『仮面ライダーウィザード』感想・第18話
◆第18話「魔力が食事」◆ (監督:諸田敏 脚本:きだつよし)
見所は、
「古の魔法使い――かつて魔法が科学と並ぶ学問だった頃に、ファントムを封印した禁断のベルト。奴はそれを手に入れたのだろう。古の魔法使いは、ファントムの魔力を喰らう。用心するんだな」
「お、お、それだけ?!」
解説だけして帰っていくワイズマン社長に思わず物申すが、さっくり無視されるダイバーファントム。
そのダイバーファントムが狙うのは、公園でスケッチしていた及川という中年男性で、外見は植物系だが腕にヒレがついていたりする今回のファントムは、心理的外道路線というより、インパクト重視の変態路線。
……なんか、全てのファントムが、人間社会に上手く順応しているわけでない事を見せつけてきます(笑)
「今日の食事みーっけ!」
野宿していた神社の境内を追い出され、たまたま現場に居合わせた仁藤だが、そこに晴人も駆けつけて、ショータイムとランチタイムがバッティング。
「どけマヨネーズ!」
二人の魔法使いが張り合っている間にファントムは水中に逃げてしまう大変ダメな感じになるが、晴人が仁藤の「食事」を理解できない一方、仁藤は「ゲート」についての知識を持たず、ひとまず、話し合いの場が持たれる事に。
ただ、
「おまえ魔法使いの癖に、ファントムの魔力を食わずに生きてられんのか?」
について晴人にはさらっと流され、晴人からすると、これまでの自分の経験に全く当てはまらないので気にする問題ではない……という扱いなのかもですが、もう少し、自分の問題としても他人の問題としても、この場でイエス/ノー以上に考えを進めてみて欲しかった要素です。
大学で考古学を専攻していた仁藤は、とある遺跡の調査中、巨大な石仏の中に隠されていた通路の奥に謎の石版を発見。そこでビーストの指輪とドライバーを発見し……考古学専攻している人間が、勢いで、はめるな(笑)
仁藤がドライバーを身につけると、何故か周囲にグールが出現。そして、(指輪を使え)という謎の声に促されるままに指輪を用いて門を開くと、仁藤の前にライオン・ドルフィン・ファルコンの三つの頭を持ち翼を生やした魔獣が姿を現し、尻尾はカメレオンで、胴体には既にバイソンがついておりました(笑)
「我はキマイラ。仁藤攻介よ、おまえはベルトの扉を開き、我と一つとなった」
「扉? おい、なに言ってんだ」
「おまえに魔法を授ける代わりに、我に魔力を与えよ。さもなくば、その命は尽き果てる」
「……はぁ?!」
「さあ、我の為にファントムを倒し、魔力を喰らうのだ。魔法使い・ビースト!」
魔獣キマイラは一方的に契約を結ぶと仁藤をビーストの姿に変え、本人の軽率な振る舞いによる自業自得な面はありますが、完っ全に、呪いのアイテムでした。
……仁藤が人の話を最後まで聞かない体質なのは、キマイラの影響でしょうか(笑)
かくして仁藤攻介は、ビーストの名を持つ暴食の魔法使いとして、喰い続けなければ生きてはいけない運命を背負う事となり、その情報公開の早さは、間違いなく『ウィザード』世界の人間だった。
食べる為にファントムと戦う仁藤/ビーストに対し、ゲートの命を守る為に戦う晴人/ウィザードは、赤の他人を守って戦う事について
「ただファントムのせいで誰かが絶望するのを……放っておけないだけだよ」
と語り、“ファントムと戦えるのは自分だけ”の状況が崩れつつも、戦う意識は保持。
そんな晴人の姿勢に対し、「命が懸かってない奴は呑気でいいなぁ」と評しつつも「おまえが一生懸命なのはよぉくわかった」と一定の理解は示す仁藤だが、「こっちは命が懸かってんだ」と互いの道は交わらず。
晴人と仁藤、両者のすれ違いを生む方針の違いとして、表面上は「他者の為」と「自己の為」を置きつつ、まだ互いに互いの事情をよくわかっていない点を決定的な悪印象を生まないクッションとして進行。
また仁藤が去り際にドーナッツ屋に挨拶を返す姿で、感じ悪くなりすぎないように印象をコントロールしているのは、今作の一貫して丁寧なところです。
晴人たちが及川を探して走り回る一方、使い魔のグリフォンにファントムを探させようとした仁藤の前に立ったメデューサは、ゲートを確保すれば安定してファントムを生み出せる、と虚言で仁藤を惑わせる。
「目の前のファントムを食べれば今日は生きられるかもね。でも新たなファントムが生まれない限り、いずれ貴方の明日はなくなるわ」
の台詞に合わせて、洗濯紐に干したパンツが映されるのは、『オーズ』オマージュでありましょうか。
一方、コヨミに対して「お人形さん」と呼びかける謎の青年(ファントム)が現れ、コヨミにワイズマンの腎結石もとい巨大な黄色い魔法石を渡して姿を消し、描写から見ると、風属性の幹部……?
再び及川を襲うダイバーファントムを見つけた晴人はウィザードに変身し、槍を手にしたファントムと武器戦闘。ファントムは得意フィールドの水中へ逃げ込むが、ダイビングすいすいすいで水中戦となると青ザードはファントムを圧倒し、再び地上へ。
一気にWDで勝負を決めようとするウィザードだが、フィナーレを妨害したのは、ビーストのジャンピングニー。
「よくも俺を騙しやがって。やっぱりおまえもファントムの魔力が目当てだったんじゃねぇか」
真っ赤な猛牛マントを身につけたビーストはウィザードに怒濤の連続攻撃を仕掛けるが、ファントムがゲートを襲おうとすると、それはそれで妨害。
ゲートをどう扱うのが自分にとって一番得なのか、ビーストは双方に説明を要求し、それぞれの思惑がぶつかり合う三つ巴の大混乱で、つづく。
ピンチはチャンス、を合言葉に、前向きで陽性なキャラとして登場した仁藤ですが、晴人の話はろくに聞かない割に、「……かわいこちゃん」補正に惑わされてファントムであるミサの言葉に振り回される姿は、晴人とは別の形ながらも晴人同様に、表向きの明るい振る舞い以上に、悲壮さを抱えてもいるように見えるところ。
そう考えると、「ピンチはチャンス」の意味するニュアンスも少々変わってきますが……次回、ある程度は両者の関係性が落ち着きそうなので、どう折り合いをつけてくるのか、楽しみにしたいと思います。