『バトルフィーバーJ』感想・第44話
◆第44話「地獄谷の月影一族」◆ (監督:竹本弘一 脚本:江連卓)
「ジャパン、様々なデータが、エゴスが新怪人を製造している事を示してるぞ」
「またか」
「その名は、幻想怪人」
如何にも何か機械を操作してデータを分析していたような雰囲気を出す誠ですが、それはもう単なるスパイからの報告なのでは!
エゴスでは、地獄谷の隠れ人・月影一族の出である女怪盗、モンシロお蝶を素体として、蝶をモチーフとした幻想怪人が生み出されており、頭部が派手な色彩の巨大な蝶そのままなのは、かなりインパクトの強いデザイン。
サロメと幻想怪人は、戦力拡充の為に月影一族を傘下に加えようと地獄谷へと向かい、映像がいきなり時代劇。
揃って人相は物凄く悪いが「望みは平和な生活だけ」「邪悪なものには与しない」と、先祖代々伝わる幻術を封印して生きる月影一族から入団拒否を受けた幻想怪人とサロメは、ならばとプランBを発動。
都会で音楽学校に通う月影頭領の娘を闇討ちすると、「バトルフィーバー」を名乗る覆面タイツ軍団が非情にも娘を抹殺し、短パン網タイツだけど声が男なので、とっても困惑しますが、こんな国防組織に税金を投入するのは絶対に嫌だ。
瀕死の娘が末期に打ち上げたダイイング狼煙が夜空にJの文字を輝かせると、市井に紛れる月影一族の者たちがそれに気付く中、パトロール中だった伝らもそれを目撃。
「俺たちのシンボルマークのJじゃないか」
え、J、そういう扱いだったの?!
なんのために付けられているのか謎だったJの秘密が明らかになると、伝らは惨殺された娘の死体を発見。どういうわけか伝が狼煙の上げ方に見覚えがあった事から、娘の身元の確認が急いで行われるが、エゴスの思惑通り、まんまとバトルフィーバーを仇と誤解した月影一族が山を下り、多彩な幻術の使い手がBFメンバーを襲う、直球の山風《忍法帖》展開。
敵の幻術を打ち破る京介や、支援射撃に駆けつける誠と較べると、見事に目つぶしをうけるマリアが今回もやられ役でちょっと可哀想な扱いになる中、殺された娘の身元が、月影頭領の娘とBF隊も確認。
実は10年前、山で修行中に崖を滑落、その際に月影一族に助けられて親身な看病を受けた経験を持つ伝は、これは何者かの陰謀に違いないと単身で頭領の説得に向かい………………10年前の伝、たぶん高校球児だったと思われるのですが、アストロ戦士に憧れを抱き、相手チームをスクラップに変える殺人魔球でも修得しようとしていたのでしょうか。
江連脚本は基本的に、(この時代にしても)全体の整合性よりも、その回その回の視聴者へ向けた“楽しさ”を優先している感じではありますが、後のシリーズにも見えるバラエティ性といえばバラエティ性。
「俺を信じてくれ!」
濡れ衣を訴えるも冷たい反応を受ける伝、“国防の為の剣”として、命令一つで月影一族の殲滅ぐらいは実行しそうな負の信頼感は固いBF隊ですが、最終的には頭領と剣を打ち合わせると、伝の剣には曇りが無い、と認められ、真犯人を必ず見つけ出すと約束。
この成り行きに慌てた幻想怪人は、監視役の男を殺害して事態に介入……しようとしたところに誠と曙が駆けつけ、かえって馬脚を現してしまう。
「貴様たちだな! 俺たちの偽物は!」
短パン網タイツでストッキングみたいな覆面を被り、胸に「J」と張り付けている連中に偽物を名乗られるのも、だいぶショック(笑)
運動能力は優れたJタイツ軍団としばらく生身バトルの後、駆けつけた月影一族が偽BFを次々と倒して復讐を果たすと、戦闘員を引き連れて幻想怪人が出現。
以前の戦闘シーンそのままの流用映像でBFが戦闘員を蹴散らしていくと幻想ロボットが登場し、インパクトのある頭部の造形はよく出来ていますし、派手に花びらをまきちらす演出も映えて、印象的な怪人となりました。
BFロボには日米が乗り込み、痺れ花びら攻撃をかわした地上メンバーは、樹上からペンタフォース!
幻想ロボの杖をはたきおとしたBFロボは、シールドで花吹雪を防ぐと、電光剣・唐竹割りを炸裂させ、月影一族を利用しようとしたエゴスの目論見は失敗。いつか再会を約して月影一族は谷に戻っていくのであった……。
江連さんといえば、同時期の『ウルトラマン80』(水沢又三郎名義)において、山から怪異がやってくるエピソードを2本書いているのですが、それまでの作品世界はひとまず措いておいて、山から来た異形異相の存在が一騒動を起こして帰っていくという点では、広い意味で同系統のエピソードでありましょうか(笑)
月影娘が若くして惨殺されたのはあまりにも悲劇的でしたし、明らかにスカウトを断った事に対するエゴスの意趣返しなので、実行犯を始末しただけで精算終了した感じで帰っていいのか感は出ましたが。