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狼と麦わら帽子

牙狼<GARO> -魔戒ノ花-』感想・第12話

◆第12話「言霊」◆ (監督:雨宮慶太 脚本:雨宮慶太
 夏のある日、麦わら帽子の少女が大樹の根元で拾ったのは、ふわふわと宙に浮かんでいた光る白い毛玉(……ケサランパサラン?)。
 その夜、家に持ち帰った毛玉が明滅すると、少女の記憶は過去に遡り――目が覚めると、何故か二回りほど大きくなっている、毛玉。
 かくして、不思議な毛玉と、やたらグラビア風ポーズと衣装替えの多い少女の日々がのんびりと描かれ、なにぶん《牙狼》なので、少女の記憶を吸い取りながら巨大化していくホラーなのでは?! とドキドキしますが、とりあえず、成長は止まりました(笑)
 ゲスト重視傾向の今作にしても、マユリ(冒頭にちらっと登場)そっちのけでゲストヒロインがやたらめったら熱意をもって撮られる――マユリ役オーディションで最終選考に残っていた、と言われたら信じるぐらいの扱い――のでちょっと確認してみたところ、何かシリーズと特別な縁があるのかはわかりませんでしたが、十代半ばぐらいにも見える演者の我妻三輪子さんが、当時23歳でちょっと驚き。
 劇中想定はわからず(洋書を読みふけっているので大学生ぐらい?)、実年齢を考慮すると「少女」と呼ぶのは語弊があるかもですが、メイクや衣装も含めた劇中の見せ方は中間的ながらだいぶ「少女」寄りであり、そこに意図を見るならば、今回ラストで「少女」時代を終えて羽化する物語構造を狙っていたのかもしれません。
 かつて、祖父と共に“不思議なもの”を垣間見た日の夢、祖父の形見の変な像、そしていきなり――後ろに立つ女。
 突然のホラー展開により、激しい光の乱舞する自宅から少女が逃げ出すと、そこに降り立つ白と黒。照明を利用した舞台風味の演出で、二人の魔戒騎士が剣を一閃すると屋敷は静まりかえり、少女の拾った毛玉は霊獣の雛だと明らかに。
 雷牙とクロウはその回収の為に少女の元を訪れており、怪現象については特に説明されないのですが、雛の宿す霊力によって怪異が呼び込まれてしまった、といったところでしょうか。
 現世に迷い込んだ雛を親元へ帰しに行く予定の雷牙は、少女・カリナの頼みを聞き入れ、最終的に記憶を消す事を条件にミッションへの同行を許し、注目は、好んで厄介事を背負い込むが、能力の高さで何とかするタイプのお節介&お人好し面倒くさいな……! という表情になるクロウ(笑)
 今回はフォーカスされるのかと思ったらクロウの出番はここで終了となり、霊薬を口にした雷牙と少女は幽冥の狭間へと入り込み、雨宮監督らしい異郷幻想譚。
 「あの女はなんで一緒に行くんだ?」
 「さあ? 霊獣の雛を返すのを見届けたいんじゃないですか。…………雷牙さんは優しいですね」
 大変つまらなさそうなクロウ……もしかすると余計なお荷物が同行を申し出なければ、憧れの雷牙さんと異界ピクニックだひゃっほーーーい! と内心密かにテンションが上がっていたりしたのでしょうか(後輩の雷牙愛の有無は、未だよくわからず)。
 「優しすぎる」
 マユリはマユリで「私にはどうでもいい」と切って捨てず、また“雷牙の優しさ”を判断できる程度の情緒と人間的繋がりが生まれている事が描かれつつ、多分仲は良くないのですが、今回は(おのれ雨宮……!)と舞台の隅で袖を噛む同じ立場、と二人一緒に退場していくのがちょっと面白い(笑)
 「まるで、別の世界みたい……」
 見えないものを見えるようにする薬により現れる、顕界(うつしよ)と幽冥界(かくりよ)の狭間はまた、見る者によって別のものが見える世界でもあり、照明と不自然なオブジェクトで主に表現される幻想の道すがら、カリナは祖父との思い出を語り、怪しげな木彫りの像は祖父の手製でした。
 「違う……羽が無い」
 「羽か……おじいちゃんには羽は見えなかったなぁ」
 見えたものの違いが引き起こした幼年期の仲違いにより、少女と祖父が目にしたのは幽冥の幻影と示唆されると、やがて川の上流へと辿り着いた雷牙とカリナの前に姿を示す目的の霊獣。
 巨大な霊獣は、偉容を見上げる二人、空を飛ぶ霊獣の視点、羽ばたきの音だけで表現され、CGの節約もありそうですが(逆に、使わなくても描けるからこそのアイデアかもですが)、見る者によって見えるものが違う設定を汲みつつ、古来“聖なるもの”とは見えないものであるので、姿形を描かない事によって逆に、魔戒騎士がお使いに派遣される別格の神聖さを表現する事にもなったのは巧い手法でした。
 雛が霊獣の元へと返されると、雷牙の脳裏には両親との記憶がよぎり、カリナは、かつて見たものは祖父と自分のどちらにとっても正しかった事を知り、そこで嘘をつかなかったからこそ、木彫りの像は祖父から孫娘へ、心からの幸せを祈る贈り物となった事が明らかになって――自宅で目を覚ます。
 果たしてそれは、夏の日の陽炎か、はたまた月光の見せた夢か幻か、涙をこぼしながら目を覚ましたカリナは、祖父の彫刻の背に光る羽を目にし、雷牙はマユリの元へと帰還。
 「……待っててくれたの?」
 あ、ちゃんと気付いた(笑)
 「………………帰ろう」
 雷牙とマユリは帰路につき、雨宮監督の“好き”が詰まった感のある一編でした。
 実質アクションシーン無しに等しく、ゴンザ料理回に続いて異色のアプローチとなりましたが(今作、良くも悪くも変化球が多めですが)、《牙狼》世界における、ホラー以外の神霊と魔戒騎士の関係、のようなものが見えるのが面白く、個人的には結構楽しめました。
 最後の最後、このままゲストヒロインが全て持っていくのかと思ったゴール寸前に、マユリが1クール分チャージしたヒロイン力をぶつけにきたのも目配りがあって良かったです(笑)
 雷牙に、通じて、良かった…………!!
 後は第1話冒頭に見せた白ワンピース概念を顎に叩き込めば、冴島の男の精神にクリティカルヒットする筈。
 今回のED映像は金魚鉢の向こうのマユリ、とどこか不安定さを示しつつ前回の不穏さは継続され、そろそろ折り返しの一山となりそうな次回――器の心を誰が知るのか。