東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
旧ダイアリー保管用→ 〔ものかきの倉庫〕
特撮作品の感想は、順次こちらにHTML形式でまとめています→ 〔特撮感想まとめ部屋〕 (※移転しました)
HP→〔ものかきの荒野〕   X/Twitter→〔X/Twitter/gms02〕

ザンキ――ゼロ

仮面ライダー響鬼』感想・第45話

◆四十五之巻「散華する斬鬼」◆ (監督:鈴村展弘 脚本:井上敏樹
 果たして、ザンキの身には何が起こっているのか……?!
 イブキはザンキの背中を見つめ、明日夢は陰陽管を盗んだのではないかと京介の様子を窺い、その京介はかつての同級生の後をつけ回し、前回の「京介は明日夢くんを見ていた」に続き、今、『響鬼』世界のトレンドは、人生相談からスニーキングへ!
 元同級生の背後を歩いている京介の手首に陰陽管を見つけた明日夢は思わず掴みかかり、「返せよ!」「邪魔すんな!」と取っ組み合いに突入。
 そのまま両者もつれ合って土手を転げ落ち……二人とも体力はさして無いし喧嘩慣れもしていないので、何かそれだけで、力尽きるまで拳で語り合ったような空気を醸し出しながら大の字に転がっていた。
 「……なあ、一つ聞いてもいいか? ……なんでおまえ鬼になりたいんだ? 絶対に向いてないぞ」
 京介が向いているのかはともかく、明日夢に関しては強く同意(笑)
 明日夢くん、志とか覚悟が云々ではなしに、人外の怪物相手とはいえ、暴力を日常業務に出来そうにはとても見えないわけですが、今回の衝動的な体当たりは、その辺りも意識した上での描写なのかどうなのか。
 「……俺は人の為になにかしたいんだよ」
 「随分漠然としてるんだな」
 「じゃあ桐矢くんはなんで」
 京介は改めて、消防士だった亡き父について触れ、現実では二度と見る事のかなわないその背を、越えていく為には「鬼」になるしかないと考えている事を明かす。
 「父さんはずっと俺にとっての英雄なんだ。……だからこそ父さんを乗り越えたい。父さんを乗り越える力が欲しい」
 だからって式神で人をバーベキューするのいけない、とする明日夢の疑念を鼻で笑うと京介は立ち去り……結局、陰陽管をそのまま持ち逃げした(笑)
 この後、京介の元同級生は火車に襲われていた事が明らかとなり、残った一人に張り付く事で、魔化魍を陰陽管で倒そうとしていた京介だが、結局その力を使う事の無いまま、真実を知った明日夢と共に逃走。
 複数の魔化魍に囲まれたところに響鬼威吹鬼が現れて魔化魍を蹴散らし、ヒビキは、京介が“与えられた力”を闇雲に振り回さなかった事を評価。
 「陰陽管の力をどう使うか……それも修行の一つだ。自分の力を信じて戦う事。大切な事を知ったな、京介」
 敢えて過剰な力を与えてそれをどうするか見てましたーな陰陽管の扱いは案の定でしたが、ヒビキからの賛辞に京介は笑顔を浮かべ、
 「そう。強い奴は笑顔になれるぞ」
 「はい!」
 山川啓介イズムの力によりわだかまりは解消したみたいな事にされ、なんなら、己の傲慢さを悔い改めて京介は一皮剥けました、みたいな空気を出されるのですが……
 ・“力”の対処に悩んだ末に雑に服の間に陰陽管を隠す明日夢
 ・その陰陽管を当初は私欲の為に盗み出した京介
 ・別に二人とも自分の力を信じて戦っていない(人一人助けた後、身の程をわきまえて逃げに徹したのは評価ポイントとはいえますが……)
 と、複数の問題を完全にスルーしており、「明日夢と京介の関係」や京介自身の「変化と前進」に大きく関わる転換点の扱いとしては、あまりに雑。
 前回時点で危惧はしていましたが、ものの見事に、トドロキ師弟との同時進行が詰め切れずに、インスタントに済まされる形となってしまいました。
 一方ザンキは、己の自我がやがて闇に飲み込まれるのを代償として、死した肉体に魂を縫い止め続ける禁断の術を用いていた事が判明。
 師匠の壮絶な想いを知ったトドロキは、ザンキの魂を救う為に昭和ヒーロー体質に覚醒すると復活を遂げ、師弟は最後の共演。
 ファイヤー蜘蛛(再利用魔化魍としては、このアイデアは良かった)をダブル音撃で打ち砕くと、二人は束の間、ギターの音を重ねる……。
 「……よくやったトドロキ。ありがとう」
 「ザンキさん……もう、大丈夫スから。ありがとうございました!」
 無言でトドロキの肩に手を置いたザンキの姿が、トドロキが頭を上げると塵一つ残さず消滅しているのは、禁忌の術の代償として寂寥感と師匠の想いに溢れ、残されたギターと変身アイテムを抱え、涙をこらえて絶叫するトドロキは、再び深々と頭を下げる……。
 そして、去っていった戦友の気配を感じたのか、何かを飲み込むような表情で顔を上げたヒビキが、空に向けて惜別の挨拶を贈って、幕。
 職場の雰囲気は明るいが、戦いは結構シビアな今作、とうとう猛士サイドから殉職者が出ましたが、自身の復讐の為に弟子さえ切り捨てようとしたシュキと、弟子の為に自らの命を使い尽くしたザンキ、の対比も鮮やかに決まって、とにかくザンキさん格好いいが最後まで貫かれたラストステージでした。
 当初はトドロキ編のゲストぐらいの印象だったザンキさんですが、あれよあれよという間にセミレギュラーとなると、メインキャラの一角として活躍するに至り、渋い大人の“色気”が存在感を発揮した、好キャラ・好キャストでありました。
 ヒビキさんが、対少年・対後輩、以外の関係性で対等な会話をできる相手としても、貴重な存在であったなと。
 次回――最終決戦を前にイブキさんにもスポットが当たってくれるようで良かった。

 本日のもっちー
 それなりにお洒落をして、明日夢(&あきら)をパネルシアターの集いに招くが、陰陽管の問題でそれどころではないぼんくら少年は心ここにあらずにより、ファーストゴロで凡退。
 おいおい、こういうぼんくら野郎にはもっとグイグイ攻めないとダメなんだぜ、と主催の娘さんが強引に明日夢と指切りに持ち込んでボランティアグループへの協力を約束させ、小学生女子に、女力の差を見せつけられて完敗を喫する。
 ……真面目な話としては今作ここまで、ドラム問題とは別に、序盤からほのめかしはありながらも、明日夢くんの“人の為になにかしたい”に対して、「具体例を提示する」事もなければ「具体例を模索する」事もないまま進んできていたので、遅まきながらひとみの役どころとして良い部分を突いてきたな、と。
 勿論、“気持ち先行で漠然としたもやもや”である事にリアルな部分はあるのですが、そのリアルにこだわってドラマが生じないのが前期『響鬼』の悪癖だったわけで、もう少しそこでOPの自己申告だけではない“明日夢くんが何かやろうとしている”感を積み重ねてきてほしかったなと改めて(その有る無しで、「弟子入り志願」に至る説得力も変わったわけで)。