東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
旧ダイアリー保管用→ 〔ものかきの倉庫〕
特撮作品の感想は、順次こちらにHTML形式でまとめています→ 〔特撮感想まとめ部屋〕 (※移転しました)
HP→〔ものかきの荒野〕   Twitter→〔Twitter/gms02〕

迷える夏

仮面ライダー響鬼』感想・第23-24話

◆二十三之巻「鍛える夏」◆ (監督:諸田敏 脚本:大石真司
 響鬼轟鬼のダブル太鼓が夜明けを告げ、ブラバンとチアリーディング部は合同朝練に励み、明日夢くんは……ホイッスルを吹いていた。
 そしてトドロキは、太鼓を指導するヒビキに対して、なんかこの人、他人に物を教えるのに向いていないな……という顔になっていた。
 一流アスリート、必ずしも一流コーチならず、とヒビキ&トドロキ夏の太鼓合宿がギクシャクする中、白服のメーター太郎が現れて童子と姫を生み出し、これは別人なのか、それとも、夏服なのか。
 いつもよりテンション高く、愉快な雰囲気で歌い踊る変わり種の姫と童子だが、人間を魔化魍の餌とするその性質は変わらず、農作業中の老人を田んぼの中へと沈める泥だらけの手――。
 ヒビキがトドロキと共に合宿に入ったのは、この夏の風物詩・泥田坊に対抗する為であり……劇中の台詞から判断する限り、毎年恒例の魔化魍のようなのですが、基本、対魔化魍は後手に回る事になる今作(出現予測どんぴしゃで初動で童子と姫を撃破できる事もゼロではないでしょうが……)、毎年毎年、稲作農家で夏場に行方不明者が出ている事になるのは、さすがに無理のある設定だったのでは。
 ここまで、“山や海における事故”や“天災の被害”と思われたものが実は他界の怪異によるものかもしれない、という、「解釈装置の実体化」が魔化魍であり、魔化魍による被害をゼロには出来ないし事前に止める事も出来ないのは、今作世界における、ある種の“自然の摂理”ではあったわけですが、それにしても、特定時期に、特定ポイント付近で、特定の事業従事者の危険度が極めて高まる状況が、猛士組織にとって被害前提のイベント化してしまっているのは、劇中現実的にも万全の対処は難しいだろうとしても、フィクションの秘密組織としては“格好良くない”と思ってしまうところ。
 猛士組織の戦い、「偶発性」vs「過去のデータ」+「限られた人員」のせめぎ合いの中で、できる限りの被害を防ごうとしているところにヒーローフィクションとしての“格好良さ”が存在しているので、「偶発性」の要素をある程度まで下げてしまうと、いかに日本中の田んぼを見張るのが現実的ではないとはいえ、一定の被害を余儀なくされる戦いのマイナス面が強く出てしまい、今作の基本設計と年中行事的イベントは、相性が大変悪く感じました。
 そういうところは、これはヒーローフィクションなのだから堂々と嘘を描いてほしい、のが私のスタンスなので。

