『仮面ライダーアマゾン』感想・第15-16話
◆第15話「出たぞ! 恐怖のゼロ大帝!!」◆ (監督:内田一作 脚本:伊上勝)
ゲドン崩壊による新展開突入で、OP映像は……特に変わらず。
立ちこめる霧の中で、子供たちの集団拉致事件が発生。それを目撃して勇敢に立ち向かったコートの男は、ガランダー帝国のハチ獣人によって抹殺され、さらわれた子供たちは口から毒針を伸ばしたハチの子軍団に洗脳教育されてしまう。
「ガランダー帝国の偉大なる王であり、首領であるゼロ大帝様。ハチ獣人の前に、その偉大なるお姿を、お見せ下さい」
ハチ獣人(クレジットでは「毒バチ獣人」)の呼びかけに応え、ベールの奥から姿を見せたのは、白銀の鎧兜に身を包んだ人影。
「ゲドンのゴルゴスは、腕輪のみにとらわれて、我々の真の目的である、世界征服を忘れた。人間どもを残らず、ガランダー帝国が征服すれば、アマゾンが持つ、ギギの腕輪など、問題ではないのだ」
ハチ獣人とゼロ大帝のやり取りで、「ガランダー帝国の目的は、あくまでも世界の征服。決して、ガガとギギの争いでない」方針が確認されて、先週までのボスキャラのこだわりが全否定されると、「ギギの腕輪を巡る(アマゾンを狙った)争い」ではなく、「世界征服の為の計画にアマゾンが絡んでくる」形へと、悪の組織の在り方とストーリーの基盤を、モデルチェンジ。
新たなる敵らしさを出すと共に、1クール目のパターンの繰り返しを避ける狙いがあったと思われますが、やはり悪の組織が対ヒーローにこだわりすぎると、どうしても話の幅が広げにくいのだろうな、と(他の作品でも、まま陥るパターン)。
ハチ獣人は、アマゾンの存在など気にせず、さらった子供たちにガランダー教育を施す事により、人間社会から自由な未来の芽を摘んでいくプランを推し進め、報告に満足したゼロ大帝は、シルエット中心の勿体ぶった見せ方で退室。
ランスのような手持ち武器に、頭の巨大な羽根飾りが印象的なゼロ大帝(演じるのは中田博久さん!)ですが、関節を動かす度に油の切れたブリキのおもちゃみたいな効果音が響くのが、ちょっぴり不安を誘います(笑)
「ゴルゴスは死んだ。だがあの時、黒い従者を見た」
電話ボックスでの人間溶解事件を知った大介は、新たなる敵の気配について藤兵衛と情報を共有。子供をさらわれたと叫ぶ母親の訴えに応えてハチ模様の車を追うとガランダーの黒従者を締め上げるが、ハチ獣人の奇襲攻撃を受け、モグラの援護攻撃で辛くも逃走。
「それにしても恐ろしい敵だった……子供を助けるどころか、アマゾンが危なかった」
不覚を取った大介が敵を持ち上げた後(残念ながらデザインもアクションも、ハチ獣人にこれといった強敵感は無いのですが……)、ゼロ大帝の名を聞いたモグラが、ガランダー帝国について「口にするのも恐ろしい大物だ」と怯えを見せると情報提供さえ拒むのは面白い見せ方となり、ゲドン/十面鬼はめでたく、まあ裏切っても何とかなりそうな気のした小者認定を受け、酷すぎる踏みつけ(笑)
ハチのアジトにおいて、大介に見立てた人形にドスを突き刺すハチの子鉄砲玉教育が進む中、モグラから警告を受けたマサヒコは逆に自ら囮になろうとするが、ハチの子アジトに誘い込まれ、囚われの身となってしまう。
「マサヒコを改造しろ!」
……て、あれ、もう、この子たちみんな、手遅れ……?
かくしてマサヒコくんもガランダー帝国の立派な鉄砲玉へと改造され、アイシャドウつきで大介の元へと帰還。ハチの子マサヒコの異変に気付く大介だが、虎穴に入らずんば虎児を得ず、敢えてその罠に飛び込むと、アジトの前でマサヒコを拘束。
「マサヒコの手は冷たい。獣人の手先になった」
ええ?! 『人造人間キカイダー』の半平(物語途中で敵組織の洗脳改造を受け、体内に何か埋め込まれた感じの後、有耶無耶のまま話が続く)ばりに取り返しのつかない事になった?!
「すぐに本当のマサヒコに戻す」
本当に戻るの?!
不穏な気配の渦巻く中、決意も固くハチ獣人のアジトに飛び込んだ大介は、ハチの子鉄砲玉軍団に取り囲まれると、アーマーゾーン!
