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虚代身の筺

仮面ライダーウィザード』感想・第46話

◆第46話「ひび割れた思い」◆ (監督:舞原賢三 脚本:香村純子)
 己の進んでいく道を取り戻し、ゲートを守る為に戦う晴人の姿に、自らの境遇に負けはしまいと思いを新たにしたコヨミが右手を手袋に隠しながらも笑顔で面影堂に立つ一方、メデューサに勝つ為に力を求める真由は白Pに修行を嘆願し、新たな指輪を授けられる。
 「これならメデューサを倒せる筈だ。その代わり……」
 またまたプロデューサーが胡散臭い暗躍を進める中、フリーマーケットの会場に雑に乗り込んでくるファントム・アラクネ(だけど男)。
 ヤクザムーヴで暴れるファントムの前に、すっかり夏服の魔法使いたちが駆けつけ、凛子、遂にハンドバッグでグールをはたく。
 国安特製・厚さ3㎝の鉄板が仕込まれたハンドバッグが唸りをあげてグールを蹴散らすと、ダブル魔法使いは、「一気に決めるぞ」とインフィニティ&ハイパー化。
 魔法使いの到達点・真理へと繋がるパスポートたる圧倒的筋肉で斧の攻撃を受け弾き、もはや不条理レベルのインフィニティは高速の斬撃から必殺の一撃を放とうとするが、後一歩のところでアラクネは地中に溶けるように姿を消し、毎度お馴染み、平成のやらかし大将です。
 ……相通じるところがある風見先輩同様、普段キザに決めようとしている分、やらかしが目立つ、というのはありますが。
 一同ゲートを探して四方に散らばると、晴人はなんと、たまたま出くわしたいつものドーナッツ屋でソラを目撃。
 「おまえ何してんだ。こんなとこで」
 「……ふふ、見たまんまさ。ところで、お人形さんの方はどう? 元気?」
 思わせぶりなソラから情報を聞き出そうとするも、交渉材料ゼロなので当然失敗した晴人は、慌てて面影堂へと戻るが、ソラの手はまだ伸びておらず、ホッと一息。
 輪島にソラについて相談していると、階上では、
 「……大丈夫。私は平気」
 と自室で自らに言い聞かせ、笑顔を作ってから部屋の外に出るコヨミの姿が描かれ、物凄い勢いでコヨミが再プッシュされるのですが、脚本の香村さんのみならず、私がコヨミを可愛く撮る! と舞原監督にも気合いが見えて、最終盤にいい座組になったなと(笑)
 「……見てらんないだろ。コヨミが無理して笑ってんの」
 「……ふふふ……ホント、おまえ達ってやつは」
 「え?」」
 「コヨミもおんなじ心配してたよ。いつもおまえが無理してるって。……一緒に居て、似てきたかな?」
 晴人の戦いを見てコヨミが立ち上がる姿から、お互いがお互いを気遣う二人の関係に改めてスポットが当たり、今作、かなり明確に、この晴人とコヨミの円環的関係性を物語の基点にして軸と置いている一方、当然そこからの“広がり”も描かないといけないのはバランスの難しい部分はあったのかもしれません。
 特に、コヨミから凛子&瞬平に対して、第4-5話で早々に態度の軟化を描いてしまったのは響いたと思っていて、どうしても作品の優先順位が「ウィザードの強化ギミック」になるのはわかりますが、もう少し時間をかけて、劇的なスポットを当てて欲しい要素であったなと。
 結果的にその後、コヨミ×ゲスト話とか、コヨミ×仁藤話というのもこれといってなく、晴人の外への“広がり”が順調に描かれて後半の主題になっていくのと比べると、凛子&瞬平にガードが下がったところで満足して、コヨミの“広がり”を段階的に描けなかったのは、物語としての穴になってしまった印象です。
