつぼみの如きそれを封印しようとするマユリだが、黒ずくめの魔戒法師の邪魔が入り……その正体は?! で、つづく。