尻尾を揺らして走るハチ獣人を追うアマゾンは、毒針攻撃を回避すると噛みつきからの膝蹴りを叩き込み、堪らずハチ獣人の放った切り札・お尻ボンバーをキックでリターン。大切断がハチ獣人の額をかち割り、黄色い泡で表現された全身返り血フィニッシュで、勝利を収めるのであった。
「ぜ、ゼロ大帝に栄光あれ……ガランダー帝国、ばんざーーーい……!」
製造コストに余裕があるのか設備が上等なのか、ゲドン獣人よりも口数が多く知能の向上が見られるガランダー獣人は、帝国への忠誠の叫びを断末魔として果て、みんな付けよう忠誠回路!
「……アマゾンライダー、いくら貴様がガランダー帝国に手向かっても無駄な事だ。はっはっはっはっはっははは、ははははははははははは……!」
直後、ゼロ大帝の声が響き渡り、伊上脚本恒例・悪の首領仕草の誘惑に負けてしまうゼロ大帝なのでありました。
ハチの子メイクで転がっていたマサヒコくんは、ハチ獣人の尻尾(飛び道具、思わぬ布石)から採取された解毒液を飲ませる若干のグロ映像により回復し、全員無事に足を洗った元鉄砲玉たちに笑顔で見送られながら、バイクで走り去る大介の姿で、つづく。
従来のシリーズ作品では、仲間たちにも何も告げず、いつの間にか一人バイクで走り去るのが通例だったので、マサヒコくんを一緒に乗せていく、シリーズ史上ではもしかしたら画期的かもしれない場面となりました。
EDは歌詞が二番(?)に変更となって「ゲドン」の単語がさすがに消えて、つづく(OPは思い切りゲドン従者なわけですが)。
◆第16話「ガランダーの東京火の海作戦!!」◆ (監督:内田一作 脚本:鈴木生朗)
「奴らはどこへ? ……いったい何を企んでいるんだ」
黒従者に運ばれる謎の男を追う大介が、その行方を見失う一方、大学帰りのリツ子さんは怪しげな露天で虫型のブローチを買い求めるとコートの襟に取り付け、割とセンスが……変だった。
一応、「アマゾン特産」の売り文句に大介を思い出したと理由は付けられているのですが、“生きているので勝手に胸にくっつく虫のブローチ”を平然と身につけるぶっ飛びぶりを見せ…………モグラ獣人との地中移動(あまり想像したくない映像の予感)辺りで、人間として新しいステージへ一線を越えてしまった感じでしょうか。
だがこの怪奇慣れが災いに転じ、ゲンゴロウ獣人の分身使い魔であったブローチに血を吸われ、昏倒するリツ子。
ゼロ大帝は、リツ子の血液によりガソリン満タンとなったゲンゴロウ獣人に東京火の海作戦を命じ、武器の先から火を噴き出すと、パフォーマンスで黒従者を抹殺。
「成功か、しからずんば、死あるのみだ」
さっそく街へ繰り出したゲンゴロウ獣人が、使い魔を火薬工場に向けて放つと、呪文によって爆弾へと変わった使い魔が工場を木っ葉微塵に吹っ飛ばし、ちょっと笑ってしまう規模の大爆発。
ゲンゴロウ獣人は続けてゲンゴロウ爆弾テロを繰り返し、自ら呪術を用いてテロ行為を行う、これまでとはだいぶ毛色の異なる獣人となり、怪人ポジションの扱いもシリーズ従来作に大幅に近づく事に。
謎の巨大植物が絡みつくガソリンスタンドの爆発や、『イナズマン』辺りで見覚えのあるビル倒壊など、大規模特撮の流用映像が差し込まれ、モグラ獣人のご注進でガランダー帝国の関与を知った大介は、火の海と化していく東京へとジャングラーで急行。
逃げ遅れた子供たちを助けると、ゲンゴロウ獣人を発見して戦いを挑むも苦戦を強いられ、戦闘能力も作戦遂行能力もなかなか優秀なゲンゴロウ獣人ですが、鳴き声が「コーーン コーーン」なのが、大変、気になります。
大介は炎に包まれた川に飛び込むと、アーマーゾーンし、ゲンゴロウクローに苦しみながらも、死んだフリからの反撃。地面に倒れたゲンゴロウに肘を叩き込むと、形勢不利とみたゲンゴロウは呪術によって瞬間逃走し、アジトに逃げ帰ったゲンゴロウが黒従者に拘束されると、ゼロ大帝様の、おなーりーー。
「作戦半ばにしてそのザマはなんだ」
敵前逃亡は死あるのみ、と市中引き回しのすえ打ち首のお裁きを受けゲンゴロウが、作戦そのものは順調に進んでいたと申し開きすると、ゼロ大帝の「やかましい!」が炸裂。
寒い時期は昆虫パワーの消耗が早いんスよ! としぶとく命乞いするゲンゴロウは、エネルギーさえ補充すれば大丈夫、と請け負い、リツ子さんの血が吸いたいと主張。
「あの娘? なぜあの娘にこだわるのだ」
「あの娘の血は美味い。あ、いえ……それにあの娘は、アマゾンのトモダチです」
「なに?」
ガランダー的には、むしろ手を出しては駄目では?(笑)
「よーし……一度だけは、許してやる」
ゼロ奉行はゲンゴロウ獣人の訴えを認め、朝令暮改で基本的な行動指針をコロコロ変える・厳罰主義で隙あらば極刑にしたがる・上下関係が全てで偉い人が感情に任せて言を左右にしがち、と早くも大成しない悪の組織の見本市になっていて、先行きが不安です。
日常に戻っていたリツ子だが、ゲンゴロウ獣人のガソリン確保の為に黒従者にさらわれてしまい、モグラがそれを目撃。モグラが急いで大介にこれを伝える中、リツ子は墓地で拘束され…………ふふふ、前回は見事に蜂の子人間に改造されちゃったマサヒコくん、姉さんがこれから、本当のヒロイン力というものを見せてあげるから、あなたはそこで指をくわえて見ていらっしゃい!!