 逆に、凛子&瞬平は受け入れたけれど、その肉体ゆえに、外部への怯えそのものは解消されない……とコヨミはあくまで閉じた性質を通すなら通すで、そんなコヨミのアイデンティティに丁寧に触れていけば、小説家回における唐突さも減じられて成り行きにもう少し説得力が出たとは思うのですが、それはそれで不足していた為、結果的にどっちつかずのまま最終盤に入ってしまった感。
 ここまで来ての岡目八目ではありますが、凛子&瞬平との関係性変化をなし崩しで描いてしまった分、出来ればコヨミ×仁藤のエピソードで中盤に一つ、ターニングポイントがあれば良かったのかなと……まあ、仁藤とコヨミは絡みにくそうですし、実際ほとんど絡みが無いのですが、絡めにくいから絡めなかったのは一つ作品として失策になったかなと思います(互いの好感度への配慮もあってか、コヨミが「絡みにくそう/絡みたくない」さえ表現されないので、同じ場面に映っていても物凄くのっぺりした関係性に)。
 どうにかしてソラの奥歯をガタガタ言わせて洗いざらいうたわせちゃるけんのうオジキ、と晴人が輪島に告げたところで面影堂を真由が訪れ、白Pとの接触を隠したまま、魔法の勉強の為にウィザードの指輪を見せてほしいと申し出るが、晴人と輪島の話を聞いていたコヨミはこっそり面影堂を出ていってしまい、それに気付いた晴人は慌てて外へ。
 ……前々から思ってはいたのですが、護衛の為にゲートを連れてきたりもする割には、面影堂には隙間が多すぎる(笑)
 晴人がコヨミを追いかける姿が幻想的に描かれ、ゲート捜しはすっかり脇に放り出しているのですが……これはまあ、割と前半からではあり(捜索中にドーナツ屋で休憩したり、人の話を聞いていたり)。
 (自分の事なのよ。自分でなんとかしなきゃ……このまま晴人に心配かけ続けるなんて、そんなの駄目)
 自らソラを探し回るコヨミの心情にもフォローが入り、前を向いての自立的な行動がちょっと空回りするコヨミは、ソラと接触。コヨミの身に起きている異常を目にしたソラは推測通りと笑みを浮かべ、この世には不思議な事などないのだよコヨミくん。
 「君が悩みから解き放たれる方法は、ただ一つ……――僕のものになればいんだ」
 真実は常に変態、とコヨミをさらおうとするソラだが、そこに駆けつける晴人。
 「……ごめんな、コヨミ」
 「……え?」
 「俺が支えてやんなきゃなんないのに、逆に俺が焦ってばっかで。だから勇気を出してくれたんだよな」
 「そんなこと……」
 「でも、黙って消えられると、もっと焦る」
 「晴人……」
 「俺だけじゃない。輪島のおっちゃんも、凛子ちゃんたちも。……だから――無理にでも連れて帰る」
 晴人は指輪を装着し、“今回のコヨミの行動(思考パターン)”が、“前回までの晴人の行動(思考パターン)”の相似形とされて両者の行動原理が補強されると共に、前回を受けて、これまでよりも周囲が見えるようになった晴人の変化から素直な気持ちの吐露へと繋がって、これは鮮やか。
 一方、手分けしてゲートを探していた凛子と瞬平は、ぐるっと回って戻ってきたフリーマーケットの会場で正面衝突するが、そこで見覚えのある男性を発見。ひとまず警察権力で手当たり次第に保護しようとするが、その男こそがまさにゲートであり、地下にずっと潜んでいたアラクネが再び出現。
 一同の危機に仁藤が飛び蹴りからビースト変身し、原典では蜘蛛の怪物であるアラクネですが、顔は見るからにコウモリなのは、そろそろ一般ファントムも最後に近そうなので、蜘蛛×コウモリで初代オマージュでありましょうか(『仮面ライダー』第1話・第2話の怪人モチーフであり、《平成》第1作の『クウガ』もこれを踏襲)。
