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達筆な鬼

仮面ライダー響鬼』感想・第1-2話

◆一之巻「響く鬼」◆ (監督:石田秀範 脚本:きだつよし/大石真司
 冒頭約2分、台詞無しで音と映像だけで進み、無声映画のコメディというか『トムとジュリー』のようなカートゥーン的というか“音”とその生み出すリズム感を強調して作品の主題を示してくるのですが、実写映像として面白いか面白くないかでいえば、そこまでセンス溢れている感もなく、いまいち。
 劇中設定・中学3年生を演じる10代半ばの役者さんに、表情と仕草だけで面白く見せる芝居を要求するのも限度がありますし、カンナ削りでリズムをつけるなどもあまり面白くは感じず、意図は伝わってくるけれど、好意的には捉えにくい出来。
 そこから、少年が同級生らしき少女とかわす朝のやり取りがミュージカル調になって目を点にしていると、自転車の集団が画面半分を埋め尽くす石田ギャグ。
 これに始まって、ひたすらくしゃみを連発するとか、調子っ外れの効果音とか、全体的に落ち着きの無い登場人物とか、一風変わった演出によるちょっと面白い日常シーン……みたいなのが今見るとだいたい、あ、くどい時の石田監督だ……で脳内で処理されてしまうのが、良いのやら悪いのやら(笑)
 なにやら進路に悩みを抱えているらしい少年は、法事で母親の実家・屋久島へとフェリーで向かう途上、転落しかけた子供を鍛え抜いた筋肉で救う男を目にして衝撃を受けると、屋久島の森でその男――ヒビキと再会。
 ところが屋久島の森では怪しげな怪異のものが蠢いており、それに巻き込まれる少年とその親戚。
 ヒビキが音叉を額にあてると鬼面が浮かんで異形の存在へと変身し……変身アイテムの音叉とその澄んだ音色、円盤(CD)から動物に変形する使い魔は面白くも魅力的なガジェットですが、変身後に木々の間を飛び回る戦闘シーンは、光のエフェクトを効かせすぎて単純に画面が見づらい。
 紫の鬼と森の怪異が正面から対峙すると、いざ近接戦、と見せかけて口からいきなり火の玉吐いたーーー! で、つづく。
 英雄のルーツ(或いは二面性)としての“鬼”が、都市(里)を離れた他界としての森や山を舞台に怪異と戦い、“異質のようで本質”をやろう、という意気込みは窺える第1話、シリーズを順に追って見てきた場合と今作単独でポンと触れた場合とでは印象差が出やすいタイプの作品だとは思いますが、後者の視点からは、あまりにも見せ場が薄いのは引っかかるところ。
 ユーモアを意図しているであろう場面も含めて全体的に無闇に間が長く、意図的に省かれた説明と、断片的な情報で物語が進められていく雰囲気重視の作りがツボに入らなかった場合に手を引っかける場所が少なくて、ヒーローフィクションの新作第1話としてはもう少し、ストレートに胸躍るサービスシーンが欲しい作りでした。
 《平成ライダー》としては『クウガ』以来となるEDパートも、ひたすら道を歩く男の背中が映される映像は率直に退屈で(第1話段階だと、そこに全くドラマが乗っていない為なのものありますが)、最後に少年視点のヒビキの背中である事が明かされ、背中で少年の道標となる男、といったようなニュアンスが示されるのですが、本編も含めて〔伝えたいこと > 映像的面白さ〕の優先順位が割と露骨で、時に前者が剥き出しになりすぎるバランスの悪さは、先々に不安は感じさせる点。
 一方、OPの方は楽曲のみとなるシリーズとしては変化球で、こちらはこちらで書き文字と映像の組み合わせが、微妙に安っぽい大河ドラマのOP風味になってしまい、ジャンルのセオリーから意識的に外したら、別の何かの下手な模倣になってしまった印象。
 ……まあ、前作『剣』前半のマネキンOPも大概でしたし、昭和に遡ると概ね「バイクと爆発」ですし、面白格好いい《仮面ライダー》のOPとは? は割と難しい問題ではありますが。
 主題歌そのものは割と好き。

◆二之巻「咆える蜘蛛」◆ (監督:石田秀範 脚本:きだつよし/大石真司
 注目は、超・字の上手いヒビキ。
 肺活量も鍛えてますと紫紺の鬼ファイヤーで怪異は吹き飛び、少年・安達明日夢はなんかヒビキに懐き、屋久島の霊木を削って黙々と謎の棒を作る青年・ヒビキ。
 「自分を信じる事。それが、自分が自分らしくある為の、第一歩なんじゃないかな」
 ヒビキは、怪異が育てている巨大妖怪を見つけ出す為に島の南方を走り回り、ディスク使い魔の記録を音叉で読み取るのは、面白いギミック。
 ヒビキを探す明日夢少年は、山小屋蜘蛛に襲われたところを助けられ、パイロット版の半分ぐらい、目を見開いたビックリ顔をしている印象なのですが、強い意思表示をするタイプでは無い感じの割に根が頑固という事なのか、少年は全然、人の忠告を聞かないな!!
 「ヒビキさんは?!」
 「俺は、響鬼だから!」
 音叉を鳴らしたヒビキは紫の炎に包まれて再び異形の鬼へと姿を変え、今のところ、変身コールは特に無し。
 CGの山小屋蜘蛛は、暗闇に光る赤い瞳と、小屋から突き出す複数の脚の不気味さは良く雰囲気を出しており、明日夢と共にダッシュ逃走した響鬼は、海にどぼーんと飛び込むと追いかけてきたツチグモを崖から落とす事に成功。
 しかし、蜘蛛が再び動き出したのに対して海中から浮上せず……響鬼さん? 響鬼さん?! 運転できないだけではなく、水泳もできないのですか響鬼さーーん?!
 今回冒頭、ペーパードライバーでまともな運転ができない事を、素直に認めず少年に対して誤魔化そうとするヒビキは、愛嬌にもなって面白かったです。
 再び明日夢少年が危機に陥ったその時、鍛えているので泳げます! と海面から急浮上した響鬼がツチグモの背中を取り、ベルトのバックルを張り付けるとそれが太鼓となって、ドンドコドンドコ、二本のバチでひたすら連打の末、ツチグモ、爆散。
 シリーズを象徴するアイテムといえるベルトは、全く焦点を当てなかった第1話から(「変身ベルト」の放棄自体は、既に『仮面ライダーX』時点で行われてはいたりしますが)、今回は必殺攻撃のパーツとして使われ、インパクトはあるマウントポジションからの太鼓キルでしたが……響鬼のメタリックボディを強調したい意図だったのか、当時の技術的な実験(問題)だったのか、面白いとか面白くない以前のレベルで、とにかくキラキラ光らせすぎて、画面が見づらい状態が長々と続くのは、個人的に辛かったです。
 「鍛えてるんです」
 響鬼は部分的に変身解除して明日夢にヒビキの顔を向け、ちょっとズレた返答をしてくるところや、お気に入りのポーズを繰り返すところは、今見ると割と露骨に五代悠介を彷彿とさせる点。
 特撮ヒーロー作品において、主観人物と変身者が違う仕掛けは今作に近い時期では円谷が『ウルトラマンネクサス』(2004-2005)で行っていますが、果たして、少年と鬼の出会いは何をもたらすのか……まずは腕立て30回からだ!