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欲しけりゃその手で燃やせ

仮面ライダーウィザード』感想・第21話

◆第21話「ドラゴンたちの乱舞」◆ (監督:石田秀範 脚本:香村純子)
 強敵ベルゼバブにFD殲滅ファイアーも見切られ、空間操作によって逆に自分のファイヤーの直撃したウィザードは、床を転がり、変身解除。
 ぐっさりやられそうになった寸前、突如謎の爆発がベルゼバブを思い切り吹き飛ばすと、そこに居たのは白い宝石頭。
 ベルゼバブの空間操作ごと吹き飛ばす爆発魔法を放つ白ガル宅配便社長は、ビーストを「魔法使いのアーキタイプ」と表現すると、気を失った晴人を連れて転移魔法で姿を消し、練達の魔法使いぶりを見せつけるが、とにかく、胡散臭かった。
 一方、ファントムユウゴは何故か凛子に友好的に接し、ソファにどっかり腰を下ろすと、その背後に枯れた鉢植えが並んでいるのが、“姿形は同じでも別の存在である”事を改めて突きつける、印象的な見せ方。
 「なんでわざわざ、ここへ来た?」
 「…………警察官だから。人を守るのが私たち警察の仕事!」
 ユウゴに怯えながらも虚勢を張る凛子と、それを気に入ったと称したユウゴは、凛子の落とした鞄の中身を丁寧に拾ってあげながら、個人的嫌がらせにより、ベルゼバブの能力とその対策について説明する。
 その頃、手荷物にされた晴人は謎の儀式空間に配達されて目を覚まし、白い魔法使いと日食以来の対面を果たしていた。
 「おまえの魔力の源であるドラゴン。奴の力を、限界まで引き出せばいい」
 「限界、まで……」
 「おまえが耐えられればの話だがな」
 つまり、もっと岩をーーーー! と晴人が古式に則り特訓タイムに入る一方、ユウゴ情報を元に凛子たちはドタバタ石田タイムでベルゼバブの使い魔退治に励み、今回はゲストのうるささ控えめで助かりました(前後編で前編に崩し多めに入れるのはよくある手法ですが、それにしても前回はやはりオーバーすぎたなと……)。
 対象の体に張り付いていたベルゼバブの使い魔を退治すると、瞬平はじめ操作されていた人々は正気を取り戻し、ユウゴが本当の事を言っていたと知った凛子は、たとえファントムといえど対話可能なのではないか、とドーナッツを手にユウゴの元へ。
 「きっと私たちもっと近づける! だから……聞かせて? ファントムのじゃない……あなたの言葉で!」
 晴人との別行動、及び一時離脱を効果的に用いて凛子が独自にファントムへと接近し、ある思惑に基づく行為が、他者からは違う意味を持って受け止められる錯誤の描写は、香村さんらしい話運び。
 「俺、味わかんねえけど」
 太陽がまぶしくて一筋の涙を流したユウゴはドーナッツを口に運び、視聴者に対しては、ユウゴの行動にはベルゼバブへの悪意がある事を示しながら、劇中の凛子は、なまじフジタ・ユウゴの存在を知ってしまったばかりに、ファントムユウゴの背後に青年の面影を見てしまう――ファントムの中に、“守るべき人”の可能性を感じた警官としての信念が、少々無茶な単独行を支える行動原理になっている――のが、上手い構成。
 「そっかぁ……やりたいことやらせてもらえないんだ」
 「ああ。人間絶望させるなんて。お陰でストレス溜まる一方だぜ」
 晴人さんが魔法空間でもっとエレメントをーーーーー!とドラゴンブレスを全身に浴びて超特急で特訓を乗り越えていた頃、ドーナッツを手に語り合う凛子とユウゴの間では、凄い方向に誤解が加速していた(笑)
 凛子:ユウゴは本当は人間を絶望させたいわけではない、と受け止める
 ユウゴ:上から指示されての絶望ミッションとか超面倒くさい
 両者のズレを違和感なく生む台詞のチョイスが絶妙で、香村さんが邪悪すぎますが、ほのぼのBGM流しながら、海辺で語らう男女の姿として青春の一コマみたいに演出する石田監督も、脚本の意図を汲んでとても邪悪で、これは、いい石田。