 男を連れて逃げようとする凛子たちの前にミサが姿を見せるが、男が地面に落とした買い物袋の中身が赤ん坊向けのものである事に気付くと大変いい表情になり、男の車の中を確認して、妊娠中の妻と思われる女性の写真を発見。
 「アラクネ、帰るわよ」
 絶望へ向けた道筋をハッキリさせると、大変いい笑顔からビーストを視線で吹っ飛ばし、この終盤に一人二役フル回転、真由の方はなるべく可愛く撮ってあげようというスタッフの意識は感じるのですが、今となってはあまりにもミサがはまりすぎて(笑)
 若いキャストという事もあり当初は固さも見えましたが(そこは、人間のようで人間ではない存在、という事で通せる判断はあったのでしょうが)、今回、地面に散らばった荷物を見下ろす時の視線と表情が、振り切れたところさえ見える“悪い女”ミサとしての集大成を感じさせて、素晴らしかったです。
 また、なんだかんだと約1年ほどを人間に擬態して過ごす内に、興味は薄いながらも“人間”についての理解度が多少なりとも上がっているのが窺えるのは面白いところで、次回以降に効いてくるかどうかは気になります。
 「なんだあの余裕な感じ……」
 この終盤、基本的に単独ではちょっと強いファントムに足止めが精一杯の役回りが固定化していてアーキタイプが切ないビーストが路上に放置されていた頃、晴人はグレムリンの奇襲平手打ちで地面を転がり、コヨミの頬をはたき、踏みつけにする姿でグレムリンの非道さを強調すると、そこで止めに入ったのは白い魔法使い。
 「その子は返してもらう」
 「駄目だ……それはもう、僕のものなんだッ」
 「おまえのものではない」
 史上最もドスを効かせた白Pは、DX白い魔法使いソードを取り出し、グレムリンの二刀流と激突……ともいえないレベルで圧倒。
 「おまえにこの子は渡さん!」
 エクスプロージョンされたグレムリンが死んだフリから逃走すると、白Pの背に向けて晴人は、文字通りに血を吐くような叫びを叩きつける。
 「おぉい!! ……今までなにしてたんだよ?! ……あんたコヨミの父親だろ!」
 「……気付いていたのか」
 「なんで俺に預けた?! なんで側に居てやんねぇんだよ?!」
 「おまえの魔力が必要だった」
 不可解な言動の後、コヨミに近づいた白Pは、手の甲の異常に気付くと、動きを止める。
 「いかん……時間が無い」
 「あんた……それがなんだか知ってんのか?! コヨミに何が起きてんだ?! 助けてやれんのか?!」
 「これまで、娘が世話になったな。…………ありがとう。……コヨミは必ず私が救う。なんとしてでも」
 優しい手つきでコヨミの頭を撫でていた白Pが変身を解いて、間違いなく父親の顔を見せた笛木が晴人に感謝の言葉を告げると、コヨミを抱き上げテレポートで姿を消し、つづく。
 ソラの言動からすると、コヨミ=賢者の石? めいていますが、白Pの目的に関しては、病弱だったコヨミの魂を人形の体(素材は賢者の石?)に移し、それを本当の人間にする為の儀式として一定数の魔法使いを必要とする(サバトは魔法使いを生み出す為の前段階)みたいな感じでしょうか……何を持って落着とするかが難しい話の流れになってきた感じですが、今回に関しては、締まった出来のエピソードで面白かったです
 この最終盤、白Pの胡散臭い暗躍により「魔法使いはそもそもヒーローなのか?」の疑義が浮上した今作において、前回・今回と、“怪物に堕ちる事なく踏みとどまり、ヒーローであろうとする晴人”の形をそのカウンターに当てていこうとして見えるのですが、その流れと予告から次回、では今作で繰り返してきた「希望」とは何か? に踏み込んでくれそうな雰囲気で、話数的には恐らく香村『ウィザード』の集大成になるのかな、とどう持っていくのか期待。