「アマゾン! アマゾーン!」
リツ子はちからのかぎりさけんだ!
……だがだれもあらわれなかった。
あ、あれ?
……よ、よし、もう一度だ!
「アマゾン! アマゾーン!」
リツ子はすべてのヒロイン力をときはなった!
……へんじはない。かなしみだけがとおりすぎてゆく。
え、ええ?!
リツ子さん渾身のアマゾンヒロイン計画が無惨な空振りに終わる衝撃の展開で、再びゲンゴロウに吸血を受けるリツ子さんの酷すぎる扱いに目眩がしてきますが、思えば前回もマサヒコがハチの子にされてしまったので、足りていないのはアマゾンのヒーロー力の方であるのかもしれません。
かくして骨肉を分けた姉弟によるヒロイン力勝負は引き分けに終わり、モグラ情報で駆けつけた大介だが時既に遅く、墓石に縛り付けられたまま捨て置かれているリツ子の姿が惨すぎて、作品によっては完全に絶命の図。幸い命は取り留めていましたが、普段の雑さもあいまって、いくらなんでもあんまりな使いです。
「東京がガランダー帝国の首都になる日も近いぞ!」
ガソリン満タンとなったゲンゴロウ獣人は、じっくりとイメトレを重ねた末に湾岸コンビナートへとゲンゴロウ爆弾を放つが、リツ子からの情報により、間一髪でそれを食い止めたのはアマゾンライダー。
挿入歌と共にヒーロー登場を決めたアマゾンはゲンゴロウクローをはたき落とし、襲えアマゾン・ジャガーショック!
水平チョップから肘鉄のコンボ、投げ飛ばしたゲンゴロウをコンドラーロープで捕まえる搦め手を挟んで怒濤の連続攻撃を叩き込み、弱ったところで放たれる大切断。ジャンピングの一撃から、続けざまのヒレカッターがゲンゴロウを切り裂き、ゲンゴロウ獣人は、この者、変態吸血魔、の罪により緑の泡の中に倒れ伏す。
吸血系の怪人は、映像(&嗜好)的にどうしても変質者じみますが、実際にレギュラークラスの吸血に成功した怪人は、かなり希少でありましょうか。……まあ大体、成功させる前に作っている側がブレーキを踏みそうなものでありますが。
「ワシの分身、ゲンゴロウよ……ガランダー帝国……万歳!」
今回もガランダー獣人の忠誠回路(もといガランダー帝国の鉄の規律)がアピールされると、アジトへ帰還したゲンゴロウ使い魔は、ゼロ大帝が無情の爆殺。
「我が全てを捧げる全能の支配者よ。第一の作戦は敗れました。お許し下さい。そして我らに力をお与え下さい」
「……ゼロ大帝よ、私は“支配者”。私の力は無限だ。怯まず、一日も早く地球に、ガランダー帝国を建設せよ」
謎の声が響き渡って、ゼロ大帝の更に背後に居る存在が明らかとなり、台詞をそのまま受け止めると、「ガランダー帝国地球支部」の建設を求めている宇宙的存在のような雰囲気がありますが……
ナレーション「全能の支配者とは、いったい何者か。負けるな、アマゾンライダー!」
ナレーターが納谷悟朗さんなのがメタ的にちょっと面白くなりつつ、次回も焼かれそうになる東京にアマゾンダダダ!
……東京にこだわっているのは多分、スペース風水の結果。