 すっかり、進路相談気分になっている凛子は、自分もまた、やりたい捜査を止められていたが、それを振り切って強引にファントム事件に首を突っ込んでいる事を説明。
 「馬鹿な女だな~」
 「馬鹿で結構。自分に嘘ついてくすぶってるよりはマシよ」
 生前のフジタ・ユウゴを知った事をきっかけに、ファントムとも直接対話を試みてみる凛子の気っ風と思い切りの良さが完全に裏目に出て、その一言にぐっさり心を揺さぶられるユウゴ。
 一つの言葉が、全く違う意味となって両者を加速させていくのがシンプルながら上手くはまっていますが、前後編の構造も見事に活かしており、主に視聴者へのダメージソースと思われたフジタ・ユウゴの過去が、実は凛子さんを生死の境界に向けてそそのかす罠だった、と明らかになるのが、鮮やか。
 また、罠の配置が巧妙な事で、一種の暴走ともいえる凛子の行為が、好感度を下げるよりも上げる方向にまとまっているのは、さすが好感度コントロールに長けた香村さんらしい手さばきです。
 「あなたもやれば? ……自分のやりたい事。今してる事、なにか違うって思ってるのなら」
 「ああ」
 「……だったら」
 「……そうか。そうかもな。――お前のお陰で、吹っ切れたぜ」
 たった一つ自分だけの宝物を掴み取る為にユウゴが立ち上がったその頃、使い魔は初回に魔力を注ぐ為の受信機でしかなく、一度操った対象はいつでも意のままに指揮できるベルゼバブの能力により、ゲートは再び絶望の危機に陥っていた。
 「どうした~? 終わりかァ?」
 ビーストもベルゼバブに翻弄されて手も足も出ず、愛する夫と友人知人からの「消えろ」の大合唱にゲートの心が絶望に崩壊しかけたその時――閃光と共に晴人が復帰。
 「私に恐れをなして、逃げ出したかと思いましたが?」
 「逃げ出す? 冗談でしょ。この間の借り、しっかり返させてもらう」
 ゲートを逃がし、ベルゼバブとの再戦に挑むウィザードは、FDWとなると、特訓の成果である魔道具・ドラゴタイマーを右手に装着。籠手のように手の甲に嵌めるドラゴタイマー、今回時点ではこれといった説明は無いのですが、ダイヤルを回すと時計の鐘のような音が響くので、時間制限付き魔力ブースト装置みたいな感じでしょうか。
 「さあ――ショータイムだ」
 FDWはベルゼバブへと斬りかかり、タイマーのボタンを押す度に、ドラゴンウィザードが増殖していく、けったいな画(笑)
 4色の魔法使いが、それぞれの死角をカバーしながらベルゼバブを袋だたきにするとドラゴンフォーメーションを発動し、頭! 翼! 尾! 爪! が勢揃いするのは予想通りでしたが(システムは予想外でしたが)、戦う魔法使い! 宝石戦隊・エレメンジャー!
 先日の恨みとばかり、エレメントの波動が次々とベルゼバブにぶつけられ、トドメは4つのマジカルストライクを一斉に放つスラッシュドラゴンフォーメーションにより刺し、幹部クラスをじっくり描いている今作では、急にやたら強いのがちょっと違和感はあったベルゼバブの強さを上回る、怒濤のトンデモで大勝利。
 新ライダー登場から間を置かずの主人公ライダー強化となりましたが、4つのドラゴンフォームに与えられていた特性を考えると順当な強化展開ながら、“その初舞台にふさわしい強敵”が、“急に出てきた強敵”になってしまったのは、残念だった点。
 幹部クラスを相手に使わないならば、その分ちょっとでもいいから、事前の顔見せの一つぐらい欲しかったなと。
 ベルゼバブが消滅した事で人々の洗脳が解けてゲートが元の生活を取り戻す一方、ユウゴはフェニックスへと姿を変え、話が通じる相手かと思っていたその正体が、今まで目にした中でも最低最悪の部類に入るファントムだったと知る凛子(まあ実際には、ここまでどのファントム似たようなものであり、徹頭徹尾、今回の凛子は“美しい誤解”を元に行動しているわけですが)。
 「フン、ゲートもサバトも知った事か。俺は俺のやりたいように暴れてやるぜ」
 退職を決意したフェニックスがその魔力を解放して、つづく。