◆二十四之巻「燃える紅」◆ (監督:諸田敏 脚本:大石真司
 ……もっちーはそろそろ、明日夢くんの後頭部を灼熱したバチで強打しても、大半の視聴者は許してくれるのではないでしょうか。
 私は許します。
 分裂増殖する魔化魍泥田坊に対抗する為、体内火力を高める響鬼だが、調整不足から両腕の赤熱化に留まるも、一体を撃破。だがもう一体には逃げられてしまい、泥田坊が分裂増殖するのは稲の分けつのイメージで、荒ぶる怪異と化した稲魂、といったニュアンスでありましょうか。
 ヒビキの忠告を聞かずにギターで戦おうとしてしくじったトドロキは猛省し、トドロキの一本気さや不器用といえる生真面目さがマイナスに出たとしたかったのかもですが、
 ・あまりにも人の話を聞かないトドロキ
 ・やたらトドロキへの当たりが強く無駄に感じの悪いヒビキ
 ・トドロキに対して業務と私情の狭間で空回りを繰り返す日菜佳
 ・日菜佳へボールを打ち返したいのかスルーしたいのか全くわからないトドロキ
 ・謎の動きを繰り返しながらトドロキの話を聞く香須実
 と違和感が強かったり掴み所があまりに無くて困惑する描写が続き、人間関係の距離感が完全に行方不明。
 特に酷かったのが、トドロキからギターにこだわる事情を聞く香須実とのやり取りで、脚本上では延々と会話が続いていて、なんとか画面に動きをつけなければと演出が困ったりしたのかもですが、ただでさえトドロキと香須実の長い会話自体が初なのに、そぞろ歩きで謎のお茶目を発揮する香須実、かと思えば吊り橋の上で妙に立ち位置の近い二人、急に絶叫するトドロキ、と間合いの掴めない会話が延々と続き、見ていてストレスを感じるレベルの大迷走。
 ヒビキはヒビキで、過去の自分を思い返しながら先輩ムーヴのキャラ作りをしていた可能性もありますが、少年を相手には言葉を選びながら前向きな言葉を贈るのに、後輩に対しては四の五の言わずに指示に従えばいいんだコラ、になるのは、シビアな職場におけるオンオフの切り替えというよりも、東映特撮におけるナチュラルなパワハラ傾向が画面から出てしまった感じで、大幅な悪印象。
 更に、前職が“シビアな状況に置かれる場面もあり上下関係の厳しい警察官”だったトドロキが、現在はそれを辞めた身とはいえ(性格的に合わなかったようには見えない)、先輩の指示にやたら反発を見せるのも違和感が大きい上、いくらトドロキが鬼としてデビュー間もないとはいえ、“太鼓しか効かない毎年恒例の魔化魍”について事前に情報を共有しないのは不自然が過ぎ、「特殊な魔化魍対策に最低限のスキル修得は必須」と「鬼としての幅を広げる為に他の楽器も学んでほしい」を不必要に混ぜて、しっちゃかめっちゃか。
 「ふえろ ふえろ! どんどんふえろー! ふえたらみんなで ひとおそOh」
 泥童子が順調に魔化魍を増殖させていく中、例年より早い泥田坊の出現に急ピッチで仕上げたヒビキ、気持ちを入れ替えてシャドー太鼓に打ち込んでいたトドロキに、一反木綿を撃破したイブキ組(あきらの怪我はひとまず大丈夫そう)が合流し……これ、太鼓を教わっていた頃のイブキさんが行儀良く指示に従って不足も自分で補ってくれるから、ヒビキコーチが凄く駄目な感じに育ってしまったのでは?!
 「名付けて、太鼓祭りで決めていこうぜ」
 響鬼威吹鬼轟鬼が、赤青緑のバチを手にして並ぶと増殖泥田坊の前に立ちはだかり、今作としては変化球となる、着ぐるみ怪人との集団戦に突入。
 威吹鬼轟鬼も慣れない太鼓で奮戦すると、鍛えに鍛えて夏の視線を独り占め、と噴き上がる闘気に包み込んだ響鬼が、全身真っ赤に銀アーマーの、響鬼@夏毛ならぬ、響鬼・紅へと変貌。
 疾走しながらバチを叩きつけるだけで泥田坊に清めの音を打ち込んで次々と撃破すると、最後は灼熱真紅の型で親玉を撃破し、夏の風物詩の一掃を完了するのであった。
 ……後年のメタ視点を交えると、制作体制の混乱がそのまま出た、といった具合だったのかもですが、響鬼の強化は強化として、そこにトドロキと明日夢の立場を重ね、ヒビキの過去も加えて「時には遠回りが大事」のテーマをねじ込む為に、あまりにも色々なものを歪めてしまった感。
 キャラも物語も先行き不透明になっていたのかもですが、上述した人間関係の見せ方の混迷ぶりに加えて、食事シーンを汚く撮るとか、明日夢くんの脱衣ネタとか、急にやかましくするとか、生理的嫌悪感やノイズを故意にまぶして画面に目を留めさせる事を目的化する、悪い時の石田監督の模倣みたいな演出も感心せず、前後編セットでは、ここまでワーストといっていい出来でありました。
 次回――夏だ! プールだ! 今度は河童にやられる裁鬼さんだ!!