東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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サバンナにもほえろ

『バトルフィーバーJ』感想・第43話

◆第43話「暗殺者ジャッカル」◆ (監督:竹本弘一 脚本:高久進
 カプセルから転がり出るような難産で生まれたのは、全身トゲだらけで何故か頭に小さなパラボラアンテナのついた、新たな御子。
 「お前の誕生が遅れた為、暗殺者を雇った」
 だが、サタンエゴス様は御子の誕生を待っていられずに外部のヒットマンを雇っており、来日する暗号名:ジャッカル。FBIルートからこの情報を伝えられたBF隊は、やられる前にやれとばかりにジャッカルの捜索に向かい、ジャッカル対策も兼ねて苦手な射撃の訓練に励む曙の前に現れた、どこか飄々として斜に構えたスーツの男は、かつて曙と野生動物の保護に従事していた経験のある旧友・竹内。
 「四郎……また会おう。急ぎの仕事がある」
 だが竹内は、久々に再会した曙と旧交を温める事もなく、ライフル銃を肩にかついで足早に去って行き……仕事の前に、逮捕されるのでは。
 …………まあ、そこに居るのが曙と気付く前から、
 「すまんすまん、射撃の練習に来たもんだから、標的を見た途端、つい撃ってしまった」
 でいきなり銃をぶっ放していたので、ここは銃規制の全くされなかった日本です。
 その竹内こそ勿論ジャッカルで、来日直後の行動が既に迂闊すぎて目眩がしてきますが、腕試しをしてやると標的の空き缶(序盤の立て看板と較べると、だいぶ予算節約)を用意したエゴスの皆さんが、吊り橋を人力で揺らすのがとても楽しそうでほっこり(笑)
 姑息な嫌がらせに対し、不安定な足場を自ら捨てて空中5弾撃ちを披露したジャッカルは前金を手に仕事へと向かい、エゴスが爆弾を仕掛けたと偽情報を流すと、おびき寄せたBF隊を狙撃。しかし、ケニアを狙った弾丸は強化服に弾かれて背後で絵を描いていた少女をかすめ……いきなり駄目すぎるぞジャッカル。
 ならばと、少女の見舞いに来たところを狙うジャッカルは、スコープの中でバトルケニア=曙四郎と知り、いやその情報、教えられてないの?!
 狙撃による暗殺を目論むならどう考えても、変身後の姿より変身前の正体を教えておくべきだと思うのですがサタンエゴス様……!
 標的の正体が旧友と知り、必殺のチャンスに迷ったジャッカルは、曙を囮に使った伝らに逆に取り囲まれ……あまりにも駄目すぎるぞジャッカル。
 包囲組の京介から通信を受けた曙は、サバンナで鍛えた視力により、ジャッカル=竹内と認識するが、エゴス戦闘員の邪魔が入って、竹内は逃走。だがジャッカルは標的のBF一同にばっちり顔を見られてしまい……致命的に駄目すぎるぞジャッカル。
 そろそろ、暗殺者を雇う費用をケチって、正規エージェントを通さずにネットの広告経由で済ませた事を白状して下さいサタンエゴス様!
 「開いた口が塞がらないとはまさにこの事だよジャッカル。バトルフィーバーの狙撃には失敗し、その上、正体まで見破られた奴に用は無い!」
 御子史上最大の正論が叩きつけられ、吊り橋を揺らされて普通に慌て始めた時点で悪い予感はしていたのですが、プロフィール欄に書かれていた売り文句と全然違う!
 ふ、普段はヘッダーが、そういう手続きはやってくれていたから!(今回はお休み)
 「俺も、ジャッカルと言われた男……今度こそ……今度こそ、必ず、殺す」
 雪辱を誓って前金を取り戻したジャッカルは、病院の少女をさらって人質に取ると曙を呼び出し、互いに銃を手に、埋め立て地で対峙する2人の男。
 「金だ! この世は金が全てだ。アフリカでの奉仕活動なんて、馬鹿馬鹿しくなったのさ」
 「俺は……おまえがライオンの子を抱いていた、あの時の肌のぬくもりを信じている」
 シニカルな笑みを浮かべ、金こそ全てだとうそぶく竹内(曙と離れた後、何かあったのだろうなとは思わせる見せ方)に対し、一度は銃を構えた曙だが、それを放り捨てると人質に向けて真っ直ぐに歩いていき、〔説得する刑事-旧知の立てこもり犯-人質〕な、刑事ドラマの文脈強めな構図。
 今回の曙がまた、刑事ドラマに居てもおかしくなさそうなファッションなのも、その印象を強め……あ、撃たれた。
 そこへ残りのBFメンバーが駆けつけると、高所を取った誠が容赦ない狙撃を浴びせて曙と人質の救出に成功。またもジャッカルが無様な失敗を見せると、崖の上にエゴスが姿を現して手榴弾を投擲し……あ、ジャッカル死んだ。
 怒りの曙がジャッカルの亡骸を抱え、爆風の中を駆け抜けるBFは、EDをバックにエゴスと激突。そこに身軽な前転後転で弟ロボットが出現し、
 「回転すると火が出るぞ」
 時々、急に平熱になるのやめて下さい(笑)
 火炎放射であぶられるBFはバトルシャークを要請し、日米がBFロボに登場すると、地上の御子は、トゲボール攻撃のカウンターから、ペンタフォース!
 「行くぞ、ゴロンゴロボ!!」
 残すは弟ロボットだけとなったところで、今回の怪人ネームが明らかになり、だから、ゴロゴロ転がっていたの……!?
 デザイナーの野口竜氏によるとモチーフは岩だというゴロンゴロボは、身軽に転がり回ってBFロボを翻弄しようとするも、慌てず騒がず特に前振りもない電光剣唐竹割りで一刀両断。
 悲しい戦いに決着がつくと、ライフル銃を墓標に東映特撮名物:勝手にお墓が作られ、心配する仲間たちに背を向けたまま、それを見つめる曙四郎。
 「ほっといてくれないか……俺はこの痛みをもう少し噛み締めていたい。ツヨシほどの男が、撃ち損なう筈は無いんだ。きっとあいつの心のどこかに、昔のあいつが残っていて、それで狙いが外れたんだ。いやそうに違いない。俺はそう信じたいんだ……」
 銃弾による負傷は、憎しみでも裏切りでもなく、むしろ友情の残滓と受け止める曙の呟きが渋く、この後『デンジマン』にも連続参加、後に代表作となる『宇宙刑事ギャバン』で、本邦ヒーロー像の定番イメージの一つを築くに至る大葉健二さんの魅力を押し出すエピソードとはなりました。
 高久脚本回では以前にもあった、刑事ドラマ文脈の強めな内容でしたが、ジャッカルがもう少し真っ当な暗殺者なら、もう少し話が引き締まった気がするだけに惜しい。
 次回――とんちき忍者回の予感。